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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第八章

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シャオマオのためならできる

 

 シャオマオが目を開くと、ユエと目が合った。

「目が覚めた?」

「・・・うん」


 ユエといつも通りのベッドの上。

 ゆったりとシャオマオの髪を撫でていたユエはにっこりと笑ってくれる。

 シャオマオの寝顔を横で添い寝しながらずっと眺めていたようだ。


「泣きすぎて疲れたんだよ。少しすっきりした?」

「うん。すっきりよ」

 ユエの手がシャオマオの頬をすりすりと撫でる。

 その手が暖かくて気持ちいいのでシャオマオは自然と笑顔になる。


「のど乾いたんじゃない?」

 ユエは起き上がってテーブルに置いてあった水差しから汲んだ水を準備して渡してくれる。


「ありがとう、ユエ」

「どういたしましてお姫様」

 テーブルの上を見ると、前に瞼を冷やしてもらったひんやりする薬草やタオルが置いてある。

 シャオマオの瞼が腫れてしまわないように、寝ている間にお世話をたくさんしてくれていたようだ。


「お腹すいてるよね。もうすぐご飯の時間だからちょっとだけ我慢だよ」

 ユエはベッドの端に腰かけて、軽々とシャオマオを持ち上げて自分の膝に座らせる。

 そして、スンスンとシャオマオの髪に顔をうずめて匂いを嗅ぐ。

 たまに頭のてっぺんに口づけしているようだ。

 シャオマオはいつものことなので気にしない。


「ユエ。いろいろありがとう」

「したくてしてる。かわいい桃花。いろいろさせてくれてありがとう」

 シャオマオからコップを受け取って微笑むユエ。


 窓から差し込む夕日が部屋の中を赤く染めている。


「今日は失敗しちゃったの・・・。せっかくの遠足だったのに」

「気にしなくていい。またエンソクはあるよ」

 頭をゆったりと撫で、そのまま背後からシャオマオの手を大きな手で包むように握ってくれる。


「ユエ。妖精は・・・」

「うん」


「妖精は・・・」

「うん」

 言いよどむが、ユエはシャオマオの手の甲を親指ですりすり撫でながら言葉を待ってくれる。


「ユエは妖精、好き?」

「シャオマオが好き。俺のかわいい桃花が好き。大好き」

「違うの。妖精。妖精様」

「ん?違わないよ。シャオマオが妖精で、俺の片割れで、俺の番で、俺の桃花だ」

 思わず振り返ったシャオマオをきょとんと見返すユエ。


「シャオマオ。妖精はね、なんの問題もない。そんなの大事でもなんでもない。シャオマオが大事なんだ。シャオマオが笑ってるかどうかが大事。シャオマオが楽しいかどうかが問題」


「でも、妖精は・・・・怖い、の」

「うん、怖い。シャオマオが俺を嫌いにならないか、シャオマオと離れ離れにならないかが怖い」


「妖精は、みんなに好き好き言われるの」

「うん、大好きだ。かわいい。こんなにきれいな心みたことない。美しいシャオマオ。みんながシャオマオを好きになる。でも俺が一番シャオマオを好きだ。誰にも負けない」


「妖精は、人を好き勝手にするの」

「うん。シャオマオは何でも俺に言えばいい。何でもする。かわいいシャオマオ。片割れ。元は一つ。俺はシャオマオ。シャオマオは俺だよ。だからなんでも俺にさせればいい。遠慮してあんまりさせてくれないけど」


「妖精は・・・妖精は・・・」

 シャオマオは言いたいことが何が何だか分からなくなってきた。言葉が続かない。


「妖精はシャオマオだよ。でも、シャオマオは妖精じゃない。シャオマオはシャオマオだよ」

 ユエに握られている手がゆっくり持ち上げられて、指先に口づけされる。


「妖精だから、じゃないよ。シャオマオだからだよ。かわいくて、一生懸命で、がんばり屋さんで、お菓子が好きで、優しくて、時々拗ねて、泣き虫で、でもすぐ笑って、お寝坊さんで。もっとあるけど、そんなシャオマオだからみんな好きになるんだ」


