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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第六章

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探し物を一緒に探そう

 

「探してるって、何探してるんだろうね」

 ユエとシャオマオが作ったランチを食べながら、ライは話を整理しようとした。


 キャベツがたっぷりのカツサンドだ。

 カリカリに揚げたカツは大成功だ。

 ソースは改良の余地がある。



 精霊が言う「怖いのが集めているもの」とは何か。


 精霊の言う「こわいもの」はやはり金狼のことだろう。

 集めてるものとは、体を取り戻し、力を呼び戻して銀狼と再会するために集めているものだと思われる。


 シャオマオは金狼と銀狼を会わせてあげたい。


 では、金狼が集めているものが早く集まるように協力すればいいのではないか。


「シャオマオね。夜に怖いのを探してみようと思うの」

「俺と一緒にだよね?もちろん」

 ユエが隣のシャオマオに微笑みかける。


「うん。シャオマオはユエと一緒に探すのよ」

「わかった。一緒に探そう」


「もちろん私も協力いたします」

「ミーシャ、ありがとう」

 実はこのランチ会にはミーシャとニーカ、チェキータ親子も参加している。


 シャオマオを心配していたミーシャをライがランチに誘ったら、なぜか偶然ニーカとチェキータと道中で遭遇したのだ。

 家の近くに何故か居た。

「ライー。今日のランチはなにかな?」と、当然食べさせてもらえるものだという顔をして。



 生のピーマンを齧りながら、口の周りにタネをつけたニーカがニコニコしている。

「妖精様の力になれるなら、ミーシャなんでもするもんね」

「そうですね」

 ミーシャは揶揄う父親を気にせず照れなくにっこり笑う。


「私の力はシャオマオ様のものですから。夜は目が心許ないので申し訳ありませんが、昼間はお任せください。他の鳥族にも力を貸してもらいましょう」

 ミーシャはやっぱり頼もしい。



 実はミーシャたち親子は大きく成長したシャオマオを見た時に感動のあまり親子で抱き合って泣いていた。

 いつもミーシャやチェキータを揶揄って見ているニーカだって、顔を真っ赤にして喜んでいた。


 チェキータは「私のお姫様」と呼んでシャオマオを真っ赤にさせたせいで、ユエがピリピリして大変だった。


 ミーシャは一目見て言葉を詰まらせたが、深呼吸をしてからいろんな気持ちを込めて「シャオマオ」と名を呼んで、逆にシャオマオを感動させていた。


 ミーシャに呼ばれる名前はユエに呼ばれるのと似ている。

 暖かく包み込むような響きなのだ。

 本当に、その一言に全ての愛情がこもっていた。

 安心できる。信頼できる。

 シャオマオは胸がいっぱいになって少し涙をこぼした。


「シャオマオ。綺麗になりましたね。本当に美しい。私たちの妖精様。心からの忠誠を」

 シャオマオの手を取って、指先に口付けをすると自分の頭に乗せる挨拶をする。


「ありがとうミーシャ。大好きよ、ミーシャにーに」

 ミーシャの髪をサラサラと撫でて、羨ましがったニーカ夫妻も続けて撫でてあげた。

 3人とも髪質がよく似ていて、ツルツルで気持ちがいい。

 ずっと撫でていたくなる。



「まずは金狼様がどこに現れるのか確認しましょう。これは我々が散らばって探すよりも、精霊に頼んで探してもらいましょう」

 サリフェルシェリがお札を腰のポーチから何枚か出して真っ二つに破く。


 破かれた札は急に黒くなってバラバラと崩れる。

 まるで燃えた後の紙屑のようだ。


 この札にこもっている力をあげることで、精霊にちょっとだけお願い事を聞いてもらうのらしい。


「これ魔法?」

「そうですね。学校に通っていたらいつか習いますが、妖精様には不要でしょう」

「どして?」

「シャオマオちゃん、指一本たててよ」

 ライに言われた通りに人差し指を立ててみる。


「魔力を流してみてよ、指先に向かって」

「はい」

 その途端、蝶が花に群がるように大勢の精霊がやってきて、シャオマオの指先から流れ出る魔力を舐めにきた。

「にゃっ!!」


 シャオマオが驚くと、その場の全員がにこっと笑う。

「こんなに綺麗な魔力が流せるのに、魔道具も必要ないしね」

「そもそも妖精様に魔法を教えることができるのでしょうか?」

 サリフェルシェリが首を捻る。


「えー?シャオマオったら魔法使えないの?」

「いえ。自然とシャオマオ様が行なっていることが、我々で言うところの魔法ですね。空を飛ぶことも、精霊と会話したり意思の疎通をしたり、そう言う言ったことを魔道具を使って行なっています」

