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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第四章

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温泉を楽しもう

 

「ユエがもうちょっと復活するのに時間がかかるから、その間に遊んでいようね」

「そんなに具合が悪いの?もう帰るほうがいいのかな?」

 ライが戻ってきてシャオマオに説明したが、そんなことを言われたら気にしないわけにいかない。


「いや、大丈夫なんだ。幸せをかみしめてるだけだから」

「それはまあ・・・。幸せでしょうね・・・」

 サリフェルシェリがさもありなんという顔をしているが、何故のぼせて幸せなのか、シャオマオにはわからない。

「う?そんなに温泉好きだったのね」

「うん。だからシャオマオちゃんゆっくり待ってよう。次は壷風呂とかどう?」

「つぼ?」

「そうそう。大きな壷に一人ずつ入れるんだ」

「いくー!」

「よし。じゃあ行こうね」


 素焼きの大きなタコつぼのような入れ物に、パイプからどんどんかけ流しの源泉が注ぎ込まれている。

 そこに一人ずつ浸かることができるのだが、シャオマオ一人では立っても溺れそうな大きさのためランランに一緒に入ってもらった。

 二人が入るとお湯はざばっと流れるが、かけ流しのお湯がどんどん注がれてずっと満タンだ。

「わわわ。すごい!本当に壷だ!壷にお湯がいっぱい!」

「面白いね。これ狭いのがいいね」

 ランランは壷から肩と足先を縁にかけて出してくの字になって、お湯に沈んだおなかにシャオマオをのせている。

 二人ではそんなにぎゅうぎゅうというわけではないが、深くて狭い壷の中でなんだかずいぶん落ち着くのだ。

「猫だから・・・?」

 シャオマオは猫が狭いところにぎゅうぎゅうに詰まる性質を思い出していた。

「じゃ、シャオマオももうすっかり猫族の子供ってことよ」

 ランランの言葉が嬉しくて喜ぶ。


「シャオマオ。猫は例え人に身近な家猫であっても、人にはコントロールできない野性味を一番残している生き物なんだ。見た目がかわいくてもそのほかの生き物とは全く別だ。それが大型の虎や豹となったら家猫とはくらべものにもならない野生の凶暴性を残している。お前はその虎の子なんだ。野生を忘れるなよ」

 ダァーディーはとなりの壷にぎゅうぎゅうに詰まって頭の上からちょろちょろ流れる源泉に目を閉じて、ほにゃほにゃの顔をしてリラックスしている。

「猫だ・・・」


 シャオマオはふと気になっていたことを聞いてみた。

「ねえねえ、ぱあぱはどうしてずっと半獣姿なの?」

「ああ。体内魔素が多い実力者であるのがわかりやすいし、獣人の長やらなんらかの役についているやつは半獣の姿でいるやつが多いな。自分の獣性を誇りに思っているからこそだ」

「人の姿にはならないの?」

「必要があればなるよ。身分を隠す旅に出た時とかな」

「ど、どんなお顔なのかにゃ?」

「男前だぜ?お前の片割れよりもずっとおっとこまえだぜ!」

 がははと笑うダァーディーは、人型になって見せてはくれないようだ。


「サリー。サリーはぱあぱのお顔見たことある?」

「ええ。ありますよ」

 湯着で色っぽさが増しているサリーがにっこりと微笑む。

 普段の女性のような柔らかい美貌も相まって、性別不詳の美人になってしまっている。


「いいな!いいな!かっこよかった?」

「そうですねぇ。かっこいいかどうかは主観によりますが、シャオマオ様は気に入ると思いますよ」

「そうなの?!サリーはシャオマオの好きな見た目わかるの?」

「まあ、整った顔が好きなんだなというのはわかりますよ。ユエの見た目も好きですよね」

 ぼぼぼっとシャオマオの顔が赤くなる。


「は、はずかしい・・・」

「どうしてですか?片割れの見た目が好みなのはよかったではないですか」

「だって~」

「どうして恥ずかしがるんだ?ユエの見た目が好きだってことは幸せなことだろう?」

 レンレンが真っ赤な顔を隠すシャオマオに不思議そうに声をかける。


「シャオマオがユエをかっこいいと思ってるの、わかっちゃうの、なんだか、はずかしいのん」

「でも、よく言わされて白状してるね?『ユエかっちょいい』って」

 ランランも不思議そうな顔をする。


「ユエの、見た目、すごくきれい。あんなにきれいな人、見たことない。ドキドキ」

 顔を隠したまま、シャオマオがとつとつと話す。


「目がね、本当にきれいなの。ずっと見ちゃうの。ユエのこと、あんまり見ちゃうから、見ないように気を付けてるのに・・・」

 ふるふると恥ずかしさに震えるシャオマオ。


「シャオマオちゃんがユエの見た目も好きだって思ってるのは、みんなわかってるよ」

 ライがほほえましいものを見るように、にっこりというもんだからシャオマオの繊細な心に衝撃を与えてしまった。

「み!みんな!?」

「まあ、皆わかっておりますね」

 シャオマオに聞かれたサリーも認める。


「ひ!」

「ひ?」

「ひぃいいいいん!」

 シャオマオが小さく小さく丸まって、ぐりぐりとランランのお腹に顔を押し付けて真っ赤になってるのを隠す。心臓があんまりどきどきするものだから、周りの声ももう聞こえなくなってきた。


