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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第三章

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嫉妬と餅は狐色に焼け

 

 とうとうライに怒られてしまったユエ。


 ユエはユエで「シャオマオが可愛いから」「シャオマオが心配していたから安心させようとした」「シャオマオがいい匂いをさせているから」「シャオマオが俺を呼ぶ声があまりに愛おしくて」などなどの理由を述べたが聞いてもらえなかった。


 シャオマオはレンレンとランランに連れられてまた顔を洗いに行ってる。


 おやつの木の実たっぷりのキャラメルバーをポリポリ食べながら、ダァーディーは「番と決めてしまったらなぁ。まあ、肉食系の血が濃い奴らはだいたいこんなもんだしなぁ」と諦めた様にいう。

 キャラメルバーの次は干し肉だ。

 甘いものとしょっぱいもので無限ループになるらしい。


 肉食系の獣人は番を心底大事にするが、多少行き過ぎるところがある。

 嗜虐的というか、番を獲物を見る目で見てしまうというか、兎に角「自分のものだ」という実感を求めてしまう。


「お互いに成人してて、番だったら好きにしてくれていいんだけどね」

 ふぅとため息をつくライ。


 今の所、保護者も兼ねているので、シャオマオにはあまりユエが番(候補)であることに囚われてほしくないと考えている。

 周りもその様に振る舞って、シャオマオに断る余地がなくなったり、番にするために養育されていると思われたくはないというのがライの気持ちだ。

 あくまでも、選ぶのはシャオマオの気持ちであって欲しい。


「ライ、苦労性ですね」

 サリフェルシェリに憐れまれる。

「ほんと俺、疲れるよ」

 ライはため息と共に、柔らかいキャラメルをぽいと口に放り込んだ。


「にいさーん!」

 遠くからランランの声がする。

「どうした?」

「シャオマオが泳ぎたいって~!」

 ライが返事をする前に、ビュンとユエが走って行った。


 ユエが到着したら、シャオマオはブーツを脱いで、靴下をランランに引っ張ってもらっているところだった。


「シャオマオ!この泉で泳ぐ気なのか!?」

「あい!」

 シャオマオは帽子を脱いでぽいと地面に置いた。


「確かにその服は浮く素材になっているけど・・・」

「でしょ?だから泳げるよ」

 ランランが嬉しそうに言う。

 水に落ちた時にはライフジャケットのように浮かぶようになっているが、この泉は浅瀬がない。

 円柱形の丸い形で、水が溢れないギリギリまで迫っている。

 ユエでも足がつくような深さではない。


「シャオマオ、泳いだことあるの?」

「う?にゃい」

「ないの?」

「あい」

「でも泳ぎたいの?」

「お水がねぇ、きらきらでねぇ。『およぐときもちいいよ~』っていってる」

「泉が言ってるの?」

「あい」

 可愛い顔をして、シャオマオがにっこり笑うとユエも反対しにくい。


「おんせんでねぇ。あんよバチャバチャしたことあるよ」

「わかった。俺が一緒に入って手を引いてあげる」

 ユエは上半身裸になって、靴を脱いで泉に飛び込んだ。


「おいで。シャオマオ」

 一旦水に全身浸かってから浮き上がって、髪を後ろに撫でつけたユエがにこっと微笑む。

 いつも出さないおでこを出しているユエはきれいな顔が全開になって色気がすごい!!

(これが、水も滴るいい男っていうやつだ)

