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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第三章

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星産みの神

 

 この星を産みだしたのは「星産みの神」

 星産みの神は、いろんな星を産み、育てる神。


 生き物が住めない観賞用の「宝石の星」

 植物だけで完成している「植物園の星」

 時間を確認するためだけの「砂時計の星」

 からだを持たない生き物の意識だけの「魂の星」


「我々が住んでいるこの星は、大きな力を持った狼の星です」

「おーかみ」

「そうです。()()です」


 星産みの神が生み出した狼の星に、命を吹き込むと「力」が生まれた。

「力」は血液のように星の中をめぐっていて、星のすべてを支配する。

 星に住む生物も、ただそこにある自然も、物理法則も、すべてが「力」に支配されている。


 星に生きるものが生きるために「力」を使うと、「力」には汚れが混じる。

 生き物の気持ち、特に人を害するような感情や呪い、利己的な気持ちや秩序を乱すような使い方をすると「力」が穢れて星を汚す。


 星産みの神は、星を作ったときに星を美しく保つ機構を考えた。

 それが心臓となって星全体に「力」を行き渡らせる金狼、穢れた「力」を浄化して金狼に戻す銀狼であった。


 金狼は「永遠」、銀狼は「再生」を司っている。

 司るもののお陰で、金狼は永遠を生き、銀狼は再生を繰り返す。

 金狼は若いままずっと生きて、銀狼は浄化を行えば生まれて老いて死ぬのを繰り返す。


「きんろーとぎんろーは夫婦月?」

「そうです。よく覚えていましたね」

 サリフェルシェリがシャオマオのつやつやの髪をなでる。

「狼は番をとても大切にします。例え神に与えられた役目としても、星に生きる生き物のために銀狼が老いて死ぬのを何度も見るのがつらかったのでしょう」


 夫婦でいられる時間は短く、何度も何度も銀狼は老いて死ぬ。

 また生まれることがわかっていても、長い時間を一人でいることも多く、生まれた銀狼には記憶がない。

 また一から始めなければならない。

 魂は銀狼であるのに、自分との記憶がいつも消える。

 段々と金狼は追い詰められていった。

 役目を超えて、銀狼にも「永遠」を与えようとしたのだ。


「それは星を見守る裁定者には許されないことでした」

「さいていしゃ?」

「そうです。星産みの神が生み出した星がうまく育っていれば何もしませんが、均衡が崩れたり暴走するようなことがあれば秩序のために原因を排除しようとします」


 裁定者によって裁かれた銀狼と銀狼は、大きな雷でからだを貫かれた。

 金狼は体を砕かれて地の底に落とされた。

 銀狼は魂を砕かれて別の星へ飛ばされた。


「べつのほし?」

「そうです。妖精様が別の星からこの星にわたってきたように、銀狼も別の星へ渡ってしまったのです」


 体を失った金狼は、永遠に「力」を吐き出し続けている。

 そして、浄化されなくなった星には金狼の「力」と生き物が穢した「力」が溢れて、浄化されることがなくなってしまった。

 大地はどんどん生き物の住む場所を減らし、穢れた「力」を吸い込んだ生き物を苛み、星を変質させてしまった。

 生き物にも適用されていた「力」を取り込み、浄化して吐き出す器官を片方しか持たない生き物が生まれるようになってしまった。


「ユエ?」

「そうです。魂の片割れです。一つのはずの魂が、二つに分かれてしまった。金狼と銀狼のように離れ離れになった片割れを求める生き物です」

「ほかにもいるの?」

「います。みんな一生をかけて片割れを探します」

「かわいそう・・・」

 なんと悲しい人生だろうか。

 ずっと大きな喪失感を抱えたまま、体の痛みに耐えながら、片割れを求めて泣いているのだろうか。


「星は自分の体に「力」が正しく巡らないために、妖精様を産みました」

「妖精!」

「そうです。星を浄化するために遣わされた星の愛し子なんです」

「にゃるほど・・・」


 妖精は気まぐれに生まれては星を浄化させる。

 妖精が喜べば星は美しく浄化される。


「星の生き物にとってはこの妖精様こそが星からの愛です。皆が妖精様を愛します」

「あい」

「でも、妖精様だから愛されてるわけではありませんよ。シャオマオ様が可愛いから皆に愛されています。貴方がこの星を愛してくれると嬉しいです」

 サリフェルシェリは、隣に座るシャオマオの手を取って、指先に口づけた。

「きゃ。サリー、()()()()()みたい!」

「ふふふ。私も貴女を愛していますよ」

 シャオマオの頬が真っ赤になった。


 サリフェルシェリーは今までこんな風にシャオマオを愛しているといったことがなかった。

 シャオマオを「妖精様」と呼んで、一線引くように接していた。

(どうしたんだろうサリー?)

