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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第八章

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最後への階段 4

 

「シャオマオ!」

「お帰りなさいユエ!ライにーに!」

「ただいま!シャオマオちゃん!」


 あれから二人は外泊を伴うギルドの指名依頼も順調にこなすようになった。


「ユエもにーにも怪我無い?」

「勿論だよ。かすり傷もない」

「シャオマオちゃんが悲しむと思ったら、怪我なんかできないもんなぁ」

 二人ともニコニコしてシャオマオを抱きしめてくれる。


「シャオマオ。これお土産だよ」

「きゃあ!きれいなお花ね。ありがとう」

「うん。途中の広場に咲いててね。シャオマオに見せたかったから」

 小さな野花を小さな花束にしてプレゼントしてくれるユエ。

 シャオマオはこういったユエのセンスを愛していた。


 小さくて黄色の花はタンポポのように素朴な花だが丁寧に摘まれていて、シャオマオが喜ぶようにと思って集めてくれたのがよくわかる。


「ライにーに。お花入れる瓶、ちいさいのあったかな?」

「ああ、ダニエル王からもらった中に小さな花瓶があったな。地下の倉庫確認してご覧」

 因みにライが花瓶と言ったのは人族の伝統工芸(高級)品である。


「ああ、やっと家についたんだから、先に風呂入っちゃうね。埃っぽい」

「うん!すぐ入れるように大浴場のお掃除しておいたのよ」

「ありがとう!俺の妹はなんて気が利くんだ!」

 くりくりと頭を撫でられてお礼を言われるとちょっと照れてしまう。


「シャオマオったらお花枯れないように先に花瓶探してくるね」

「俺も行くよ」

「ユエ。疲れてるんだから先にお風呂に入ってもいいのよ?」

「地下倉庫は暗くて危ない。俺も一緒に探すよ」

 シャオマオは夜目が利かない。暗い場所ではライやユエのネコ科の方が探し物が早い。


「じゃあ、お願いします」

「わかった」

 二人で庭に置いてあるバケツに一時的に水を張って花を枯れないように入れておく。


「シャオマオ。手をつなごうね」

「はい」

 地下倉庫は外から入るようになっている。

 ユエが扉を開けてくれて、そろそろと階段を下りる。


 光が届かないくらい降りたら到着。


「明かりをつけるから少し待ってね。俺の服を掴んでいて」

「うん」

 ユエはシャオマオでは全く見えない地下の暗がりでも、何か見えているようによどみなく動く。


 ぽわん


 魔石を使った魔道具のライトが付くと、地下の物置がぼんやり照らされた。


「なんだかいっぱいね」

「うん。ライはきれい好きだが物をあまり捨てないでため込む癖がある」


 よく見れば、棚はうっすら埃をかぶっているが、きれいにカテゴリー分けされて整然と並んでいる。

 装飾品などがある棚を見れば、大きさ別に花瓶なども収納されていた。


「これ、あの黄色いお花にぴったりよ!かわいい」

 エメラルドグリーンのぷっくりした厚みのあるガラスの花瓶。

 お花の本数的にもこの花瓶がちょうどいいだろう。


「重いから持つよ」

「ありがとう」

「どういたしまして」

 片手で持って、シャオマオを先に歩かせる。


「・・・」



「シャオマオ。先に出口まで行ける?」

「どうしたの?」

「うん・・・」

「わかった。先に行くね」

 言いよどんだユエに気を使って、シャオマオは深く尋ねないことにした。

 ユエの耳が周辺の音を拾おうとしてしきりに動いてる。きっとなにか感じたんだ。


 ユエはシャオマオが階段の上にちゃんと到達して、扉を開けるまで見守ってから動き出した。


 奥の敷物が丸めて立てかけてあるところだ。

 季節外れの敷物などの使ってないものが何本も立てかけられている。

 何かが体を隠せるところなどそこしかない。


「おい。いるのはわかっているぞ」


 ユエの声にも何の反応もない。


 しかし気配と匂いがする。


「出てこないなら悪意あるとみなす」


 すこし、ユエの気配が濃くなる。

 殺気というものかもしれない。


 途端にそこにいる相手がおびえている匂いに変わる。


 ユエは手元の明りを消した。

 獣は明るいと出てこないだろうと思ったのだが、ランプの明かりが消えたとたんに敷物の裏に隠れていたものが弾丸のようなスピードで飛び出した。


 それをユエは悠々と手でつかんだ。


「ぴい!」


 ネコ科の獣の幼体のようだ。


 さて、ここでどうするかだ。


 シャオマオに見られたら「いじめたらだめー」とはいいそうだ。

「飼いたい~」「お友達よ」もあるかもしれない。


 じたじたと暴れる獣の首根っこの後ろの毛皮を掴んでるので痛くはないはずだが、獣は唸り声を上げながら届かぬ前足でユエの手から逃れようと必死にもがいている。


