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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第三章

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ダンジョンにしゅっぱーつ!

 

「では、妖精様」

「あい」

「「じゃーんぷ」」

 すこし高い岩の上から鳥族のサラサと手を繋いで飛び降りる。

 サラサは風を使ってふんわり着地。

 シャオマオはゆーっくりと、シャボン玉がフワフワ地面に落ちてくるようにサラサより後に着地。

 服はふんわりと揺れているくらいで捲り上がったりはしていない。


「飛んでるー!」

「やっぱり妖精様は飛べるんだ!」

「風の精霊がこんなに喜んで…」

 周りを囲んでいた鳥族たちは口々にシャオマオに話しかける。


「飛んでると言うより、ゆっくり落ちてる感じなんだがなぁ」

 干し芋をむしゃむしゃ食べながら、ライはすこし離れたところでユエと並んでシャオマオを見守っていた。

 その隣では、ニーカとチェキータがハラハラと涙を流して喜んでいる。

「我が子が初めて飛んだ時の感動を思い出したよ」

「あれも感動したな」

 2人でうんうん頷きあってる。


「そういえば、2人の子供はどこに?大きくなった?」

「彼は人族のエリアで学校に通っているよ」

「去年からだね」

「学校!?鳥族が?!」

 ライが驚く。


「失礼だな。たまにはそういうのもいるよ」

「変わり者なんだ。鳥族にしては。旅に出るより学びたいそうだ」

「はー。初めて聞いた」

 ライが言う通り、鳥族が自分たちのエリアの長老に読み書きを習う以外で人族の学校にまで通うなんて話は数十年単位で無い話だった。


 衝動のまま行動するので、そもそも集団行動ができない。

 時間を守れない。

 興味のあることにしか目が向かない性格のものが多い。

 鳥族は種族として人族が運営する学校教育には向かないのだ。

 適度に読み書きと世界のことを学んだら、旅に出るのが大体の若者だ。

 鳥族は魔素濃度に敏感なので、以前はもう少し北の方にも仲間がいたのだが、体調を崩すものが多く、旅に出るにも南下するほうが多い。

 行動できる範囲がどの種族よりも狭まっているのが鳥族だ。

 その分、世界中の濃度が薄いところに分布して、手紙や荷物の配達で生活している。


「なかなか成績も良いらしいので、妖精様が学校に通うようになったらよい先輩になれると思うよ」

 チェキータがほんのり微笑んだ。

「自慢の息子なんだな」

「そうだね。いい子だと思うよ。我が子ながら」

 ニーカもニコニコしている。


「何故シャオマオが人族の学校へ行くことになってるんだ」

 隣で話を聞いていたユエがブスッとして文句を言う。

「そうなったらってちゃんといってたろ?」

 ライが笑い飛ばす。


「何にせよ、とにかく体が成長しないとな。机も椅子も特注のを用意しなけりゃいけなくなる」

 体の大きな子供たちの中で今のシャオマオの大きさだと、椅子によじ登って座っても机から頭が出ないかもしれない。

「それはそれで可愛い…」

 想像の中のシャオマオは大変そうだが、非常に可愛らしい。

 今はとにかく体の成長と魔素器官の安定だ。



 ライは今さっきレンレンとランランと一緒にダンジョンから戻ってきたばかりだ。


 戻ってみたら、訓練場が鳥族で溢れていた。

 これでも人数を絞ってるらしいが、近場の鳥族がほとんど集まってるような状況である。

 もう少ししたら、鳥族の長老たち(飛ぶのにちょっと時間がかかる)まで集まってくるだろう。


 聞けば、ニーカたちの前でシャオマオが飛んで(浮いて)しまったのらしい。

 それはしょうがない。

 しょうがないけど、これ以上鳥族が集まって引き留められて出発が遅れるのは困る。

 困るので、早く出発しよう!ということになった。


「兄さん!シャオマオの荷物も用意できたよ」

「お、ありがとう」

 ランランが小さなリュックを持ってやってきた。

 これもドワンゴが加工したリュックで、軽くて丈夫な素材でできている。

 一流の冒険者がもつバッグにしか使われないような高級素材だ。

 転んでも頭は帽子で守られているし、多少の高さから落下しても、このリュックがあれば怪我なぞしない。

 万一、シャオマオが今みたいにふんわり着地できない時のお守りだ。


「しかし、ドワンゴもシャオマオちゃんのためなら秘蔵の素材をこれでもかと出してくるんだな」

「妖精様が書いた手紙を今朝届けたら、泣いて喜んでたぞ」


 冒険の装備一式をリリアナとドワンゴが作ったと聞いて、シャオマオは2人にあてて手紙を書いた。


