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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第六章

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こわいのがくるよ~

 

 シャオマオが大きくなってから3日目からだ。

 シャオマオは夜に目が覚めるようになった。


 ユエが一緒に起きると「おトイレ!」と言ってトイレに行って、しばらくすると戻ってくる。

 寝る前に何か飲ませたかな?くらいに思っていたが、深く夜眠るはずだったシャオマオが、毎日毎日トイレに起きるようになって心配だった。


「シャオマオ。夜に起きているけど睡眠は足りているかな?」

「えーっと、あの、うん。朝までまた寝てるから大丈夫なの」


 歯切れが悪い。

 何かあるんだろうが、シャオマオが言わないなら何もできない。


 シャオマオが学校をしばらく休んでいるが、サリフェルシェリとライは担任を持っているので出勤だ。

 名残惜しそうにしているが、みんなの話をしたり、学校での学習の進度にあわせて宿題を出したりしているのでシャオマオには喜ばれているし、家庭学習にはユエが付き合っている。


 今は書き取りの時間だ。

 共通語の単語とさりげなく混ぜられた猫族語や、エルフ語をちょっとずつ覚えている。

 その発音や意味を教えてもらいながら、シャオマオは以前の星の自分が使っていた言葉を教える。


 ユエから見ると、頑張ってはいるが、眠気で集中できていないようにも見える。


「シャオマオ。深く寝れるように二人で運動をしようか」

「運動?」

「疲れて夜もぐっすり眠れるようになるよ」

「そ、そうなの?してみようかな?」



「シャオマオが飛んでいいのは1階の屋根の上まで」

「結構あるよ?」

「虎のジャンプ力を舐めてはいけない」

 にっと笑ったユエの犬歯。


「じゃあ、遠慮しないね」

 シャオマオもニコッと笑う。


 庭に出たシャオマオは運動しやすい格好をして、軽い靴を履いた。

 首に赤のリボンを巻いて、ひらひらさせている。

 引っ張ればとれるが、動いてもとれないくらいの結び方だ。


「じゃあ、まず3分。どこに隠れてもいいよ。それまで目を隠して耳も閉じているから」

「30分逃げ回れたら、ユエになんでもお願いできる」

「30分以内にリボンをとれば俺のお願いを聞いてね」


「じゃあスタート!」

 ユエが座って、後ろを向いている間にシャオマオは飛び上がって空へ逃げる。

 この姿になってから、自在に空を飛べるようになった。


 まるで別人になってしまった自分は、小さなシャオマオよりもずいぶんと「自分じゃない」感覚が大きい。

 意識は「へんしーん」と言って、魔法のステッキを振って大人になる魔女っ娘の気持なのだ。

 そういう感覚でいたら、なんだか「妖精の力」と言われるものが全部使い放題になった。

 空も簡単に飛べる。

 いまも息を吸うより簡単に空を飛ぶ。


「おっと」

 勢いがよすぎて飛びすぎた。


「屋根の上までね」

 シャオマオは高さを確認してから隠れられる場所を探す。


 最初は屋根の上に隠れられる場所を探したけれど、そんなところがない。

 庭もきれいに手入れされているので生垣くらいしかない。


「でも、ユエは飛んでいいのは屋根の上まで行っていったけど、隠れるところが庭の中だけとは言わなかったの」

 ちゃんと頭を使っている気がして、ふんすと鼻息が荒くなった。


 ちらりと後ろを見ても、ユエはちっとも動いていない。

 多分3分は経過しているはずだ。


「余裕なのね」

 シャオマオが飛ぶと喜んだ精霊がまとわりついてくる。

 精霊たちは、シャオマオが妖精の力をふるうのが大好きだ。

 精霊はぐるぐるとまとわりついてまぶしい。

 それを見てサリフェルシェリが涙する。

 エルフは見える精霊が多いので、物理的にまぶしいのもあるらしい。


「も~。ユエと仲のいい精霊さんがいたら気づかれちゃうの」

 精霊は自分と相性のいいものだけはきちんと見える。

 こんなにすべての精霊をまとわりつかせていても、見える人には一部分しか見えない。


「いまだけ、ついてきちゃダメ―」

 精霊は妖精のいうことをきいて、いまだけ散っていく。

 ちょっと悲しそうだ。


 シャオマオはさっと隠れる場所を見渡して、「絶対ここだ」と狭い場所に体をねじ込んだ。

 昼間なのに暗くて、暖かくて、最近寝不足が続いているシャオマオには禁断の場所だった。


「シャオマオ。起きて」

「・・・んむ」

