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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第五章

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ライにーにはモテモテ

 

 ある日の放課後、先生たちの控室に向かう途中でシャオマオは衝撃的なシーンに出くわした。



「かっこいい!」

「先生!このタオル使ってください!」

「これ受け取ってください!」

 廊下を歩いていたところで女子生徒の声に運動場を見たシャオマオ。

 女子生徒に囲まれたのはライだ。

 きゃあきゃあ騒ぐ子たちから何かを受け取っている。



「ライ先生!これお弁当なんです。食べてください」

「おー。ありがとう。食べる食べる」

「先生、私が作ったんです。どうぞ!」

「もらっていいの?ありがとう」


 シャオマオは口をあんぐり開けてその光景を見ていた。

 格闘技の訓練が終わった後に汗を滴らせていたライは、押し付けられたタオルで汗を拭いたり、ドリンクやお昼のお弁当やお菓子を差し入れされて次々と受け取っている。


「す、すごくモテてる・・・・・・・」

 呆れるくらいモテている。

 どういうことだ。


 いや、ライは確かにかっこいい。

 美形と言ってもいいくらいのきれいな黒豹の獣人だ。

 学校の先生が女生徒からモテるというのもわかる。

 しかし、身近な自分のにーにがいろんな女の子からモテまくっているのを見るのはなんだか変な感じだ。



「シャオマオ!」

 圧倒されてぽかんと運動場を見ていたところでシャオマオを見つけたユエが走ってきた。


 とびきりの笑顔を浮かべたユエはライの格闘技の相手をしていたのだろう。

 同じように汗をかいているがこちらも相当キラキラと輝く美形の虎獣人だ。


「シャオマオ。どうしたの?なにかあった?」

「あ、あい。これ、サリー先生に」

 今日の課題を時間がかかってしまったが終わらせたので提出しに来たのだ。

 シャオマオの書き取りはとても丁寧で美しいのだが、時間がかかってしまうのだ。


「じゃあ、控室に行こうね」

 すかさず手をつないできたユエの手をポンポン叩いて合図する。


「・・・ユエせんせ?手をつないじゃダメよ?」

「どうして?」

「学校だからよ?」

「??」

「他の子ともする?」

「しないよ?」

「だからよ?」

「???」

「もう!とにかくだめなのー」

 手をぶんぶんふるが、ユエはにこにこしたまま手を離さない。


「騒がしいと思ったらユエ先生とシャオマオさんでしたか」

 控室の扉が開いてサリフェルシェリが顔をのぞかせる。


「サリーせんせ!これ、渡しに来ました」

「はい。確かに」

 サリーは書き取りのノートを受け取って、中身を簡単に確認した。


「シャオマオさん、どうかしましたか?」

 シャオマオがちらちら運動場を見ているので、サリフェルシェリも目線の先を追う。


「あれ、あれ、すごい・・・」

 指さす方向には、女子生徒に囲まれるライがいる。

 獣人の女の子と人族の女の子が同数、いや、獣人の女の子がやや多いように見える。


「ああ。ライ先生は生徒に人気ですからね」

 サリフェルシェリはにこにこと笑ってから、シャオマオのノートを採点しに控室に戻っていった。


「ユ、ユエは?ユエせんせも人気?」

「シャオマオ?」

「うぅぅ。ユエ、ユエせんせも、おにゃのこに、なにかもらったり、かっこいいとか言われてるの?」

「・・・気になる?」

「あう・・・」

 しゃがんで目線をシャオマオと合わせたユエは、にこっと微笑んだ。


「シャオマオ。俺を信じて。決してシャオマオが不安になったり、心配するようなことはしないよ」

 握った手を安心させるようにトントンしてくれる。


「シャオマオに言うまでもないかと思って黙ってたんだけど―」

 ユエはライと違ってわかりやすい人ではないけれど、とてもきれいな虎獣人ではあるので同じように人気があったらしい。


 しかし、女の子にも男の子にも同じように接して、決して表情を崩すこともなければ特別扱いもしない。何かを受け取ることもない。もちろん渡すこともない。

 挙句の果てには「番がいる」と明言しているので女の子は去ってしまったということだった。


 番を裏切らない。

 番以外に目を向けない。


 獣人であれば身近で見て知っているものもいるし、人族でも誰もが知ってる有名な話だ。

 なによりも確実な断り文句である。


