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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第八章

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スピカはシャオマオの家族です

 

「スピカ~。今日はジョージの所に行ってお城で遊ぼうね~」

「ぴぃ」

 例の着ぐるみを着こんで準備したシャオマオは、スピカを抱き上げてにこにこだ。

 今日はシャオマオの戦闘訓練の日である。

 が、ジョージ王子と遊ぶ日でもあるので、遊ぶのがメインだ。


「シャオマオ様。紐が縛れましたよ」

「ありがとうサリー。これで行ってくるね」

「はい。夜にはお戻りくださいね。サリーとミーシャとご飯を一緒に食べましょう」

「はーい!行ってきます!」



「シャオマオ。この大猫の赤ちゃんは?」

 城についてスピカを紹介したら、ジョージ王子は持ち上げた猫が思ったよりもずっと骨太でがっしりとした体格なのに驚いた様子だった。


「うん。スピカはねえ、猫ちゃんじゃなくてユキヒョウの赤ちゃん」

「ユキヒョウ・・・・また大きくなりそうだ」

 猫じゃないと言われて目を丸くしたジョージ王子も、スピカのむっくりした足の太さを見て将来の大きさを想像したのか笑った。


「スピカって変わった響きだね。名前、シャオマオが付けたのかな?」

「そう!しっぽのあたりのこの模様、お星様みたいでしょ?だからスピカよ」

 シャオマオの前の星の言葉で名前をもらったスピカ。


 名付けた途端にシャオマオが「お星さまの形~」と喜んでいた模様がぼんやりした形からはっきりと星の形になった。

 ちょっと普通では見つからないような不思議な模様をしている。



「で?シャオマオはスピカのお母さんの役をしてるの?」

「ちがーう。シャオマオったら怪我したら怒られるからこれ着てるの!」

 今日もいつもの着ぐるみ姿でスピカを連れてきたのでみんなが笑いをこらえている。


 ジョージ王子の従者のクレムなんかは露骨ににこにこしながら、「ミルクはもう一つ用意したほうがいいですか?」なんて聞いてくる。


「赤ちゃんじゃないったら!」

 シャオマオがプンスコ怒っても、みんな笑いをこらえるのに必死である。


「それで、一緒に連れて来たってことはスピカも仲間に入れてあげるのかな?」

「そーよ!お城でスピカとかくれんぼしたいなって思ったの」

「わかった。じゃあ誰が鬼か決めようか」

「ぴぃ!」

「スピカがやりたいんだって」

「ぴぃ!」

「すごいな、会話を理解してる・・・」

 スピカはシャオマオと普段から追いかけっこやかくれんぼをしているため、ルールを理解している。


「じゃあね、スピカ。お城の中でかくれんぼよ。隠れる所は一階だけ。隠れる人はシャオマオと、ジョージと、ミーシャとクレム!」

「え!私もですか?」

「クレム。これも訓練だと思いなさい」

 ウィンストンがクレムに言う。


「クレム。王子付き従者を目指すのですから、最後まで残らなければなりませんよ」

 ウィンストンはクレムの教育係をやっているからか、クレムには厳しい。

 これは王子を守りつつ最後まで残れと言っているのだろう。


 でもここで不利なのは城に住んでいないシャオマオとミーシャだ。

 なにせ毎日いるわけではないから匂いが目立つだろう。


「じゃあね、スピカ。みんなの匂いを覚えてね」

「ぴぃ」

 シャオマオが抱き上げて順番にみんなの匂いを嗅がせる。

 すぴすぴと鼻を動かして、みんなの匂いを覚えようとするスピカは特別可愛い。


「ウィンストン。時計は持っていますか?」

「はい。勿論でございます」

「じゃあ、私たちが見えなくなってから、五分後にスピカに合図をしてあげて」

「畏まりました」

「じゃあね、スピカ。ウインストンが合図したら探してね。んーと。お昼のチャイムが鳴るからそれでおしまい。またここに戻ってきて」

「ぴぃ!」

「す、すごい理解力・・・」

 クレムが驚く。

 どうも念話で意思の疎通が図りやすいと思っていたが、それでも驚かれるくらいスピカは頭がいいようだ。


「じゃあみんな隠れましょー」

「わかったよ」

「じゃあ、スタート!」

 シャオマオの合図で全員が散り散りに隠れ場所を探して走ったり飛んだりして始まったかくれんぼだったが、スピカは制限時間内に全員を見つけてしまった。


 一番最初に見つかったのはシャオマオ。女性騎士のおふろ場で見つかった。

 やはり香りがなじみ深いので見つけやすかったみたいだ。


 ミーシャは獣人の騎士の食堂にいたのに見つかった。

 鳥族の匂いがミーシャだけだったのでより目立ってしまったのらしい。


 クレムはほとんどズルと言われそうなくらいの方法で王子を隠し、自分は逃げ回っていたのに捕まってしまい、ウィンストンが「王子の隠れ場所が甘かったようですね・・・」と有事の際の隠れ場所を新しくするために王に進言するとかなんとか言っていた。


