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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第八章

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約束をもらえたユエ

 

「わあああ~~~~!」

 シャオマオの周りに完全獣体の犬族赤ちゃんがコロコロ転がって遊んでいる。


「かんわいいい~!ふにふに!ふにゃふにゃ!」

 シャオマオが抱き上げた子が「あふぅ」とあくびするのを見て震えるほど喜ぶ。

「まだ歯が生えてなーい」

 あぐあぐと指を吸われたり噛まれたりしても痛くない。うふふ、あははと自然と笑いが漏れてしまう。

 さすが獣人の子供とあって、人の赤ちゃんと同じくらいの大きさであるためもっちり重い。


「では、妖精様。祝福をお願いいたします」

「はーい。この子はなにちゃん?」

「この子はワイトです」

「ワイトちゃん、これから長い人生幸せに」


 ほわっ


 ワイトのしっぽの先がタオの実色に染まる。


「ありがとうございます。では次の子を」

「はーい。この子なにちゃん?」

「この子はブラウです」

「ブラウちゃん、走るの早そう!元気に走れますように!」


 ほわっ


 ブラウの前足の先がタオの実色に染まる。


「ありがとうございます。では次の子を」

 と、この調子でどんどん赤ちゃんが運ばれてきてはどんどん祝福を授けてゆく。


 途中、あまりにもシャオマオがデレデレとしたり、勢い余って赤ちゃんに頬ずりしたりするのをみたユエが嫉妬してすねたりするので休憩が入ったりもしたが、それでも順調に祝福は授けることが出来た。


「赤ちゃん可愛かった~」

「シャオマオ、赤ちゃん好きなの?」

「うん。かわいいもん!」

「俺と結婚したら赤ちゃんが―――」

「はいアウト―!」

 ライの強烈なツッコミが入る。


「シャオマオちゃん。スピカが拗ねて赤ちゃん返りしてるよ」

「ああ!スピカも赤ちゃんになってる!」

 スピカは歯が生えてもう普通のご飯も食べられるようになってきたのに、哺乳瓶を持つママさんから乳をもらって飲んでいるのである。


「スピカどうしたの?さみしくなっちゃったの?」

「にゃ」

「そっかー。ごめんね。じゃあ午後はスピカと遊ぼうかな」

「にゃん」

 喜んだスピカからべろべろに舐められるシャオマオはきゃっきゃと笑う。


「妖精様。では午後は面白い場所がありますのでそこへご案内しますよ。十分走れますのでスピカも満足すると思います」

「走るの?ユエ!背中に乗せてくれる?」

「もちろんだよ」

「やったー!」


 午後、昼食を終えて赤ちゃんズと昼寝をしたシャオマオは里長からもらった着物に着替える。


 若者の着物なので裾が短く膝まで見えているので恥ずかしがったが、里長(さとおさ)に「孫が生きてたらこれくらい・・・」と泣かれたため積極的に着ることにした。

 因みに帰るときに知ることになるのだが、里長の孫は生きている。


 ラーラが案内してくれた道は自然そのままで適度に険しく距離があり、ついてきた子供たちやスピカのために途中で休憩が必要なくらいだった。きっと帰ったら疲れてぐっすり寝てくれるだろう。

