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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第八章

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お前は一体何なんだ!!(ライの心の叫び)

 

「にーにー!ねーねー!」

 遠くから微かな声が聞こえたが、黒ヒョウ兄妹には方向も距離も瞬時に判断できた。


「シャオマオ!来てくれたね!」

「シャオマオ!」

 二人が地上から何かを叫んだのは分かったが、シャオマオには二人の声が聞こえない。

 それでもレンレンとランランが二人で手を広げているのが見えた途端にシャオマオはリューの上から飛び降りた。


 二人とも何でもないような顔をして、ぽすんといい力加減でシャオマオをキャッチした。

「お転婆な妹よ」

「ねーねたちが呼んでくれたからよぅ」

 確かに手を広げて待っていたのは二人だった。

「いい子。いい子。シャオマオはいい子ねー」

 レンレンにぐりぐり頭を撫でられる。

「にーに、ねーね、ライにーに。おそよございます」

 抱っこされながら挨拶をすると、またライに笑われた。


「相変わらず変な挨拶だね。おそよう」

「お早くないから遅ようなのよ」

「おお。そういう意味だったのか!シャオマオちゃんは賢いな!」

 ライはにこにこしながらシャオマオを撫でる。


「で?」

 ぐいっとシャオマオの頭を撫でていたライの手首をつかんでシャオマオを引き離し、ユエはライに問うた。


「あれだよ」

 シャオマオたちがライが指さした方向を見ると、遠くの大きな石のある場所でぷーちゃんがだみ声で時々叫びながらバタバタと暴れていた。


「・・・・・・ぷーちゃん?」

 驚いたシャオマオは目を真ん丸くして呆然としたように暴れるぷーちゃんを見つめた。

「そうなんだ。急にここに案内したまでは良かったんだが。墓に埋まってる鳥の骨を見たとたんに暴れて手が付けられなくなった」

「ライにーに、どして、お墓、掘ったの?」

「ああ、いや、ぷーの願いだ。興奮して何しゃべってるかわからんから、何が気に食わんのかわからん」

 ふすーっと疲れたため息を吐く。


 シャオマオはすいっと浮いて、ぷーちゃんに慎重に近づいた。

「ぷーちゃん泣いてるの?どうしたの?なにが悲しいの?」

「ぶぶい・・・」

 ぎろりと座った目でシャオマオを振り返ったぷーは、シャオマオの姿を見た途端にまた大粒の涙をこぼしてしとしと泣いてから「ぷいぷーーーん」と叫んでシャオマオの胸に飛び込んだ。


「よしよし、ぶーちゃん。いいこいいこ。あんまり泣かないで。シャオマオまで悲しくなっちゃう」

「ぷいーーーーーーーー!ぷーーーーーーーーーん」

「収まった、みたいだな」

「この鳥泥だらけだな。シャオマオの服が汚れる。引っ付くな」

 ユエが手を伸ばしたらシャオマオがスイっと飛び上がって手をよけた。


「だめだめ。泣いてる子の方が大事なの」

「そうだね。いくらでもドレスをプレゼントさせてもらう理由ができるのだからいいことだ」

「ううん。プレゼント大丈夫よ。ごしごしすればいいの」

「わかった。大切に洗わせてもらうね」

「ユエ。シャオマオが洗うからいいの」

「シャオマオ。俺のお姫様・・・」

 美しい眉をくっと悲しそうに下げられるということを聞かなければならないような気がするが、シャオマオは何度か尋ねられたけれど下着は断固として自分で洗っている。ここだけは以前の意識が残っているのか、子供としても意識しだす頃合いなのかはよくわからないが、見られるのが嫌なものはある。

 例えユエといえども越えてはいけない一線というものはあるのだ。


「自分で洗うの。ユエは横で見ててほしいの。それでシャオマオが間違ったら教えてほしいの」

「わかったよ」

 嬉しそうな顔を見て、シャオマオはまた一つユエの誘導方法を学んだのだった。


「ぷーちゃんどうしてそんなに興奮してたの?」

 改めてシャオマオの腕の中でふくっと座っているぷーちゃんに事情を聞いてみる。すっかり興奮は収まって、くつろいでいる姿にユエの眉間のしわが深くなる。

「ぷー・・・」

「え?」

「ぷぷぷぷぷー」

「えーっと・・・」

「ぷいん」

「どうしました?」

 サリフェルシェリに聞かれて、とりあえずシャオマオは聞いたままのことを答える。


「さっき散らばった骨は、ぷーちゃんの骨なんだって」

 全員がシャオマオの腕の中にいるぷーちゃんを見つめる。


「あの骨。ぷーちゃんなんだって。自分の骨だから、ぷーちゃんが何してもいいんだって」

「ぷいー」

 ちょっと得意げな顔をする鳥ぷーちゃん。

 全員の頭の上に浮かぶクエスチョンマークは見えないようだ。


「じゃあ、今いるお前はなんなんだよ」

 ライは人差し指を突き出して質問した。


「訳が分からないくらい毎日バカスカ飯を食って、グースカ寝て、大きくなったりドラゴンの呪いと戦った、り・・・・?」

 自分で言ってだんだん不安になってきた。


 びっくりするくらい食べる鳥なのはいい。寝るのもいい。しかし、ちょっと(?)大きくなったり、ドラゴンの呪いを追い払ったりというのはどう考えても普通の鳥ではない。


「・・・・・うん。普通の鳥じゃないのは分かったんだけど、あれがお前だっていうのなら、今いるお前は精神体なのか?飯食うのに?」

 精神体はたまにダンジョンの現れることがある。


 たまに死んでから精神体のみになっているものに出会うこともある。

 波長が生きた人間と合えば見えることもあるようだが、それ以外は実体がないままの生き物で、食べたり飲んだりしないし、はっきりとした意識があまりない。はっきりとした意識があるとなるとあのドラゴンのような「呪い」として残っているものが多い。なにせ恨む気持ちは強いのだ。いわゆる幽霊だ。


