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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第八章

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がんばったで賞です!

 

 それから一週間。

 教室に入って席に着くなり「はい」とペーターから箱を渡された。

 魔石ペンの試作品ができたのだ。


「ふおおおおおおおお~~」

 木の軸の上には虹色の魔石がきらきらと輝いていて、ぐりっとねじれて溝が付いているものやストレートの溝が付いている物、筆のようなしゅっとした形も、絞ったホイップみたいな形のペン先もあった。


「インクつけて書いてみてよ」

 ペーターはシャオマオの机に並べたペンを見て嬉しそうに提案する。


「はい!」

 シャオマオはノートを広げて、持ち運びのインク瓶にペン先を慎重につけてみる。


 きゅう~

「インク吸った!!」

 毛細管現象はきちんと機能したようだ。溝に沿ってインクが吸いあがる。


「きれいねぇ・・・」

 虹色の魔石に青のインクが美しい。


 シャオマオはノートに「シャオマオ」とこちらの言葉で書く。

 ひらがなでもカタカナでも、ローマ字でも書いてみた。

「かきやす~~い」

「見たことない記号だ」

「全部シャオマオって書いてるのよ」

「へえ。今度教えてほしいな」

「いいよ~」


 シャオマオは続けて「シャオマオ」と書き続けた。なんと、56シャオマオ書くことが出来た。ノート一枚が「シャオマオ」の名前で埋まった。ゲシュタルト崩壊が起きそうだ。


「むふ~。素敵・・・」

「木の軸の方を加工するところまで手が回らなくって、持った感じなんかはもっとちゃんとした工房に頼めば変わると思うよ。あとは、軸も魔石で作ってもいいと思うし、木だけじゃなくて真鍮とかでも長く使えていいと思うよ」


 二人が会話していると、ちらほら生徒が登校してきた。

「おはよ!二人で何書いてるの?・・・・・字の練習?」

「おはよカラ!新しいペンを試してるところよ」

「新しいペン?羽ペンじゃないの?」

「ちがうよー。魔石のペンなの」

「ま、魔石のペン!?」

 カラのしっぽがぴいんと立った。

 魔道具を作るか宝飾品として使うようなものを子供が使う文房具、ペンにしてもいいんだろうか・・・とカラはすこし考えたが、目の前にいるのはこの星の妖精様だ。そんな野暮なことを言わなくてもいいだろう。


