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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第八章

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星の生き物たち

 

 ライが休めたのはシャオマオたちが帰ってきてからさらに1日たった後だった。

 ラーラ達やギルドの冒険者たちと、外に出てきてしまった魔物たちをシャオマオのいる場所へ誘導し、星に帰すためにすぐには休めなかった。


 そうして片付けも終わってさらに翌日、やっと前線で戦っていたいつものメンバーたちが狼の里に案内されて温泉を楽しんでいた。


「ユエ。お前なんでそんなキラキラしてんだよ」

 ユエ、ライ、ダァーディー、レンレンが岩で作られた湯船に足をのばしている。


「・・・・・知らない」

「知らないって何だよ」

「キラキラとはどういうことだ?」

「このどでかい傷痕に、キラキラしい髪とか、何があった?」

「・・・・・・・知らない。シャオマオのお陰ということしかわからん」

 ユエの髪は虎と同じく黄色に黒が混じるような柄だったのに、黄色部分がきらきらと金に変わっている。

 髪質もさらさらととても美しく輝いている。王子様か!


「こんなでかい傷、見ただけで致命傷とわかる。確かにシャオマオじゃないとどうにもできんわなぁ」

 珍しく人型のダァーディーがちらりとユエの体に残る傷痕を確認してのんびりとしゃべる。もうすっかり治っている大きな穴をあけられたような傷痕は体の表と裏にある。本当にこの大きさの穴を体に開けられたのなら即死だ。


「シャオマオもシャオマオよ。あんな・・・・・なんで、あんな・・・・・」

 わなわなと震えながら顔を真っ赤にするレンレン。

 ついこの間だ。分かれてから時間が経ってなのにあの成長度合いはどうなってる!?

 スラリと伸びていた手足に適度に肉が付いているのに引き締まっている。実に獣人好みの肉体である。

 レンレンは抱きついてきたシャオマオの柔らかい体を思い出して慌てて頭を振った。

(妹!妹よ!!)


「レンレン、そこは考えてもしょうがない。妖精だからな」

 ライは目をつぶって静かに諭す。シャオマオが寝ている間にじわじわと肉体が成長しているのを見た時は驚いたが今は落ち着いている。

 どうしても理解できないのは、ユエが空を飛んだことだ。

 なんで飛ぶんだよ!!


「すべてはシャオマオが望んだことだ。俺はそれに従う。俺はシャオマオのものだ」

 ユエは髪をかき上げながら湯船から立ち上がった。やっぱりきらきらしている。そしてさっさと脱衣所に向かってしまった。


「なんか・・・3割増しで美形になった感じだな」

「ダァーディーもそう思うか?」

「キラキラしてるって言いたくなる気持ちわかるね」

 レンレンも賛成する。

 全体的にユエの美が底上げされている。意味が分からない。




「シャオマオ様。よくお戻りいただきました」

「クリスおばあちゃま、心配かけてごめんなさい」

「よいのです。よいのですよ。こうやってまた()()()()()来ていただけたこと、嬉しく思います。それに、里の危機を救っていただいた。里長として御礼申し上げます」

 里に帰ってきた、の部分に力を込めて礼を言う里長が頭を下げると侍女や護衛たちも習って頭を下げた。

 シャオマオがまず狼の里に戻ってきて、里のために働いてくれただけで里長には何もいうことがない。


「おばあちゃま、あのね、金の大神が星になにかするのをシャオマオったら止めたいのよ」

 シャオマオは胸元で手を合わせて里長にお願いする。

「全部の種族の偉い人、集めてほしいの。みんなの意見を聞きたいから」

「承りました。全ての種族の族長をここへ集めましょう」

 さっと頭を下げると、侍女の一人がささっと鳥族の羽根を懐から出して、鳥族を呼び寄せるために外に出て行った。


「妖精様。おやつを食べて待ちましょう。何が食べたいですか?」

 神殿のお稚児さん、チヅリがシャオマオに近づいた。

 この狼の里には神殿があり、子供たちが一定期間お稚児さんとして仕える。子供の妖精に合わせて、妖精が現れたら一緒に遊ぶためにできた制度だという。


「チヅちゃんは何が食べたいかな?」

 小さいチヅリを持ち上げて、シャオマオは膝の上に乗せた。シャオマオはチヅリをチヅと呼ぶ。親しみやすい名前だ。

「チヅは妖精様の食べたいものが――」

「だめー」

 こしょこしょと脇をくすぐると、チヅリがきゃらきゃらと笑って暴れる。

「チヅは、どなつ、が、た、た、たべたい、です」

 とぎれとぎれに笑いながら言うと、シャオマオがぴたりと手を止めた。

 シャオマオが以前にドーナツを少し分けたのだ。美味しかったのだろう。顔を赤くしながらちらりとシャオマオの様子をうかがってくる。かわいい。

「いいね!ライにーにに作ってもらおう!」

 シャオマオはチヅリを抱っこしたままライたちの休んでいる部屋に向かった。

「ライにーに!ドーナツ作ってぇ」

「突然だね」

 ライは笑って厨房に一緒に行ってくれた。

 子どもたちがシャオマオの周りに集まってくるが、お稚児となっているこどもは非常に賢い。シャオマオの顔色をうかがう。シャオマオがそれを嫌うとわかってからは、みんな少しずつ力が抜けるようになってきたようだ。

