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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第八章

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みんなでお食事

 

 流石に王と王子に何かあってはいけないと、ウィンストンとダリア姫を連れて別室に移ったが、ラーラは空いていた椅子に座るように言われて、一緒に食事をすることになった。

 ランランの隣である。


「やあ、黒ヒョウ殿の妹さんの・・・」

「はい。ランランよ。隣は双子のレンレン」

「女性に名を先に名乗らせてしまった。改めて自己紹介を。私はラーラ」

「あの時は、私をかばってケガを・・・。本当にすみません」

 ランランは自分をかばった際についた傷が腕にあるのだろうと目線をやったが、すでに毛も生えそろっており、ラーラのケガは見た目にはわからない。


「我々は怪我の治りが早い。気にしなくてもよいのです」

 ニコッと笑うラーラの笑顔はやっぱり牙もむきだしのため、一見すると怖い。

 しかし同じ肉食系獣人のランランは気にしない。

 少し照れたように、「なら、いいのよ」と小さくつぶやいてうつむいた。



「・・・・・・・・ユエ」

「うん」

「ライにーにの顔が・・・」

「見ちゃだめだよ。あーん」

 ユエはシャオマオに気にしないように言ってポテトサラダを口に入れてくれた。

 おいしい。やっぱりマヨネーズは正義。


「チビ。お前いつもこんな豪勢な料理食ってんのか?さすが妖精サマは俺たち庶民と違うな!!」

 何の警戒心もなくガツガツとかきこむようにしてラーラの横で食事を始めたグロー。

 まるで何日も食事をしていなかったような食べっぷりだった。


「妖精様をそのように・・・!」

「ラーラだめ!お食事中は仲良く!」

 怒った声でグローの首に手を伸ばしたラーラをシャオマオが止めた。


 それと同時にユエもナイフをそっとテーブルに戻した。

 シャオマオが止めるのがもう少し遅かったら、グローに向かって飛んでいたのだろう。


 しかし、グローは全く気にせず食事をしていた。

 この敵陣の中でここまでリラックスしているのは何か防衛するすべがあるのか、ただ単に肝が太いのか。ずっと「うまいうまい」と雑に食べ続けている。


「それで?チビは俺に飯食わせてなにがしてえんだ?」

 一通りの料理を全部食べて、特に気に入った料理をお代わりしているグローはやっと少し腹が落ち着いたようだ。

 ラザニアのような料理を豪快に自分の皿に乗せて食べながらシャオマオを見た。


「チビじゃないのよ?シャオマオよ」

「チビだよ。お前はチビで十分だ」

「むー!」

「それで?チビは何が知りてえんだよ。ただ俺を腹いっぱいにして『さよならまたねー』ってわけじゃねえんだろ?」

「シャオマオは知りたいの。鱗族の人たちのこと」

「なんだよ。俺らに復讐でもしてえのか?弱点でも知りたいか?」

「ふくしゅう?」

「自分を攫った俺たち鱗族を根絶やしにでもするつもりか?さすが妖精サマだ」

「ちなうよ!!鱗族の人たちが自分たちのことどう思ってるのか知りたいの!」

「自分たちのこと?盗賊や闇ギルドで悪いことばかりしている生活をどうおもってるのかーってか?」

 シャオマオが話している間もグローはラザニアを頬張りながら楽しそうに食事しているがシャオマオを見もしない。

 周りの人はそんな二人を見守りながら食事を続けている。

 シャオマオと二人の会話を邪魔しないように、ユエでさえじっとシャオマオの椅子になっている。


「ちなうったら!鱗族になってしまった呪いについてどう思ってるのか知りたいの!」

「あ?」

 低い唸り声とともにグローがやっと顔を上げた。


「くそチビ。テメエなんで俺たちが呪われたって思うんだよ?」

 一団と低くなるグローの声。

 先程までのふざけた雰囲気は一切なくなった。


「知ってたらダメなの?」

「自分で自分のこと呪われたなんていう訳ないからな。どうやって調べたんだ?」

「見てきたの。ずっとずっと夢を見て、見てきたの」

「はっ!妖精サマは夢使いか」

 夢使いという不思議な占い師がいる。

 未来を見たり、過去を見たり、遠い違う星の夢を見たりする不思議な力を持っているという。

 占い師としてたまに現れて当たったり外れたりするような占いをするのだ。予言ではないところがミソだ。


「わかんないけど・・・今も残ってるドラゴンぱあぱと一緒にずっといるの?」

「くそチビ、あれを見たのか」

「ライにーにたちが見たの。その黒の肌も鱗も、ドラゴンまあまの呪いなの」

「・・・・・・夢見たってのは本当なんだな」

 フォークを置いたグローは果実水を一気飲みして口を乱暴に拭ってシャオマオを見た。


「で?自分たちについてどう思ってるかって結局どういうことが聞きてえんだ?」

「いまの呪われた姿のままでいいのか、ドラゴンの呪いをどうにかしたいのか、いまは鱗族たちはどのように動いているのですか?」

 サリフェルシェリがシャオマオの代わりに言葉を発した。


「どう動いてるも、なんにもできることなんてねえよ。ドラゴンの呪いはかけた者の死をもってしても解けない。そんなものに対抗するためにどうしろってんだよ。鱗を持つ俺たちのことを人族はもう同じ種族だとは思ってねえ。何をしても生きるのに精いっぱい。闇ギルドを作ってさんざ悪いことしてきたんだ。今更人族の中に戻れるとも思ってねえ」

