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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第八章

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お前のものは俺のもの。俺のものは・・・?

 

「シャオマオおはよう」

「むうん・・・ユエおぱよう・・・」

 いつもより少し早い時間に目を開けたシャオマオに、ユエは優しくおでこにキスをしながら挨拶をする。


「シャオマオはもう少し寝ていてもいいよ。いつもより早い」

「れも・・・いっぱい声する・・・・」

「うん。黙らせてくるよ」

 ニコッと笑って物騒なことを言うユエに、シャオマオはくわっと一生懸命に目を開けた。


「ううん。もう起きようね」

「シャオマオが起きるなら」

 二人で顔を洗い、歯を磨いてそれぞれゆったりと着替えて合流し、階下のダイニングに向かった。




「だーかーらー!なんでお前がここを集会場所に使うんだよ!!」

「悪いと思ってるから庭で野営してるんじゃん」

「全く悪いと思ってねえから家に入り込んでくるんだろうが!!」

「まあまあライ、声がどんどん高くなってますよ」


 シャオマオはダイニングに飛び込んで挨拶した。

「ライにーに、にーにとねーね。サリー、グロー、おはようございまーす」

「おはようシャオマオちゃん」

「シャオマオ様おはようございます。いつもより早いですね」

「おお。チビ助おはよう」

「グロー、今日は何したの?」

 燦燦と朝日が入ってくるダイニングの窓際に、ロープでぐるぐる巻きにされたグローが黒ヒョウ兄妹に囲まれて座っている。

 ちょっと殴られたのか、サリフェルシェリに頭を冷やしてもらっているが、この光景何度見たことか。


「いや、朝飯に調味料を少し借りようとしたんだよ・・・」

「食糧庫から保存食を持って行こうとすることを、調味料を借りるとは言わないぞ」

 ライにーには兼業のお母さんなので、頭の中に食糧庫の中の食材の残量などがきっちり整頓されて並んでいるのだそうだ。そしてそれをあてにしていたのに無くなっているのがだめなんだそうだ。

 因みに、残っている食材にしても昨日の残りにしても作ってあるものを食べるのは怒られない。むしろどんどん食べろと言う。勝手に食べるのがだめなのではないのだ(難しい)。


「お前らが勝手に入ってくるからこの家の防犯センサーが四六時中鳴ってうるさいね」

「じゃあ俺たちの住人登録すればいいだろう?」

「できるか!!!!」


「シャオマオ、パンが温まったよ。バターとジャムでいいかな?」

「ありがとうユエ。ミルク入れるね」

 ライたちの口喧嘩はスルッと無視してパンかごに温めたパンを入れたユエがテーブルに置いて、シャオマオを抱えて椅子に座る。

 シャオマオはユエに支えられながらグラスに冷たいミルクを注ぐ。


「いただきまーす」

「いただきます」

 二人で手を合わせてふかふかのパンを食べる。


「あ、こら。パンだけ食べるな。ウインナーと玉子とベーコンもあるし、サラダも食べなさい」

「はーい」

 てきぱきとサラダの大皿を出しながらライが注意する。


 みずみずしい葉野菜をフォークで刺して食べながら、朝日を浴びるグローを見る。

 長い黒髪。ところどころに生える黒い鱗がポイントになっている日焼けした肌。しかし、朝日を浴びても痛まない体。

 それだけでシャオマオは嬉しくてにこにこしてしまう。


 ドラゴンの父、呪いの王が星に帰ってから二週間たった。


 あの後シャオマオたちが鱗族のアジトに戻ってみると、驚くようなことが起こっていた。


 なんと、鱗族の体から自然と鱗がはがれ、普通の人族と同じような肌が現れていたのだ。

 今までも脱皮は新陳代謝として行われていたが、すべての鱗がぱらぱらと落ちることなどなかった。

 鱗の肌ではなく、普通の人族に戻りたいと願っていたものの願いが叶った。

 まるでべったりと張り付いていたドラゴンの呪いが一気に消えたかのような心持ちだ。


 避難していた子供たちを迎えに行くと、子どもたちも鱗がない肌になっていたし、シャオマオが呼びだした精霊となぜか心を通わせるものが多く、人族なのに精霊が見えるようになっていた。

 そういった子供は一部鱗が剝がれずに残ってしまっていたが、特に子供達に不満はないようだった。


「シャオマオがお願いしたら全部きれいにはがれるかも?」と提案してみたが、「精霊様が見えるほうがいい」と子供には言われた。

 グローも特に自分の肌に不満はないようだった。

 鱗が残ったものは人族より少し獣人よりになっているようだ。すべて剥がれてしまったものは普通の人族と変わらない。


 鱗族が全員地上に出て、朝日を浴びている姿は美しかった。

 あんなにも朝日を待ち焦がれていた人々はいないだろう。

 感動のあまり泣きだすものもいた。

 初めてのランプ以外の明りの中に立ったことを驚く子供たちも、きゃあきゃあと踊りだす。


 それから森の中に鱗族の村を作ることを王様に許可をもらいに行ったり、子供たちは学校の寮で預かって学校に通えるようにしてあげたり、グローたち数人の男たちがなぜか自分よりも強いダリア姫の護衛になると言い出したりいろいろなことがあった。

