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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第二章

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急に大家族

 

「シャオマオ、これ食べて。美味しいよ」

「あい」

 ぱかーッと無防備に自分に食べさせてもらうために口を開くシャオマオはかわいい。

 いつ見てもうっとりするほどかわいらしい。


「おいひい・・・」

 片手をほっぺたにあてて喜ぶシャオマオ。ああ、番に美味しいものを食べさせることができているという気持ちが俺を満足させる。


「ユエ、ユエも食べて」

「じゃあ食べさせて」

「あい」

 長い箸を小さな手で使えないのでちぎった饅頭をいつものように口を開けるようにつんつんと唇をつついてから、開けた口に入れてくれる。

 少しだけでも、自分の意志で俺の唇に触れてくれるシャオマオが愛おしくてたまらない。

 2週間の間に新しく作った習慣だ。

 おままごとをして遊んでいるときに提案して、そのまま日常生活にも持ち込んだ。


「なんだぁ?シャオマオもユエを番だと思ってんのかぁ?」

「う?」

「給餌行為だろ?どうみても求愛だ」

「きゅう・・・あい・・・?」

「無自覚か?」

 ダァーディーがこちらを向いて尋ねる。


「こういう習慣なんだ。俺にはこうしてくれる」

「はぁ。子供相手でもえらい執着だなぁ。ただの番じゃねぇんだな」

「そうだ。片割れだし、運命の番だ。シャオマオは俺の命だ」

 嬉しそうに串にささった野菜を食べようとするシャオマオから、串を取り上げて外してから食べさせる。自分で串なんて危ない。目が離せないな。


「過保護だねぇ。その年なら自分で食えるだろ。赤ん坊じゃねえか」

 ゲラゲラ笑いながら酒を飲むダァーディー。

「食べられるもん」

 赤ちゃん扱いされたのが嫌だったのか、プンスコ怒ったような顔をするシャオマオ。

 可愛い。


「ユエ、シャオマオご飯、じぶんで、食べられるもん」

「そうだね。自分でも食べられるけど、ユエに任せてくれるお姫様だね」

「おひめさま?」

「そうだよ。お姫様は全部人にやってもらうんだよ」

「そうなの?」

「そうだよ」

「そっかぁ」

 タオの実を匙ですくって食べさせると、相変わらずうっとりとした顔をするシャオマオ。

 可愛い。


「お前、その顔で子供を丸め込んでるの本気すぎて怖いぞ」

 ダァーディーがあきれたようにいう。

「シャオマオだけだから問題ない」


「ライ!サリー!これおいひいから、食べて」

 自分の皿に入った果物を二人の席まで行って分けるシャオマオ。

 食べさせたりしないかハラハラするが、手渡しするくらいでとどめている。

「ありがとうシャオマオちゃん」

 二人に礼を言われて照れるシャオマオも可愛い。


「こっちがね、あま~いの。こっちがね、すぱ!でもあま~い」

 自分の気に入った果物をひとつづつ指さして説明しているところも可愛い。

「妖精様はどれが一番好きですか?」

「シャオマオね、タオの実すきよ」

「タオの実ですか。妖精様はタオの実の精霊みたいですからね。似合いますよ」

 くすくすサリフェルシェリが笑っている。


「せーれー?せーれーなに?」

「精霊は、いろんなところにいますよ。見えるものは自分と仲のいいものだけに限られますが。たとえばサリーはエルフですので、森にいる精霊と仲がいいです」

「ともだち?」

「そうです。精霊は友達です」

「そっかぁ。シャオマオにもともだちできるかなぁ?」

「妖精様の周りには常に精霊がまとわりついてますよ」

「えええ~?みえない~!」

「そうですか。では・・・」

 サリフェルシェリがシャオマオの目を手のひらで隠す。

「目を軽く閉じて、自分の目には何でも見えると思ってください。妖精の瞳は何でも見通します。3・・・2・・・1・・・」

 パチンと指を鳴らして目から手をどけると、シャオマオがゆっくり瞼を上げる。


「ひょ!?」

 またかわいい声を上げてシャオマオが目を大きく見開く。

「きらきら、いっぱい!わ!わ!わ!わ!」

 光にぶつかってしまわないように、シャオマオは体を固めている。


「ね。たくさん近くにいるでしょ?サリーは森に関する精霊しか見えませんが、時には精霊がひっついていて妖精様が輝いて見えるのです」

「まぶちかったのね・・・」

 サリフェルシェリにはシャオマオが物理的に光って見えていたんだな。


「喜ぶと輝くんですよ。普段はそのへんに漂っていてあまり光ってません。特に魔素が多すぎるとあまり光りませんね。今は見てもらえると思ってアピールしてるんでしょうね」

 くすくす笑いながら、周りを精霊に囲まれるシャオマオを眺める。


「ライは?ライはせーれー見える?」

「あー、俺?俺は1種類見えるよ。何が見えるかは自分の使える力の証明みたいなものだから、内緒」

「なるほにょ」

 自分の武器は隠しておくに限る。精霊は見えたとしても人には言わない。自分の使える力がばれてしまう可能性をなくすためだ。ほかの人には見えないかもしれないが、基本人前では話しかけたりしない。それでも精霊は自分の属性を持つ人を愛して手助けしてくれる。