 そして、そんなユエが笑顔を見せる相手が「妖精様」だけなのだから勝ち目などないと、ユエの人気の火は早々に鎮火した。


「そっか・・・」

「安心した?」

「あい」

 シャオマオがこくんと頷くのを見て、ユエはとろけるような笑顔を見せた。


「嬉しい」

「どーして?」

「シャオマオが俺のこと気にしてくれて嬉しい」

「あう」

「シャオマオが俺のことで悩んでくれて嬉しい」

「うう」

「シャオマオが可愛く嫉妬してくれて嬉しい」

「きゃあ!」

 シャオマオは顔を真っ赤にして走って逃げた。


「待って待って。シャオマオ。逃げないで」

「いやー!おうち帰るー!」

「シャオマオ。帰るなら一緒に帰ろう」

 きゃあきゃあ言い合って、走っているシャオマオを難なく抱き上げたユエ。


 そんな二人をたくさんの女子生徒が遠くから見守るように見つめていた。

「・・・尊い」



 確かに「番がいる」といった途端にユエの人気はライに比べると低くなったが、実は「ユエ先生と妖精様の恋を見守ろうの会」というものが発足している。


 番を得られるのは数少ない獣人のみである。

 本人は「運命の番だ」といってはばからない。

 しかも、相手は妖精様だ。

 驚くくらい美しい容姿の子供。

 そんな妖精様を守る美貌の虎獣人。

 大人の男性と子供の恋(?)

 思春期の女の子が憧れるのに十分な要素を満たしているのである。



「ライったらね、デレデレしちゃって。モテモテなの!すっごいのよ?」

 ぷりぷりと怒っているのか自慢しているのかわからないような言い方のシャオマオ。


「そうですか。ふふふ」

 話を聞いていたジョージ王子は今日も窓からやってきたシャオマオの話し相手をしている。


 ジョージの病を癒してから、シャオマオは大きな虎に乗って療養棟から自室に戻ったジョージを幾度となく訪れるようになった。


 ジョージは現在、食欲も出てきてどんどん体力を回復してきている。

 ベッドに上半身を起こしたジョージは今日も顔色がいい。


 シャオマオが遊びに来たら、必ず美味しいデザートやお茶をウィンストンがすかさず準備してくれる。

 何故か訪れることが分かっているように準備万端なのだ。

 今日はチョコレートケーキとミルクティーだ。


 虎のユエはシャオマオの足元にごろごろして大あくびをしている。

 ユエもユエで王城に来るときには人型ではなく虎姿になる。

 理由は教えてもらえないけど「なんとなく」ということだった。


「おにゃのこからね、食べるものとかいーっぱいもらうのよ?ぜーんぶもらうの!」

 口の周りにチョコレートをつけたまま両手を広げて「いっぱい」を表現するシャオマオをみて、くすくす笑うジョージ。


「外で女子生徒にモテるお兄さんをみて驚いたんですね」

「あい・・・」


「シャオマオ。心配しなくてもお兄さんはお兄さんですよ。変わりません」

 ジョージはにこにこしながら話してくれる。


「たくさんの顔があるのが人です。ダニエル王も「王」としての顔と私の祖父の顔があります。まあ、ダニエル王はいつでも基本的に「王」を優先していますが」

「おーさまの顔とじーじの顔・・・」


「はい。他の人が見られない、入ることができない「家族」という枠にシャオマオはいます」

「そうだ!家族だ!」


「ええ。まあ、結婚という制度がありますので、女の子のうち一人は家族にはなれるかもしれませんが、兄妹にはなれませんからね。羨ましいと思われているのは案外シャオマオかもしれませんね」

「そっか。もうシャオマオはもらってたのね」

「そうですよ。心配しなくてもいいのです」

「あい。ジョージありがとう」


「シャオマオ様、こちらを」

「ありがとう、ウィンストン」

 口の周りを拭いて、帰る準備をしたらすかさずウィンストンがお土産のケーキボックスを差し出す。


「またね!ジョージ」

「ええ。いつでも。待っています」



 家に帰ったシャオマオは、食後のデザートをライと分け合って食べたが、ユエは珍しくあまりうるさく言わなかった。


「そっか~。シャオマオちゃん嫉妬してくれてたんだ~」

「もうしないもん」

「そうなの?」

「こうやってにーにと一緒に住んで、一緒にご飯食べてるんだもん。シャオマオ幸せよ!」

「なんていい子なんだ!!さすが俺の妹!!」

 抱き着こうとしてきたが、ユエがさっとシャオマオを抱き上げた。


「抱き着いてもいいとは言っていない」

「なんでお前の許可がいるんだよ!」

「俺の番だからだ」

「まだ番じゃないだろ?」

「同然だ!」


 いつものケンカで今日も平和に終わるのだった。

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