「あやー。まんまるになってしまったよ」

「そんなに恥ずかしいことなのですかね?」

「シャオマオちゃんの感覚は、番のない人族に近いのかもしれないな」

「あれだけ人前でいちゃいちゃしてるのに、今更ではないか?」

「俺の娘は面白いなぁ」


 気になった人にはストレートに好意を表現して、番ともなれば何が何でも自分のものにしようとする一途(?)な獣人には、相手の見た目がどうであろうと基本は関係ない。

 もちろん、見た目の美醜の感覚はあるし、好みもある。それでモテるというのももちろん人族と同じようにあるが、番ともなれば美醜や好みを超えたところで相手のすべてが好きになる。

 どうでもいいとは言わないが、自分にとっては番の存在自体が最高に好ましく見えるものなのだから、実際の美醜や好みを振り切ってしまっているのだ。


 番ではなく、強いものに単純に惹かれるという獣人特有のモテもあれば、先ほどのナンパのように見た目で人族にモテる場合もある。

 まあ、いつものメンバーはそれを自分でもわかっているので「見た目がいい」と言われることは特に気にもしていないことだ。基礎的な部分は自分ではどうにもできないものなので、気にしてもしょうがないくらいの感覚である。

 強い獣性をもっているので、単純に強さに好みのベクトルを振り切っているせいもある。


 サリフェルシェリに関しては、自分の見た目の良さを知っていて、利用できるものとして使っている場面もあるが、それはまだシャオマオには見せていない部分ではあるようだ。


 見た目はいいとして、必ず惹かれてしまう番の中身、性格についてはどうなのかというと、どうしても好きになってしまう以上、番に対しては性格も問わない。

 どうしても「自分とあわない」と普通の出会いでは思ってしまうような相手であっても、番であれば大事にせずにはいられない。

 善悪の判断や好みもあるので、「自分に合う」番であればさらに好ましいと思うし、尽くしたいと思うものだが、どうしても惹かれる以上は合わなくてもしょうがないものとして受け入れるしかないのだ。


 浪費家の人族を番にして、貢いで貢いでぼろぼろになる獣人がいないわけではない。

 それくらい番は自分より価値を上に置いてしまうものなのだ。



「どうしたの?誰かに何かされた?」

 くるんと丸まったままのシャオマオを持ち上げたユエ。

 心配そうにシャオマオをひっくり返して顔を見ようとしたが、シャオマオはぎゅっと丸まったまま赤い顔をして目をきつく閉じている。

「ライ。シャオマオはどうしたんだ?」

「うーん。羞恥に悶えているらしいよ」

「どういうことだ?」

「これ以上、お前を喜ばせることを言うと、気絶するんじゃないかと心配だ」

 真顔でいうライに、ユエは口の片方をくっとあげて、色気のある顔で「そうか。これ以上喜ばせることを言ってくれるのか」と、シャオマオを抱きしめた。


「かわいい俺の桃花(タオファ)。顔が真っ赤だよ?のぼせないようにお水を飲んで」

 飲める冷たい温泉水をコップで持ってきて近くのテーブルにセッティングしてくれていたので、シャオマオは素直に運ばれた椅子に座った。


「ねえ。シャオマオは何が恥ずかしかったの?」

「しらにゃい・・・」

「そうか。じゃあにらめっこで勝ったら教えてもらおうかな」

「やーよ。目をそらしたら負けでしょ?シャオマオ負けるもの」

「可愛い桃花(タオファ)の笑顔に俺が負ける可能性もあるよ」

「だめ。シャオマオ勝てる気がしないの。ユエったらきれいでしょ?ドキドキするもの」

 くぴくぴと温泉水を飲んで気が抜けたのか、ユエを褒めたことを気づかないシャオマオ。


「そうか、シャオマオは俺のことずっとドキドキしてるんだね」

「そうよ?」

「顔も、体も、あんまり見てくれないものね」

「う。じっとみるの、()()()()よ」

「そう?俺はシャオマオに見られるなら嬉しいよ。どこを見ても触ってもいいのに」

「人にさわらせるの、だめよ」

「俺の可愛い桃花(タオファ)だけだよ」


「さっきまで興奮して鼻血だしてた男とは思えんな」

「この星が滅ぶ時も二人はこのままでしょう」

 うっとりした顔でシャオマオの頬をつつくユエをみて、みんなはため息をついた。



飲める温泉水の効能は、美肌です。

泥風呂と合わせて飲むと効果てきめんらしいです。

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