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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第四章

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まとめようとしたけれど、ご飯が先です

 

「今わかっていることを整理しよう」

 ライがシャオマオの顔を見ながら二ッと笑った。


「まず、シャオマオちゃんは妖精としてこの星に来る前に、別の星にいた記憶がある」

「いまのお姿よりも、少し大人だったようですね」

 シャオマオが頷く。


 ・シャオマオは今よりも大人であったが、体が弱く、別の星で命を落とした。

 ・こちらの星には今の姿で妖精として飛ばされてきた。

 ・攫われそうになったところを、ユエに助けられた。

 ・シャオマオの体は魔素が枯渇していたので、1か月眠り続けて魔素を吸収していた。

 サリフェルシェリがノートに美しい文字で書きつける。


「たぶんねー、シャオマオは前のシャオマオの時も、まそがいるからだだったの」

「別の星は魔素がないのでしたか?」

「そうなの。まそとかまものとかないの」

「じゃあ、苦しかったろうな・・・」

 ライがぐっと眉毛を寄せた。


「シャオマオ様は別の星にいた時から妖精であった可能性が高いですね」

「魔素が必要な体だったのに、星が愛し子をわざわざ別の星の人族にしてたってことか?」

 サリフェルシェリは思い付きのように話されることも、どんどんノートに書き足す。

「なにかに加護をもらった記憶はあるかな?」

 ライが尋ねる。

「かご?」

「シャオマオ様は「始祖銀狼の加護」を頂いておられます。こう、神様に出会って何かを授けられたりといった記憶がありますか?」

「ううーーん、むーーーーん」

 昔のことを思い出そうとする。

 もやがかかったように、いや、まぶしすぎて何も見えなかった記憶のみある。


「シャオマオがこの星に着いた途端、俺と出会ったことも加護の一部なんだろうな」

 ユエはつるつるのシャオマオの髪を丁寧に手櫛で整えながら、ポニーテールにして自分の手首に巻いていた護身のお守り紐で結んだ。

 髪の先へのキスも忘れない。


「始祖銀狼は、この星に一番最初に生まれた狼です。美しい女性だと言います」

「じょ、せい、おおかみ・・・」

 むむむむむっと考えようとすれば眉間にしわが寄る。それをユエにきゅきゅっと伸ばされる。

「そんなに強く悩まなくていいよ。簡単に考えて」

「では、お姿を見せずに加護をこっそり与えていたとしましょう」

 あまり悩むものだから、サリフェルシェリもくすくす笑いながらメモをさっと記す。

「始祖銀狼は裁定者に魂を砕かれて別の星に飛ばされたと言います。シャオマオ様と始祖銀狼のいた星が同じだったのでしょうか?」

「うーん。偶然?始祖銀狼がシャオマオちゃんを探しに来た?逆もあるかもしれないな」

 ライとサリフェルシェリは黙って考えていたが、シャオマオはうんうん唸り続けていたので心配したユエに、少し冷めて飲みやすくなった紅茶を飲ませてもらっていた。


「あの時の声は、始祖銀狼だった?」

「ああ、あの・・・」

 サリフェルシェリはシャオマオの口を借りて発せられた声を思い出して、腕をさすった。

 思い出すだけで圧倒的な力に肌が粟立つ。

「神話時代の魔人が地上に上がろうとしたんです。それより力を持っている神が今なお力を持っていてもなにもおかしくはない」

「うんうん」

「アレがまたシャオマオの口を勝手に借りるのかが心配だ。シャオマオに影響がないのか」

 黙って話を聞いていただけだったユエはシャオマオのことになったら話し出す。


「そのあと、急に大きくなりましたよね」

「影響はあるようだなぁ」

「悪い影響とは言えませんね」

「・・・」

「どうした?ユエ」

 すこし首をひねるユエに気づいたライが尋ねる。


「以前にもこの会話をした気がする」

「以前?」

「シャオマオを害するか。それは「否」と答えた。しかし、シャオマオを利用するか、それには「応」と答えた」

「ユエも、接触してたのか?」

「・・・今の今まで忘れていたが、そのあたりだけは思い出せる」

「シャオマオちゃんのことだけはしっかり聞いて覚えてるところがお前らしい」

 ライがからから笑う。


 その笑い声とともに、茶室のドアがノックされる。

「ライ。みんな。食堂に来て頂戴。食事ができたわよ」

「ルルさん!ありがとう!すぐ行きます」

 ライはぱっと立ち上がって、シャオマオににっこり笑う。

「シャオマオちゃん。楽しみにしてて。本当に美味しいんだから」

「きゃあ!嬉しい」

 ソファーから飛ぶように降りたシャオマオと手をつないで、ユエも嬉しそうだ。

 ユエはシャオマオが喜んでくれることが何よりも好きだ。

 シャオマオの笑顔で心が満たされる。



「ユエはなにがすき?何が食べたい?」

「俺はシャオマオが好きだよ」

「ち~な~う。ご飯よぅ」

「シャオマオに食べさせてもらうものが好きだよ」

「もう!」

「本当の気持だよ」

「ユエ・・・」

「はいはーい。席についてくださーい」

 ライに促されて食堂に入ると、大きな10人は座れそうなテーブルにどんどんと大きなお皿が並べられていろんな食材がきらきらと輝くように並んでいる。


「大型の猫族が二人とエルフ族でしょ?よく食べると思ったからとりあえずたくさん並べたの。おチビさんはあまり食べないって言ってたけど、子供が好きそうなメニューを用意したわ」

