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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第八章

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エルフの最長老とのご挨拶

 

「シャオマオ。かわいいね」

「え?」

 いつも褒めてはもらっているが、唐突にユエに褒められて驚いた。


「ここに来てそんなに嬉しいの?体が浮いてるよ」

「あにゃ」

 シャオマオはユニコーンの上に座っているようで座っていない。体が浮いていて、自然と鼻歌を歌っていたらしい。


 空気が濃厚で、精霊が元気で、なんだかおなかの底から嬉しさが沸き上がってくる。

 黙っていてもニコニコしてしまう。


「手をつないでくれるなら飛んでもいいよ」

「はい」

 ユエの言葉に、右手をつないでユニコーンに乗ったユエと並んで飛んでいく。


「妖精様だ!」

「妖精様飛んでる!」

 森の木の向こうから、がさがさとついてくる子供の気配と声。

 きっと大人に止められたのにこっそり見に来たのだろう。


「ユエ~。エルフの大森林、本当に魔素がきれいに浄化されてるね。シャオマオが居なくても大丈夫みたい」

「本当だね。星に帰る老人に会ったらすぐに帰ろうか」

 ユエもニコニコとしているが、本音がすぐに漏れる。


「いえいえ。シャオマオ様にはエルフの大森林をしっかりとご案内いたしますし、ゆっくりとエルフの歓待を受けていただきたいです」

 サリフェルシェリがすぐに帰ろうとするユエを笑顔で止める。


「そもそもシャオマオがただの老人の夢をかなえるためにここに来る必要はない」

「そうですね。シャオマオ様はお優しいので必要がないのにわざわざ来ていただけた。エルフ族に対する愛ですね」

「シャオマオの愛は俺のものだ」

「シャオマオ様は妖精ですよ?すべてに愛されて何を愛するかはシャオマオ様の自由です」

「関係ない。シャオマオはシャオマオだ。俺のシャオマオだ」

「おやおや。またユエが幼児帰りしましたね。シャオマオ様が広く世の中を見るようになったからと駄々をこねてはいけませんよ」

 シャオマオを挟んでにこにことしたままのサリフェルシェリがユエとやりあう。

 間に挟まれたシャオマオはだんだんと二人がヒートアップするのではないかと気が気ではない。


「シャオマオは普通の女の子だ。妖精様だなんだとシャオマオに群がるな」

「そうであれば貴方は幸せかもしれませんが、現実に目をつぶってはいけません」

「現実がそうなんだ」

「妖精様である事実をないことにはできませんよ」

 もう我慢できないと、二人に挟まれたシャオマオが叫ぶ。

「やーの!二人ともケンカやーの!」


「ケンカではありませんよ、シャオマオ様」

「ほんと?」

「ええ。こんなものはケンカとは言いません。でも、シャオマオ様を不安にさせたのなら申し訳ありません。この話はここまでにしましょうね」

「うん」

 サリフェルシェリがにこにことして話題を変えてくれる。


「エルフの大森林は、大昔に魔法が得意なエルフ族が集まって結界を張った森なんです」

「すごい!」

「ええ。それを少しずつ守りながら広げていって今の大きさになりました」

 その結界に入るための魔道具があのスプーンなのらしい。


「なんでスプーンなんだろ?」

「エルフ族は生まれて最初に親からもらうものが銀のスプーンなんです。長い人生死ぬまで食べることに困らないようにという願いが込められています。一番身近にあるものを鍵にしたのかもしれませんね」