 休憩をはさんでしばらく走ると漆黒の巨石が立つ広場に出た。


「ラーラ、ここが面白いところ?」

「ええ。狼の里に伝わる金狼様と銀狼様が最初に地上に降り立った場所と言われています」

「まあ!」

 林の中にぽっかりと開いた広場。

 人工的にも見えるつるつるとした人の背を優に超える巨石が二つ、まるで抱き合う恋人同士のようだ。

 その足元には草花が咲き乱れて複雑だが優しい香りが充満している。


「狼の里の者はここを大切な場所として守っています。周りの花は年中枯れることがありません」

「すてき~」

「シャオマオちゃん、あの岩なんか感じる?」

 ライはちょっと圧倒されたような顔をしている。


「あれね、この星のおへそよ」

「おへそ?」

「この星の一番真ん中」

「!?」

「ここから始まったのよ」

 うんうんと頷くシャオマオに、感動して涙を流すラーラ。

「この星はここから始まったという古い言い伝えは本当だったか・・・」


「シャオマオここにいるとすごく元気になるみたい」

 すうっと空気を吸って、深呼吸。

 指先までエネルギーが循環してる。全身がポカポカする。


「グルル」

「うん。ちょっと休憩させて。シャオマオったら、ちょっと眠いかも・・・」

 花の中に入って行って、横たわるユエを枕にシャオマオが横になると話している間に瞼が閉じてしまった。


「妖精様が微睡む様子を絵に残したい・・・!」

「ラーラ、ベルが絵を描けます!後で絵に残してもらいましょう」

「なんと!ベル。この光景をしっかりと目に焼き付けてくれ」

「はい!」

 護衛と子供たちのお世話でついてきた里の男たちがざわざわとした。





「銀。初めて会った時のことを覚えているか?」

「・・・・・・・」

「金が先に生まれた。そして、銀が生まれた。初めて向かい合って、自分というものを知った」

 銀が座っている場所は一面の花畑だ。

 そこへ金も座る。


「銀を知って初めて金となったのだ。銀も同じだろう?」

 銀の器はじっと金を見つめる。


「銀。銀。美しい銀。愛してる」

 ぎゅうと金が銀を抱きしめる。


「早く銀の愛が馴染むといいな。俺を愛する銀。早く目を覚ましてくれ」

 愛しいものに口づけして、金は目を閉じて昔を懐かしんだ。



「うーん」

「ぐあう!」

「シャオマオちゃん!」

 シャオマオが目を覚ましてすぐに、ライが駆け寄ってきた。


「シャオマオちゃん!体調は?」

「え?とってもいい夢を見てすっきりよ」

「ホントに?」

「うん。今ならどこまででも飛んでいけそうなくらい・・・」

 上半身を起こしたシャオマオは不思議な感覚に首をひねった。


「シャオマオ・・・あれ?なんだか・・・」

「シャオマオちゃん。落ち着いて・・・」

「上半身が重い?」

 ちらりと自分の体を見て、シャオマオが目を見開いた。


「おっぱいおっきい!!」

「シャオマオちゃん!!!」

 あまりにそのまんまな発言に、ライのツッコミが入った。


 シャオマオは鏡がないのでわからなかったが、肉体は成長して成人を優に超えたくらいになっている。

 その美貌は男女問わず惑わすような妖艶さも加わり、妖精としての魅力がにじみ出ている。

 視線を物憂げに伏せるだけで、どんなものも手に入れることが出来るだろう。


「えー!?シャオマオったらまた大人になっちゃったの?」

 艶々の唇が紡ぐ言葉は今までと変わらずで、ライはちょっとほっとする。

 中身まで急に大人になってしまったらどうしようかと思っていたのだ。


「シャオマオ」

 木陰で服を着たユエがゆったりとやってくる。


「シャオマオ。愛してる。俺と結婚してくれ」

 シャオマオの前に跪くユエは、今まで以上に本気だった。


 いつもなら恥ずかしくて逃げだすシャオマオも、まだ早いと言って止めるライも、シャオマオを神聖視するラーラも止められないくらい、真剣なプロポーズだった。


「え、あ、あの、えっと、ユエ。あの・・・」

「シャオマオ。俺だけだと言ってくれ。俺はシャオマオをどんな宝物よりも大事にする」

「ユエ・・・」

「誰よりも愛してる。シャオマオ。死ぬまで悲しませない」

 シャオマオの手を、すっとすくい上げて口づけた。


「ユエ。シャオマオも、ユエが、一番大切・・・ううん。一番、すすす、すき!」

「シャオマオ!」

 ユエが顔を上げると、真っ赤になったシャオマオが目を回していた。

「シャオマオー!」

「今回の求婚も失敗か・・・」

 ライの言葉がむなしく響いた。



 シャオマオがぱちりと目を覚ますと、傍らにはサリフェルシェリが座って団扇でシャオマオをゆったりと仰いでくれていた。

 畳の部屋で、ちりんと風鈴が鳴る日暮れの時、同じ布団にはスピカが寝そべっている。


「サリー」

「目が覚めましたね」

 にこっと笑うサリフェルシェリにシャオマオは抱き着いた。


「サリー!」

「はいはい。どうしました?」

「またシャオマオ大人になっちゃって、ユエが結婚しようって」

 ぎゅうっと抱きつくシャオマオの背をトントンと優しく叩いて慰める。


「またプロポーズされてしまったんですね」

「うん」

「嫌でしたか?」

「嫌じゃない!嬉しいの。嬉しいんだけど恥ずかしくて、びっくりしちゃって・・・」

「目を回してしまったんですよね」

「うん・・・」

「シャオマオ様は体だけ大きくなって、まだまだ子供です。ゆっくりでいいんですよ。ユエもゆっくりでいいとわかっているはずなのに、気持ちが溢れてしまったんでしょうね」

 ふふふっと笑う。


「美しいシャオマオ様。みな貴方が好きなんです。そばに居たいんですよ」

「サリーもそばにいてくれる?」

「ええ。もちろん」

「にゃー」

「スピカもいてくれるの?ありがとう」


「シャオマオ様の気持ちが落ち着いたら、ユエに返事してあげてください。急がなくてもいいですよ」

「うん」

 シャオマオの髪を梳きながら、サリフェルシェリがにこにこという。



「ユエ」

 シャオマオが部屋を出て庭に出ると、ユエがたたずんでいた。

「もう平気かい?」

「うん。もう元気になったの」

「すまない。シャオマオが大人になったのを見たら嬉しくて、慌ててしまったんだ」

「ううん。謝らないで。・・・嬉しかったの」

「シャオマオ・・・」


 シャオマオは思い切ってユエに抱きついた。


「嬉しかったの。ユエ」

「うん」


「シャオマオも、ユエが宝物なの。心の準備ができたら、ユエとずっと一緒にいるね」

「うん」

 シャオマオは頬に雨粒みたいに降ってくる涙を感じた。


「ユエ。ずっと一緒に居よう。もう絶対ユエを一人にしないからね」

「うん」

 暖かい雨が、しとしとと降ってくる。


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