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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第五章

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災難に先触れはないのだった

 

 今日は一週間のうちの「日曜日」のような日だ。

 商店でもお休みをとる人は多く、のんびりした雰囲気である。


 シャオマオたちは朝食の後片付けを終えて、リビングで暖かいお茶を飲みながらくつろいでいるところだった。


 ユエはゆったりとモコモコの敷物の上に横になり、座って交換日記の返事を読むシャオマオの背もたれになってあげながらしっぽでシャオマオの顔をすりすり撫でたりして遊んでいる。


「こんにちは!どなたかいらっしゃいませんかー!」

 門扉のあたりから若い男の声が微かにして、シャオマオは交換日記を置いて玄関に向かおうとした。


「シャオマオ。だめだよ」

「う?」

 一歩目が床につく前にユエに緩やかに体をすくい上げられた。


「ユエ。()()()()()って聞こえたよ?」

「うん。まずはライかサリフェルシェリに出てもらおうね」

 ユエの腕の中できょとんとするシャオマオに、ユエはにっこり微笑みながら答える。


「サリーが応対してまいりますので、シャオマオ様はお待ちくださいね」

「あーい」

 しゅぴっと手をあげながら返事するシャオマオに「かわいらしい、かわいらしい」と言いながら、サリフェルシェリが玄関に向かう。


「のーしてシャオマオはだめなの?」

「ん?急にシャオマオみたいにかわいい子が現れたらみんなびっくりするからね」

 ニコニコしながらユエはシャオマオの顔をすりっと人差し指の背で撫でる。


「だから、俺たちの誰かが必ず()の相手をするし、ないとは思うけど俺たちがいない一人のときには誰か来ても出なくていいからね」


 シャオマオは(まあ全然知らない人が妖精に会いに来てたら危ないもんね)と人攫いなどを用心しているんだろうと納得して返事をしたが、「本当にわかってる?」と何度もいろんなシチュエーションで返事をしてもいいかどうかの練習をすることになってしまった。


 玄関の向こうから「リリアナが遊びに来た」と言われても鍵を開けてはいけないし、ユエの友達を名乗る人が来たら、返事をしないで部屋に逃げないといけないらしい。

 何故なら「そんなもん俺以外にいないからな!」とライがゲラゲラ笑いながら理由を教えてくれた。


 この家には当然のように魔道具の備えがしてあるし、今でもシャオマオの体には魔道具のお守りがたくさんつけられているのでめったなことにはならないはずだが、用心するに越したことはない。


 因みに、この星には電話がないので急に人が遊びに来ることはあまりない。

 すれ違いを避けるために「いついつ遊びに行ってもいいですか?」というような手紙が前もって来ることが一般的だ。



「あ!サリー。お客さんは?」

「帰られましたよ」

 サリーはシャオマオにニコッと笑顔を向ける。


「お客さんどんな人?だれに会いに来たの?」

 シャオマオは初めてこの屋敷にやってきたお客さんに興味津々だ。


「お手紙をサリーに持ってきてくれた人でした」

 サリフェルシェリの手には、きれいな縁飾りの描かれた真っ白な封筒があった。


「サリーにお手紙!鳥族の人?玄関から来たの?!」

「いえいえ。鳥族ではなく人族の配達人さんです」

 配達といえば鳥族。シャオマオは玄関から声をかけてくる鳥族なんて初めてだ!と感動したが、そうではなかったようだ。

 ライがお腹を抱えて笑っている。


「鳥族がこの家に玄関からくるはずないじゃん!」

「ライがいつも怒ってるから、玄関からくるようになったのかと思ったの~」


 シャオマオはこの星に来た時から鳥族に触れているので「配達といえば鳥族」と、そのほかの手段を知らないくらいだが、本来の鳥族の配達は実は高価な手段だ。


 鳥族は依頼しても「今日はそっちの風は楽しくなさそう」なんて理由で断るし、料金も基本的には言い値のようなものなので同じルートで同じ荷物でも前回と料金が違う、なんてことも頻繁にある。

 というか、基本はあるというのがこの星の常識だ。

 鳥族相手にそんなことでいちいち文句を言う方が時間の無駄なのだ。


 そのかわり地上ルートの配達人に頼むのと比較にならないくらい早く安全で、頼んでしまえば配達は確実なので重要な用件の場合は利用されている。


 最近では「妖精様ルート」と鳥族に呼ばれている飛行ルートが何本かあり、そこには「妖精様に会いに行く口実」のために通りかかりに頻繁に鳥族が訪れて「なにか妖精様に用事はないか?」と催促されるシャオマオの知り合いたちの拠点がある。


