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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第八章

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お友達をご招待

 

「久々に兄さんのチョコドーナツを腹いっぱい食べられたよ」

「うん。大満足ね」

 ゴロゴロ横になって毛づくろいするように口の周りのチョコやドーナツの欠片をぺろぺろ舐める双子。


「いつも満足させていないみたいじゃないか」

 お茶を飲みながらお腹を膨らませた双子をじとっと見つめるライ。

「いつもは『晩御飯のことを考えて食べなさい』いうね」

「そうね。もう少し食べたい!という手前の絶妙な量を作るね」

 普段作る量は絶妙に双子の食欲をコントロールできていたようだ。


 おやつでお腹を膨らませた双子は「ふわーう」とあくびを連発したかと思うと、豹の完全獣体になってごろごろと絨毯でくつろいでぐうぐうと寝始めた。

「まだまだ子供だなぁ」

 双子のお腹がぽんぽんに膨らんでいるのを見て、ライは小さなひざ掛けをそれぞれにかけてあげた。


 今日はゲストのダリア姫がどのくらいの量が食べられるかわからなかったので相当の量を作ったのだが、ダリア姫もぷーちゃん方式で、その薄い体のどこにその量が収まるのだ?と首をひねる程度には食べていた。


「シャオマオは大丈夫?」

「うー・・・」

 ぐしぐしと目をこする。

 シャオマオもみんなの食欲に後押しされて、普段よりも食べてしまったのでお腹がポコッとしている。

 温かいほうじ茶ラテも美味しかった。


「シャオマオ。すこーしだけお昼寝するといいよ」

「やーの」

 小さな声で微かに首を横に振って、起きていたいのだと駄々をこねる。


「ダリア姫にはお風呂に入ってもらって身支度してもらう時間が必要だよ」

「ううー・・・」

「大丈夫。すこーしゆっくりしてから、すっきりしてまたみんなでお話ししようね」

「うにゅ・・・」

 シャオマオが返事をする前に、ユエはライから手渡された毛布でくるりと自分ごとシャオマオを巻き付けてしまった。

 ほわほわのいつもの毛布はいつもお昼寝に使っているので、この肌触りで「お昼寝の時間だよー」と頭が判断してしまう。

 口をもごもごっと動かしてから、すうすうと寝息が聞こえてきた。


「なんだって?」

「『ちゃんと起こして』って」

「かわいいなぁ」

 ライがデレデレとするのを冷たい目で見るユエ。


「さて。ダリア姫。お話の前に少し時間が出来ました。ドラゴンは湯あみをしないと言いますが、いかがいたしますか?」

「そんな、湯まで借りてしまうのは・・・」

「遠慮なさらず。シャオマオ様はこの屋敷にしばらく住んでほしいとおっしゃると思いますよ。自分の家だと思って過ごしてください。ドレスは、そうですね―」


 サリフェルシェリはてきぱきといろいろなところへ手紙を書き、ミーシャに鳥族便を頼んで各所へ届けてもらった。


 そうして、そろそろ大人数の食事に備えてライと双子が買い物に出かけた頃、シャオマオは自分の背中にあった温かい毛皮を感じて目覚めた。


 部屋には緩やかに風が通り、自分の髪を少し弄ぶ。

 リビングでそのまま眠っていたようだがそこまで時間は経っていないようだ。陽が高い。

 自分たち以外には誰もいなかった。


 暖かい毛皮はシャオマオの眠りを邪魔しない程度にゆったりと上下していて、シャオマオは目が完全に開いていないのにくるりと背中に向いて、毛皮に抱き着く。


「ぐあう」

「うん。起きた。おそようユエ」

 シャオマオはまだ目がちゃんとあいていないのに、ごそごそとユエの胸元に滑り込んで顔をぐしぐしとユエの毛皮に押し付けてしまう。

 まだ少し眠いのだろう。


「愛おしい・・・・」

 いつの間にか人型に戻ったユエに、シャオマオは抱き寄せられていた。

 当然夢の中ではないのでいつもの全裸である(腰にはタオルケットが巻かれているが)


「ユエの心臓の音。とくんとくん、元気よ」

「うん。シャオマオもいつものいい匂い。タオの実の強い香りがする」

 頭のてっぺんに鼻をつけて、すんすんと匂いを嗅がれるのもいつものことだ。お風呂に入っていないときなどは恥ずかしいと思っていたが、ユエは何度言っても「いい匂いしかしない」といって遠慮しないので好きにしてもらうことにしている。それでユエが幸せなのならいいのだ。