「ドーナツの中には穴があってぇ、それはこの小さいおちょこで抜こうねー」

「はーい」

 子どもたちがシャオマオに倣って、お椀で作った丸におちょこで真ん中の穴をあける。

 厨房の中は笑顔で一杯だ。

 シャオマオたちはみんなお腹いっぱいになるまでドーナツを食べて、広間でユエと一緒にお昼寝をした。



「妖精様ー!」

 赤毛の髪と髭。大きな声。エルフの里の長老アッガザイデルだ。やはり地理的に一番近いエルフの里の代表が最初に現れた。ユニコーンから飛び降りて、庭でお稚児さんたちと遊ぶシャオマオに声をかけた。

「おお!なんという美しさか!!サリフェルシェリに聞いた通りだ!!」

「アッガザイデル。声を抑えて」

 お稚児さんたちが驚いているのを見たサリフェルシェリに少々怒られ、照れくさそうにアッガザイデルが照れ笑いをする。


「妖精様にご挨拶をさせていただきます」

「アッガザイデル、久しぶりなの」

 近づいてきて跪いたアッガザイデルの髪をなでなで。少しごわりとした髪はくるくるで触って楽しい。


「ヨコヅナも元気だった?」

『妖精様・・・美しくなられて・・・』

 ヨコヅナは大きな顔を力加減しながらすりっとシャオマオに寄せた。

 シャオマオの手で触れたところからヨコヅナの毛並みが金灰に輝く。ついでにアッガザイデルのユニコーンも撫でてあげる。やっぱり魔素が浄化されて美しくなった。

 サリフェルシェリがユニコーンたちを厩につなぐために移動した。アッガザイデルは先に狼の里長に挨拶に行くという。


「シャオマオ!」

 次は鳥族だ。あの小さな長老カナンがミーシャとともにやってきた。

「ミーシャにーに!カナンじーじ!」

「妖精様!」

「やっぱり鳥族は集まるのが早いのね!」

「勿論です!妖精様のお呼びとあれば、このカナンどこにおいても最速で参上いたしますとも!」

 ドンと胸を叩いてけほっとむせるカナンの挨拶を受けて、シャオマオは残っている髪をなでなでしてあげた。

 カナン老の髪が少し輝きと量を増し、その場のシャオマオ以外の全員が固まった。


「長老。感動しているところ申し訳ありませんが、案内の方が困っておられます。先に里長に挨拶に参りましょう」

「う、あ、うむ」

 ミーシャに促され、気を取り直して頭を撫でながら歩くカナン老。よほどうれしかったのだろう。少しスキップしている。


「シャオマオ。さっきのもうやっちゃだめだよ」

「のーして?」

 ユエの軽い注意に首をかしげるシャオマオ。

 頭髪の薄くなるものは獣人には少ないがいる。人族にもそのほかの種族にも。そんな者たちが大挙してシャオマオに会いに来たら地獄だからだ。

「とにかく、だめだな」

「ふーん」

 シャオマオはとりあえず返事した。


 海人族、ドラゴン族、鱗族、ドワーフ族、陽が暮れた頃にやっと人族の王がやって来て主要な種族の代表者が集まった。


「妖精様。皆が揃いました。参りましょう」

「うん」

 ラーラが迎えに来て、シャオマオはユエと手をつないで会議の部屋へと向かった。


 シャオマオがよく知っている者たちが頭を下げてシャオマオを迎えた。

 代表者がシャオマオをよく知らなければ、シャオマオとなじみがある者が同行してくれている。


「シャオマオ様。各種族の代表者が集まりました。シャオマオ様のお話をお願いいたします」

「はい。みなさんお顔を見せてください」

 ゆっくり各代表たちが顔を上げる。


「ここ最近、この星に起こったことを順番に説明します。シャオマオはお話があんまり上手じゃないのでユエと、ライにーにに一緒に説明してもらいます。質問がある人は後でまとめて受けますので、まずは説明を聞いてください」

 シャオマオの話に、みなが頷いて見せる。


 シャオマオは頑張って、ここ最近、星に起こったことを全員に説明した。

 がんばったが、皆がしんと黙って聞いてくれているので不安になり、ちらちらこれでいいかとユエに合図を送り、大部分をライに助けを求めながらになった。

 因みに、ユエに血を分けたことは説明せず、一旦死んだことも話さなかった。ユエと黙っておこうと決めたのだ。


 全て話し終わり、「質問はありますか?」と話しかけてみたが、全員が重く考え込んでいる様子だ。


「シャオマオ」

 しゃっきり背筋を伸ばしたダァーディーが、改まった声色で呼びかける。

「はい、ぱぁぱ」

「俺たち星の生き物を愛してくれてありがとう」

 深々と頭を下げられた。シャオマオは心がほこっと温まったのを感じて顔をほころばせた。

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