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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第三章

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だんじょん!

 

 シャオマオの体が元の4歳に戻るのに、なかなか時間がかかっている。


 赤ん坊から2歳までは眠っていたのでじわじわと2ヶ月かけて成長したが、起きてからは急速にユエとの間の魔力循環が良くなったのに成長が遅くなってしまった。


「魔素器官が満ちる前に別のところに使われているような」

 サリフェルシェリの言葉に、

「浮くからだろ?」

 とライが返した。

「多分、それも一因かと」


 魔素は体内を巡り、どこも悪くないように思える。

 そして、小さくなったシャオマオは可愛い。

 4歳の時も可愛かったが、小さくなってからは今まで見せなかったわがままを言い、無邪気な子供らしさを増し、さらに可愛くなっている。


 きちんと周りの大人たちを「自分を守ってくれる人」と認識しているような素振りをみせる。

 以前より甘えてくれるようになったのだ。

 そこがまた、可愛さを増している要因だ。


 体つきも、小さくなる前よりすこーしふくふくしてきたような気がする。

 抱っこをせがまれて抱きしめた時の柔らかさが違うのだ。

 柔らかくて温かくて、心から愛しいという気持ちにさせてくれる。


 みんな今のシャオマオに癒されっぱなしなので、正直「今のままでいいのでは?」と思っていた。


 しかし、さらに2ヶ月が過ぎても成長が止まったままというのがいいことなのか悪いことなのかがわからない。

 放っておいてもじわじわと大きくなるのか、なにか対策しないと大きくなれないのかが不明だ。


 体内の魔素器官が大きくなるにつれて、満タンになるのに時間がかかるのはわかる。

 特に、妖精であるシャオマオの魔素器官は大きい。

 ギルドタグに「浄化能力無限大」と書かれただけある。

 ユエの片割れとして持っているとしても容量が大きいのだ。

 ユエの魔素はシャオマオでないと浄化しきれないのがよくわかる。


 そして、里にも影響が出てきはじめた。

 猫族エリアの魔物が激減して、清浄な空気に包まれ、野生動物が増え、珍しい薬草が生えている。

 長年の病が癒えて、身体が楽になったという老人が増えた。

 成長期の子供は急速に背が伸びたりしている。

 老若男女、身体能力がぐんと上がったおかげで戦闘能力が向上した。


 これだけ影響が出るくらい、わかりやすく浄化しているなら取り込む魔素が今足りていないというのも間違いではなさそうだ。


「やはり、魔素濃度の濃い場所に移るしかないですかね」

「ユエのゲルでも今はユニコーンが居着いてるんだろ?だいぶ薄くなってると思うね」

「そうですねぇ。ではもう行くしかないですね」

「ユエがオッケーするかな?」



 ライとサリフェルシェリがユエの住む小屋に話をしにきた時は、ユエは虎姿でちょんと座り、目の前にいるシャオマオと向かい合っていた。

「舌を出してください」と言われてべろりと舌を出したり、「歯を見せてください」と言われる通りに歯を剥き出しにしたりしていた。


「シャオマオちゃん何してるの?」

「しゃおまおねぇ、とらのおいしゃさんなの。いまね、ゆえが元気かみてるの」

「ぐるう」

「お口の中もきれいだし、お胸もとくとく聞こえるし、元気なの」

 シャオマオはユエのフサフサの胸元に滑り込んで、胸の音を聞く。


「ぶらちは夜にしましょうねー」

 ライとサリフェルシェリが何か話があってきたのだろうと思ったシャオマオは、最近熱心にやっているブラッシングを後回しにすることにした。


 そして、しょんぼりしたユエが服を着て戻ってきては2人の話を聞いて不機嫌そうに言った。

「ダメだ」

 キッパリというユエに、サリフェルシェリとライは「やっぱりね」という表情だった。


「ダンジョンに潜るのにシャオマオを連れて行くなんて危険だ」

 シャオマオを縦抱きにして反対するが、腕の中のシャオマオは目を大きくしてユエを見上げている。


「らんじょん?」

「そうだよ。ダンジョンだよ」

「あしょびいくの?」

「シャオマオにはまだ早いよ」

 にこっと笑うユエ。

「どして?」

 純粋な目を向けるシャオマオ。


「危ないところなんだ」

「ゆえがいるのに?」

 素朴な疑問。

 ユエは強いのに?

 ユエがいても危ないの?


