表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第六章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/236

こんな夜が来ないようにずっと願っていた

 

 歯を磨いてみんなと挨拶をして二階に行って、ユエと挨拶をして、「別々の部屋に」入った。


 初めての「ひとり寝」だ。

 この世界に目覚めてからはユエといつでも一緒に横になっていたのに。


 大人の姿なのだから


 そうだ。大人だったころは独りの部屋、一人寝が当たり前だった

 今までずっと一人だったじゃないか

 みんなが過保護すぎただけだ


 だから大丈夫。大丈夫。

 だいじょうぶ・・・・


 ベッドにもぐりこんでごろごろとしてみたが、体を動かして触れる場所全部が冷たい。

 とろとろ眠りが来たかと思えば、ベッドの冷たさで眠気がどこかへ行ってしまう。


 シャオマオを包んでくれるものが、きれいなタオルケットしかない。


 ベッドが大きい。

 一人用のベッドなのに大きい。


 この世界の人は背が高い人が大きいから、女の子用でも大きいんだ。


 ベッドの軋みはこんなに大きく響いたかな。


 一人は嫌だ。一人が怖い。


 ばっと口を押えたが、口は動いてしまった。


「ユエ」



「もっと早く呼んでくれると思ってた」

 間髪入れずに窓から声がした。


 ユエの声。


 窓枠いっぱいに、大きな体のシルエット。

 窓からゆっくりユエが入ってきた。


「シャオマオ。一人は嫌?」

 月光を背にしたユエの顔は体を起こしてもはっきりとは見えなかった。

 穏やかな声に、少しうなずいた。


「俺も嫌いなんだ」

 ベッドに近づいてくる。


「ずっと、一緒にいられる片割れを待ってたんだ。もう一人で寝なくてもいいように」

「ユエ。私の片割れ」


「そうだよ。俺の桃花(タオファ)

「私の(ユエ)


「一緒に寝よう。さみしい。助けてシャオマオ」

「うん」


 ぎゅうと抱きしめてくれるユエのやさしさが暖かい。

 ああ、そうだ。眠るのは怖くない。

 暖かい。

 気持ちいい。

 満たされる。


 ユエの体温で体が温まると、とろりと眠気がやってきた。

 二人はまた仲良く抱き合って、すうすう寝息を立てた。



 そして、翌日一緒に寝ているところをライに見られてユエは盛大に怒られることになるのだが、「窓から入った」といってさらに怒られる。


「あんな何にもない窓に張り付いて侵入するとかお前!!」

「シャオマオの部屋の防犯を考えたほうがいい」

「防犯はされてるんだよ!!お前が住人だから作動しなかったんだ!!」


 静かにケンカしていた二人の声だったが、起きたシャオマオがオロオロしている。


 ライは実は怒りながらも「もう番決定だからいいかな~?」と最近ほだされてきている。


 実際は「好きにさせてもいいのかなぁ~?」くらいには考えていたのだが、ユエの兄貴分でシャオマオのにーになのだ。二人には適切な距離を保って清い交際をしてもらいたい。


 本心は「俺のかわいい結婚前の妹に、男がべたべたするのは許せない」だったりもする。


 お兄さんは複雑なのだ。



「ごめんなさい、ライにーに。ユエを怒らないで。シャオマオがユエを呼んでしまったのよ」

 ライの腕にひしと縋りついてうるうるタオの実色と銀の星が複雑にまじりあった瞳で見上げる。


「わかった。シャオマオちゃんが頼んだのなら構わないよ。朝ご飯を食べようね」

「はい」

 可愛い。好きにさせよと言われなくても何でも叶えたくなる。

 どんな大人になるのかと思っていたけれど、想像を超える可愛さだ。

 ユエのシャツを着ているのが気に食わないのだが。



「シャオマオちゃん。もっとサラダあるよ」

「はい。ライにーに。お代わりちょーだい」

 カラになったサラダのお皿を差し出すシャオマオ。


「ライにーにのドレッシング、とても美味しいの。これ大好き」

 にこっと微笑まれてライもどきっとした。

 美しい顔にこんななにも混じってない純粋な喜びの表情を向けられて喜ばない男はいないだろう。


「ユエ。これは・・・」

「心配だ」

「心配ですね」


 スープを飲みながら、みんなが口々に心配だというが、バリバリピーマンをかじっているシャオマオは聞いていない。

 焼いたソーセージと一緒に食べると美味しいのだ。


「シャオマオ。さすがに服を作らないといけないね」

「ん?そうなの?ユエのシャツ、ちょうどワンピースみたいよ」

「んんんんん!俺に番に服も贈れない甲斐性なしにしないでくれ」

 彼シャツ、という言葉はないが、ユエは非常に「自分のシャツを着る番」にロマンを感じている。

 どきどきする。

 本人もいいと言って喜んでいるが、なんか、なんだか、ダメな気がする!!!


