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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第八章

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子どもたちと遊ぶ妖精様

 

「ここがデューデリアリの家だよ」

「ありがとうみんな」

 シャオマオの歓迎のあいさつで先陣を切ったが気絶してしまったチビエルフの家だ。

 ノックしてしばらく待つと、お父さんらしき人がドアを開けてくれた。


「これは妖精様!!」

「デューデリアリちゃんいますか?」

「います!さっき目が覚めてから泣き止まずに困っていたんですよ」

「泣いてるの?」

「ええ。うまく挨拶ができなかったと・・・」

「アリちゃんに会ってもいい?」

「もちろんです。狭い家ですが入ってください」


 脇にどいてくれたので、年少組のみんなとユエも一緒に入る。

 シャオマオは泣き声を頼りにずんずん進む。


「うわああああああああん」

「デューデリアリ。目が溶けちゃうわ。もう泣き止んでもいいんじゃない?」

「だって~だって~れんしゅうしたのにい~~!」

「うんうん。上手にできてたじゃない」

「うわあああああん!できなかったもん~~!」

 泣き声が聞こえた部屋の扉が開いていて、そこから顔をのぞかせると、泣いているデューデリアリを縦抱っこでお母さんが慰めているところだった。


 窓からの光で穏やかに微笑むお母さんの顔は本当にきれいだ。

 シャオマオがぽーっと見惚れていたら、エルメルフェルナがデューデリアリに声をかけてくれた。


「おい。泣き虫デューデリアリ。いつまで泣いてるんだよ。シャオマオが会いに来てくれたぞ」

 くすくす笑いながら声をかけたらハッとしてこちらを向いたデューデリアリが、部屋の入り口にいるシャオマオの顔を見てまた真っ赤になって口をパクパクし始めた。驚きのあまり涙は止まったようだ。


「まあ妖精様。いらっしゃいませ」

 にこっと微笑んでくれるお母さんの匂いも優しく、笑顔も本当に美しい。前の星で見た聖母像を思い出した。


「デューデリアリ。ほら。妖精様が来てくださったわよ。ご挨拶がまたできるわ」

 地面に降ろされたデューデリアリはさっとお母さんの足の後ろに隠れて、こっそりとシャオマオを覗いてくる。


「デューデリアリちゃん。アリちゃんって呼んでいい?シャオマオはねえ、妖精様じゃなくてシャオマオって呼んでほしいの」

 ドアをくぐって部屋に一歩入って、距離を開けてしばらく返事を待つ。


「ほら。デューデリアリ。さっきのやり直しだよ。頑張れ」

 エルメルフェルナが元気づけるようにシャオマオの後ろから声をかける。


「アリちゃん。握手しよう。シャオマオと友達になってほしいの」

 ニコニコ笑ってシャオマオはその場で手を伸ばす。

 きっといきなり抱きしめるのはやりすぎだったんだと思う。デューデリアリのペースがあるはずだ。

 シャイな相手には相手がその気になるまで待たないといけない。


 シャオマオがにこにことして手を差し出したままなので、デューデリアリはちょっと考えてから、お母さんの足に隠れていた体をまたじりじりと横向けに進めて近づいてきてくれる。


 手を思いっきり伸ばして、ちょっと遠くからシャオマオの指先にチョンと触れる。

 シャオマオはそれでも動かないでいた。

 すると、ちょっとだけデューデリアリがすすんで指の腹が触れ合う。

 相手が触るままにしていたら、手のひらに指が当たる。

 くすぐったい。

 それでも動かないでいたら、小さな手が、シャオマオの指先をきゅっと握ってくれた。


「ありがとう、アリちゃん。もうシャオマオのお友達よ」

「・・・うん」

 真っ赤な顔だったが、デューデリアリが照れながらも真正面からシャオマオを見てくれた。うれしい!


「アリちゃんのママ。お外で遊んでもいい?」

「もちろんです。まだ夕飯まで時間がありますからね。エルメルフェルナ。いつもの広場までなら行ってもいいわよ」

「わかった。今日はナイフの一本も持ってないからな。気を付けるよ」

 今日は妖精様の歓迎のため、エルフの大森林を守る警備のもの以外は武器の携帯を禁止されている。

 デューデリアリが遊びに行ける広場なら、大きな子にはちょっと物足りないが安全だ。


「ユエ、一緒に行ってみんなのことも守ってね」

「勿論だよ」

 部屋の外から様子をうかがっていたユエも、穏やかに笑って請け負ってくれる。


「しゅっぱーつ!」

 シャオマオと手をつないだデューデリアリが元気に家を出るのを、両親がにこにことして見送ってくれている。


「アリちゃんのママとパパ優しいね」

「・・・うん」

 デューデリアリが恥ずかしそうに返事してくれる。

 こんなにシャイなのに妖精へのご挨拶係に選ばれたのはかわいそうだったのかもしれないなぁとシャオマオが考えていたら、「シャオマオ。デューデリアリがシャイなのは初めだけだ」とエルメルフェルナが教えてくれた。本当は元気でおしゃべりで、自分より年上の子の真似を何でもしたがる積極的な子なのらしい。