 と、シャオマオはぽぽぽっと顔を赤らめてユエが伸ばす手を掴もうと自分も手を伸ばす。


「飛び込んでおいで」

「あい!」

 泉の縁に腰掛けて、手を広げたユエに抱きつく様に前に倒れてキャッチしてもらう。


「きゃー!」

「どう?気持ちいい?」

「あい!すっごく気持ちいい。ユエありがとう」

 礼を言うのに間近でユエの顔をみて、裸の上半身を見て、顔が真っ赤になるシャオマオ。


「あう・・・」

「どうしたの?」

 自分の目を手で隠してぷかぷか浮かぶシャオマオをみて、ユエがくすくす笑う。

「ユエ、ふきゅ着てないの~」

「それが恥ずかしいの?」

「あう・・・ハダカ・・・」

「見たことあるでしょ?」

「ありゅ・・」

「シャオマオ。目を覆ってたら泳げないよ」

「らって〜」

 くすくす笑いながらユエはすいすいシャオマオを引っ張りながら泉を泳いでくれる


「らって、らって・・・」

「見たくない?嫌いなの?」

「ちなう・・・ドキドキ」

「ドキドキ?怖い?」

 くすくす笑うユエは分かってて聞いてるんだろう。

 シャオマオはユエの顔をじっと見て、ちゃんと返事をしなければと口を開く。

「ううん。きれいよ。ユエ、きれいなの。だからドキドキしゅる」

「きれい?シャオマオにはきれいに見える?」

 ユエの体には傷跡が多い。

 古いものだが、深い傷が残っている。

 それを、醜いと言うことは出来ない。

 ユエが懸命に生きてきた証だ。


「あい・・・。ユエはね。とてもきれいなのよ。強くてね、きれいなトラさんなの。シャオマオを大事にしてくれる、シャオマオのしゅきなトラさんよ」

「虎じゃないときは?」

「あう・・・かっちょいい。顔もかっちょいいけど大きな体もかっちょいいのよ」

「ありがとう。シャオマオもきれいだよ」

「あわわ。ありがとう。ユエ、もう大きなケガしにゃいでね」

「どうして?」

「ユエ、シャオマオをだいじにするみたいに、ユエのこともだいじにしてね」

「シャオマオ・・・」



「この二人、いつもこんな感じなのか?兄さん」

「そうだねぇ。いつもこんな感じだねぇ」

「兄さん、もうユエがシャオマオを舐めたくってもほっといていいんじゃないか?」

「いや、そういうわけには・・・」

「でも、この二人が離れる未来が見えないよな、ランラン?」

「そうね。二人は死ぬまでこうやってる気がするよ、レンレン」

 泉のそばで二人を見ている黒ヒョウ兄弟がぶつくさ話し合っている声も、シャオマオには聞こえてなかった。

 とにかく、ユエの胸やおなかを触ってしまっているのが恥ずかしくてしょうがない。


「せっかくだから、シャオマオ泳いでごらん」

「あい!」

 赤い顔をしたまま返事して、立ち泳ぎで手を持ってくれるユエに引かれて顔をつけてバタ足で泳ぐ。

 温泉でバタ足をするのと違って、冒険服のお陰もあってか体全部がぷかっと浮くのが楽しい。

 顔をつけると、透明な水は底のビー玉がきらきらと光って隅々まで見える。

「ぷはぁ~!」

「シャオマオすごいね。水に顔を全部つけられるんだね」

「あい!お水もう怖くないのよ。キノにねぇ、うろこもらってねぇ、キノがシャオマオが泳げるように~ってお願いしてくれた気持ちが詰まっててねぇ、水の中も怖くないのよ」

「ふうん。キノか」

 ユエの目がギラリと光ったような気がする。


「その鱗、ユエに預けてくれる?」

「う?あじゅけるの?」

「俺が預かっておいてあげる」

 実は海人族からもらった着物はユエが行李の奥底にしまい込んでしまっている。


「やん。シャオマオの宝箱に入れてるの」

「仕舞ってるなら同じでしょ?」

「ときどき見るのよ?」

「んー。見なくてもいいんじゃない?」

「やーん!なんでそんなこというの?」

「シャオマオに、よそ見してほしくない」

「よそ見?」

「そうだよ。キノのこと考えてほしくない」

「せっかくもらっちゃ思い出よ?」

「シャオマオには俺だけいればいい」

 珍しく、シャオマオがぷくっと頬を膨らませて、わかりやすく怒った様な、拗ねた顔をした。


「ユエ。そこまでだ。それ以上言うな」

 しゅぱっと投げたロープでシャオマオを一本釣りしたライが、二人の言い争いを止めた。

「大人気ないし、シャオマオちゃんをしばりつけるのは許さない」

「そうですねぇ。その嫉妬の気持ちが強いなら、妖精様の番は無理かもしれませんね」

 いつの間にかやってきたサリフェルシェリも呆れた顔で泉の中のユエを見る。


「ユエ。不安?」

「・・・・・・そうだね。不安だ」

「ユエ、シャオマオが友達いっぱい欲しいって言ったらいいって言ったにょに」

「・・・・」


 シャオマオはランランにタオルでくるんで拭いてもらいながら、泉の中でポツンと浮かぶユエを見て質問した。

 本当に、大きな泉の中で、一人浮かんでいるユエがさみしそうに見えてしょうがない。


「ユエ。シャオマオの片割れでしょ?」

「そうだよ。俺の唯一だ」

「シャオマオの、ユエよ。代わりはない」

「・・・」

『嫉妬深く、愛が重いな。お前が一番、似てるよ』

 シャオマオの口から、シャオマオじゃない声がした。

 話し方も、声も違う。

 全員がシャオマオを注目したが、シャオマオは眠そうにあくびを一つした。


「シャオマオの体が冷えない様に、お風呂に入ってしまおうね」

 ランランが優しくタオルに包んだシャオマオを抱えて、お風呂場に使っているドラム缶まで連れて行く。


 残された男たちは、顔を見合わせて止めていた息を吐く。

「・・・悪いものじゃないようですが、すごいですね」

「あれ、普段からシャオマオちゃんの中にいるのかな?」

「あんなものが中にいるなんて、感じたことがない」


 よほど上手く隠れているのか、普段感じられない力によって声を聞いたものは皮膚が泡立つ様な感覚を覚えた。




上手く焼ければ苦労しませんよねぇー( ´◡͐`)

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