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先生が何も言わないのに、私だけが勝手に心理戦して二万字悩んだ歴史のテストの話  作者: くろめがね


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9/9

第9話(最終話) 先生は、最初から何も仕掛けていなかった

最終話です

次の授業は、

社会科ではなかった。


それなのに、

私は落ち着かなかった。


(……まだ、終わっていない)


テストは返ってきた。

点数も出た。

解説も聞いた。

それなのに、

頭のどこかで、

何かが引っかかっている。


(あのテスト……

 本当に、

 あれで終わりだったのか)


昼休み。

私は、

無意識のうちに

職員室の前まで来ていた。


用はない。

相談もない。

ただ――

先生の存在を、

確認したかった。


先生は、

席にいた。


書類を見て、

ペンを動かし、

淡々と仕事をしている。


(……普通だ)


あまりにも、

普通。


(この人が……

 あの心理戦を……?)


私は、

自分の中の違和感を、

もう一度整理した。


・先生は「流れが大事」と言った

・「全部覚える必要はない」と言った

・「考えすぎなくていい」と言った

・「意地悪はしない」と言った


(……全部、

 “普通のこと”だ)


テストの内容も、

改めて思い返す。


四択。

二択。

人物。

年代。

順序。


(……全部、

 教科書通りだ)


難しくはない。

意地悪でもない。

よくある、

ごく普通のテスト。


(じゃあ……)


私が感じていた

あの異様な緊張。

あの心理戦。

あの“読まれている感覚”。


――あれは。


(……私が、

 勝手に作ったものだ)


胸の奥で、

何かが、

静かに崩れた。


(先生は……

 何もしていない)


ただ、

授業をしただけ。

テストを作っただけ。

解説をしただけ。


そこに、

深い意図も、

心理操作も、

三段構えもなかった。


(私が……

 勝手に、

 意味を足していた)


私は、

自分のノートを思い出した。


線を引き、

印を付け、

勝手に重点を決め、

勝手に罠を見つけ、

勝手に外した。


(……全部、

 私の中だけの戦争)


その瞬間、

先生の声が、

頭の中で

再生された。


「大事なのは、流れです」


――違う。


あれは、

罠じゃない。


ただの、

授業だった。


「考えすぎなくていいですよ」


――あれも。


警告だった。


(私に、

 向けた……)


私は、

ゆっくりと、

笑いそうになった。


(私……

 何と戦ってたんだろう)


テスト。

先生。

問題。


どれでもない。


――私自身だ。


教室に戻る途中、

先生とすれ違った。


「あ」


先生は、

私に気づいて、

軽く会釈した。


それだけ。


呼び止めもしない。

評価もしない。

意味深なことも言わない。


ただの、

先生の態度。


(……これが、

 本当の姿だ)


私は、

思わず口を開いた。


「……先生」


先生が、

足を止める。


「はい?」


普通の返事。

普通の声。


私は、

一瞬だけ迷って、

結局、こう言った。


「……テスト、

 ありがとうございました」


自分でも、

変なことを言ったと思う。


だが、

先生は少し考えてから、

こう言った。


「いえ。

 こちらこそ」


それだけ。


付け加えもない。

含みもない。


ただの、

挨拶。


先生は、

そのまま

歩いていった。


私は、

その背中を見送った。


(……負けた)


点数じゃない。

成績でもない。


完全に。


私は、

最初から最後まで、

一人で戦って、

一人で消耗して、

一人で納得して、

一人で悔しがっていた。


(先生は……

 最初から、

 何もしていなかった)


それなのに。


私は、

“勝ったつもり”で、

テストを終え、

“手応え”を感じ、

“読んだ”気になっていた。


(……恥ずかしい)


だが、

同時に、

少しだけ、

清々しかった。


(これが……

 私の癖なんだ)


考えすぎる。

深読みする。

勝手に物語を作る。


――それが、

私だ。


帰り道、

ノートを開く。


そこには、

私が書いた

無数の線と、

矢印と、

メモが残っている。


(……無駄じゃない)


先生は、

何も仕掛けていなかった。


だが、

私は、

確かに考えた。


考えて、

迷って、

失敗して、

少しだけ、

自分を知った。


(次は……

 もう少し、

 素直にやろう)


そう思えた時点で、

このテストは、

私にとって

意味があった。


――たぶん。


私は、

カバンを持ち直して、

空を見上げた。


給食の匂いが、

まだ残っている。


明日も、

授業はある。


先生は、

また言うだろう。


「大事なのは、流れです」


その時、

私はきっと、

こう思う。


(……うん。

 今度は、

 普通に聞こう)


――完。


面白いと思っていただけるようでしたら、是非、シリーズ、別編として書かせていただきたいです。

青春妄想高校生に、最後までお付き合い頂き本当にありがとうございました。

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