嫌な
三題噺もどき―さんびゃくきゅうじゅういち。
外には曇天が広がる。
雨は降っていないが、この時期はそれだけでも冷え込む。
「……さむ」
つい数日前は中途半端な夕方のこの時間でも、そこまで寒さは感じなかったのだが……急に温度が下がったせいで、更に寒く感じてしまう。
朝のニュースで、例年通りではあるみたいなことを言っていたのを思い出した。
確かに、去年の今頃はこれぐらい寒かったかもしれないなぁ。
暖かかったあの数日、数週間がおかしかったんだろう。
「……」
重苦しい曇天は、今にも落ちそうな勢いではあるが。はて。
今日は、雨の予報があっただろうか……あまり天気予報はしっかり見ないたちなので、分からない。降ろうが降るまいが関係ないが。
「……うぅ」
より強く体が震える。
両腕をさすりながら、寒さに耐える。
念の為の防寒はしているが、あまり意味がないような気がする。
雨が降っても降らなくてもいいとは言ったが、降ったら降ったでさらに気温が下がりそうだ……それは嫌だな。
「いらっしゃいませー」
そういえば、今は仕事中だった。
寒すぎてそれどころじゃない正直。
手がかじかんであまり言うことを聞いている感じがしないんだが。
レジ打ちの簡単な仕事ではあるが、時間がかかるといけない。
「以上―点で、――円になります」
この時間帯は、大した量の買い物をする人が居ないのでありがたいが、たまに籠いっぱいに持ってこられると手こずる。
そういう人に限って、適当に突っ込んでいたりするからレジを打つ方も大変なのだ。
「丁度ですね~ありがとうございます」
トレーに置かれた小銭を適当に機械にいれ、清算する。
ガシャガシャという機械音が終わった後に、レシートが出てくる。
が。
「……ありがとうございました。」
それを渡す前に、さっさと帰っていったのでレシートはごみ行きだ。
なんだか最近ああいう人によく当たるんだが。
いや、別になんという事はないんだが。
……あまりいい気分ではないよな。
「……」
しかし寒い。
制服がカッターシャツなもので、それなりに薄い。
その上に指定の上着を着たりはしているが、寒い寒い。
レジは出入り口付近にあって、常に冷気が入り込んでいるも同然なもので。
店内には暖房が入っているはずだが、大した意味もない。
明日は貼るカイロでも背中につけてこようかな。
「いらっしゃいませー」
早々に次の客が来た。今日は少し来客が多いな。この時間にしては。
……籠の中は半分ほど埋まっている。
ふむ。籠に移しながらレジ打つか。
「袋はお持ちですか?」
ほとんど反射的にそんなことを聞きながら、新しい籠を置く。
バーコードを通しながら、次々と商品を入れていく。
ん。
「……」
袋は持っているかと聞きはしたが、ここで入れろとは言っていない。
ちゃんとしたサッカー台があそこにあるんだから、そこで入れてくれるか。
この量をここで入れられると困るんだが。
後ろに人並んでるのが見えてないのか。
「――円になります」
袋入れるのは後でしてくれないだろうか……。
人が並び始めている…この時間なのに。
早くしてくれぇ。
「……」
たまにこうやって、レジを通しながら袋に入れていく人はいるが。
そういうやつに限って、支払いの準備が全くできていない。小銭を大量に出そうとする。何か知らないが偉そうな態度で話してくる。周りへの気遣いが零。意味が分からない。
「……」
思うが、コレ下手したら盗難にならないか…?
だって、支払う前に懐に入れているも同然だと言われても、仕方ない気がしてきた。
やろうと思えば、そのまま走り去れるしな。
「…――円からおあずかりいたします」
こんだけ時間かけたなら、せめてピッタリ出してくれればいいのに。
機械音が鳴り響く。
その間にもなんだか、イライラしているが。
他人に数分待たせるくせに、自分は数十秒も待てないのか、めんどくさいやつだな。
清廉潔白とは程遠いような存在だ。……なんだ突然、清廉潔白って。
頭おかしんじゃないか私w
「お釣りお返しです、ありがとうございます」
は―もうさっさとどいてくれ。
籠に微妙に残ったのは自分が悪いだろうが。
邪魔だっての…。
「いらっしゃいませー」
―お待たせいたしましたー。
面倒な客しか来ないなぁここは。
嫌だいやだ。
お題;曇天・カッターシャツ・清廉