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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第八章

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ツンデレの熊さん

 

「サリー。お腹イタイイタイの人たち何とかできる?」

「もちろん。薬をお礼に渡します」

 サリーは腰に付けた薬ポーチから食中毒の職人の人数分の薬をペーターに渡した。


「ありがとうございます!」

「いえいえ。ペーター君には本当に助けてもらいましたから」

 職人さんは工房の裏にある寮に住んでいるらしく、ペーターは今すぐに薬を届けに行くといった。


 本当に精霊はペーターを気に入っているようだ。

 精霊に纏わりつかれ、青の瞳はきらきらと輝く。


「ペーター君が戻ってくるまでの間は、ユエとライに工房の手伝いを頑張ってもらいましょう」

 こっそり工房を覗き込んだら、ライはちょこちょこと薪をくべながら楽しそうにペーターの父と会話をしていた。

 流石の人懐っこさ。

 美形なのに人に壁を作らせないような雰囲気で、誰とでも仲良くなれるのがライの特徴だ。


 ユエは黙々と薪を運んで窯にくべる。

 火の精霊の指示に従って温度管理ができているらしく、時々職人から何かを話しかけられているが、ほとんど窯を一つ任されているような状況だった。


「我々だけ先に図書館に行くと、ユエの機嫌が悪くなるのが目に見えてますからね」

 サリフェルシェリの言葉にユエを見ると、シャオマオの視線を感じたユエが振り返って少し微笑む。


 炎でオレンジに染まったユエの虎のしっぽがふいふいと機嫌よく揺れているのが見える。

 目が合っただけで喜んでくれるユエに、シャオマオも笑顔になった。


「職人さんが戻ってくるまでには少し時間がかかります。ミーシャ宛のこのメモは鳥族に運んでもらいましょうか」

 サリフェルシェリはペーターから教わった本の題名が書かれたメモを持ち上げる。


「ぷ」

「ぷーちゃん、学校の場所分かるの?」

「ぷ」

「でも、ぷーちゃんちっちゃいから心配よ」

「ぷん」

 ぷーちゃんは体を震わせて精一杯膨らませると、もともとのシマエナガの大きさから鳩サイズになった。


「ぷ、ぷーちゃん・・・?」

「ぷぷぷ」

 目を見開いて驚くシャオマオとサリフェルシェリをしり目に、サリフェルシェリの手からさっとメモを奪って飛び立った。


「ぷーちゃん!無理しないでだめなら帰って来てね!あとからシャオマオも図書館行くからね!待っててね!」

 ぷーちゃんはメモを口で咥えているので返事は出来ない様だが、学校に向かって飛び去って行った。


「・・・・・大きくなりましたね」

「風の精霊ちゃんたちー。ぷーちゃんを助けてあげてね」

 シャオマオのお願いに、風の精霊はぷーちゃんを援護して、あっという間にぷーちゃんの姿は見えなくなった。


「大きくなった・・・。鳥?鳥ですか?あれ」

 サリフェルシェリは何かをブツブツつぶやいていたが、気にしないシャオマオ。

 図鑑にも載ってない鳥なのだから、何があっても誰にも正解が分からない。

 ぷーちゃんはぷーちゃんという生き物なのだろう。



「あの、妖精様ですか?」

 声のした方を向くと、ペーターにそっくりな真っ青な瞳の女性が遠慮がちに立っていた。


「ペーターのまぁま?」

「そうです。妖精様、夫が失礼を。よろしければお茶をいかがですか?サリフェルシェリ先生も」

「ありがとう!いただきます」

 シャオマオがニコッと笑ったので、こわばったペーターの母の顔も少し解けた。


 ペーターの自宅に招待されて、お茶とジャムクッキーをごちそうになる。


「すみません。私が作ったものしかなくて」

「まぁまのクッキー美味しいの!嬉しい!」

 シャオマオは甘いジャムクッキーの二つ目に手を付けた。


 3時のお茶の時間に工房にお茶を届けに行ったら、知らない獣人がいて、妖精様がペーターを訪ねてやってきたこと、いまも外で待っていることをきいて急いで駆けつけてくれたのらしい。


「妖精様にもお連れ様にも失礼な態度を夫がとったと聞きました。大変申し訳ございませんでした」

 立って深々と頭を下げるペーターの母に、シャオマオは首をかしげる。


「ねえねえ、サリー。なにか失礼なことあった?」

 隣に座るサリフェルシェリのツンととがった耳にひそひそと話しかけるシャオマオ。


「ペーター君のお母さま。お気になさらず。シャオマオ様はとても大らかです。そして自分を普通の子供のように扱ってくれる人がお好きなのです」

 笑顔のサリフェルシェリに、ペーターの母は「そう、ですか?」ときょとんとした顔をする。


「ペーターまぁま座って。シャオマオとお話して」

「はい」


 ペーターの読書家なところ。学校で優しく庇ってくれるところ。シャオマオと普通に話してくれるところ。ペーターの学校での様子を教えたり、シャオマオがペーターのことが大好きであると伝えると、ペーターの母は本当に喜んでくれた。


