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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第四章

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犯人は、〇〇!

 

 学校に行くことを決めたシャオマオのため、他にも避難という意味もあって人族の比較的裕福層が多い地域に家を買うことができた。


 連日シャオマオを連れて町中を散策して、シャオマオが好きそうな場所をいくつかピックアップして、ルルさんの宿のような、暖かい雰囲気の上品な家を買うことができた。


 ライとユエが最初はシンプルにと考えてくれたようで、内装工事も最低限。「シャオマオの好きなようにどんどん作り変えて行こうね」と言われて案内された家の前にはダァーディーとレンレン、ランランの姿があった。


「シャオマオ!」

「ぱあぱ!にーに!ねーね!」

 3人にぎゅうぎゅう抱きしめられる。


「会いたかったよお」

「ねーねも会いたかったよ。またちょっと大きくなったね」

「うんうん。髪もまた伸びた?おねえさんになったよ」

 双子に両方から抱きしめられてシャオマオは笑顔になる。

「なかなかいい家じゃないか、ユエ」

「ダァーディーたちの泊る部屋もある」

 ダァーディーとレンレン、ランランがここを拠点にするには少し不便だ。

 たまに泊りに来てもいいようにゲストルームを整えた。


 サリフェルシェリは居座る気満々だったので、一部屋準備されている。

 ユエとシャオマオは一応、部屋を分けられた。

 ギルドの部屋でも言い争いになったが、シャオマオが少し大きくなってきて学校にも通うということになったのだからと、ユエは以前よりすんなり納得した。


 その代わり、シャオマオがさみしいと言ったらすぐに一緒にいられるようにと部屋を隣同士にして、壁に扉をつけた。

 まるで新婚の夫婦の部屋のようになってしまったとライは思ったが口には出さなかったし、シャオマオの部屋の扉にだけ鍵をつけた。

 何かあればユエは扉じゃなくてもどこからでもシャオマオの救出に行くことができる。それこそ壁をぶち抜いてでも。


「ここ、シャオマオのおへや?」

「そうだよ。一番日当たりのいい部屋にしたんだ。勉強できる机と、家具はシンプルなものでシャオマオが好きそうな長く使えそうなものを選んだよ」

「ユエすごい!どうして私の好きなものがわかるの?」

 シャオマオは机に走り寄った。

 すべすべの木の手触りを楽しんで、うっとりとしている。


 シャオマオが好きなもの、きらきらと目を輝かせるものはユエは一目でわかるようになった。

 我慢しているわけではないが、自分の気にいるものが手に入るものだと思っていないようだ。

 何を見ても欲しいとは自分から言わない。

 与えられたものを受け止める。

 ただ、注意深く観察していると、きらきらとした目で見ているものがある。

 ユエはそのきらきらした目を見るのが好きだ。

 シャオマオの周りがすべて、シャオマオがきらきらとした目で見たもので囲まれていればいいと思う。

 その中に、自分も入っていればいい。


「ユエ。ユエの部屋も見せて」

「構わないよ」

 シャオマオと手をつないで、続き扉の鍵を開けてユエの部屋に入る。

 最低限の家具。

 いつも見るようなシンプルな部屋。

「おっきいベッド」

「これだけは、半獣姿でも寝られるように大きくしてもらったね」

「半獣・・・なるの?」

「シャオマオは虎と寝るのが好きだからね」

「あい。すき」

「シャオマオは、人姿の俺と寝るの、ちょっと恥ずかしいんだよね。どうしてだろう?」

 ユエはゆったり問いかける。

「わかんにゃい」

「んー。ちゃんと教えてほしかったけどなぁ。無意識なんだろうけど、シャオマオは虎の時にはキスを自分からたくさんしてくれるんだ」

「え!?」

「やっぱり気づいてなかった?」

 シャオマオが力いっぱい顔を横に振る。


「いつもいつも、愛おしいものを見る目で見つめて、撫でて、顔を寄せてくれる」

 ぼぼぼっとシャオマオの顔が赤くなる。

「そうやってシャオマオが俺の顔を抱きしめたり、キスしたり齧ったりするたびに、俺はシャオマオを抱きしめたくなるんだ。でも虎の体ではうまくできないからね。だから舐めちゃう。シャオマオが俺の虎姿を愛してくれて俺は本当にうれしいんだけど。ちょっともどかしいよ」

