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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第八章

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ダリア姫のお話①

 

「ローズ様!?」

「え?え?」

 部屋の入り口でダニエル王がダリア姫を見て驚いたように叫んだ。ウィンストンは声を抑えてはいるが、ダニエル王と同じような顔でダリア姫をじっと見ている。

 そんな2人についていけないジョージがキョトキョトしている。


「ローズ、ローズ、ローズ・・・?私に似た子がいたかしら?」

 ふむ、と考えこんではいるが、ダリア姫にはもうあまり人族だった頃の知り合いの顔が思い出せない。


「私の高祖母の、結婚前のローズ妃の肖像画にそっくりです・・・」

「ええ。その、生き写しと言いますか、そっくりそのままです・・・・」

 ウィンストンも同意する。


「ねえねえサリー、こーそぼってだあれ?」

 服を引っ張って、ちょっと浮かんでサリフェルシェリのとんがり耳にひそひそ話しかけたら、シャオマオの耳にひそひそ答えてくれる。

「ダニエル王の、親の親の親の親ですね」

「えっと、ぱあぱ、まあま、じーじ、ばーば。・・・・じーじとばーばのばーば!?」

 指折り数えると、折った指をつんつんとされて「正解です」と微笑まれる。


「ローズ妃はダリア姫のお兄様の直系です。王家の文章にも、ダリア姫に生き写しだと・・・」

「金の髪の兄さまがいたわ。あとの兄さまはちょっと茶色だったり。そう。私に似た子孫がいたのね」

 ダニエル王の言葉に口に手を当てて、思わずといった風にダリア姫はくすくすと笑った。


 しかし、そうなると赤ちゃんの時にドラゴンの赤ちゃんと入れ替わりがあったというのはおかしな話にならないだろうか?

 むむっとシャオマオが悩むそぶりを見せたところで、サリフェルシェリが皆に声をかける。

「さあさ。まずは皆さま挨拶から。そして座ってゆったりとなぞ解きをしましょう」



 部屋に入っていつものようにふかふかの絨毯に座って上座も下座もなく話しやすいように円になると、さっそくダニエル王たちが今の人族の王族であると聞いたダリア姫は嬉しそうだった。

「私たちのお兄様たちは、途切れることなく人族の盾となり皆を守ってこれたのですね」


 そして、まずは人族がどんな風に生活してきたのかを聞きたがったダリア姫に人族が貿易に力を発揮して生活を向上させたこと。魔石の加工をし、魔道具を発展させたことや教育に力を入れていること。飢える人なくみなで力を会わせて生活していることなどを語ると、涙を流して喜んでいた。


 しかし、今の王族がダニエル王とジョージ王子のみであること、そして王族の病の話になると暗い表情になってうつむいてしまった。


「・・・ごめんなさい。その病は私のせいなのです」

「え?」

「・・・謝って済む問題ではないと思います。特に二人は自分の家族を失うことになってしまった原因が私なのですもの。恨まれたってしょうがないわ・・・・。それに、妖精様が助けてくださらなかったら、ジョージも・・・・」

「お待ちくださいダリア姫様。説明をお願いします」

 ダニエル王が謝り続けるダリア姫を遮って、詳しい説明を求めた。


「ええ。きちんと説明いたします」

 きりっとした顔で覚悟を決めたダリア姫が語ったことはこうだ。


 ドラゴンの呪いを受けた鱗族。

 ドラゴンという最強種を飼い慣らし、守護に付ければ人族と侮られることなく生きていけると一部の人族が考えたため、父ドラゴンの不在を狙い、母ドラゴンの隙をついてたまごをうばった。


 そして、母ドラゴンが死に、たまごを奪われたと知った父ドラゴンに呪われた。

 たまごを触っていたものから順番に呪いの症状が出始め、戦いに参加していない者も症状が現れる。


 たまごは何故かうんともすんとも言わずに生きているか死んでいるかもわからない状態であったが、呪いの元凶だとして森の中に捨てられるところであった。しかし、その命を受けた鱗族の女が森の中で出会った老婆が抱えていた死んだ赤ん坊の話を聞いていたら、たまごがぷるぷると柔らかくなって、形をくにゃりと変え始めたのだそうだ。


 たまごはなんと、死んだ赤ん坊と同じ姿かたちになって「おぎゃあ」と泣き始めた。

 鱗族の女はたまごを森に埋めてこいと言われたが、本当は生きているかもしれないのに捨てることには反対だった。それだったらドラゴンに返してやりたいと思っていたのだ。


 しかし、老婆はこの赤ん坊を譲ってほしいと言い始めた。

 どうしても、心の弱い母親に待望の女の子を死産で失ったとは言えないという。

 女はその気持ちを理解して、ドラゴンの赤ん坊を老婆に渡して、死んだ赤ん坊を丁寧に埋めてやった。


 鱗族は呪いに苦しんでいたが、数年経ったころにドラゴンが住む洞窟にやって来て、呪いを解いてもらうように願ったのだという。

 ドラゴンはたまごはもうないと説明しても「呪いを解くためには、攫った子供を返せ」というのみだった。


 鱗族は当時の話を洗い出し、ドラゴンの子供が人族の王族として生きているという情報を得た。

 そして一度攫ったドラゴンの子供を親元へ返すという儀式を行い、さらにドラゴンに命じられるまま成長するまでの面倒を見た。

 しかし、いよいよ巣立ちとなった時にもドラゴンは呪いを解かなかった。


 それに怒った鱗族の一部が、ドラゴンの子供を再び人質に取った。自分たちの親や祖父母の時代の出来事で呪いを受けるに至った若い子供達だ。


 ドラゴンの子供も鱗族との交流があるだけに、父ドラゴンに呪いを解いてもらおうと願い出た。


「自分はもう人族に戻れずにあとは父とゆっくり母の墓のある山で過ごすだけですから。自分たちが残していくものはない方がいいと思ったのです」


 しかし父ドラゴンは呪いを解かなかった。

 いや、解けなかったのだ。

 それは父ドラゴンの呪いではなく、死んだ母ドラゴンの呪いだったからだ。


 いくら弱っていたとはいえ、母ドラゴンは人族に殺されてしまったわけではなかった。最後の力を振り絞って、自分の子供を攫った者たち一族郎党すべてを呪って死んでしまったのだ。


 呪いはかけた者にしか解くことが出来ない。死んだものが残した呪いを解くことは永劫出来ない。

 絶望した鱗族がダリア姫を攻撃対象として動いてしまった。


 ダリア姫は動かなかった。


 自分達が残すものは何もないほうがいい。

 呪いも、怒りも、悲しみも、すべてなくなった方がいい。



「シャオマオ。泣かないで」

 ほとほと涙を流すシャオマオはユエに抱き上げられて、胸元で丸くなっていた。

「くすん」

「うんうん。たくさんの人が可愛そうだね」

 キラキラと光る涙は服に吸い込まれていく。

 ああ、もったいない。

 ユエはシャオマオを慰めながらその涙の雫が服に吸い込まれていく様をじっと見つめていたが、我慢できなくなって顎先で落ちる寸前の涙を舐めてしまった。


「こら、ユエ。ちゃんと拭いてあげなさい」

 サリフェルシェリが渡してきた手巾は受け取らず、自分の懐から出した柔らかい手巾で涙を吸い取って、満足そうにするユエ。


 それをほほえましげに見るダリア姫。

 自分のドラゴンの両親も生きていたらこんな風に仲の良いところを見られたのだろうか。

 可愛そうな両親は、あまりにも短い時間しか一緒にいることが出来なかったのだ。




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