「ふむ・・・。一番シャオマオに怒られない方法・・・」




「ユエ!大丈夫だった?なんだったの?」

 扉を開けて地上へ戻ってきたユエに、シャオマオが声をかけた。


「これだ」


「ぴい・・・」

 首根っこを掴まれてブランとしている獣。

 ジタジタするのに疲れた獣はパヤパヤした真っ白な毛に黒の模様が美しい子だった。


「きゃあ!かわいい!かわいい!シャオマオのお友達よ!!えーっとね!えーっとね!名前は・・・」

「シャオマオ。飼うのかい?」

「あ、ぱあぱとかまあまが迎えに来るかな?」

 しょんぼりしたシャオマオが眉を下げるのを見て、ユエは「いや、他の獣の匂いはしないな」と答える。


 それどころかがりがりで飢えていて、汚れていて、まともに世話されてない様子だ。


「せめて洗ってきれいにしてからお伺いを立てようか」

「うん!」

 抱っこしたがるシャオマオを抑えてユエが高く上げる。まだ汚れているので触らせるわけにはいかない。

 ちょっと残念そうだったが、うちのお母さんことライには、ちょっとでも飼っていいと言われるようにおめかししてから見せなければと、シャオマオはユエにお風呂のついでに洗ってほしいと頼んだ。



「え~。よりによってユキヒョウの子供かぁ・・・」


 きれいに洗ってから少し温めたヤギのミルクを飲んで眠ってしまったユキヒョウの子供。

 洗ってみれば美しい真っ白な体に点々とある黒の文様。

 太いしっぽを枕に、ぽんぽこりんのお腹を晒して眠っている。


 最初は強い獣人の匂いにびくびくとしていたが、シャオマオが声をかければ安心した様子だった。


「ゆ・き・ひょう?」

「そう。ユキヒョウ。ヒョウって名前だけど、分類としては虎だね。寒い地域に住むんだ」

「そうね!白いものね!じゃあねえ、お名前は女の子だしかわいいのにしないと」

「名前つけるの?」

「だってお名前ないと呼びにくいよ?」

「え~?飼いたいの?」

「え~?ダメなの?」

 シャオマオはライの反応にぷくっとほっぺたを膨らませる。


「シャオマオちゃん。獣人じゃないんだから、一生お世話が必要だよ?」

「わかってるもん!ちゃんとお世話できるよ」


「シャオマオちゃん。ユキヒョウが何食べるか知ってる?」

「えーっと、お肉かな?ね?サリー?」

「そうですね。肉食です」

 お茶を飲みながらくすくすと笑うサリフェルシェリは、今は中立で飼ってもいいともダメともいわない。


「初めて飼うなら猫とかさ、シャオマオちゃんにも扱いやすい獣の方がいいんじゃない?ユキヒョウ、結構おっきくなるよ?」

「ユエよりも、ライにーによりも大きくなる?」

「そこまでじゃないけど・・・」

「じゃあ、うちにはもうライにーにもユエもいるんだから大丈夫よ!」

「俺たちは獣人です!」

「やーん。飼うの飼うの!かわいいの!シャオマオもう好きになっちゃったの!」


 じったじったと踊るように地団駄を踏んでから、シャオマオはひっしとライの足にしがみついた。


「ライにーにお願いよ・・・」

「うぐ・・・かわいい」


「ライ。狩りの仕方は俺が教える。野生に帰れるように育てて、望めば群れで暮らせるようにしてやればいい」

 救いの手を伸ばしたのはユエだ。


「そうですね。ユエのサポートがあるならば、将来のことも考えられますし小さい頃の面倒をここで見る、ということでいいのかもしれませんね」

 サリフェルシェリがさらに一手伸ばした。


「まあ、お前らがそういうなら・・・・」

「やったあ~!!ライにーに大好き!」

 しょうがないなぁと折れてくれたライと抱き合って喜びを共有して、シャオマオは飛んで眠るユキヒョウの所へ向かった。

 その気配で起きたのか、ぴすぴす鼻を鳴らして眠っていたがむっくり起き上がって、うろうろし始めた。


「あ!トイレだ!」

 ライが走ってきてユキを抱くと、窓から庭に飛び出していった。


「まあ、結局一番お世話をしてしまうのはライになると思いますので、シャオマオ様も率先してお世話をしてあげなければいけませんよ」

「はーい!」

 シャオマオも追いかけていって、ライがやっているお世話を見守って、今度は自分ができるようにする。


「小さい頃は定期的に親が舐めてやるんだけど、コイツ、あー、コイツはもう自分でミルクも皿から飲めるしトイレもできるみたいだ」

「じゃあ、おトイレの場所作ってあげないと」

 二人で相談しながらいろいろと準備するようだが、ユエはうろうろしたまま会話に入れない。


「ユエ。この子の寝床とおトイレ作ってぇ」

「わかった」

 シャオマオから用事を頼まれてとてもうれしそうにするユエ。


 結局シャオマオが喜ぶとなれば、シャオマオ以外の世話をしたことがないユエもこの獣の面倒を見ることになるだろう。


 シャオマオにまた一匹家族が増えることになった。

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