「だって、しゃおまお、おはなしよりも、ずっとかわいい」

 真っ赤になったデューデリアリのか細い声に、シャオマオも赤くなる。


 妖精にまつわる童話やお話はいくらでもある。それを聞いてみんな妖精様のことを大好きになる。

 やっと現れた妖精様であるシャオマオのことだって、サリフェルシェリから伝わっていることも多いのだろう。いろいろと聞いてよく知っていたのらしい。

 そして想像を上回る可愛いシャオマオが現れたのでみんなが一瞬で心を奪われてしまったのだという。


「・・・シャオマオの美しさは罪深いな」

 ユエが真剣な表情でつぶやいた。



 しばらく歩いていつもの広場、と言われる場所についた。

 人通りもあって大人たちも近くに居るような、年少組の一番小さいデューデリアリが遊びに行ってもいい安全な広場である。


「追いかけっこするか?逃げていいのはこの広場だけだ」

「シャオマオ飛んでいいの?」

「そうよ!シャオマオ飛べるのよね!飛んで見せて!!」

 ちびちゃんズがきゃあきゃあとまとわりついてくる。


「いいよー」とスイっと浮き上がって、みんなの頭の上くらいをふよふよ飛んで見せたら全員の目がきらきらと輝いた。きゃあ~と上がった歓声で精霊たちも集まってくる。精霊たちは楽しそうな場所が大好きだから、子供の周りによく集まってくるのだ。


「精霊ちゃんたちも一緒に遊ぼうねー」

 シャオマオが声をかけると、水の精霊がさあっと霧のような水を地上の子供たちに撒く。

 ひんやりとした水をかけられた子供たちがきゃあきゃあと笑いながら逃げ惑い、シャオマオが上空から逃げる子供たちに水をかける追いかけっこが始まった。


「シャオマオ!空からなんてずるいぞ!」

「ずるくないもーん」

 シャオマオがつーんと顔をそらしたら、その顔にぴゅっと水がかかった。


「あはは!精霊様の力が使えるのはシャオマオだけじゃないんだよ!」

「むう!」

 シャオマオはぐいっと袖で顔をぬぐってびしっとエルメルフェルナを指さす。


「精霊ちゃん!水鉄砲ぴゅー!」

 エルメルフェルナの顔にも水がかかる。


「やるじゃないか・・・」

「エルもね!」

 二人でニヤッと笑いあって水鉄砲遊びが始まったが、シャオマオは空を縦横無尽に飛んで水を除けるし、油断している子を狙って水をかけるので全員がまんべんなく濡れてしまった。


「シャオマオ。いったん休憩だ」

 全員がびしょびしょになって、小さい子がくしゃみをしたところでユエが声をかけた。

 シャオマオが慌てて精霊に頼んでみんなの服を暖かい風で乾かしてもらう。


 火の精霊と風の精霊が協力して、ドライヤーみたいにみんなの服も髪も乾かしてしまうのを見てエルメルフェルナが驚いた。

 精霊札も使わずに、二種類の精霊にお願いができるなんてエルフ族にもそんなことが出来る人を見たことがなかったのだ。しかもシャオマオは空を飛びながらだ。

 やはり妖精様とは自分達とは全く違う生き物なのだということを思い知らされる。


「やっぱり空を飛ぶのって楽しそうだな」

 エルメルフェルナがまぶしそうに空にいるシャオマオに言うと、「二人ずつくらいなら一緒に飛べるよ」とシャオマオが気軽に返事する。


 まずはボスのエルメルフェルナとデューデリアリの二人と手をつないで、三人で輪を作る。

「大丈夫だよ。片手だけでもちゃんと飛べるからね。シャオマオと手を離さなければ落ちないし、もし何かあってもユエがいるから受け止めてくれるよ」

 手をつないでいる二人は期待に顔を赤くしながら何度も頷く。


「じゃあいくよ」

 シャオマオが「浮かべ」と思えば子供たちは一緒に浮かぶ。

 手をつないでいる二人は緊張と驚きで声が出ない様子だが、周りで見ている子たちはきゃあきゃあと歓声を上げる。


「広場一周回ったら交代しようね」

 人族の子供達とも飛んだことがあるが、この星の子たちは割と高いところが平気なようだ。

 エルフ族の子供たちはみんな身軽で、狩りに行くと木の上に登って獲物を待ち伏せしたりもするので高いところは平気な子が多いらしい。

 それを聞いてシャオマオは広場を取り囲む高い木の上まで高度を上げる。


「わあ~。エルフの大森林ったらほんとにきれいで大きいのね」

 モコモコのブロッコリーのような大木がたくさんで、端が見えない。

 この大きさの結界が張ってあるなんて、本当にエルフ族は歴代魔力の強いものが多いのだろう。

 一緒に空を飛んだ二人も、改めて上空から自分の住んでいる大森林の大きさ、美しさをみて驚いているようだった。


「シャオマオったらこの森だいすきよ!」

 地上に降りてきたシャオマオのピカピカ光るような笑顔を見て、やっとユエはエルフの大森林に来てよかったと思えたのだった。

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