「あう」

 ユエがシャオマオを舐めてしまうのは、シャオマオのせいも一部あったようだ。


「人の時には恥ずかしがっているのに、虎だと安心してるみたい」

「う、うう。ふわふわで気持ちいいんだもん」

「そうだね。ブラシをかけるのも好きだものね」

「あい。ちょっときらきらしてる毛があってね。ぶらちするともっときらきら。つるつる。すっごくきれい」

「半獣姿になったら、シャオマオも満足できるし、俺も満足できるんじゃないかなと思ったんだ」

「あ、あ、あのね、あの」

「ん?」

「シャオマオね、ユエの人の姿、嫌いじゃない。好きなの」

「そうなの?」

「あい。す、すき。でもね、ユエ、あの、きれいなの。虎の時も、きれい。でも人のとき、すっごくきれいでね。ドキドキすごくしちゃうの」

「ドキドキ?こわいの?」

 ユエはフフッと笑いながら聞く。

 これは分かってて聞いているんだとわかるが、シャオマオは必死に自分の気持ちを説明しなければと言葉を紡ぐ。


「怖くないのよ。あんまりきれいでね、どきどき。シャオマオの、片割れがきれいで、どきどき」

「シャオマオも、きれいだよ。俺の片割れがこんなに素敵な女の子ですごく嬉しい」

 ユエはシャオマオのわきに手を入れて持ち上げると、そのままベッドに倒れた。

 シャオマオは持ち上げられたまま『ひこうき~』といって手を広げたが、ユエには飛行機がわからない。

「シャオマオ、素敵な俺の片割れ。俺の番。愛してる」

 シャオマオは、これ以上なれないというくらい真っ赤になった。

 手で顔を隠す。

「うれちい」

 顔を隠したまま、小さな声で呟く。


「まだ小さいからね。シャオマオの愛してるがもらえるまで待てるよ」

「う?」

「シャオマオが大人になるまで待てる」

 ユエが自分に言い聞かせるように言うので、シャオマオも気になって、指の隙間からちらりとユエの顔を覗いてい見たが、さらに真っ赤になる結果となってしまった。

(こんな、私相手にこんな顔しちゃうのか)


「さあ、シャオマオ、リビングに行ってダァーディーたちの話を聞いてみよう」

「あ・・・あい」

 起き上がってシャオマオを立たせようとしたが、シャオマオはのぼせたようにふにゃふにゃだったので「シャオマオ可愛い」と抱き寄せられて、顔のあちこちにキスされてしまった。



 リビングは懐かしいユエのゲルのように、敷物がたくさん敷かれてふわふわになっていて、みんなが車座になって座れるようになっていた。

「ここはお客様を迎える部屋ではなくて、くつろぐ部屋として用意したんだ。猫族式だよ」

 ライが嬉しそうにみんなにお茶を配る。

 シャオマオも、ふわふわの毛足の長い敷物に、ユエのゲルを思い出す。


「ユエのゲルみたい・・・」

「懐かしい?」

「あい。あそこがね、一番安心できるの」

「うん。長い休みの時は帰ろうね」

 ユエがシャオマオを膝にのせて抱き合っていると、ライがお茶を差し出した。

「さ、二人でいちゃいちゃしてるところ悪いけど、ダァーディーたちの話を聞いてあげてくれ」

「あい!」


 ダァーディーとレンレン、ランランはしばらくの間あの若いダンジョンを見張った。

 地震はなく、魔素が強くなることもなかったため、またダンジョンに潜ってくまなく変化を探したそうだが、特に大きな違いは見つからなかったそうだ。


「ただ・・」

「ただ?」

 レンレンの言葉にサリフェルシェリが反応する。


「なくなってたんだよね。毛布」

「もうふ?」

「うん。シャオマオが気に入って使ってたあの毛布だけテントからなくなってた」

「シャオマオのもうふ・・・」

「それ以外は全部持ってこれたんだけどね」

 リビングの端に積み上げられた箱には、みんながあの日おいてきた荷物が全部引き上げられていたらしい。ドラム缶風呂などは置いてきたらしいが。


「シャオマオの、香りのする、毛布が盗まれた。・・・・犯人は変態!」

 ユエの髪がゆらゆら揺れる。

「ちょっ!魔力圧力!ユエ!」

「シャオマオちゃん!」

 みんながシャオマオに助けを求めたので、シャオマオはユエに抱き着いて暖かい気持ちを流す。


「ユエ。大丈夫よ。大丈夫。シャオマオの毛布は虎さんの毛皮があればいいのよ」

「シャオマオが変態に狙われているなんて!大丈夫じゃないよ!?」

「ユエ、ユエ、大丈夫。シャオマオ知らない人についていかないよ?」

「シャオマオにもっとマーキングしておけばよかった・・・」

 これ以上マーキングしたらシャオマオに獣人の友達ができなくなってしまう。

 ほとほと涙を流して悲しむユエはシャオマオに任せて話を進めよう。

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