「実際に生き物のようにふるまう精神体なんて聞いたことありませんね。実際ぷーちゃんには触れていますし。あれは生まれ変わる前の自分ということじゃないんですか?」

「ぷーい?ぷんぷんぷん。ぴよおお~」

「あれはぷーちゃんの体。ぷーちゃんは気が付いたら今の姿になって、記憶があいまいで、ひとりっきりでずっとあっちにいったりこっちにいったりしてたんだって」

「ああ。この鳥はあの骨の思念の結晶だ。魔石と一緒なんだよ」

 簡単に理解したユエがシャオマオの頭を嬉しそうにくりくり撫でる。

 シャオマオの言ったことを一番に理解できたのが嬉しかったようだ。


「思念の結晶・・・・・・」

 サリフェルシェリがそう呟いてぷーちゃんをじっと見つめると、動かなくなってしまった。

 何か信じがたいことが目の前にある時には人はこういう顔をするんだろうな、というお手本のような顔をしている。


「ぷーいぷーい・・・」

「うんうん。わかった。精霊さんに頼んでみるよ」

 シャオマオの胸元にひっしと抱き着いたり、ぐりぐりと顔を押し付けて甘えるぷーちゃんを、とうとう我慢できなくなったユエが取り上げた。

「シャオマオ、精霊に頼むなら鳥を預かっていてあげるよ」

「ありがとうユエ」

「どういたしまして」


 お墓であった穴に近づくと、ぷーちゃんであった骨が散らばっている。

(ううう・・・鳥さんの骨・・・)


「精霊さーん!たくさん集まってー」

「シャオマオ!」

「シャオマオ様!」

 シャオマオのセリフに危機を感じたユエとサリフェルシェリが慌てて声をかけたが止められなかった。


「むにゃあ!」

 このあたりに漂っていた精霊がすべて集まったのではないかと疑うほどの、ありとあらゆる精霊がシャオマオに向かってやってきたのだ。シルエットがこんもりとした丸になってしまった。


「みえない!シャオマオ様が見えない!!」

 サリフェルシェリは慌てて精霊よけの札を使ってまぶしいくらいの光源となったシャオマオを助けようとした。


「ぷはー。びっくりした」

「びっくりしたのはこっちだよ、シャオマオ」

 適度に数を減らしたおかげで自由に動けるようになった。

 特に精霊に拘束力はないが、シャオマオは相手が傷つかないように極力ぶつかったりしないようにしている。そんな気遣いをしてくれるので精霊もシャオマオが大好きだ。


「うん。ごめんなさい。ここ、生き物とか精霊さんの気配があんまりないからたくさん呼んでもあんまり来ないのかと思ったの」

「そうだね。ちょっと雰囲気が変な山だ」

 ユエを周りを見回して、山の気配を探っていたが首をひねる。

「本当に、変な雰囲気だ」


「鳥さんの骨を別の場所に置いておいてあげたいの」

「わかった。それは俺たちがやるよ」

「ありがとうライにーに」

 ポン、と頭に手を置いてニコッと笑ってくれたライに礼をいう。


 黒ヒョウ兄妹が大きな骨を移動させてくれた後に、ユエの手の中にいるぷーちゃんにやってほしいことを聞く。


「うん。わかった。お願いしてみるね」

「ぷい!」

「精霊さん!風で穴の中の土を払って!」


 ぶわ!


 全員の髪や服がバサバサとなびくくらいの風が脇を通り過ぎて穴に向かって行く。

 硬くて掘り進めることが出来なかった岩盤の上にたまっていた土を一つ残らず巻き上げてきれいに避けてくれた。


「精霊さん!水で硬い岩を洗ってあげて!」


「あ、リューが」

 後ろからミーシャの声がしたと思ったら、小さな水の精霊と遊んでいたリューがシャオマオの脇を抜けて猛スピードで穴の中に飛び込んで行った。


 どぱん!


 水しぶきとともに、虹がかかる。


 みんな水しぶきでびしょびしょになったが、再び顕現したリューは嬉しそうだ。

 因みにシャオマオはユエに庇われたので一つも濡れていない。


「ぴよおおおおおおおおおおおお!!!!」

 シャオマオをかばった際に手を離したぷーちゃんが穴に向かって慌てて突進していった。

 めちゃくちゃ興奮している。


「ユエ。私たちも見に行こう」

「わかった」


 そして、穴の中に見たもののせいで、号泣するぷーちゃん以外が全員固まってしまって誰もしばらく動くことが出来ないでいたのだった。



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