「すてきねぇ」

 シャオマオは自分の首にかかっているスプーンを見つめてうっとりしている。

 人の気持ちがこもっている話を聞くのは大好きだ。

 愛が詰まっているスプーンも素敵だ。


「エルフ族はどうでもいいが、このシャオマオの瞳の色の宝石が入ったスプーンは気に入ってるよ」

「ユエの宝物になるかしら?」

「うん。シャオマオの次に大事なものがまた増えたよ」

「・・・ユエ」

「シャオマオ」

 二人はヨコヅナの上で抱き合う。


「ユエ。シャオマオ以外に大事なものがたくさんできるといいね」

「シャオマオくらい好きになれるものが現れないんだ」

「シャオマオくらい、周りの人も自分も大事にしてね」

「それでもシャオマオが一番なんだよ」

「ユエったら」


『番が仲良くてめでたいな、サリフェルシェリよ』

「そうですね」

 大喜びのヨコヅナに、苦笑を返すサリフェルシェリ。

 口の中が甘すぎるのであとで煮だしたハーブティーを飲もう。と心に決めた。



 少し小高い丘を登ると、木でできた小屋がいくつかぽつぽつと建っている場所にたどり着いた。


「ここがエルフの集落です」

 ヨコヅナたちと別れて歩いてやってきた場所で、まずはサリフェルシェリと同じような年代のエルフ族に囲まれる。


「妖精様、ようこそいらっしゃいました」

「お待ちしておりました。是非ご挨拶をさせてください」

「待ちなさい。まずは長老の挨拶を受けていただきます」

 集まってきた人にサリフェルシェリがストップをかける。

 パニックになるほどではないが、エルフ族の興奮が伝わってくる。


 集まってきた人たちはサリフェルシェリと同じ耳が横に張り出した、エルフ族の特徴がある人たちばかりで、服装もみな同じような神話の神様みたいな恰好をしている。


 男女で服装の別はないようで、身体的特徴もそこまで大きくないようだ。

 体の線が出にくい服装ではあるが、ぱっと見で年代や男女を見分けるのが難しい。


 髪や瞳は優しいカラーの人が多く、服装も白っぽい色が多いのにキラキラと輝いている。主に顔が。

 右を見ても左を見ても美形。美形。美形。

 精巧に作られた人形のような美しい人ばかりがわらわらと集まってくる。


「サリー。きれいな人ばっかりね」

「そうですか?我々にはシャオマオ様のほうが美しく輝いて見えますよ。さあ、まずは長老の所へ行きましょうか」

 サリフェルシェリに誘われて、奥に建っている長老の家に向かった。



「長老。妖精様がいらしてくださいましたよ」

 サリフェルシェリがノックしてドアを開けた途端に奥からどたどたと走ってくる音がする。


「妖精様!!」

 奥からやってきた人がシャオマオに抱き着こうとしたので、ユエがシャオマオをさっと抱き寄せた。

 抱き着こうとした目標が無くなったので、不審者は床に顔をしたたかに打ち付けた。


「すみません。お見苦しいところを」

 ユエがじろりとサリフェルシェリを睨んだので、足元にうずくまる人を助け起こしながら謝った。


「こちらがこの度星に帰ることになりました、エルフ族の最長老マリユルウェルです」

「妖精様。お会いしたかった・・・」

 涙をほとほとこぼしながらシャオマオに祈りを捧げるマリユルウェルは、最長老と言われなければわからないくらいの美しい青年の姿をしていた。

 腰まで伸びた白髪と、白っぽい青の瞳は吸い込まれそうな不思議な色合いだ。


「サリフェルシェリ、こんな危ないやつとシャオマオを一緒にできない」

「いえいえ。今興奮しているだけなのでもう少し待ってあげてください。普段はこの大森林一の賢者と言われる最長老なのです。もう少し。お茶を飲む時間くらい待ってあげてください」

 奥からやってきた世話人がマリユルウェルを横抱きにして奥の部屋へ連れて行くが、マリユルウェルは世話人に怒られながらもシャオマオにずっと手を振っていた。


 リビングのソファに座っていたら、世話人がまたマリユルウェルを横抱きにして連れてきてくれた。

 妖精と会うので正装に着替えてきてくれたのらしい。


「マリユルウェル様は着替えの途中なのに走ってしまわれて。普段はもう歩くこともできないくらい弱っているというのに無茶をして・・・」

 世話人がハーブティーを準備しながら怒っている。


「すまないね、シュナヴエル。妖精様と会えるかと思うと興奮してしまって」

 はきはきと話しているマリユルウェルはとてももう寿命を迎えて星に帰るようには見えないが、よくよく観察するとカップを持つときも、話している人を見るときも、微妙に視線があってないように見える。

 ほとんど目は見えていないようだ。


「妖精様。正式なご挨拶が出来ず申し訳ありません。はじめてお目にかかります。マリユルウェルと申します」

 片膝をつく挨拶は流石にできないらしく、椅子に座ったままだったが、シャオマオの指先に口づけして自分の頭に手を乗せる。

「シャオマオです。はじめまして」

 シャオマオはまっすぐな白髪を撫でてあげる。

 よくよく見るとミーシャたちのような白髪とは違う、年齢を重ねたものの手触りだ。

 シャオマオは前の星の祖父の白髪交じりの髪を思い出した。


「おお。なんとあたたかな手か。美しい魂。美しい魔素。星に帰る前に妖精様と出会えた奇跡。有難い」

 マリユルウェルはまた見えない目で涙を流すので、シャオマオは手巾で涙を拭いてあげた。


「あんまり泣くと目が溶けるのよ」

「ふふふ。そうですね。気を付けないと」

 嬉しそうに笑うマリユルウェル。


「ああ。妖精様が近くに居ると、本当に息がしやすい。体も良く動く気がする」

「そうですね。マリユルウェル様は走ってしまったのに咳がでていませんね」

 世話人のシュナヴエルがそういえば、という顔をした。


「そうなの?シャオマオのこと抱っこする?」

「おお!なんとありがたい!!」

 シャオマオの提案に、マリユルウェルがさっと反応した。

 ゆっくりしていたらさっきのようにユエに取り上げられると思ったのだろう。


「ああ。暖かい。なんと柔らかな。まるで子猫のようだ」

 膝の上に乗せたシャオマオの頭をくりくりと撫でる様子はやはり老人という風情だ。


「そうなの。シャオマオったら子猫(シャオマオ)なの」

「おお、おお。猫族語ですな。ピッタリだ。もうよく目も見えませんが、魂の形ははっきり見えます。なんという力強さと優しさか」


「マリー。エルフ族のお話して」

「ええ。ええ。いくらでも」

 お茶を飲みながら短い話を一つリクエストした。

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