表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

森の光と小さな約束

作者: はるさんた
掲載日:2025/10/20


深い森の奥、木々の間から差し込む光が、苔むした小道をやさしく照らしていた。そこに、ひっそりと建つ茅葺きの小屋がある。見習いの魔法使いリリは、毎朝森を散歩しながら、魔法の練習をしていた。


「ふわり、ひらり……」

小さな光の玉が手のひらでくるくると回る。リリの栗色の髪が朝の光にきらきらと輝く。今日も森の小鳥たちがリリを見守り、リスやウサギも遊びに来ていた。


そんなある日、森の奥でいつもと違う気配を感じた。

「ん……?」


茂みの陰から、一人の少年が現れた。

「……迷子か?」

黒髪に深緑の瞳、村から来た弓使いのセレンだった。森の奥で道に迷い、偶然リリの小屋の近くまで来てしまったのだ。


「う、うん……道に迷っちゃって」

リリは少し顔を赤らめ、光の玉を手のひらで揺らす。セレンはにっこり微笑むと、差し伸べた手でリリの手をそっと握った。


「怖くないよ。俺が案内する」


二人は森の小道を歩きながら話し始めた。

「君、魔法使いなの?」

「ええ、まだ見習いだけど……」


光の玉が二人の間で揺れ、二人の足元をやさしく照らす。自然と笑顔が増え、話すほどに心が近づいていった。


やがて湖に着くと、夕陽が水面に反射し、湖はまるで金色の鏡のように輝いていた。二人は湖畔に腰を下ろし、沈む夕日を静かに眺める。


「こんな景色、見たことない」

リリの声は小さく、だがどこか弾むようだった。

「俺もだ。君と一緒に来れてよかった」


その瞬間、光の玉が二人の間でふわりと浮かんだ。まるで二人を祝福しているようだった。リリはそっとセレンの手に触れ、彼もまた優しく握り返す。


「リリ……」

名前を呼ばれるだけで、胸が少し高鳴る。リリィの頬は真っ赤に染まった。


湖のほとりで過ごす時間はあっという間に過ぎ、夜の帳が森を包み始める。小さな蛍の光が二人を取り囲み、湖面に映る月明かりとともに、静かな魔法の世界を作り出した。


「今日は楽しかったね」

「うん……また、一緒に散歩したいな」

リリはそう言い、光の玉を手でそっと浮かべる。セレンも笑顔で頷いた。


翌日から、二人は少しずつ森で顔を合わせるようになった。リリは魔法の練習を教え、セレンは弓の技を披露する。森の小動物たちも二人を応援するかのように近くで遊んでいた。


ある日、リリが水の魔法の練習をしていると、セレンがふざけて水の流れを変え、小さな滝を作った。水に打たれてびしょ濡れになったリリィは、思わず笑い転げる。


「セレン! ずるい!」

「悪い、でも楽しそうだから……」

笑い声が森に響き、二人の距離はますます近くなった。


季節は少しずつ春から初夏へと移り変わり、湖の周りは新緑であふれた。ある夕暮れ、リリはセレンに小さな光の花を手渡した。


「これは……?」

「リリが作った魔法の花……僕にくれるの?」

「うん、ずっと一緒にいてくれたから、感謝の気持ち」


セレンはその花を胸に抱き、リリをそっと見つめた。夕陽が二人を包み込み、森の静けさと柔らかい光の中で、小さな約束が交わされた瞬間だった。


「これからも、一緒に魔法の練習しようね」

「うん……そして、一緒に森のいろんな景色を見よう」


光の玉が揺れ、蛍が舞う湖のほとり。小さな魔法使いと弓使いの少年の恋は、森の中でゆっくりと、しかし確かに育ち始めていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