「シャオマオちゃんは、道具を使わなくてもできるんだから、道具の使い方を覚える必要がないんだよ」

「あ、そういうことかぁ」


 誰かに「魔法とはなんぞ?」と言われたが、そう言うことだったのかもしれない。

 魔法の意識がなくてやっていることだったのか。


 そして、妖精が楽しんでやれば星が喜んでくれる。

 星が喜べば協力してくれる。

 協力してくれれば結果に差が出る。


 しかも、妖精の力は清浄な魔素だ。この世の中にある濃度が濃くなった魔素を正常化して体から排出している。

 人や生き物が生きている限りは魔素濃度が極端に薄れることがない。

 魔素をどれだけでも清浄化できるパワーもある。

 無尽蔵に使えるエネルギーと永久に動き続ける機械が揃ってるのと同じだ。


(今更すぎるけど、妖精って最強なのでは・・・?)

 シャオマオはやっと自分のことを実感を持って理解した。


「シャオマオ様。シャオマオ様の魔力を舐めたものたちに願いを言ってくださいな」

「あ、はい!」


 シャオマオは指先に集まる子たちに「危ないことはしなくてもいいから、怖いのが出てきたら教えにきてちょうだい。何かあったら逃げていいからね。シャオマオね、怖いのがどこからきて、どこに帰って、何を探しているのか知りたいのよ」

 精霊たちはみんなニコニコしながらシャオマオのことをみてうっとりして、声を聞いてうっとりして、夢現にうんうんと返事をしている。


 ・・・・・大丈夫だろうか。



「しばらくは、風や森林に住む精霊に力を借りましょう。シャオマオ様が動くのは目処がついてからです」

「はい」


「シャオマオ、本当は夜型になってるんだろう?」

「あ、わかってた?」

 ユエは真顔で頷く。

 シャオマオのことでわからないことなどないと思っているので、改めて聞かれると何を言うのかと不思議なのだ。


「しっぽ生えてからねぇ。夜の方がよく見えるしよく聞こえるの。体も元気よ」

「銀月の影響ですかね?」


「シャオマオちゃんの好きにさせなよ。妖精に規則正しい生活を強要したってしょうがないよ」

 ライがケラケラ笑う。

「サリフェルシェリがきちんとシャオマオちゃんの成長のこと考えてるのもわかるんだけどね」

 ライがみんなにスープを振る舞いながら笑う。


「あまり人の生活とかけ離れてしまうのも寂しいのではないかと、ちょっと考えていたんです」

「サリー。ありがとう。サリーがたくさん考えてくれるの嬉しい」


 サリエルシェリは少し照れたように笑う。


「シャオマオには俺が付き合うから大丈夫だよ。虎も昼間は眠い」

「猫族のほとんどが夜型だからねぇ。俺も付き合っても大丈夫だよ」

「しかし、ライは学校がありますからね」

「学校はしばらく休み!シャオマオちゃんと星のこと、大神のこと考える方が大事でしょ」

「まあ、そうですがねぇ」


「私もしばらく学校を休んでも大丈夫ですよね、母様」

「そうだね。ミーシャは思うがまま好きにするといい」

 親子の会話は簡単だった。


「ミーシャ!成績優秀者なのに・・・」

「ええ。ですのでほとんどの授業は終わっていまして。自分の学年の授業は監督補助として参加しています。時々格闘技の授業にさえ出ればよかったのですが、ライ先生とユエ先生がいらっしゃるのなら、こちらでお相手していただければ問題ありませんよ」


(ミーシャったら・・・・すごすぎない?)



 ということで、ミーシャたちは昼間に活動して、夜のシャオマオたちに情報を共有する。ということに決まった。


「早速明日から活動させてもらいますね。私たちは風の精霊に活動してもらいます。まあ、あの、とても気まぐれなので、ちょっと、不安がありますが、きっと風の精霊も妖精様に喜んでもらえるなら頑張るはずです!」

 珍しく見たことのない複雑そうな顔をしているが、ミーシャは請け負った。


 風の精霊も胸をドンと叩くポーズをして、自信を窺わせるが、ほとんどの精霊がシャオマオの髪に抱きついてきゃあきゃあ喜んで遊んでいる。



 それをなんだか気配を感じたユエに見えないながらも手で追い払われていた。

 精霊はそれも喜ぶ。


「じゃあみんな!!怪我しないでね!危ないことはしないで!まずは自分の体を守って!何かあったら逃げて!シャオマオはみんなの方が大事!できなかったっていうお返事でも待ってるから、会いにきてね!」


 きゃあ〜という声が聞こえそうなくらい、精霊が興奮して空へ消えていった。



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