「あの子、引っ込み思案で・・・。夫が怒ってばかりだからあまり自分のことを話してくれなくなって。妖精様、学校でのことを教えてくれてありがとうございます。ペーターとお友達になってくれたことも・・・」

「シャオマオよ。同じクラスのお友達だから、シャオマオのこと、シャオマオって呼んでね」

「はい。シャオマオちゃん」

 少し涙を浮かべたペーターの母。本当にペーターは母親似だ。

 はにかんで笑う笑い方がそっくり。


 しばらくペーターの母といろいろな話をしていたら、玄関からペーターが走ってきた。

「母さん!職人さんが戻って来てくれたよ!」

「え?!」

「サリフェルシェリ先生が薬を分けてくれたんだ!みんな今工房に戻った!」

「そんな・・・。高価な薬を分けて頂いたのでは・・・?」

 恐縮する母に、サリフェルシェリはにこにこと笑う。


「ペーター君の知識にはそれだけの価値があります。本当に素晴らしい能力を持っているのですよ?将来エルフの専門院に来てもらいたいくらいです」

 お世辞なしでほめるサリフェルシェリに、ペーターは真っ赤になって照れた。


「あら?ペーターメガネはどうしたの?」

「無くても平気なんだ。シャオマオのお陰だよ」

「え?!」

 シャオマオを勢いよく振り向くペーターの母。


「精霊ちゃんなのよ。ペーター精霊ちゃんにすっごく好かれてるの。きらきらの海みたいな目できれいだって」

 へへっと笑って自分のお陰ではないことを告げる。


「なんて、お礼を言っていいのか・・・」

 感極まって泣き出すペーターの母。


 小さい時は読みたい本を持っている友達の家を訪ねて、すべてのページを覚えて家に帰って家で両親に聞かせたりしていたのだが、父親には本を覚えていることをわかってもらえずに夢みたいなことばかり言っていると思われていたらしい。本を読むことを禁じられると隠れてまで読んだ。

 

 ペーターの目が悪くなったのは暗いところで隠れて本を読んでいたせいだ。

 そのせいで余計に読書を禁じられたペーターは、学校に通うようになっても教科書以外は家に持ち込むことを禁じられたままだ。


「シャオマオ様。ユエたちを迎えに行ってあげましょう」

「はーい!」

 シャオマオはお茶のお礼を言って、ユエたちのいる工房に向かった。


「ユエー!」

「シャオマオ」

 ユエとライは工房の裏で井戸から水を汲んで浴びていた。

 流石に汗をかきすぎていたので職人さんが普段使っている水場を教えてもらったのだ。


 振り返ったユエは工房から借りたタオルでガシガシと体をふいてから、改めてシャオマオを抱き上げる。


「おい。チビ」

「ん?」

 後ろから声をかけられて、振り向くとペーターの父がいた。


「・・・チビ」

「う?シャオマオよ」

「・・・・・シャオマオ、お前、ペーターの目を治してくれたんだってな」

「精霊ちゃんよ?精霊ちゃんが助けてくれてるの」

「・・・・・・・・・・・・・・とう」

「とう?」

「ありがとうって言ったんだ!ペーターの目を治してくれて!ありがとうな!」

 吠えるように一気にしゃべるペーターの父は、そのままくるっと振り返って工房にのっしのっしと帰って行った。


「恥ずかしがり屋なんだねぇ」

 ライはケラケラ笑いながらタオルで頭をガシガシと拭く。


「ペーターのぱぁぱもまぁまも優しい人ね。大好き」

 シャオマオは機嫌よく微笑んだ。



 そのあと学校図書館に向かうと、光の差し込む広い席にミーシャが座って本を読み進めているところだった。

 傍らには元のサイズに戻ったぷーちゃんがいた。


「ミーシャ。あ!ぷーちゃん無事についてたのね」

「シャオマオ」

 静かに駆け寄ると、ミーシャがにっこり微笑んでくれた。

 周りから、大きなため息がいろいろなところから聞こえてきた。

 みんな本を読みつつもちらちらとミーシャを盗み見ていたのだろう。


「ぷーちゃんが届けてくれたタイトルの本はこちらです」

 机の上には8冊の本がある。


「シャオマオ。どうしてぷーちゃんは大きくなっていたんですか?」

「わかんないの。ぷーちゃん自分で大きくなったの」

「わけがわからない・・・」

 ミーシャは眉間にしわを寄せて悩む。

 ミーシャに手紙を届けた後に、空気を抜くようなため息をついたらそのまま元の大きさに戻ったのらしい。

「シャオマオ。食べてしまおうか」

「だめー!」

 ちょっと大きな声を出したら司書の女性に睨まれた。

「ごめんなさい・・・」

 慌てて口を押えた。


「ペーターから、簡単にしか中身について聞いてないの。時間がなくて」

「これだけ絞り込まれてるだけでもありがたいです」

 机に積み上げられてる本をみて、にこっと笑うミーシャにまた周りからため息が聞こえる。


「シャオマオが気になる本はあったかな?」

 シャオマオは笑顔のユエに尋ねられて、一冊の本を指さした。

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