「俺の心を掴んでかき乱す。俺はシャオマオが目の前にいるだけでどうしていいかわからなくなる。かわいい。可愛すぎてどうしていいかわからなくなる。胸が苦しい」

 ユエはシャオマオの体の向きを変えて、自分の手を添えてシャオマオの手を自分の心臓の位置にあてる。


「シャオマオも、シャオマオを好きになって」

「・・・・・・・・・・ユエ」

 暖かくて、少し速い鼓動が伝わってくる。


「妖精であることがどうでもよくなるくらい、シャオマオはシャオマオを愛して」

「ユエ~~!」


「シャオマオが好きだよ」

「シャオマオもユエが好き!」

「うん。ありがとうシャオマオ」

「ユエもありがとおおおおお」

「うん。うん」

 また泣き出してしまったシャオマオを優しく抱きしめて、背中をポンポンとたたくユエ。



「すごいな、ユエがシャオマオちゃんを慰めた」

「ただ好き好きと言っていただけよ」

「でもシャオマオには伝わったよ」

 ライ、ランラン、レンレンがドアの前で小声で話す。

 シャオマオの様子をうかがっていたのだが、うまくいったようでよかった。


「ユエ、あんなにたくさん喋れたね」

「シャオマオにかける言葉だけたくさんね」

 黒ヒョウの双子があきれたようにいうと、ドアが内側から開いた。


「にーにとねーね!」

 ユエに片手抱っこされたシャオマオが嬉しそうに声を上げる。


「シャオマオ!元気になったか?」

「また泣いたか?目が赤いよ」

「うん!泣いちゃった。でももう大丈夫なの!」

 ユエに降ろしてもらって双子と抱き合うシャオマオ。すっかり笑顔だ。


「シャオマオちゃん。夕飯できたから呼びに来たよ」

「ありがとう!ライにーに。もうおなかペコペコ!」

 双子はシャオマオを担ぎ上げて、急ぎ足でダイニングへ向かった。



「あ!サリーにミーシャにーに。おかえりなさい!」

 ダイニングに入ってすぐ、テーブルにつくサリフェルシェリとミーシャの姿を見て嬉しくなったシャオマオが声をかけるとミーシャはぽっと赤くなった。


「た、ただいま、帰りました」

 誰かのお帰りがこんなに嬉しいとは知らなかった。


 もちろん子供のころ、親と住んでいたころは言われていたのだろうが両親以外の言葉に嬉しさが込みあがってくる。


「ふふ。ミーシャ。いつでも帰って来てね」

 ミーシャと一緒に住みたいシャオマオは、ここが家だと言ってくれる。


 双子にいつもの椅子に降ろしてもらう。

 そこにユエがやって来て、シャオマオを抱き上げてすぐ自分の膝の上に抱きなおしてしまった。


「さあ。まずは食べよう。話は落ち着いてからだ」

「はーい!」

 クラムチャウダースープ。

 たっぷりの野菜サラダ。

 メインは柔らかく焼かれた豆鹿のステーキ。


「美味しい?」

「ほいひ~!」

 食べやすくカットされたステーキを口に入れてもらってほっぺを抑えるシャオマオ。


 獣人の食事はちょっと炭水化物が足りない。

 シャオマオのために炭水化物も出すようになったライは、小盛にしたしたご飯をよそってシャオマオの前に置く。


「ん!ごはん!」

「うん。スイさんが送ってくれたんだ。食べてみて」


「ごっは~~ん」

「シャオマオ。あーん」

 口に入れてもらったご飯は、前の星で食べ慣れた(のはおかゆであったが)うるち米よりはもち米に近い。ちょっとおこわっぽい。しっかりした食べ応えと甘み。


「どう?美味しい?」

「おいちい!前の星とちょっと違う。こっちもすき~」

「よかったらスイさんにお礼のお手紙送ってあげて」

「うん!美味しいってお礼するね」


 食事がすすんだところでライがミーシャにいろいろ質問して、誘拐犯のことを教えてもらう。


「ふうん。あのときの残党か・・・」

「ユエ先生のことを知っていると言っていました」


「あの時シャオマオちゃんを攫おうとした奴らは全部まとめて捕まえたし、アジトにいたやつらも全部捕まえたはずなんだけどなぁ」

 ライはステーキを咀嚼しながらぼんやりと呟く。


鱗族(りんぞく)ですね」

 サリフェルシェリの言葉に、シャオマオが首をひねる。


「りんぞく・・・?」

「はい。肌に鱗があり、黒化した人達をそう呼んでいますね」


「うろこあった。海人族(うみびとぞく)?」

「いいえ。海人族ではないのです」


「獣人?」

「獣人とも人族とも言えない人たちで、少し我々とは違う成り立ちの・・・・・」

 サリフェルシェリは自分の言葉に少し、何か思い当たった様子で黙った。


「鱗族ってだいたい裏稼業よ」

「金でなんでもやるって言われてるよ」

「みんな悪いことするの?」

「そうよ。シャオマオを攫うのも悪いことよ」

「のーして悪いことするのかな?」

「うーん。今度会ったら聞いてみるか?」

「もうシャオマオが会うことはない」

 双子と話をしていたところに、ユエがぴしゃりと言い放つ。


「シャオマオが誘拐犯と会うことはない。二度と」

「・・・・・3回、もう会ったの」

「・・・・・・」

 よくよく考えてみれば、シャオマオをこの星に来た瞬間に攫おうとしたのは鱗族。

 猫族の里に侵入してまで攫おうとしたのも、遠足についてきて攫おうとしたのも鱗族だ。


「・・・シャオマオ狙われすぎよ」

「まあ、鱗族だからって全部悪いってことはないと思うよ。まっとうに暮らしてる人もいると思う。けど、鱗族のこと、あんまりわかってないんだよ。鱗族と接触することってほとんどないから」

 ライが少し困った顔で言う。


 ここにいるメンバーが冒険者をしているせいもあるが、会ったことのある鱗族はほとんど犯罪行為に手を染めているものばかりだった。


 全体でどのくらいの人数がいるのかもわからない。

 どのような生活をしているのかもよくわからない。

 一般人では見たことある人の方が少ない。そういう不思議な人たちなのだという。

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