「精霊は「よき心」の結晶です。人をいとしく思う気持ちや大切に思う気持ち、助けたいと願う気持ちが魔素とまじりあったものと言われています」


 そばにいて心地いい人の元に集まって、知らない間にも守ったり助けてくれる。

 そして役目を終えれば静かに消える。儚い存在だ。


 シャオマオはきょろきょろして、いろんな人を眺めている。

 きっと精霊にまとわりつかれている人を見ているんだろう。

 本来は自分と属性が同じものしか見えないが、シャオマオにはすべてが見えてるんだろう。


「・・・きれいね。みんなピカピカ。せーれー、みんなのことすきっていってる」

 感動したのか、少し涙ぐんで俺のそばまで来ると、腕にぴとっとくっついてきた。

「そんなにきれいなの?」

「あい。きれいよ。見た目も、すきすきいうのもきれい」

 人を愛おしいと想って光る精霊の気持ちに感動して涙するシャオマオが俺にとっては一番美しい。涙のせいか、妖精の力のせいか、いつもより瞳が銀色に輝いているように見える。

 ほんとうは嘗めとってあげたいが、ライが特にうるさいので手巾で軽く押さえてあげる。

「ありがとう」

 こういう時にはシャオマオが大人だったら、とすこし考えなくもない。

 感傷的なシャオマオを抱えて抱きしめると、こてんと俺の肩に頭をのせてぼんやりとみんなを見ている。

 可愛い。


「なんだ。シャオマオは精霊を見たことがなかったのか」

「あい」

「妖精なんだから何でもできると思っていたんだが、意外と知らないことが多いのか?今までどうしていたんだ?」

「う?」

「ユエと出会うまではどういう生活してたんだ?まさかどこかに閉じ込められてた訳じゃないよな?」

 妖精を独り占めして閉じ込めて滅ぼされた国が昔話であったな。


「シャオマオねぇ。シャオマオじゃなかったの」

「あん?」

「こじょも違う。ちょっとおちょな。違うところで、ずっと寝てたの。からだイタイイタイ。あたまイタイイタイ。おねつ出るの。なにもできなかったの。たぶん、違うところでからだだめになって、気が付いたらシャオマオになってたの。でね、ユエに見つけてもらったの」

「はぁ~。星を渡ってきたのか。そりゃいくら探しても片割れが見つからないわけだ」


 ダァーディーはシャオマオの小さな手を掴んでニカッと笑って見せた。

「チビ猫。お前は俺たち猫族のユエが命を懸けて探していた片割れだ。しかしそれだけじゃないぞ?妖精様って理由だけでもない。俺たちはお前が可愛い。お前がこの星に来てくれて嬉しい。体は猫族ではないかもしれないが関係ない。ここをお前の故郷だと思ってくれ。いつでも歓迎する」

「ありがとう、だぁーでぃー」

「そうそう。ランランのことお姉ちゃんと思って。ねーねよ」

「じゃあレンレンはお兄ちゃん。にーに」

 ふんすと鼻息荒くレンレンとランランが近づいてきてシャオマオの手を握る。

「ランランねーね、レンレンにーに」

「か・・・可愛すぎる」

「これ、新しい武器じゃないか?」


「・・・シャオマオ、子供じゃなかったって・・・」

「あ~!それはもう聞くな!!秘密だ!!今は4歳!4歳だ!!」

 シャオマオに尋ねようとしたらライに止められた。


 そのすきにシャオマオをさっとダァーディーに奪われる。

「さあ、俺を父と思ってくれ。あー、子供って何て呼ぶかな?パパかな?」

「ぱあぱ?」

「そうだ。シャオマオのパパだ」

 座ったまま、シャオマオを高く掲げてダァーディーは嬉しそうだ。


「お父さんの役は私がやろうと思っていたのに!」

 サリフェルシェリが悔しそうに言う。

「サリーはね、『先生』よ」

「せんせー?ですか?」

「『先生』はねぇ、何でも教えてくれるの」

「ああ、教師ですね。なるほど」

「ライはねぇ。ずっとにーによ。優しいにーに」

「お母さんじゃなくてよかった・・・」

「ユエはね。ユエは・・・わかんない」

 真っ赤になったシャオマオが、もごもご言い訳するように俯いていう。


「シャオマオ、こっち向いて。俺を見て」

「や!」

「どうして?」

「はじゅかちい。顔あちゅい」

「そうだね。真っ赤だね。俺はにーにじゃないの?」

「にーにだけど・・・」

「じゃあ友達?」

「ともだち・・・」

「それだけ?」

「それだけじゃない・・・」

「ほかには何があるかなぁ?ねえ、シャオマオ、何があるかな?」

「ううう」

「教えてよ。シャオマオ、俺はシャオマオの、なあに?」

「ううううううううう!しらない!!」

 真っ赤な顔をしたまま走って逃げてしまったシャオマオをレンレンとランランが追いかける。


 片割れでもいいのに、あれは別のことで頭がいっぱいだったんだろうな。

 可愛い。



このように、ユエはシャオマオをみては「可愛い」と毎分毎秒思っています。

可愛いというたびに、もっと可愛くなるので困るなぁと思っているくらいです。

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