「いちゃいちゃしている気配がしますよ?入っては・・・」

「いや、ここでいつも邪魔するのが・・・」

「いいんですよ、ここで邪魔しないと際限がない」

 大人たち三人の声が聞こえて、シャオマオとユエが入り口を見ていたら「起きたんだったらいちゃいちゃしてないで準備しなさーい」とライが飛び込んできた。


「なんだ、二人とも気づいていたのか」

 驚かせたと思ったようだが、二人と目が合ったのでライはちょっとがっかりした。

「だって、みんなでドアのところでひそひそしてるの聞こえてたの」

 きゃっきゃとシャオマオが喜ぶと、ドアの外にいたダリア姫とサリフェルシェリが入ってきた。

 ダリア姫は美しい青のドレスを着て、金の髪を緩く結い上げて高貴な雰囲気が倍増している。

 サリフェルシェリも珍しくエルフの正装をして頭飾りもつけていて美しい。

 ますます性別不明の美人さんだ。

 ライはいつか猫族の里で見た猫族の正装だ。


「ぱーちぃするの?」

「そうだよ。シャオマオちゃんもお風呂に入って猫族の服を着ておいで」

「えー!えー!いいの?あのしっぽついてるの着ていい?」

「もちろんだよ。猫の耳もつけていいよ」

「やった!やった!」

 シャオマオは喜んで飛び上がると、頭の上に手をやって、猫耳のようにしてからぴょんぴょん飛んだ。

 あの新年の時以来、ドレッサーの中で眠っている猫族の服を着られるなんて!と大喜びである。


「じゃあ、シャオマオお風呂に―」

「はーい。入ってきまぁーす」

 ユエの言葉にたっかたかーと走っていった。


 一緒に入ろうと上げた手は、掴まれることなく宙に浮いたままだ。


「ユエ。いい加減諦めたほうがいい」

 レンレンに慰められた。

「洗ってあげたい、だけなんだ・・・・・」


「サリフェルシェリ。あれは獣人の本能でしょうか?」

「そうですね。番の身づくろいは獣人の本能ですね」

 ユエが幼女趣味であると勘違いされないように、若干力のこもるサリフェルシェリのセリフであった。



 シャオマオがランランとお風呂に入って身支度をして(若干遊んだので時間がかかった)、ユエに嬉々として髪に猫耳カチューシャ2をつけてもらったところで玄関のベルが鳴った。


「ユエ、お客様ね」

「うん。大勢来て煩わしいかな?」

 玄関にはたくさんの人の気配がする。

 でも、人の気配があまりしないようにみんな静かに行動しているようだ。

 気配と物音が比例していないような気がする。


「シャオマオ様。準備は出来ましたか?」

「ユエ、どう?」

「うん。大丈夫。シャオマオが気に入らないところがあったら直すよ」

「気に入らないところなんてないよ。カンペキ!」

 ドレッサーの前の椅子からぴょんと飛ぶように降りて、くるりと回ってうふふと笑う。


「にゃーん。猫族のシャオマオにゃーん」

「ふぐうっ」

 胸を抑えて真っ赤になった顔を伏せて、ユエは膝をついた。

 こんな攻撃は受けたことがない。

「ちょ、ユエ、そんなに恥ずかしがったらシャオマオも恥ずかしいのん!!やーめーてー!」

「なにしているんですか?また二人で遊んで。シャオマオ様が喜ぶお客様がいらっしゃっていますよ」

「え!?誰だろ?」



「シャオマオ!」

「ジョージ!」

 玄関まで迎えに行くと、ジョージ王子がちょうどウィンストンとともにやってきたところであった。


「ジョージ!元気そう!」

「はい!とても元気なんです。シャオマオのお陰です」

「シャオマオのおうちに遊びに来てくれてすっごく嬉しい!」

「ええ。いつかお泊り会ができると私も楽しみにしていました。今日は猫族ですね」

 ジョージのほっぺは健康な子供のそれだ。つやつやとして興奮で少し赤くて、唇も潤っている。

 あの熱でかさついていた肌はどこにもない。


 シャオマオは愛おしそうな顔でジョージの顔に手を添えた。

「本当にすっかり元気ね。うれしい」

 ぼぼっとジョージの顔に朱がさす。


「う?お熱?」

「いいえ!大丈夫でございます。嬉しいので興奮したのでしょう!」

 横からウィンストンがやって来て、ジョージをかばった。


「妖精様。お招きありがとうございます」

 男性の声に振り向けば、そこにはダニエル王だ。

 何度があっているうちにダニエル王はシャオマオに緊張しなくなったと思ったのだけれど、今日は緊張がにじみ出ている。肩に力が入っているようだ。


「おーさま、きんちょうしてるの?」

「う、はい。あの、サリフェルシェリ先生の手紙を頂いてから」

「お風呂入ってゆっくりする?」

「いえいえいえ!とんでもございません!」

 慌てて否定するダニエル王。

 そう、最近のシャオマオは人に自宅のお風呂をすすめるのが好きなのだ。


「あ、でもおーさまもジョージもみんなおしゃれしてきてるの!サリフェルシェリにおよばれしたの?お茶飲む?おやつあるよ?あ!もう晩御飯前なの!!おなか減ってる?!」

 みんなでリビングに向かいながらシャオマオはジョージにどんどん質問しているが、友達が遊びに来るのが初めてで、自分でも訳が分からないくらい興奮してきたようだ。


 ハフハフ興奮するシャオマオはかわいい。

「シャオマオちょっと落ち着いて。みんな急いで帰らないから大丈夫だよ」

「ほんちょ?」

「うん。王様たちはダリア姫に会いに来てくれたんだよ」

 ダイニングに足を踏み入れると、太陽のような顔で笑ったダリア姫が立ち上がって軽く膝を曲げるお辞儀をした。


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