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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第八章

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ぷーちゃんの道案内

 

 ダリア姫は太陽のような笑顔で別れの言葉を発した。


 でも、シャオマオはどうしてもダリア姫がなにもかもを受け入れて納得しているとは思えなかった。


 シャオマオは「人間じゃなくて妖精だ」「空を飛ぶんだ」「神様(銀狼様)に加護をもらっている」などなど、以前の記憶が残っているときにはたくさんの理解不能なことを言われたが、ここが「いままで過ごしていた世界じゃなくて、別の星だ」と感じられたことで納得できたことも多かった。


 ダリア姫はこの星に生まれてこの星で人族として育って、急にこの姿かたちの違うドラゴンが父親だと言われて納得できるのだろうか。

 妖精がそのように説明したから納得するしかなかったのではないか。

 ドラゴンが自分を大事にしてくれているようなので、勘違いなのではと疑問を口にすることもできなかったのではないのか。

 自分がドラゴンに変わってしまうことが本当であるならば、怖いと思っているのではないだろうか。


 シャオマオはダリア姫の落ち着いた様子を見て、余計に落ち着かなくなってしまった。

 自分のスカートのすそをきゅっと握る。


「シャオマオ。鳥を解放しに行くかい?」

「・・・うん。鳥さんにダリア姫のこと説明しないと」

 シャオマオがもやもやしていることに気が付いたユエは、スカートを握るシャオマオの手をそっと上から押さえて、いつものように片手抱っこをした。


 シャオマオはユエの首にきゅうとしがみつく。

「大丈夫?」

「うん。だいじょーぶ。この夢で、だれが助けてほしいのかをちゃんと見るの」

「強いね、シャオマオ」

 とんとん、と優しくシャオマオの小さな背中を叩いたユエは崖の突起を足掛かりに、軽々と崖の上までシャオマオを連れて駆け上がった。




「ああ、ライせんせ・・・い?」

 足音に反応して、洞窟の出入り口から飛び出してきたライに声をかけたミーシャは、ライが左右に双子を抱えているのを見てぎょっとした。


 まさか怪我でもしたのかと大精霊の竜を顕現させ、ライが飛び乗ったのを見て慌てて飛び上がった。


「ライ先生!怪我ですか?状態は?」

「いや、誰も怪我してない。ミーシャ、すまないがぷーが案内するほうに向かって飛んでくれ」

「え?」

 竜の頭の上を見ると、格好つけたぷーちゃんが竜に向かってぷーぷー言っている。


 竜はちゃんとぷーちゃんの言葉を理解しているらしく、シャオマオの屋敷へ向かおうとしていた体をぐるりと旋回させてぷーちゃんが翼で刺す方向へと飛んでいく。


「レンレン、ランランどうだ?もう平気か?」

 ライが声をかけると竜の体の上で大の字で倒れていたレンレンとランランが同じタイミングで右手を挙げて「だいじょうぶ・・・」と返事した。

 二人はのろのろ起き上がって、持っていた水袋から水を飲んでから一息ついた。


「・・・動けなかった。二人だったら死んでたよ」

「そうね・・・」

 レンレンとランランは本当に悔しそうにつぶやいた。


「しょうがねえよ。あんなの想定外だ」

 ライはもう立ち直ってへらりと笑っている。


「それにしてもなんでぷーはあんなのと戦えたんだろうな。それに、あんなのが住んでる洞窟を鱗族がアジトにしてる理由がわかんねえな」

 ライも水を飲んで悩んでいるようだ。


「ライ先生、少し説明してもらっても?」

「ああ、ミーシャの意見も聞きたいしな」

 ライはゆったりと飛ぶ竜の背中の上で、ミーシャに洞窟内での出来事を説明した。




「・・・・ということでね、鳥さん、あにょ・・・ダリア姫はね、ドラゴンぱぁぱとお山に帰るんだって」

「・・・・・ピヨ・・・・・・」

 しゃがみこんでくきっと首が折れたようにうなだれる金の鳥。大きな瞳からは大粒の涙がぼたぼたと流れ落ちて地面に水たまりを作っている。

 衝撃的な真実も、ダリア姫の言葉も全部全部受け止めた結果だ。

 誰がどう見てもショックを受けている。


「鳥さん・・・ダリア姫のお願いがね、鳥さんを檻から出して、だったにょ。あの、鳥さんが檻を開けられるようにしておくの。見つからないように、逃げられるタイミングが来たら逃げてほしいの」

