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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第四章

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さて、学校はいかが?

 

 テーブルに乗っていた、驚くほどの料理はほどんど3人の口に入った。

 本当に牛一頭くらいなら3人で食べつくしてしまうのでは?というくらいの食欲だった。


「ううう・・・たべすぎたよぅ」

「シャオマオ、大丈夫?」

 ユエの膝の上でぐたりとしたシャオマオ。

 3人の食欲に触発されて、シャオマオも普段よりも食が進んだのだ。

「消化の薬を出しましょうか?」

「あうう。サリーありがとう」

 サリーは懐の薬ケースから、丸薬を出してユエに渡す。

「自分で飲める?飲ませようか?」

「ののののめる!」

 ぽいと口に放り込んで、慌てて水で流し込む。


「シャオマオが食べすぎるなんて珍しいね」

「うん、いつもよりいっぱい食べちゃった。家族とご飯って思ったら、嬉しくて」

 自分でもおかしくなって、くすっと笑いながら照れるシャオマオ。



「シャオマオちゃん・・・」

「シャオマオが望めばいつでも番登録をして本物の家族になれるよ」

「まだ未成年だといってるだろうが」

 ぐいぐい迫ってくるユエの襟首を、ライが掴んで引き下げた。


「シャオマオちゃん。今日は食休みしたらお風呂使って早めに寝るのがいいよ」

「あい。そうする」

 実はすこーし目がとろんとしていたのがばれていたようだ。

「風呂で眠ってしまっては危ない。シャオマオ一緒に入ろう」

「それはだめ~。シャオマオ、おにゃのこだから」

「でも・・・不安だ」

 ユエの不安は本当に純粋な心配だと思うのだが、シャオマオはまだ自分の昔の意識を完全に手放せていない。自分の体が幼児であるので邪な気持ちを抱かれることはないとは思っているが、男の人とお風呂に入るという感覚が恥ずかしくてしょうがない。


「ま、それは二人でよく話し合って。チェキータなら呼んだらすぐ来てくれそうだけど」

「う?どうやって呼ぶの?」

「ん?チェキータ達からしょっちゅう羽もらってるだろ?」

「あい」

「それで通じるよ」

「ひょ!」

「あはは!何その返事」

 ライはお腹を抱えてはははと笑っているが、シャオマオはびっくりして眠気がどこかに行ってしまった。

(そうか、あんなによく羽をくれていたのはそういう意味もあったのか)