 グローは中央の籠に入っているブドウのような実をむしって口に放り込んだ。


「ただ、日の光を浴びることもできない穴倉暮らしは卒業してえな・・・・・・」

 日の光を浴びると肌が焼け付くように痛む。

 あのドラゴンの影がいる場所から遠く離れることを頭で考えるだけで体は凍り付く。

 一部の鱗族はまっとうに生きることを願っているが、それでも闇ギルドの稼ぎをあてにしないわけにいかない。

 医者にかかることもできない、薬もないため寿命も短い。

 学ぶ機会がない。自分の名前を書くのが精いっぱいだ。

 当然働けるところもない。

 そんな生活なのは過去のせいだ。

 日を浴びないで穴倉の中で一生を終える。


 以前のドラゴンまあまを傷つけた、ドラゴンの卵を盗んだ、ダリア姫を傷つけた鱗族と、目の前のグローは違う。ここまで先祖の業が遠い遠い子孫におよんでもしょうがないことをしてしまったんだろうか。


 したことは自分勝手で、他人の幸せを奪うことで、誰が聞いても良くないことだった。

 罪を犯してしまったが、罪を犯した者の子孫がずっと償い続けるべきことなんだろうか。


「シャオマオは嫌だ!!」

 ユエの膝から飛び上がったシャオマオが、天井の近くでジタジタと全身を投げ出して暴れる。


「いやだいやだいやだー!!」

 ジタジタと手足を動かして暴れる暴れる。


「シャオマオ」

 ユエが立ち上がって手を広げると、シャオマオは勢いよくユエの胸に飛び込んでガシッとしがみついた。

「ユエ~」

「うん、うん、嫌だね。わかるよ」

 トントンと優しく背中を叩いてくれる。


「グロー!今すぐおうちに帰って、鱗族の人がどうしたいのかちゃんと確認して!!」

「それだけいやだいやだって言いながら、俺たちの意見を聞くのかよ。勝手になんでもすればいいじゃねえか。それが妖精サマだろ?」

「シャオマオったらひとりでなんでもしないの!」

 つん!と顔をそらしながらユエに甘えてぎゅうぎゅうしがみつくシャオマオ。


 このままでもいいというなら放っておく。

 このままでも自分達で何とでもできるというなら見守る。

 自分達の姿に誇りを持っているというならシャオマオは手出しをしない。


 ただ、全員が救いを求めているのなら手を貸すまでだ。


「シャオマオ。善は急げです。リューでグローを送りますよ」

「いいの?ミーシャにーに」

「ええ。もちろん」

「ミーシャ殿だけでは心配だ。私も行きましょう」

 ラーラが食事を終えて立ち上がると、ミーシャがニコッと笑う。

「大精霊がありますので、ご心配無用です」

「ほう。鳥族でその若さでありながら大精霊を。素晴らしい・・・・」

 ラーラは息をのんで驚いていたが、妖精様の『にーに』として認められているのだから当然だと思い直した。何しろあの時の大けがを乗り越えて生きているのだ。それだけでも奇跡と思えるような怪我だった。


 自分にも魔力があれば、とラーラは普段なら考えないようなこと、考えてもしょうがないことを思った。

 ラーラは獣人には珍しく魔素を操ることが出来ないので精霊からの助力をもらえない。

 魔素を操ることが妖精様のそばに侍る条件ではないだろうが、やはり妖精様の周りにいるのはただものではない者ばかりである。

 ラーラは自分も一層精進せねば、妖精様のそばにいることが叶わないと気を引き締めた。


「ミーシャ。きっとあなただけでも大丈夫だとは思いますが、未成年ですからラーラ殿に引率をお任せしましょう」

 にっこりとサリフェルシェリが笑いながら決めてしまった。

 きっとラーラが行かなければライかサリフェルシェリが引率していたのだろう。


「わかりました」

 少し不服そうにしたがミーシャは了承した。


 ミーシャはミーシャでラーラが「シャオマオに侍りたい」と言ったのを知っているので警戒している。

 決してシャオマオを自分だけのものだとは思ってはいないが、友達以上のにーにがこれ以上増えるのはちょっと考え物だと思っているのも事実だ。


 いけないいけない。シャオマオは妖精様だ。

 妖精様が望むことに逆らってはいけない。妨げてはいけない。

 シャオマオが望めばラーラも「にーに」になるが、できればにーには自分で終わりにならないだろうか、とミーシャは考えていた。


 かわいいかわいい妹シャオマオ。

 お兄ちゃんはこれ以上お兄ちゃんが増えるのはちょっと困るのだ。

 小さな小さなミーシャのお願いである。

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