「・・・・・」

「あにょ、だいじょうぶ?鳥さん、逃げられる?」

「・・・・・・・・」

 シャオマオが尋ねても、鳥はうなだれて返事をすることさえできないようだ。


「シャオマオが尋ねているんだから返事をしろ」

 聞こえてはいないだろうに、ユエは真面目な顔をして鳥を叱りつけたがシャオマオがユエに向かってプルプルと頭を横に振る。

 シャオマオにはショックを受けている鳥をこれ以上追い詰めたくはない。


 手の届く檻に手をかざして「壊れやすくなって~」と口に出して願うと、岩に固定されている檻が見る見る間に錆びて、かろうじてつながっているだけになった。

 これで金の鳥が軽く足蹴にするくらいで檻は外れるだろう。


「じゃあ、鳥さん、あの、元気は出ないかもしれないけど、あの、あにょ、えっと・・・」

「・・・・・ピ」

 微かな声で、返事をしてからシャオマオたちに背を向けて、鳥は岩の壁を向いてもう動かなくなってしまった。


「シャオマオ。夢が溶け始めた」

 ユエはシャオマオが自分から離れないように抱きしめた。


「ホントだ・・・」

 視界の端の輪郭から景色がドロドロと溶け始めている。

 この夢の中から弾かれようとしているのだ。


「鳥さん。またここに呼ばれるかもしれない。そしたらシャオマオがちゃんとダリア姫のこと追いかけてあげるから、鳥さんはちゃんと逃げてね!大丈夫。シャオマオが会いに行くよ」




「う・・・うぅ」

「シャオマオ。大丈夫?」

 部屋の中はまだ薄暗く、シャオマオがもぞもぞと目を開けられずに動いていたら、ユエが心配して髪をさらさらと撫でてくれた。


「シャオマオ。お水飲む?」

「あい・・・」

 ベッドサイドの水差しからお水をくんで、コップを手渡してくれる。


「あ、いが、と」

 コクっと一口飲むと、冷たいお水が体に染みる。

 自分は意識していないけれど、汗をかいて体は乾いていたようだ。

 ユエはテーブルの上のランプに明かりをつけてくれる。

 ぷーちゃんはまだ帰ってきていないようだ。


「シャオマオ。今回の夢も覚えてる?」

「うん。最後、鳥さんに話してるところだった」

「覚えてるところが一緒でよかった」

 きちんと最初から最後までシャオマオと一緒に居られたことが、ユエには大事なことのようだった。

 嬉しそうなユエの笑顔が、ランプの光に照らされてキラキラしているのをみて、シャオマオもにっこりと微笑んだ。ユエが喜んでくれてよかった。


「どう?続けて眠れそう?」

「ううん。体あつくて汗かいちゃって。ちょっとだけ起きてたいかも」

「お風呂で汗流す?それともタオルで拭く?」

「タオルで拭きたいの」

「わかった。準備するよ」

 ユエは階下で洗面器にお湯を準備してタオルを濡らして渡してくれた。


「背中拭こうか?」

「にゃ!?」

 シャオマオは真っ赤になって「じぶんでするー!」と言いながら自分の部屋に戻って行ってしまった。

(残念だ。嘗めてあげるといったほうがよかったかな?)

 ユエは真剣な顔で閉まった扉を見つめていた。


 新しいパジャマに着替えてきたシャオマオに向かって、ユエが「実はさっき1階でサリフェルシェリに会ったんだが。話があると言ってたな」と言って、シャオマオを慌てさせた。


「サリーずっと待ってるの?」

「?待たせておけばいい」

「サリー待ってるのかわいそうじゃない」

「シャオマオが着替えるほうが大事だ。風邪をひくといけない」

 シャオマオは慌ててユエの部屋を飛び出して、ダイニングのテーブルに紙を広げているサリフェルシェリに飛びついた。


「サリー!遅くなってごめんね!」

「いいえ。こちらこそこんな時間に呼び出して申し訳ありません」

「ううん。ちょうど目が覚めたところだったから」

 嬉しそうにサリフェルシェリはきゅうとシャオマオを抱きしめてから、自分の隣の席にシャオマオを座らせた。

 シャオマオがテーブルの上をちらりと見ると、広げられているのはサリフェルシェリがウィンストンから借りてきた王家の私的な資料のようだった。

 表紙は簡素で本として人に読ませるものというよりは、王家の人々のこまごまとした歴史だったり、中央が出来てからの記録が残されているのらしい。


 シャオマオはまずはサリフェルシェリにさっきまで見ていた夢の話を聞かせた。

 うんうんと静かに聞いていたサリフェルシェリが、シャオマオが話し終わると広げた紙の一枚を手に取って、シャオマオに読み聞かせる。


「鱗族は大昔、主に集団で狩りをすることを生業としていた一つの部族でした」

 ユエはお茶を飲むと眠れなくなると思って、少し温めたミルクにはちみつを垂らしたものをシャオマオの前に置いて、自分の膝の上に座らせ直した。


「大昔は普通の人族とあまり変わらない姿だったようですが、狩猟の腕は高かったようですね。そしてある時からほかの人族とは別れて森にすむようになったそうです。他の人族の前には一切姿を現さなくなったと言います。狩りの時に何かを怒らせてその呪われた姿を隠したかったからじゃないのか、とも噂されていたようですね」

 思わず飲んでいたミルクから目を離してサリフェルシェリを見つめた。


「ものがたりと一緒よ!」

「そうですね。とても似ていますね。そしてシャオマオ様たちが見ていた夢とも共通点があります」

 うんうんとシャオマオが大きく頷く。


「いまの鱗族はみんな黒の肌に鱗があるの。それがドラゴンの呪いだとしたら、ダリア姫はどうなったのかしら。どうして呪いは解けなかったのかしら・・・」

 不安に心臓がドキドキしはじめて、シャオマオはパジャマの胸元をぎゅっと握った。

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