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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第七章

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地上へ戻ろうか

 

「この宝石・・・?」

 サリフェルシェリは小さな小瓶を目の高さに挙げて中の宝石をじっと見つめる。


「どうした?サリフェルシェリ?」

「いえ。ここでは簡単に調べられません。エリティファリスの研究所を借りるか、それとも大森林に帰るか悩ましいですね」

 サリフェルシェリは片手を顎に当てながら、瓶の中身をじっと見つめて悩んでいた。


「サリフェルシェリが大森林に戻るなら、俺が護衛をしてやるぞ」

「ダーディー。いいのですか?」


「構わない。エルフの大森林は北の大ダンジョンに近い。そこまで行くついでだ」

「大ダンジョンに何をしに行くのですか?」


「大ダンジョンが静かだ。何故魔物は一番魔素濃度が高い北じゃなくて、小さなダンジョンから溢れたんだろうな」

「魔人が出てきたからよ」

「三人でてきたよ」

 レンレンとランランがダーディーの質問に答える。


「二人が魔人を見かけたおかけでギルドでは魔物を待ち受けることもできた。周辺の町にも警戒するように連絡できた。それはラッキーだったよ」

 ギルが二人に笑いかける。

 お手柄だったので、二人は特別に昇級と特別手当が出ることになっている。



「わからんなぁ。何故初心者でも潜れるような魔素濃度の低いところから何度も魔人が現れようとするのか」

「何度もって?」

 ダーディーのつぶやきに、ギルが質問する。


「ギルには報告していなかったが、以前、魔人と思わしきものが地上に出ようとしたところをシャオマオが追い返したことがあった」

「なに!?」

 ギルが大きな目をしてダーディーを睨んだ。


「まったくギルドに情報を流してくれなかったな!?」

「そうだな」

 ダーディーはしれっと返事する。


「なぜだ!?」

「相手の正体がわからなかったのと、そのあとしばらくダンジョンを見張ったが、まったく動きがなかったせいだな」

 しれっとまた返事するダーディー。


「しょうがない奴らだな・・・」

「じゃあ、サリフェルシェリを護衛して今度はエルフの大森林へ向かう。サリフェルシェリ、出発はいつがいい?」

「そうですね。今すぐにでも出発できますよ」

 サリフェルシェリたちは魔物退治のためにいろいろ準備してきている。


「じゃあ、さっそく移動だ」

「ヨコヅナは大丈夫ですか?」

『大丈夫だ。戻ったらライたちを乗せてくれるようにユニコーンたちに声をかけよう』

「ありがとうございます」




「ねえ、ユエ。ここ、すごくユエのゲルなんだけどやっぱり違うね」

「そうだね。匂いも置いてあるものも、俺のゲルだがやっぱり違和感がある」

 シャオマオを膝の上に乗せてくつろいでいる二人。


 二人はすんすんと鼻を鳴らして匂いを嗅いだり壁際のシャオマオの宝箱を眺めたりした。

 きっと中にはシャオマオの宝物になっているものが入っているのだろうが、全部偽物なのだろう。


「いつ地上に帰ろうか」

 ポツンとユエがつぶやく。


 シャオマオはその一言にとても驚いた。

 どちらかといえば、シャオマオが言うまでユエは地上に戻りたいと言わないと思っていた。


「ユエ。帰りたいの?」

「シャオマオと二人っきりなのは嬉しいんだけどね。シャオマオの幸せには沢山のものが必要だ。俺だけではシャオマオを完全に幸せにはしてあげられないってわかってるから」

 ユエはにこっと笑う。


「ほんとうにほんとうに、シャオマオと二人っきりなのは嬉しいんだよ?」

「ふふふ。シャオマオも嬉しい」


「じゃあ、もう少しここにいる?」

 ユエの提案に、シャオマオはうーんと考えた。


「どうしたの?」

「ううーん、あと二人っきりの時じゃないとできないことって何だろう?」


「たくさんあるよ?」

「まだしてないことあった?今のうちにしておかないと」

 首をかしげるシャオマオに、後ろからうなじをべろりと舐めるユエ。


「きゃあ!」

「たっくさんある」


「もう!ユエ!」

「薄い肩も細い首も、もっと俺の匂いになればいいのに」

 驚きのあまりに立ち上がろうとしたけれど、がっちり抱きしめられてるので動くことが出来ない。


「・・・?ユエ。さみしいの?」

「・・・うん。そうかも、しれない」


「大丈夫。ここからシャオマオの浄化を使ってユエを守れば、ユエも一緒に地上に出られるって銀狼様に教えてもらったもんね。地上までどれくらいかかるのかわからないけど、一緒に旅して戻ろうね」