「う」

「らいとしゃりはいかないの?」

「勿論行きますよ」

「さんにんいてもあぶにゃいの?」

 キラキラしたシャオマオの目がまともに見れないので顔を逸らしたユエ。

「何があるかわからない」


「この近くにできた、あまり深くないところでいいんじゃない?しばらく過ごしやすそうな階層でキャンプしてみて、シャオマオちゃんに影響があるかどうか調べたらいいんだよ」


 ライの「キャンプ」の一言に、シャオマオは興奮した。

「ゆえー、お外に行きたいなぁー」

「うう」

「ユエがいたら、守ってくれるんでしょ?」

「う、ん」

「じゃあ、いってもいい?」

「う・・・」


「ははは!そんな困った顔するんだな!」

 ダァーディーがお腹を抱えて笑っていた。

 どうやら皆んなが話しているところを遠くから見ていたようだ。

「俺も行くよ。娘の一大事だからなぁ。協力できることはしてやるよ」

 シャオマオの頭をぐりぐり撫でる。


「シャオマオだって、早く大人になりてぇよな?」

「おちょなになってー、れいあちゃんみたいなカッコするのー」

「「だめだ!レイアの真似をしてはいけない!」」

 冒険者のレイアは身軽な山猫のため、自分の動きを阻害するような防具や服を着ないので、かなりの軽装だ。ユエとライが止めた。


 ショートパンツにカットソー。

 半獣人になってもそんなに大きさが変わらないのでその服はびりびりになったりはしない。

 そして最低限露出は抑えられている。

 皮の胸当てに関節を守る防具。グローブとブーツ。あとはロングソードとかなり身軽にしてる。その分荷物はポーターを雇って持ってもらっているが。


「あ、あんな肌が見える服はだめだよシャオマオ」

「う?のーして?」

 基本的にたくさんの文化が入り乱れている人族でも「女性の肌の露出が許されない地域」と「開放的な地域」と様々だ。

 獣人は比較的開放的な部類だ。

 毛皮があるものが多いし、肌を露出することに対してそんなに羞恥の気持ちはない。

 どちらかというと、肉食獣の血が濃いものは自分の肉体美を誇っているふしがあるくらいだ。


 しかし、シャオマオが露出していれば邪な目で見るものがいるかもしれないと思うと怒りがわいてくる。

 いや、いるかもしれないじゃない。必ず出て来る。そんな奴は八つ裂きにしなければ気が済まなくなる。何人血祭りにあげればいいんだ!!!

 なんならかわいい顔も隠してしまいたいくらいなのに。

 気軽にこの白い肌を露出しようとするなんて・・・・・油断できないな。服装も管理しなければ。

 という気持ちを飲み込んで、一言にした。

「ドレスはどう?大きくなったらお姫様のドレスをプレゼントするよ?」

「ドレス〜?」

「嫌なの?」

「ゆえが()()()()()ならいいよ」

「・・・これは結婚の申し込みでは?」

「違うってば」

 ライのツッコミが入ったところで、話をダンジョンに戻す。


「最近出来た若いダンジョンがここから北の方向にあってな。どうやらそこそこの魔物が出るらしい。「そこそこ」だから、ゆったり探検もできるんじゃないか?」

 きらりと犬歯を見せて笑うダァーディーの顔をみて、シャオマオは「ぱあぱともお医者さんごっこしたいなぁ」と考えていたが、「探検」の言葉にシャオマオの瞳がキラキラ光る。


「ゆえ!ゆえ!たんけんらって!!」

「うん。探検したいの?」

「らんじょんで、たんけん!タカラモノがでるかにゃ?」

 ジタジタ暴れるシャオマオはほっぺを真っ赤にして興奮している。


「シャオマオはどんなものが宝物だと思う?」

「タカラモノはねぇ。キラキラしてて、きれいで、この世に一つしかないのよ」

 そこまで言ってから、「あっ!」とパチン!と手を叩いてシャオマオは笑顔になる。


「ゆえとー、らいとー、しゃりとー、ぱあぱとー、にーにとねーねとー、ほかにもいっぱ〜いいるんだけど、みんなしゃおまおのタカラモノなの」

(尊い・・・・)

 全員の涙腺が崩壊しかけたところで、「あれえ?じゃあ、らんじょんは何が出るのかにゃ?」と首を捻るシャオマオ。


「まあ出来立てのダンジョンなら金貨とかとか魔石だな。古いダンジョンだと珍しい武器が出る」

「しゃりのおななしに出てきた()()()()()は伝説の剣を手に入れて、悪の魔王をやっつけたのよ?!」

「へー。シャオマオは色んな勉強してて偉いなぁ」

 ダァーディーはぐりぐり頭を撫でる。

 少しだけ編み込みしていた髪が乱れてしまったが、シャオマオはご機嫌だ。


「ねえねえ!ゆえ!いつぼうけんするの?!」

「まずはダンジョンの下調べに行くよ。ライが」

「えー。俺かぁ」

「適任だわな」

 ダァーディーががははと笑う。


「ライが下調べして、シャオマオが滞在できそうな階層があればそこにキャンプを張ってみよう」

「らい!らい!いろいろ見てきてね!しゃおまおがあそべそうなところ、見つけておいてね!」

「わかったよ。シャオマオちゃんのためだからね。レンレンとランラン連れてさっさと調べて来るよ」

「にーにとねーねもいくの?」

「あの二人はトラップを仕掛けるのも見つけるのも得意だから、初めて行く場所に連れいていくと見落としがないんだよ」

「へー」


「じゃあさっそく、準備して行ってくるねー」

 ライはレンレンとランランを呼んで説明すると、バックパックを背負って気軽な感じで出かけて行った。

 レンレンとランランなんか小さなバッグ一つだった。

 (大丈夫かな・・・?)

 自分が頼んだことなので、シャオマオ少し不安になってしまった。

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