「うとうとしていたね」

「うん。あったかくて、いい匂いでね。気持ちよかった」

「そっか。すごく嬉しい状況なんだけど、逃げなくて大丈夫?」

 ユエの言葉に目を開けると、大きな籠の中にすっぽり隠れて洗濯物で蓋をしていたが、ユエはそばにしゃがんでくすくす笑いながらその蓋をよけているところだった。


 シャオマオが逃げ込んだのは、ユエの洗濯前の服が入った籠だ。

 ユエの香りがたくさんして、ここならば虎のユエにもばれないと思ったのだ。


 シャオマオが安心して眠れる場所、隠れる場所がユエの香りのついた場所。

 隠れているシャオマオを見つけてこんなに心が躍ることがあるんだろうかと思ったが、一応そのまま時間切れまで待つのは卑怯な気がして起こした。


「あん!逃げる!!」

 ユエは一歩籠から離れて、軽く手を上げる。


 そのすきにシャオマオは窓から庭へ飛び出した。

 まるで水泳の飛び込みのように、窓枠を蹴って、すいっと伸びあがって空へダイブ。


 このポーズを見るのがユエは好きだ。

 好きだから逃げるところを見ていた。

 逃がすとは言っていない。


 ある程度距離が開いてから、ユエはスイっと同じように窓枠を蹴ってシャオマオのそばまで一息で追いついた。


「え!?」

 しゅるり

 驚いた途端に首のリボンをほどかれて、抱き着かれて一緒に地面に着地した。


「捕まえた。かわいいシャオマオ。俺の匂いがするシャオマオ。かわいい」

「ユエったら、飛べたの?」

 シャオマオが驚いたのはそこだ。


「ん?いや、ジャンプ力がすごいだけ」

 ニコッと笑われる。


「ジャンプ力・・・?」

「さあ。シャオマオ。お願い事を聞いてくれるんだよね」

「ええ~。シャオマオ寝ちゃってたもん」

「だめだめ。ちゃんと夜眠れてないのに嘘ついたからだよ。本当は追いかけっこしようと思ってたんだけどね」


「ううう」

「シャオマオ。俺のお願いは、「ちゃんと夜眠ること。そのために秘密があるなら共有すること」だよ」


「ユエ~」

「うん。おいで。なにが心配なの?」

 飛びついてきたシャオマオを抱きとめて、背中をポンポン叩いてあげる。

 二人が一緒になったので追いかけっこが終わりだと思った精霊がわらわら集まってくる。

 庭が精霊だらけだ。


「精霊がね。夜もたくさん集まるんだけど。お話しする子もいるの」

「精霊が・・・」

 さすが妖精だ。精霊と会話ができるのか。

 きいたことがなかった。

 サリフェルシェリに精霊よけの札をもらわなければならないか?


 いたずらする精霊をよけるための札もエルフはちゃんと持っている。


「おしゃべりが邪魔で起きちゃうの?」

「ううん。あのね、怖いの、また来てるんだって。今は夜歩いてるんだって。精霊が怖がってるの。どうしようって思って」


「怖いの?あのダンジョンの?」

「多分そうなの。でもあんなんじゃなくて、もっと怖いの」


「何をしに来たんだろうね」

「なにか探してるんだって」


「そうか。シャオマオを探してるんじゃないのかな?」

「ううん。シャオマオを探してるんじゃないの。もっと大事なもの集めてるんだって」


「大事なもの、ね」

「それでね、それでね。精霊がね、見たんだって。魔物がね、怖いのが出てきたときに一緒にでてきてるんだって。魔物はね、怖いのの言うこと聞くんだって」


「ああ。決定だな。大神だ」

「狼?」

「うん。狼の大神だ。サリフェルシェリに教わったかな?神話世代の話だよ」

「金狼と銀狼!」

「そうだね。シャオマオには銀狼が加護を与えてる。怖い思いなんてさせない。だから、金狼の方だろうね」

「・・・・う、地下でドロドロ・・・。かわいそうなの。銀狼とね、会いたいの。会わせてあげたいの。ユエ。どうしよう?どうしたら会わせてあげられるかな?」

「そうだね。シャオマオはその方法が思いつけるのかもしれないね」



「ただいま戻りました。シャオマオ様~?ユエ~?どちらですか?」

 サリフェルシェリが戻ってきた。

 家にいないので庭に探しに来たんだろう。


「さあ、シャオマオ。一人じゃないんだからみんなでゆっくりどうしたらいいのか考えよう」

「はい」


「今日は俺たちでお昼ご飯を準備して、ライを迎えてあげようね」

「はーい!きっとライにーにったらびっくりする!」

 ライは上級生の格闘技の練習にも付き合ってるので、帰ってくるのが一番遅いのだ。


「キッチンまで競争!」

「ユエ!ずるーい!」

 シャオマオは空を飛んで先に走って行ったユエを追いかける。







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