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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第三章

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シャオマオは前向きに考えます

 

「シャオマオ、どうだ?飛べそう、か?」

「あう、ぱあぱ、まだ無理みたい」

 シャオマオは今日はレンレンとランランと一緒にひな鳥体操をしてから、ダァーディーにスーパー高い高いをしてもらって浮く練習をしている。

 4、5メートルは上空に放り投げられているが、キャッチが上手いので特に着地の衝撃はない。

 何気に高いところは好きだったりもするので怖くもない。


 ライが大きくなったシャオマオ用の冒険服を買い直しに行ってくれたので、今日はフルセットで新しいものを着こんでいる。これでこの高さから落ちたとしても怪我一つしない。


「ぱあぱ。高い高いありがとう」

 しばらく挑戦したが、どうも浮く気配がない。

 地面に下してもらってから、お礼をいう。

「なに。里の子供らも小さい時はこうやって遊んでやるんだよ。みんなぎゃーぎゃー言って喜ぶ」

 にかっと牙を見せながら笑うダァーディーに、(それは悲鳴の時もあったのでは・・・?)と思ったが、黙っておいた。


「ちょっと一番上で浮かんでたような気もするね、ランラン」

「うーん。高く上げすぎてよくわからなかったよ、レンレン」

 そばで見ていたレンレンとランランは、シャオマオが飛べるようになるのを心待ちにしている。

「やっぱり、あのちょっと浮いた時みたいにするか?」

「シャオマオでキャッチボールか?」

 シャオマオがちょっと浮いたのを自覚したのも、レンレンとランランにキャッチボールで遊ばれていた時だった。

 二人はラグビーのように走りながら、シャオマオをお互い投げ合って遊んでいた。

 シャオマオはスピードもありながら投げられるのが楽しすぎてケラケラ笑っていたが、それが楽しすぎてちょっと浮かんでしまったようだった。

「うーん。楽しい気持ちで浮くのなら、試してみる価値はありそうですね」

 サリフェルシェリも同意する。

 以前は飛ぶから魔力が足りなくなったのかと思われていたが、魔力が充填されても飛べないというのはやはり不思議だった。


「じゃあ、ランラン」

「うん。レンレン」

 レンレンがまずシャオマオを抱き上げて走り出し、隣で走るランランに「パス」といって投げる。

「あはははは」

 シャオマオは大きな声で笑いだす。

 自分がボールのように扱われるのが楽しいのだ。

 シャオマオが笑いすぎて疲れるまで続けてみたが、どうも浮く気配はない。


「おかしいね。この前はもっと簡単に浮いてたような気がするのに」

「何かが違うのかな?」

 ちょっと長めに走ってもらったが、レンレンとランランは息も切らせてない。

 シャオマオは呼吸を整えてから、ユエにレモンのようなさわやかな果実を絞った水を飲ませてもらっていた。

「シャオマオを投げるなんて・・・」

「ユエ、シャオマオがお願いしたのよ」

 シャオマオの汗を拭きながら、甲斐甲斐しく世話するユエは不満そうな顔だ。


「シャオマオ、飛べなくてもいいんだよ?」

 心配した顔でユエはシャオマオの顔を覗き込むが、シャオマオは首を振る。

「自分の思った通りに飛べないの、やーの」

「焦る必要はないと思う」

「んーん。焦ってないの。シャオマオねぇ、自分のできること知りたいの」

 以前より、ふるりとしたほっぺたを赤くして、シャオマオは瞳を輝かせる。

「シャオマオねぇ、寝てばっかりだけど、前より元気なの」

 ユエはシャオマオの言葉に、この星に来る前は体が弱くて死んだのだと言っていたことを思い出した。

「シャオマオ・・・」

「なんでもやってみたいし、いろんなこと知りたいにょ」

 にこにこするシャオマオの笑顔がきらきらまぶしいくらいだ。

 ユエはきゅうとシャオマオを抱きしめて、ほっぺたに口づけた。

「前を向くシャオマオは美しいな。愛おしいよ。俺の片割れ」

 シャオマオは赤いほっぺたはさらに赤くなった。

「ユエ、ユエの目、今日もきれいね」

「この目は好き?」

「あい。しゅき」

 ぽぽぽっとほっぺたがさらに赤くなる。

「タオの実みたいに赤いね」

 ユエがつんつんとシャオマオのほっぺたをつつく。

「あう。らって・・・」

 シャオマオが両手で顔を覆ったところで、

「また隙あらばいちゃいちゃしてー」

 と、ライの呆れた声がした。


「ち」

「舌打ちするのはいいけど、ユエはダァーディーと訓練。レンレンとランランは俺と訓練。シャオマオちゃんはサリフェルシェリと勉強の時間だ」

 パンパンと手を叩いてみんなの行動を促す。