「カラ、羽ペンのお手入れ大変でしょ?これ使ってみてよ」

「え?!私が使っていいの?」

「うん。カラに使ってほしかったの。手、切っちゃわないように」

「なんて優しいの!」

 シャオマオは感激したカラにもみくちゃに抱き着かれてしまった。

 しばらくして感動が収まったカラに一本選んでもらってペンの試し書きをしてもらう。


「わあ・・・。シャリシャリ・・カリカリ・・すごくいい音だしきれい・・・」

「でしょ?でしょ?これペーターが考えたのよ!すごいでしょ!きれいよね!」

「ペーターすごいわね!」

「いや、元はシャオマオが考えたんだよ。僕だけじゃないよ」

 真っ赤になって謙遜するペーターは可愛いが、ちょっとした絵を見せてここまでのものが作れたんだからほとんどペーターが考えたと言っても言い過ぎではないのだ。


 出来たペンはカラと、ジュードと、ペーターと、ミーシャに渡して書き心地を試してもらったが、結果は上々。使いやすく美しく、周りの反応を見ても欲しがる子は多かった。

 特にミーシャが持っていたことで、クラスの子から注目を集めて「どこで買えるのか」といった質問を多く受けたそうだ。


 シャオマオも、頻繁にインクをつけることなく軸もしっかりしているため、字がいつもよりスピーディーに美しくかけるようになってほくほくしていた。


「シャオマオ。これやっぱりちゃんとしたほうがいいね」

 授業が終わってからペーターが疲れた顔して話しかけてきた。


 妖精様やみんなのあこがれミーシャ様が使っているものが注目を集めるのは当然のことだった。

 シャオマオはペーターの工房で作られたことも正直に話した。

 すると、妖精様には聞きづらかったのか、どこに行ってもペーターが「いつから、いくらで買えるのか」といった質問攻めにあったということだった。


「あう。ごめんねペーター」

「いや、僕も嬉しくて試作品を学校に持ってきたからさ。みんなに家で使ってもらったらよかったんだ」

 みんなが羽ペンを使っているところで、木の軸のペンは目立ってしまった。


「ペーター、作るのどれくらい大変?いっぱい作るの時間かかるかな?」

「そうだね。もうほとんど形は出来たし、木の軸を作ってくれる人がいれば・・・午後から作って毎日4本か5本かな?」

「ういー。学校のお友達に作るのも大変」

 ペン先だけはねじって長いものを作っておいて、木の軸に合わせて切った先をつけていくのだそうだ。

 だから軸さえあれば、溶かしてちょんちょんとつけられるのらしい。


「うーん。軸も魔石で作ったらどうなるかな?」

「軸も作るとなると、2本かなぁ・・・」

「あにゃぁ」

「サリー先生にも相談して、どうやって作っていくのか考えたほうがいいね」

「あい・・・」


「おや。シャオマオじゃありませんか」

「あー。がっこーちょ」

「学校長じゃなくて。エリー先生と呼んでください」

「そうだったの。エリー先生」

 職員室のサリーたちを訪ねようとしたところでエリティファリスに呼び止められた。


「とても今日は下級生の教室が騒がしかったですね。妖精様がとても素敵なものを持っていると他の教室の噂になっていましたよ?」

「え~?!まだ完成してないのに・・・」

「よかったら、私の部屋でそれを見せてもらえますか?」

「いいよ」


 学校長の応接室のふかふかソファーにうずもれるように座るシャオマオが取り出した魔石ペン。

 両手で持って、しげしげと眺めるエリティファリス。


「素晴らしいですね。このアイディアは?」

「シャオマオよ。でも、作って形にしたのはペーターなの」

「ああ。ご実家が魔石加工の・・・」

 エリティファリスは口元に手をやって、ペンを見ながら何事かを考えている。


「これは素晴らしいですね。羽ペンより高価になるでしょうが、耐久力が違う。壊れることも少ない。なにより日々の手入れがいらない。これからこの星の主力はこれになるでしょうね」

「あう~。でもペーターに作ってもらってるから、そんなにいっぱい作れないの」

「ご実家の魔石加工のもともとの仕事もあるでしょうしね」

「そうなの。ペーターにとっきょもあげたいんだけど、ペーター魔石ペン作るのだけだと親方のお仕事手伝えない・・・」

「シャオマオはどうしたいですか?」

「ペーターが形にしたんだから、ペーターにがんばったで賞あげたいな」

「ふふふ。じゃあ、作り方を公開しますが、見たらお金が発生して、ペーター君に支払われる仕組みにしましょうか。そうすれば職人は増えますし、ペーター君には使用料が発生します」

「それすっごくステキね!」

「ふふふ。特許に詳しい人を紹介しますので相談するといいですよ」

「うん!エリー先生ありがとうございます」

 ぺこーっとお辞儀して、シャオマオは職員室に向かうことにした。


「シャオマオ。一緒に帰ろう」

 丁度職員室から出てきたユエに捕まった。

「サリー先生はまだかかりそう?」

「うん。テストの〇つけしてるよ。先に帰ってご飯の支度をしようね」

「ライ先生は?」

「上級生の授業の監督があるらしいよ」

「・・・・・・ユエは?」

「なにもないよ」

 シャオマオ以外になにもないことにしたのでなければいいのだが・・・・。



「それでね、エリー先生がペーターに使用料があげられるって言うの。これでいいかなぁ?」

 シャオマオは道中ユエにいろいろと今日会ったことを説明したが、シャオマオのやりたいことに否やはない。「じゃあ、いまからペーターに聞きに行ってみる?」というユエの提案でペーターの家に向かうことにした。


 そして、ペーターの工房の前に人だかりができているのに気が付いた。


「あえ?親方忙しいのかな?」

 ペーターの父が来客の相手をしているようだが、どうも穏やかではない。


「あ!チビ!お前やっと来たのか!!」

 シャオマオを見つけたペーターの父がシャオマオを手招きする。


「お前、あのペンのつくり方どうするんだ?同業者が教えろってうるせえんだよ」

「ええ~!?」

 やってきたのは主に今日学校でシャオマオたちのペンを見た子供たちの親や、商人から問い合わせがあったという工房の人たち。魔石ペンに商機を見出した者たちが押し寄せて、仕事にならないのらしい。


「と、いう訳でだ。ペーター。急いで図面に起こして特許取ってこい」と父に無茶振りされたペーターは一生懸命に図面を起こしていた。

「ペーター。がんばったで賞もらえるからがんばって」

「わかったよ」


 描きあがった図面を持って、ユエが完全獣体になってシャオマオとペーターを乗せて役所に走った。


 途中でエリティファリスに紹介してもらった特許に詳しい専門家というひとを攫って・・・いや、捕まえて、使用料の件を聞くと、想定していなかった金額になってペーターが白目をむいてしまうという時間もあったがなんとかその日のうちに申請まですることができた。

 あとは申請が通れば勝手にみんなが使用料を払って図面を写して作って、勝手に売ることだろう。



「ユエ?なにしてるの?」

 今日もお風呂を終えて、ユエの部屋にやってきたシャオマオだったが、ユエが珍しくナイフを持って何かを削っていた。


「うん。シャオマオのペンの軸を削ってる。今のシャオマオの手に合う長さと太さで」

「嬉しい・・・・!」

 きれいにやすりをかけてツルツルに仕上げて完成だ。


「ユエに手を握ってもらってるみたいにあたたかいね」

 渡されたペンを持ってそんな風に笑うシャオマオに、珍しくユエの方が赤くなっていた。


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