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第5話

こちらで最終話になります。どうぞお楽しみください。

 あたしはお兄ちゃんの妹だから他の女のひとよりもずっと長い時間一緒にいられて、わがままだっていっぱい聞いてもらった。お兄ちゃんを独り占めしたくて、あたしはお兄ちゃんがもらったチョコレートも全部、食べた。ほんとはチョコ好きじゃないけど、お兄ちゃんのほうがチョコ好きなのも知ってたけど、あたしが好きだって言ったら絶対にくれるのわかってたから。

 あたしが作ったものを美味しいといって食べてくれるお兄ちゃん。

 お兄ちゃんが、ほんとは嫌いなものを知っていて、あたしはそれを知らん振りして作ったりする。

 あたしは意地悪だ。

 綺麗で優しいお兄ちゃんに意地悪をしたくてしょうがない。

 ねえ、どこまでしたら、あたしを嫌いになるの?

 もうやめろっていうの?

 離れてくれって、いいかげん誰かと結婚してくれって言うの?

 それとも、深町さんと結婚するなんていわないよね?

 ねえ、お兄ちゃん!

 あたしってただの可愛い妹でしかないの?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ずっと、あんたが好きだった」

「朝倉?」

「辰村サン、もういいかげん諦めて、オレのものになってよ……」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 浅倉さん、ごめんね。いくら仲良しの浅倉さんでも、お兄ちゃんは渡せないの。

 深町さんも、悪いけど、あたしのほうが先にお兄ちゃんを見つけたんだもん。

 あの小説は、あたしの本心。

 ほんとは一か八かをかけて、あそこに置いたの。もしも見てくれるなら、あたしのこと、気になるってことだよね? 興味があるってことだよね? 

 だって、実のお父さんにさえも遠慮ばかりするあのお兄ちゃんが他人のものを覗き見するなんて、ありえないよね? 

 あたしだから、気になったんだよね?

 あたしはお兄ちゃんが好き。

 大好き。

 なにをどうしても、諦められない!

 だから、今度こそ、お兄ちゃんに言おう。

 お兄ちゃんは勘がいいからあたしの気持ちなんてとっくに知ってると思うけど、はっきりさせきゃいつまでも逃げられると思ってる。

 ねえお兄ちゃん、もう逃げ場はないからね。


 《ぴぴぴ。》


 ケータイの着信音。

 あ、お兄ちゃんからだ!


《茉莉、小説家めざしてるならネーミングセンスくらい磨いとけ。朝倉悟と辰村久雄じゃバレバレだろう。浅倉に訴えられるぞ。しかも浅倉がヘタレ攻めなのは理解できるが、俺がなんで誘い受けなのかようわからん。俺はバリバリの鬼畜攻めだ。》


 ……

 ……

 お兄ちゃん、怒ってない? 

 呆れてない? 

 あたしのこと、気味悪くない?

 ああ、ヨカッタ~~~~~~~~~。

 ……

 ……

 ……

 でも、ホントかなあ?

 お兄ちゃんが「鬼畜攻め」って。

 まあ、あたしはお兄ちゃんなら、なんでも美味しくいただく自信があるの。

 覚悟してね、お兄ちゃん?

                                        終わり



全5話、お付き合いいただきましてありがとうございます。

サイト「唐草銀河」にてこの話の裏バージョン、兄・龍村功の物語『それを何と呼ぶかは貴女が決めてくれ』もあります。

お気が向かれましたらどうぞお越しくださいませ☆

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