 ドキドキする胸を押さえて、サリフェルシェリの湖面のような瞳を見つめる。

「うれちい。サリー。シャオマオもサリーしゅきよ」

 シャオマオの返事にサリフェルシェリはさっきまでの雰囲気をなかったことにするように、微笑んで話をつづけた。


「妖精様はいままでこの星で気まぐれに現れては気まぐれに去っていきましたが、こんなにも長く不在が続いたことがなかったのです」


 先代の妖精を見たことがあるものがほとんどいない。

 会ったことがあるものは長生きのキノやエルフの一部のみだ。

 ほとんどが「神話に出て来る妖精様」程度の認識しかない。


「妖精様が猫族の歓迎会で仰っていたように、別の魔素のない星にいたのが原因でしょうね」

「シャオマオのせい?」

「いいえ、妖精様が生まれる場所を選べるはずもありません。そして、この星の魂である妖精様が「自然に」別の星に飛ばされるなど考えられないのです」

「う?」

「そのあたりは、私たちの考えが及ばない範囲の話になるでしょうね。しかし、愛らしい妖精様。ユエだけでなくすべての生き物にとって貴女は大切な人です。毎日を楽しく過ごしてください」

「ありがとう、サリー」

「ではそろそろお茶の時間です。休憩にしましょう」

「う?サリー、時間、なんでわかるの?『時計』あるの?」

「トケ?がわかりませんが、サリーはどこにいても時間の経過が正確にわかります。これが特技でもありますね」

「しゅ・・・しゅごい」


 ずっと火が絶えないようにしている焚火へ行って、お茶の準備をする。

 薬缶に茶葉を入れて煮だしたハーブティーはほんのり甘くてシャオマオの好物だ。

 これにはちみつを垂らしたりミルクを入れるのが最高に美味しいのだ。

 一応、他のみんなにも声をかけたが興奮しているのか全く休む雰囲気ではないようだった。


「猫族はみんな好戦的ですし、根っからの戦闘民族です」

「あい」

 お話を聞いてた敷物のところに戻って、ミルクで適温にしたお茶をふうふうしながら飲む。

 ぬるくなっているのにふうふうしてしまうのはどうしてだろう。


「特に性質として個人活動をしているものが多いようですね。レンレンとランランのように二人で連携して戦闘するのは珍しい」

「にーにとねーね、らいねんギルド行くんだって」

「そうですね。冒険者を目指しているのですぐに活動したいんでしょう」

「にーにとねーね、怪我しないかな?」

「実力はありますよ。ギルドも最初から大きな仕事は任せませんよ。最初は下積みからです」

「よかった」


 目線をライたちに戻すと、いつの間にかレンレンがロープでぐるぐる巻きにされて転がされていた。

 ランランは独りでライに攻撃をどんどん繰り出しているが、すべてをライに軽く避けられている。

「ランラン!焦りすぎだ!」

「わかっている!」

 レンレンのアドバイスも聞こえてはいるが、レンレンを行動不能にされた焦りで普段よりも動きが雑になっている。

「ランラン、隙ありー」

 ライが懐から取り出したロープであっという間にランランもぐるぐる巻きにして地面に転がした。

「あああああ~」

「勝負ありだな!二人とも、一人になった途端にがたがたになるなぁ」

 気が付けば、レンレンとランランが握っていた武器も、ライに奪われていたようだ。


「くそ~!今日もダメだったか」

「いつかヤッてやる・・・」

「え?え?殺意高くない?兄さんだよ?」

 三人とも大きな怪我もなく終わったようだ。


「ユエは?」

 ユエとダァーディーが戦っていた場所を見ると、こちらも決着がついたようだ。

 地面に倒れたほうを上から押さえつけて終わっている。

「ユエ負けちゃったねぇ」

「どちらがユエかわかるんですか?」

「わかるにょ。似てるけど、わかるにょ」

 にこっと笑うシャオマオ。

 サリフェルシェリはさっぱりわからない。

「片割れだからですかねぇ。見た目ではわからないですね」

 魔力を手繰れば何とか判別できる程度だろう。

 それくらいダァーディーとユエは似ている。


「ユエ~!だいじょぶぅ~?ケガない~?」

 シャオマオが大きな声をかけると、倒されていたユエがダァーディーを弾き飛ばして走ってきた。

「ぐるうううううう」

「わあ!」

 シャオマオに飛びついてシャオマオの顔をべろべろ嘗めまわして、同じく走ってきたライにまた拳骨を落とされていた。



星の誕生の話はただの昔話の物語ではなくて、歴史として伝わっています。

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