 本来は隠し通路になっていて外に出ることが出来るのだが、今回は城の1階と決まっていたので扉を閉めてとどまっていたのだ。


 有事の際に混乱している場でスピカほど鼻の利く獣人がいるかどうかは分からないが、獣を連れてこられたら入り口が見つかってしまうということだ。

 城の防衛を考える上で重要なことに気が付けたとウィンストンは喜び、スピカはシェフの作った離乳食をご褒美にもらって嬉しそうだった。



「それで、そのあとはお昼ご飯を食べて、ちょっとだけお昼寝して、ミーシャと訓練して帰ってきたの」

「そうでしたか。それは有意義な一日でしたね」

「ぴぃ!」


 おふろを済ませた子供たちに、サリフェルシェリは夕飯を準備して待っていた。


 ちょうど、エルフの大森林から送られてきた川魚があったため、今日は川魚の焼いたものと大量のサラダ、シャオマオが好きなお米とお味噌に近い発酵食品のスープといったラインナップで、シャオマオを飛び切り喜ばせることが出来た。


「今日、ユエたち遅いし、もう暗くなったからミーシャにーにはお泊りよ」

「わかりました」

 くすくす笑いながら応じてくれたミーシャ。

 以前よりも不在がちな過保護者たちの代わりにミーシャが一緒にいてくれることが多くなった。

 シャオマオの守りというよりは、過保護者たちとシャオマオの心の安寧のためである。


「今日改めて思いましたが、スピカは本当に有能ですね」

「スピカったらとっても頭いいの」

「そうですね」

「どうしてにーにやねーねに意地悪されちゃったのかな?」

 シャオマオは不安げな顔でお腹を丸出しにして寝ているスピカを見ている。


「確かに体も小さく食べる量も少ないですし、気持ちの優しい子です。意地悪されても抵抗できなかったんでしょうね」

「ううう。しょんなの・・・」

「シャオマオ。悲しまないで。そのおかげでスピカはシャオマオと出会えたんですよ」

「うん」


 シャオマオがじっと見つめていたら、眠りながらむぐむぐと口を動かしていたスピカがうっすらと目を開けた。


「スピカ?起きちゃったの?」

「ぴぃ・・・」

「あ!おトイレ!」

 シャオマオはスピカを抱っこして窓を開けてそこから庭に飛んで出た。


「ぴい!」

 スピカはトイレの場所を覚えるのが早かったので、庭の何か所かがスピカのトイレになっている。

 地面に降ろすと今日は外に近い柵の近くにてててっと走って向かって行った。


 スピカがトイレを終えて、ふっと変わった匂いを感じたほうを見たらピコピコ動く何かがいた。

 白の、耳の大きな・・・ネズミ???


 スピカの興味を引くように、ピコピコ動いてはいい匂いをまき散らしている。

 怪しい・・・。


 怪しいけど気になる・・・・。


 びょんと飛んで一気に距離をつめると、茂みの向こうから何かがにょっきり出てきてスピカを捕まえて素早く袋の中に突っ込んだ。


「ぴい!」


「黙らせろ!見つかるだろ?!」

「いや、もう樽に突っ込めば声は漏れねえ」

 ダミ声が聞こえてきて、スピカは悪意に体を震わせた。

 もう男たちは走っているのか袋が揺れてもみくちゃになる。


 スピカはいい匂いに意識を持って行かれそうになったが、何とか一生懸命大きな声を出そうと頑張った。

「ぴぃ!ぴぃ!ぴぃ!」



「スピカ?」

 声が遠い。


 スピカはいつも用を足したらシャオマオに報告に来る。

 そしたらシャオマオはトイレをきれいにしてあげて、足を洗ってから部屋に入るのだ。


 何も言わずに柵の外に自分から出るような子じゃない。


「ミーシャにーに!!スピカが連れてかれた!!!」

「え!?」

「シャオマオ様!ミーシャとサリーに任せてください!」


 シャオマオは窓からミーシャに声をかけると、素早く飛んでスピカのトイレの近くに向かう。

 ミーシャとサリーは武器を持って、慌てて追いかけたがシャオマオはもう柵を越えて飛んでいくところだった。


「シャオマオ!!一人で行かないで!」

「ミーシャにーに!スピカがどこかわからない!!」

 追いついてきたミーシャに悲鳴みたいに叫ぶシャオマオ。


 声もしない。

 シャオマオにはスピカみたいに立派なお鼻も耳もない。

 匂いもわからない。

 汗が噴き出して自分の心臓の音ばっかりがする。


「精霊に追わせますから安心してください!」

 走って追いついたサリフェルシェリは精霊札を破いてスピカを覚えている風の精霊獣を呼び寄せて後を追わせた。


「シャオマオ様・・・大丈夫ですよ」

「ううう・・・」

 俯いたシャオマオから震える声がした。


「シャオマオ?」

「シャオマオ様・・・?」

「許さない・・・・シャオマオの家族なのに意地悪するなんて・・・!!!」

 怒りのあまり、シャオマオがぶるぶる震えていた。


「光の精霊ちゃん!夜の星スピカを探して!!」

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