 単純に鳥族が自分の好きな人に、自分のきれいな羽をプレゼントするのが好きなだけでもある。


「シャオマオの宝箱、今ないの」

「まあ、呼ぼうと思ったら俺達でも呼べるから大丈夫」

「でも、今日はねぇ、シャオマオ一人でゆっくり入りたいの」

「お。シャオマオちゃん大人になったねぇ」

 ライはにこにことして頭を撫でてくれる。

 たぶん、レンレンとランランが一人で入るといった時も、こうやって喜んでいたんだろうと思う。


「せっかくの『猫脚のバスタブ』だもん。『映画の女優さんみたいに』入りた~い!」

「おお。久しぶりのシャオマオ様の不思議な言葉。早く私も教えていただきたい」

「まずはこっちの言葉を話せるようにならないと、教えるのは無理だろうな」

「まあ、『ひらがな』と『カタカナ』は覚えましたから」

「相変わらずの学習意欲だな」

「生きている限りは新しいことをどんどん吸収したいですね」

 サリフェルシェリは湖面の瞳をキラキラさせながら語っている。


「おべんきょう?シャオマオも好きよ」

「!!」

 ユエがびっくりした目をしてシャオマオを見つめる。


「多分ねぇ、前は勉強したくてもできなかったの。体イタイタイだから」

「シャオマオ・・・」

「いま元気だからね。ご飯もいっぱい食べられたし。サリーにお勉強教えてもらうの楽しみよ」

 ウフフと笑いながら、サリフェルシェリに笑いかけるシャオマオを、まぶしいものを見るように見つめるユエ。


 ユエはずっと虎だった。生きるのに必死だった。

 体の痛みに耐えて、片割れに会うのをよすがに生きてきた。

 シャオマオは、片割れを知らなかった。

 ただ体の熱さ、苦しさに苛まれる毎日を送っていた。


 この星では望めば何でもできる妖精だ。


 シャオマオを、閉じ込めたい。誰にも触れさせたくない。俺だけのものにしたい。本気で思っていることだが、シャオマオの笑顔が曇ることがあってはいけない。

 絶対にシャオマオが幸せになる星でなければならない。

 俺がシャオマオの邪魔をすることがあってはいけない。


「・・・シャオマオ」

「ユエ?」

「・・・あの、シャオマオ」

「う?」

「学校」

「がっこう?」

「うん、学校があるんだ。中央は」

「あい」

「学校、通いたい?」

「がっこう・・・って、みんなが一緒に勉強するところ?」

「そうだよ」

「毎日行くところ?」

「基本的には週5日で、小さい子たちは授業は午前中だけ。少し大きくなったら午後も。家が遠い子のために寮もある」

 ライが付け足す。


 くるりとユエを見つめるシャオマオ。

 まさか、保護者が付き添いで毎日行くわけじゃないだろうに、こんなに離れないと言うユエが学校とは言え自分と離れていられるとは思えない。

 くるくるといろんなことを考えた。


「それで家を買うって話になったの?」

「それもあるね」

 ライがニコニコする。

(よかった。自分のためだけでないなら罪悪感が少ない)


「ユエ、シャオマオ居なくて辛くならない?」

「まず自分のことを考えていいよ」

「ううん。シャオマオね、ユエが辛いの嫌なの」

「……」

「ユエが楽しくいられる方をいつも選ぶようにしてるの」

「俺のため?」

「ちなう。シャオマオのため。ユエが喜ぶ方がいい。シャオマオもユエと離れるのさみしいのよ?」

 ユエはシトリンの瞳にたくさん水を湛えてシャオマオを抱きしめた。


「ユエー。泣かないで」

「ありがとう。シャオマオ。大好きだ」

「シャオマオも好きよ」

「君は賢く強い。たくさん学んで。少しの間離れるくらい、大丈夫。我慢できるよ。だから、学校行っておいで」

「ありがとう、ユエ」

 いつもとは逆に、シャオマオがユエのおでこにキスをした。

 過保護で寂しがりやなユエが、シャオマオを優先してくれると言うのだ。

 とてつもない葛藤があったと思う。


「じゃあ、ユエもシャオマオちゃんも納得したと言うことで、学校に行くって選択でいいね?」

「あい」

「いつからかって話なんだけど、子供はみんな5歳になったら通うんだ」


 どうやらこちらの星ではみんな一斉に歳をとるらしく、誕生日がそれぞれバラバラでも、年を跨げば1年とするらしい。

 で、その年跨ぎがいつかと言うと、

「あと3か月?」

「そう。100日くらいだね」

「シャオマオも、あと100日で5歳?」

「そういうこと」

「学校が始まるのは?」

「その10日後だね」

(これはものすごく急がなければならないのでは?)


「その間に、住む家を見つけて学校の準備をしておかないとねぇ」

 ライはめちゃくちゃ暢気だ。

 サリフェルシェリをさっと見ると、同じく暢気な顔で笑ってる。

「安心してください。なんとでもなりますから」

 ふふふ、なんて笑ってもいる。


「シャオマオ様が思ったよりも話せるようになりましたし、1年ずらすことも考えましたが必要ないでしょう」

(あ、間に合わなければ1年遅らせるという手もあるのか)

 すこしホッとする。


「では、今日はもう休んで頂いて、明日から拠点の家探しを頑張りましょう」

「あい!」


 それぞれの部屋に帰ってから、シャオマオは早速あの素敵なバスタブにお湯を溜めようとした。

「シャオマオ、溺れない程度にしてね?」

「わかった!」

 シャオマオの腰程度の深さならすぐに溜まる。


「じゃあ、行ってくるね」

 パジャマとタオルを持って浴室に行こうとすると、後ろからユエがトテトテと不安そうについてきた。


「ユエ、ついてくるの?」

 むーっと拗ねたように後ろを振り返ると、ユエは不安そうな顔をした。

「シャオマオが溺れないか、怪我しないか心配だからドアの外にいるね」

(本当に、学校に行っても大丈夫なんだろうか…)

 一気に不安になってしまった。


 猫足バスタブのあるお風呂は、所謂日本風の洗い場と湯船とに分かれている作りではないので、ゆったり浸かるというものではない。

 体を洗ってシャワーを使ったら終わりだ。

 しかし、シャオマオはお風呂に浸かりたい!

 でも長く浸かるとユエが溺れていないか心配する。


 しょうがないので、ドアの外にいるユエに聞こえる様に、シャオマオは知っている歌を歌った。

 どうせこちらの人は言葉がわからないのだからと、結構ふざけた歌詞の歌を選んで、真剣に、途中から気分よく歌ってみた。


 ユエもドアの外で、シャオマオの歌を聴いて満足していたし、いいアイディアだったと思っていたが、次の日にサリフェルシェリから「昨日の歌の歌詞はどういう意味ですか?」と朝食を食べながら聞かれた時はびっくりした。


 どうやら他の部屋にも窓を通じて筒抜けだったようで、シャオマオは「知らない知らない」といって逃げた。

 真剣に解説するような歌ではないのだ。


今日も読んでいただき、ありがとうございます!

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