 ルルさんは子供用の椅子を用意してくれていた。

 背が高くてテーブルに座ってもちゃんと上半身が出る高さだ。


「うちの子たちが小さい時に使ってたものなの」

「ルルさんありがとう」

「どういたしまして」


 椅子に座ると大きな影がシャオマオの前にお皿を置いてくれた。

 ルルさんの甥っ子で、料理担当のダズリーだ。

 大きい。ユエほど大きいわけではないが、なんだかむっくりと横にも大きくて圧がある。

 全員分の黄色い料理がシャオマオの前に並べられた。

「こ、これは・・・」

 何かを焼いた卵でくるんだ料理。

 この世界でも同じような料理を見るなんて。シャオマオはドキドキしながら湯気を立てるオムライスを見つめた。

 卵たっぷりにのしとしとタイプではなく、卵が薄くてきれいな焦げ目がついてくるんと何かを包んでいる。味付けされたご飯だと思う。ちょっと端から見えた!


 ダズリーさんが、シャオマオに容器に入ったソースを渡してきた。

「この料理を作ったときはね、一番のおチビさんが家族の名前を描いてあげるのが決まりなの」

 ルルさんがふふふと笑う。

「か、かぞく・・・」

 シャオマオの顔がぽぽぽっと赤くなった。


「さあ、一番は誰の?」

「・・・じゃあ、ユエの」

 シャオマオは大きなソースの容器を両手で持って、自分の覚えている文字で「ユエ」と描いた。

「ああ。シャオマオの字だ」

 ユエがうっとりと喜ぶ。


「まあ、珍しい文字ね。素敵だわ」

 ルルさんは目を細めて嬉しそうに手を叩いた。

 ダズリーさんがシャオマオが書いたユエのオムライスを、ユエの目の前に置いて、何も書かれていない次のオムライスを持ってきた。

「ライ」

「嬉しいなぁ」

「サリー、文字多い。サリーでいい?」

「もちろんです。嬉しくて食べられないかも」

 それぞれの前に、シャオマオが描いたふにゃふにゃの文字のオムライスが配られる。


 シャオマオの前に置かれたプレートは、すべての料理がきれいに少しずつ配膳されており、小さなオムライスもちゃんと乗っていた。

「シャオマオの名前、多いの。だから『ハート』」

 シャオマオの小さなオムライスにすべての文字をのせるのは無理だった。

 諦めてハートマークを描いたらユエに、「それ。なに?」とじっと見られた。

『ハート』

「はあと?どういう意味?」

「うーん。気持ち?いっぱい好きとか?」

「こっちにも描いて。シャオマオの好き欲しい」

「う・・・」

「シャオマオの好き、食べたい」

「俺も描いてほしいな~」

「サリーもお願いします」

 全員にがたがたのハートマークを追加して、やっと「いただきまーす」だ。


 いただきますは、シャオマオがやるようになったので、みんなが自然とやるようになった。

 みんなバクバクとオムライスを食べた。

 シャオマオのとは大きさが全然違うのに、5口くらいで消えたように見えた。

 恐ろしい・・・。


「シャオマオ、美味しいよ。シャオマオの気持が美味しい」

 うっとりとつぶやくユエは、少し瞳を揺らしているような気がする。

「ユエ?」

「うん、こんなに気持ちが嬉しいと感じたことがない。これからもはーといっぱい欲しい」

「と、特別な気持ちだから、特別な時だけね」

「それでもいいよ。また描いて」

 食べきったユエは、いつもの色気のある笑顔じゃなくて、ほんとうに子供が喜ぶような笑顔だった。

「あい」

 シャオマオも、ユエの好きなものが見つかって嬉しかった。

 こうやって何度もみんなで食事をしてきたけれど、改めて「家族」と言われると、嬉しいけれど照れてしまう。

(これが家族団らんっていうものなのかな。あったかいな)

 シャオマオも、瞳が揺れそうになるのをこらえて大きな口で果物を食べた。

「美味しい!」


ダズリーさんは雪国に住む大きな猫の獣人です。

ですので毛がむっくらしています。

お風呂に入ると身があまりないのがわかります。

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