 こちらの文字をサリフェルシェリに教わりながら、「ありがとう。大好き。また会いに行くね」と言うようなことを書いて花を添えて届けたという。

「そりゃ喜ぶだろうな」

 ドワンゴが涙を流しているところなんて想像もできないが。


「じゃあ、そろそろ出発しようか」

「シャオマオ連れてくるよ」

 ランランとレンレンが走っていって、鳥族に囲まれたシャオマオを抱き上げる。


「シャオマオがもっと飛べるようになるかもしれない。大人しくエリアで待つといい」

「その時シャオマオと遊ぶところを探しておくといい」

「またあしょんでねー」

 シャオマオがランランの肩越しに鳥族に手を振ると、みんな渋々手を振って見送ってくれた。


「レンレンとランランは鳥族の扱いが上手い」

 サリフェルシェリはニコニコしながら二人を褒めた。


 シャオマオは冒険家の服を着て、髪を纏めてもらってから帽子を被り、スカーフを巻いてもらって、ブーツを履いて、最後にリュックを背負わせてもらった。


「むふー」

「興奮してるね」

「ゆえ。ぼうけんよ?」

 ユエをちらりと見ながら、得意げに言う。

「そうだね」

 ユエは優しい笑顔で返事した。


「ぼうけん、はじめて。ドキドキしてるのよ」

「怖い?」

「んー。たのちみ!」

 ジャンプしたシャオマオがふわんと浮く。


「よっしゃー!じゃあそろそろ出発しようか」

 ライは明るく言うが、3人で行って、さっき戻ってきてまたすぐ出発だ。きっと疲れているだろう。


「らい。いって、かえって、またいくの、つかれてない?あしたじゃなくてだいじょぶ?」

「構わないよ。凄くいい感じのダンジョンでね。準備してきたから向こうでゆっくりするよ。心配してくれてありがとう」

「にーにとねーねは?」

「大丈夫よ。きれいなところ見つけたから、シャオマオに早く見せたいよ」

「そうそう。本当にきれいだったよ」

「えー!たのちみ!」


「では改めて出発しましょう」

 サリフェルシェリの掛け声で山を半日で駆け降りた。

 全員楽しそうであったが、猫族の裏道は前の世界で見たことのあるほぼ崖といっていい山頂からをスキーで滑り降りる映像と似ていた。似ていたと言うかほぼそれだった。

 シャオマオは当然紐でぐるぐると巻かれてユエに運んでもらったが、頭の中に「滑落」と言う文字がずっとチラついていた。何故だか怖くはないのだが。


 サリフェルシェリはダァーディーが背負っている荷物の上に座って、楽しそうにしていた。もちろん紐でぐるぐる巻きにもなっていなかった。

 あんなに儚げな美人なのに、普段からユニコーンと道なき道を走り回っているので平気らしい。

 ワイルド。


 そして、虎姿のユエに乗せてもらってダンジョンの前についたのが夕方。

 ほとんど運んでもらっていたがやはりすこし疲れた。

「シャオマオちゃん、大丈夫?ちょっと顔が疲れてる」

「うう。らいじょうぶ。ぼうけんだからね」

「無理したら冒険できなくなるかもしれないからね。無理って思う前に教えてね?」

 ライはユエの上でふにゃふにゃとしているシャオマオの頭をなでながら、優しく言い聞かせる。

「ぐあう」

「ゆえ、だいじょぶよ。ありがと」

「シャオマオちゃん、いつからユエの虎の時の言葉わかるようになったの?」

「う?わかんない。ほんとにそう言ってるのかわかんない。きもちがわかるの」

「へー。ほかの人でもわかるかな?」

「ためしたことないからわかんない」

「ま、そっか。完全獣体になれる獣人の方が珍しいからな」

「みんなはわかんないの?」

「同じ種族の獣体だったら通じ合えるよ。親子で完全獣体になってたら会話できるようだね。ユエは虎で、俺は黒ヒョウだからね。細かい会話はできなかったなぁ」


 なんと、会話ができなかったとは・・・。

「ゆえ。いまはシャオマオとおしゃべりしよね」

 きゅっと首にしがみついたら、ユエの喉がゴロゴロと機嫌よく鳴った。

 このゴロゴロ音がシャオマオの元気の素でもある。

 聞いていると安心感が増してくるのだ。

 そして、眠くなる。


「らい。ちょっと、ねむい・・・かも」

「うん。教えてくれてありがとう」

 取り出したタオルケットでシャオマオを包んで、ユエの体にひもで固定する。

 特製の、虎姿でもシャオマオを背中に乗せたまま固定できるおんぶ紐だ。

 ライが抱いてもいいのだが、ユエがうるさいので考案されたリリアナのアイディア商品だ。


「寝てていいよ。ついたら起こしてあげる」

「あい・・・」

 かろうじて返事をしたシャオマオをみて、みんな笑顔になる。


「さてさて、若いダンジョンだけど油断せずに地下3階を目指そう」

「応」

 ダァーディーがにかっと笑って楽しそうに返事した。


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