「シャオマオに守ってもらえるのも悪くないね」

 肩に顔をうずめたユエが、シャオマオの肩をかるく齧る。


「きゃあ!また食べようとした!」

「食べないよ。まだ」


「まだってなに~?」

「まだはまだ」

 真っ赤になったシャオマオとユエが二人で笑いあっていたら、急に地面が揺れた。


「地震?」

「大きいな」


 遠くから誰かの叫び声がする。


「あれ、ミラの声?」

「ミラ?」

「金色の狼の人」

「ああ。さっきの」


「これ以上は地上に出てはなりません!!」


 必死に誰かを止めている声がする。


「大神!止まってください!!」


「おおかみ?」

「大神が?」

 ユエはシャオマオを抱きしめたままゲルから飛び出した。

 この場所から出たほうがいいのかどうかは悩ましいところだ。

 とりあえず外に出る道をきょろきょろと見回していたら、シャオマオが出入り口の扉を指さした。



 そちらに2,3歩走り出したとたん、また地面が揺れる。


「大神!まだ銀狼様の欠片を集めていません!まだ地上に出るには早いのです!」


 ミラの声がだんだんと近づいてくる。

 同じように、地面を揺らすものが足音だとわかる。


 ドガン!!


 シャオマオたちがいるのは大きなアラビアンナイトのお城の中だ。

 その中に砂地の地面があって、ユエのゲルが再現されている。

 そのアラビアンナイトのお城の入り口、大きな両開きの扉があったが、その大きな扉が吹き飛んだのが遠目で見えた。


「・・・ユエ」

「ちゃんと抱き着いていて。ちゃんとシャオマオのこと守るから」


 この場所は神々が住む場所で、高濃度魔素が渦巻いていると聞いた。

 高濃度魔素はいまのユエには毒だ。


 シャオマオは自分の中の力に集中して、どんな高濃度魔素が流れ込んできても対抗できるようにと空間の中に自分のエリアをじわじわと広げていった。


 しばらくするとユエよりも長身の、焼けた肌に金の長い髪、驚くようなきれいな顔の男性が立っているのが見えた。

 ミラはまだ若く、青年といった感じだが、よく似ている。

 それよりも年上の兄のように見える。


「・・・・・・・・ぎ・・・・」


 何か言葉を発したようだが、言葉としては聞き取れなかった。


「大神様!お静まりください!!まだ銀狼様の欠片を集められておりません!!まだ星への道は開きません!!」

 大神と呼ばれる男はミラの言葉に花にも反応を示さなかった。


 手に持っている何かを少しシャオマオたちに見えるように掲げてきた。

「・・・・・・あれ、シャオマオの毛布だよ・・・」

「あいつが変態か」


 ユエがひどく冷えた空気を出すのでシャオマオが少し震えた。

 急に気温が下がったような気がしたのだ。


「・・・ぎ・・ん」


「銀狼様じゃないよ。シャオマオだよ・・・」


 シャオマオは小さく返事したが、大神には聞こえていないだろう。


 一歩一歩と、ゆったり歩くたびに地面が揺れる。


 目に見えている大神の姿と、実際の質量が違っているのかもしれない。



「大神様。これは銀狼様ではありませぬ。銀狼様の魂は、まだ遠くの星にあります」


 ミラは大神のそばについて、必死に声をかけるが金の瞳はまったく動かない。


「大神様!!」

 大神と呼ばれた男は少し止まると、自分のそばに来たミラの肩を掴んだ。


「大神様・・・まだ早―――」

 話している最中に、ぼろっとミラの体が崩れた。


「ひっ!」

「シャオマオ。顔を伏せておいて」

 悲鳴を上げたシャオマオの後頭部を撫でながら、ユエはミラの体を手で吸い込むように吸収する狼を見つめる。


「・・・・・・・ふ。銀。銀。こんなにも銀の香りがするのに。お前は銀ではないのだな・・・」


 さっきよりも滑らかに話す。

 吸収したミラのお陰か。


 シャオマオの毛布をばさりとその場に捨てて、大神はずるずると大地を揺らしながら近づいてくる。


「銀。銀。早く会いたい・・・」


「銀。どうして会いに来てくれないんだ」


「銀。俺の愛は届かないのか」


 一言呟きながら、地面を揺らしながら、シャオマオではなく、銀狼に向かって話しているようだ。


「俺は、ずっと、地下で、ずっと、銀が戻ってくるのを、待っていた。いつまでも、待てると思っていた。必ず出会えると思っていたからだ」


「もう・・・待ってないの?」


 シャオマオは思わず尋ねた。

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