 しかし、番に贅沢に服を選ばせることも甲斐性のうちなのだ。

 食べるもの、着るもの、飾るもの、住むところ。

 これを満足させずに番を幸せにしているとは言えないのだ。


「シャオマオ。リリアナを呼び寄せるので好きなだけ注文するといい」

「この街の洋服屋さんじゃなくていいの?」

「うん。リリアナはシャオマオのことを知っているからね。好みがあうだろう」

 ニコッと笑う。


 本心は、シャオマオを神として無駄にあがめられないようにだ。


「ユエ。あの、その前にお願いがあってね。ちょっと髪が長すぎると思うの」

「そうだね。地面についてしまってる」

「ちょっと短く切ってほしいの」

「・・・・・・・・・・・・・・・・わかった」


 残念だ。

 ああ残念だ。

 残念だ。


 美しい銀糸を切ると、シャオマオの名残のある毛先がなくなってしまうのも惜しい。


 しかし、この長さは不便だろう。

「お姫様。どんな長さがいいか決めておいて」

「うん。もう決めてるのよ。前の髪がもう伸びて腰に付きそうだったでしょ?肩くらいまで切ってほしいの」

「・・・・・前より短いね」

 目に見えてしょんぼりするユエ。


「うん。短い?」

「短いね」

「嫌いになる?」

「ならないよ」

「似合わないかな?」

「どんな髪形もシャオマオが気に入るように切るよ」

 シャオマオも最近、ユエの扱いが上手くなってきた。


「あんまり長いと寝てるとき体で踏んじゃうの」

 照れて笑うシャオマオが可愛い。


「わかった。あとでお風呂場で切ってしまおう」

「ありがとう、ユエ」



 そして、まず束にした髪をズバッと切ってしまったのだが、あまりにもそれを持って名残惜しそうにしているユエが可愛そうで、シャオマオは「ユエにあげるよ」と言ってしまった。


 ユエに二つ目の宝物ができてしまった。



「シャオマオちゃん、どんなお姉さんになるのか楽しみにしてたのよ。こんなに早く見せてもらえるなんて、本当にうれしいわ」

 午後にはリリアナが来た。

 ユニコーンが引く馬車に乗ってきたのだ。

 それでもゆったり来たくらいだ。


 ヨコヅナは庭でまったりとリリアナが終わるのを待っている。

 さっき少ししか妖精様と話せなかった。

 ヨコヅナは聞き分けのいい頭のいい子だから、ちゃんと「待っててね」と言われたので待てるのだ。


「ヨコヅナ。ここはどうですか?」

『こんなに居心地が良い場所が人族の家の中にあるなんて驚きだ』

「ですよね・・・」

 くすっと笑うサリフェルシェリ。


『妖精様はエルフの大森林には来てくれないのかな?』

「お誘いはしているのですが、タイミングが合いませんね」

『残念だ』

「妖精様の好きにさせよとのお言葉がありました。ヨコヅナが誘ったら来てくれるかもしれませんよ」

『うむ。誘ってみよう』



「じゃあ、サイズは把握したからデザインよね。シャオマオちゃん、この中から好きな奴にまるをつけて頂戴」

「こんなにあるの?」

「もちろん。ずっと書き溜めていたのよ。私のミューズ」

 子供服のデザインは置いてきた。

 迎えに来たサリフェルシェリに身長をきいて、それに合いそうなデザインを全部持ってきた。


「5冊・・・」

「少ないわ。まあいいの。今回は好みの方向性と色が分かればいいのだから」


「ユエ。ユエ。にーにも。サリーも。一緒に選んでほしいの」

 シャオマオは選べる自信がない。


「「「もちろん!」」」


 とりあえず男たちにデザイン画の束を押し付けて、シャオマオとリリアナは二人して部屋に入って取りあえず着る服を仕立てる。


 サイズ感をきいて近いものを持ってきたので、少しつめたりリボンで調節するだけでいいものにした。

「急だから、イメージして持ってきたものになるから少しの間がまんしててね」

「ううん。とてもかわいいの」

「とりあえず、しっぽの穴をあけるわ」

 しっぽは種族や体形によって大きさや位置が変わるので、微調整は誰でも必要なのだ。

「シャオマオ。何になっちゃったんだろう・・・」


「ま。シャオマオちゃん。いいじゃない。私のしっぽ、よく見てたじゃないの」

「え!?ばれてたの?」

「うふふ。意外と人の目線ってわかるものなのよ」

「失礼なことだったらごめんなさい」

 ぺこりと頭を下げると、慌てたリリアナに止められる。


「あんなに羨ましそうに見られてて、嫌なわけないわ」


 ニコッと笑った真っ赤な唇がきれいな弧を描く。

「貴女のしっぽ。とても魅力的よ。あなたにピッタリ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