 そのおかげで近隣住民は急ぎの用事があれば鳥族に依頼しやすくなり、シャオマオはお友達になった人やユニコーンたちの様子を見てきて報告してくれる鳥族が遊びに来てくれるので喜んでいるし、シャオマオが喜ぶので鳥族が遊びに来ることは保護者達に許され、ドワンゴやリリアナからは頻繁に貢物が届き、シャオマオの衣裳部屋が別に作られたことをシャオマオ本人よりも保護者達は喜んでいるのでみんなが幸せだ。


 今日はリリアナの会心作「猫耳カチューシャ2」をつけて髪を編み込みにしてもらっているので、なんだかライやサリフェルシェリまでシャオマオを見てデレデレしているような気がする。


 2はカチューシャ本体を軽くて柔らかく、締め付けの少ない素材に変更した(ドワンゴが)。

 長時間の装着を可能とし、髪と一緒に上手に編み込むと多少動いてもずれないようになっている。


 もちろん耳の部分はシャオマオの髪色にするためにリリアナが使った後の祝福のタブレットの染料で染められており、見た目にも1の試作品より真に迫っている。

 今は3を鋭意作成中なのらしい。

 サリフェルシェリがたっぷりと祝福のタブレットの染料をリリアナに送っていた。



「それで?サリフェルシェリ。なんて書いてあるんだ?」

 ライが聞いてみると、サリフェルシェリは読んでいた手紙から顔をあげた。


「そうですねぇ。先触れではありますね」

「先触れ?」

 ユエが反応した。


「誰がなにをしにここに来るんだ?」

「この中央エリアの王が、シャオマオ様に会いに来たいと言っています」

「却下だ!」

 ユエは瞬時に拒否したが、サリフェルシェリは眉をちょっとだけ下げた。


「シャオマオ様はいかがですか?王様に会いたいですか?」

「う?おーさま?」

「シャオマオに聞くな!卑怯だ!」

「いや、シャオマオちゃんに来た先触れだろ?答えるのはシャオマオちゃんじゃないと」

 ユエはライとギリギリとにらみ合う。


「おーさま、妖精になにかしてほしいのかな?シャオマオできるかな?」

 シャオマオが可愛く首をかしげてその場を和ませた。


「シャオマオに会いに来るなんてそれが目的に決まってる!」

 ユエはシャオマオを抱き上げてすりすりと頬ずりしたが、サリフェルシェリはそんな二人をため息とともに見る。


「そんなに『妖精であること』にとらわれないで大丈夫ですよ、二人とも」

「う?」

「人族の王はサリーも会ったことがあります。まだ小さな王子の頃でしたが割と常識的な子でしたので気軽に妖精様に何かお願い事をしに来るわけではないと思いますよ」

 サリフェルシェリはにこにことシャオマオに告げる。


 サリフェルシェリは医療発展のために中央に滞在し、エルフ族の薬学を薬師相手に教えていたことがある。

 その時の功績でサリフェルシェリの名前は中央では有名だし、割と自由にできることが多い。


 その際にエルフの大森林からついてきたのがエリティファリスだ。

 サリフェルシェリは移動しては星や生き物を見て回ることが好きだったので、しばらくするとエリティファリスに後を任せてまた旅に出たのだが、持てる知識をすべて教え切った後、エリティファリスは何故か子供のための学校の長になっていた。


 理由を尋ねたら、「子供のころから教育し、公衆衛生の分野を発展させれば人族全体の寿命が延びると思ったので」とのことだった。


 そのおかげで他種族に比べて「弱い」「短命種」と言われていた人族も、医療制度が充実し、栄養状態も良くなり病が減ると、生活が全体的に向上して平均寿命が長くなり始めている。



 そんな人族に多大なる貢献している二人のエルフ族が崇め奉る「妖精様」に、人族の王が不躾に何か願うためだけにここに来るとは考えていなかったサリフェルシェリだったが、後日、目立たぬように質素な馬車に乗って現れた人族の王が自己紹介の後、数人の従者とともに庭先で芝生に額づけて「妖精様にお願いがございます!!」といきなり土下座した時には気が遠くなった。


 因みにライはそんな王たちの姿を見てイライラするユエにシャオマオを抱かせて家の中に入ってしまい、庭先には土下座する一団と、頭を押さえるサリフェルシェリしかいなかったのだが。


「王よ。立ちなさい。まずはシャオマオ様と友人になりましょう。話はそれからです」

 サリフェルシェリは王たちを家に招き入れた。

なかなか更新ストック分がたまらない状況です。

ブックマークをして待っていただけると嬉しいです('ω')ノ


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