——、メリーさん
着信音が鳴る電話に、僕はさっと出る。
「私、メリー。今、音那乃マンションにいるの」
同じ人物からの、何度目かの電話。
彼女はそう言って、僕に自分の現在地を告げてくる。
現在地が変わる度に、何度も、何度も。
「私、メリー。今、個共野公園にいるの」
彼女は確実に、僕の部屋に近付いてきている。
ああ。
電話に出る必要などないのに、出ずにはいられない。
これが、彼女の魔力だとでもいうのだろうか。
「私、メリー。今、あなたのマンションの前にいるの」
いよいよ、いよいよなのか。
僕は、もうすぐ彼女に会うのか。
会って、それから——。
ピンポーン!
部屋のインターホンが鳴る。
マンションの入り口からのインターホンは鳴らなかった。
そうか。お前には僕の部屋からの解錠もいらないのだな。
僕は。
自ら。
部屋のドアを開けた。
妖艶な彼女が、静かに部屋に入ってくる。
ああ、ああ。
ついに、この時が来たのか。
「私、メリー。今、あなたの目の前にいるの」
もう電話は使っていない。
彼女の肉声だ。
とても、美しい。
「私、メリー。さっき、あなたの邪魔な女を殺してきたわ」
その声が、僕の目的が達成されたことを告げる。
ふふ。
「ありがとう、メリー。また僕のために殺してきておくれよ」
彼女を優しく抱きしめる。
彼女から見えなくなった顔では、笑みを浮かべながら。
「愛しているよ。僕の、メリー」