「では、妖精様。今日はこの星の誕生のお話をしましょうか」

「星のたんじょー?」

「ええ。この星に住む人ならみんな知っている星の歴史です」

「ききたーい!」

 サリフェルシェリに手をつないでもらって、シャオマオは嬉しさのあまりにぴょんぴょん跳ねながら歩いてしまった。

 みんなの訓練が見える少し高くなっている丘に敷物を敷いてゆったり座る。

 このフロアの床は細かい砂で、素足で歩くととっても気持ちがいい。

 敷物がなくても気持ちよく座っていられるだろうが、みんな敷物を必ず敷いてくれる。

 ランプをつけるとぼんやり明るくなって、夜の雰囲気ばっちりだ。

 猫族のみんなは特にランプがなくても星明りで十分なのらしい。



「ランラン、レンレン!いつでも来い!」

 遠くではライは楽しそうな顔をして双子を挑発する。

「兄さん!遠慮しないよ!」

「兄さん!骨は拾ってやる!」

 ランランは首の後ろに手をやって、襟のあたりからずるりと棒を束で取り出した。

 三節混。しかもあの光り方は金属だ。

(ねーね。あんなの背中に入れてたんだね)

 レンレンは三又の巨大なフォークのような武器を両手に構えている。

 これもきらりと光って刺さらなくても当たっただけで大けがをしそうだ。


「サ、サ、サリー・・あれ、ケガしちゃう・・・」

「猫族からしたらじゃれあいですね。大丈夫ですよ。獣人はケガしても治りが早いですしね」

 サリフェルシェリはこともなげにさらっというが、そういう問題だろうか?

 ライが心配だ。ライは武器を持っていないように見える。


 ぶわっと飛び上がったレンレンとランランがライに飛び掛かったが、ライはすいすいと避ける。

「そんな大振りじゃ当たらないぜー」

 ライは楽しそうだ。


「兄さん!シャオマオの面倒はレンレンとみるから安心してよ!」

「兄さんいなくてもランランと立派に育てて見せるよ!」

「なんで俺を排除しようとするんだよ!安心できるかー!!」

 ランランの直線攻撃の三節混を飛び上がって避けたところで、ランランを飛び越えたレンレンが襲い掛かる。

「ひゃ・・・!」

 シャオマオが思わず悲鳴を上げそうになったところで、ライがレンレンの両腕を掴んで空中で投げ飛ばしてしまった。

 投げられたレンレンも、くるくると体を回転させて地面に音もなく着地する。

 すかさず三節混でランランが地面に降りようとするライを横凪にしようとしたが、ライは三節混をそのまま足の裏で受け止めて、蹴り返した。

「甘いぞランラン!」

「ち!」

「ねえ、なんでみんな俺に舌打ちするの?」

 ライは心底不思議そうだった。


「はふう~」

 攻防を息をつめて見守っていたシャオマオは、胸をなでおろしながら大きく息を吐いた。

 見つめている間は緊張で息を止めていたらしい。


「妖精様、お勉強に集中できないですね」

 サリフェルシェリにくすくす笑われた。

「あう~。ごめんなしゃい」

「いいんですよ。もう少し見てからにしましょう」

 ほら、とサリフェルシェリが指さす方を見ると、ダァーディーとユエが距離をとって見つめあっていた。二人とも完全獣体でうるうると唸っている。


 ユエ以外の完全獣体の獣人を初めて見た。

「う?」

「どうしました?妖精様」

「サリー。ユエとぱあぱは、えーっと、『血のつながりってなんていうんだろ』」

「そうですねぇ。妖精様が何を疑問に思っているかはわかりますが、それはユエが自分で話すまで待ってあげてください」

「あい」


 ユエはずっと一人だって言ってた。

 ライがいたけど話もできなかったって言ってた。

 ずっとライとサリフェルシェリがユエを育ててたって言ってた。

 猫族の里にも戻るのを嫌がってた。

 ダァーディーはずっと半獣体のままだった。

 完全獣体になった二人にはつながりがあるように見える。

 でも、迎えに来てくれた時は初めて会ったみたいだった。


 いまユエについて知っていることをつらつら考えてみたけれど、きっと話してくれるタイミングが来れば話してくれるだろう。シャオマオだって自分の話を全部はしていない。


 過去のことをたくさん考えてもしょうがない。

 これから未来のことを考えなくては。

 この星を好きになって、星に生きる人を好きになって、自分のことを好きになって、そしてたくさん勉強して、遊ぶんだ!


「待たせてごめんね、サリー。この星のお話聞かせて」

「はい」

 サリフェルシェリはうっとりするような微笑みを浮かべてお話を始めてくれた。

シャオマオはすこーし話すのが上手くなってきました。

「あい!」という返事だけは癖で残っていますが、もう少ししたら直ってしまうかもしれませんね。・・・さみしい。

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