アネモネ
ここは寿命を買い取り、売るお店
このお店に導かれるは、死にたいと望む人と生きたいと望む人
そんなお客様に寿命を買い取り、売るのが私の仕事でございます。
今回、来店のお客様は妻に先立たれた老夫
ここは寿命を買い取り、売るお店
このお店に導かれるは、死にたいと望む人と生きたいと望む人
そんなお客様に寿命を買い取り、売るのが私の仕事でございます。
ジョウロを手に取って「お客様を迎えるにあたりお店の見た目は華やかにしないと」と花に水やりを始めた。
カランカランと扉についたベルがなる。
持っていたジョウロを素早く片付けた。
「いらっしゃいませ」
深々と頭を下げていた。
「こんにちは。
ここは寿命を買い取ってくれるとお聞きしたのですが」と70代ぐらいの小綺麗な老夫が訪ねてきた。
「はい、ここは寿命を買い取り、売るお店でございます。」
「良かった、ちゃんと辿りつけたようだね
僕の残り少ない寿命を買い取って貰いたくてね」
「かしこまりました。
どれぐらいの寿命をお売りになりますか?」
「恥ずかしながら、全部でお願いしたいです。」
「かしこまりました。
それではこちらのソファーにお座りなって契約書にサインをお願いいたします。」
契約書を渡されて名前を書いた。
「はい
サインを書きました。」
「確かにサインをお預かり致しました。
最後の確認ですが、本当に寿命をお売りになりますか?」
「こんな老人の命だけど売らせていただきます。
妻がね、去年に他界してしまって妻の居ない生活がとても寂しく思ってしまうのです。
妻にはあの世で怒られそうですが、アハハ」と老夫は笑っていた。
「かしこまりました。
それでは、こちらの液体をお飲みください。」
「これは?」
「寿命を採取する液体でございます。
液体をお飲みになられましたら、少しずつ眠くなってそのまま永眠致します。」
「わかりました。」
小瓶に入った液体を飲み干した。
「意外と甘くて美味しいね」
「そちらは特殊な花の蜜で作られていますので、甘いです。
それでは、こちらのベットをお使いください。」
ベットに仰向けに寝転び、天井を見つめていると少しずつ眠くなったきた。
「やっと妻に会える...」
と静かにまぶたを閉じる。
「アネモネですか」
老夫の周りにたくたんのアネモネが咲き誇っていた。
「確か花言葉は、儚い愛や再会
次の人生でも奥様とお会いできる事を願います。」
手際よくアネモネの花を採取して花瓶に生ける。
「78年間の人生、お疲れ様でした。」
と男は眠った老夫の前で深くお辞儀をした。
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