 そのいろいろの中に「グローがシャオマオの屋敷の庭で野営をするようになった」がある。


 ダリア姫はドラゴンの父と母の山を訪れて墓参りをし、無事にドラゴンの父の体も自然に帰ったことを確認できた。

 そして気ままにドラゴンとしてその山で過ごしているのだそうだ。

 王家としてもダリア姫に迷惑をかけないように「ドラゴンの山」「神の山」として一般人の入山を禁止し、ダリア姫の護衛となったものを山の管理者として雇い入れているという。

 鱗族としてやっと就職ができるようになったのだ。めでたい。


 グローは「安全だし平和だし楽だしチビ助はおやつくれるし」とシャオマオの屋敷の敷地から少し外れたところで野営しては自堕落な生活を送っており、たまに食材を盗んではライにお仕置きされている。


 昨日は山からやってきた管理者たちと情報交換という名の宴会を庭で行っており、一寝入りしてから朝ご飯を食べようとしたら食材が足りなかったため勝手に食糧庫をあさったということだった。


 出来上がったものだらまだしも、食糧庫の中のものを勝手に漁ると怒られる。

 この屋敷に住むものが誰もやらないことをやってしまったのだ。グローのお仕置きはしょうがないことだ。


「俺たち鱗族は分け前を全員で均等に分けてきたんだ。だから、これが誰かのものだって感覚が薄いんだよな。ははは」

 お前のものは俺の物、である。


「じゃあ、お前は学校からやり直すか?」

「そうですねぇ。子供たちもあずかっていますし、グローも学校に通いますか?」

「がっこ?あれか。チビたちが計算とか文字とか習ってるんだろ?」

「5歳児たちに交じって、道徳を教わるといい」

「げーっそんなのお断りだぜ」

 ぱらりと自分を縛っていたロープを切って、グローが窓から逃げ出した。


「チビまたな!」

「グロー、今度は玄関からきてね」

「おう!」

 軽快に返事していたが、絶対に玄関から入ってくることはないだろう。


「あいつの野営道具燃やしてやろうか・・・・」

 ハムの塊を2本盗まれたライは怒り心頭だ。


「ライにーに。みんなもうご飯食べたの?」

「いや、あいつを説教するのに時間がかかってまだなんだ」

「じゃあ、ご飯を食べたら買い出しに行こうね。シャオマオも荷物持つよ!」

「シャオマオちゃんは本当に優しいなぁ」

 ぐりぐりと頭を撫でられて喜ぶシャオマオであった。




「シャオマオ。食べたいものは?」

「1コイン焼き~」

 マーケットでたくさんの買い出しをしたシャオマオたち。

 時間は昼に近い。

 本格的な昼ご飯を食べる時間ではないが、きょときょといろんな店から漂う香りに釣られているシャオマオが可愛くて、ユエはおやつを買ってあげることにした。


 ちなみに1コイン焼きは刻んだ野菜を入れて焼いたソース味のお好み焼きもどきで、クレープみたいに巻いたものを持って食べる。子供はお腹が減ったら大体これを食べる。安くて美味しい人気の軽食なのだ。


「あれ?シャオマオじゃん」

「ジュード!カラ!」

「先生たちもこんにちは」

 屋台に近づいたらジュードとカラが先に並んでいた。


「二人で遊んでたの?」

「そうだよ」

「シャオマオ、二人と一緒にベンチで食べるといい」

 3人で話している間に1コイン焼きと飲み物を買ってくれたユエ。

 礼を言って三人で座って最近会ったことを話ししてもらって喜ぶシャオマオ。


 あつあつの1コイン焼きを持っているカラが「痛い!」と言ったので、よく見るとカラの人差し指には血がにじんでいる。

「あ!カラ怪我してるの!!」

 シャオマオは精霊に頼んでカラの指先の傷を治してもらった。


「ありがとうシャオマオ」

 跡も見えなくなくなった指先を見て目を真ん丸くしながら礼を言うカラ。

 どうやら今怪我したのではなく、自宅で羽ペンの手入れをしているときにナイフで切ってしまったのらしい。


 シャオマオはまったく刃物という刃物を持たせてもらうことがないので切ったことはないが、小さな子供が自分で羽ペンの手入れをするのは大変だ。


「羽ペン、とっても不便ね」

 道具としては最初見た時「羽ペン!」と喜んだものだが、使ってみたらとても大変。

 インクは続かない、書く方向は決まってるし、頻繁に手入れが必要だし扱いが難しいのだ。


「猫族みたいに筆を使ってもいいと思うぜ?でもあれも慣れるまでが大変だしな」

 猫族は毛筆を使うことがあるようだ。


「ガラスのペン・・・」

「ガラス?」

「ガラスのペン?そんなのあるの?」

 シャオマオの言葉に不思議そうな顔をするカラとジュード。


「サリー先生に相談してみるね!」

 残りの1コイン焼きを口におしこんで、シャオマオはベンチから飛び降りた。



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