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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第一章

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海で遊ぼう!

 

「妖精様。海は好きですか?」

「しゅき!」


 海の上を高速で飛びながら顔に潮風を浴びる。

「我々は泳がないので海はこうやって飛んで遊びます」


 低く飛んだ若者が一人、手を伸ばして海面に触れる。

 ざざざっと海水が割れて道ができる。

 ぱっと近くにいた女の子に手ですくった水をかけて、キャーキャーと遊んでいる。


「もう少し上を飛びましょう。今日の海風は面白い」

「あい!」


 シャオマオはぐんと高度を上げられても、怖いと思う気持ちがなかった。

 落ちたらどうしようとかいう気持ちがちっとも湧かないのだ。

 チェキータの抱っこに安定感があるからかな?

 それもなんだかおかしな話だなぁと冷静に思う自分もいるが、そういうものだと納得もする。


 きりきりと回転しながら上昇したり、下降をしたりを繰り返したり、止まって水平線を眺めたり。

 風が吹くままに任せて弄ばれたと思ったら、今度は逆らって高速で飛んでみたりと、思いっきり鳥族たちの遊びに付き合った。


「妖精様も自分で飛んだらいいのに」

 ジェッズが残念そうにいう。

「う?シャオマオ?」

「そうです。自分で飛ぶんです」

「飛べない。これ、ナイナイ」

 上空で頭に飾り付けられたいろんな鳥族の羽を指さして言う。


 あいさつに来た鳥族が、自分のきれいな羽をシャオマオに献上して髪に刺すのだ。

 鳥族は自分の気に入った相手に、自分の抜けたきれいな羽を捧げる習慣がある。

 ほとんど求愛である。いま頭のお団子にはクローバーや羽が刺さりすぎてとんでもないことになっている。

 あとでユエが怒るだろうなと思ってくすくす笑ってしまった。


「翼ですか?なくても飛べますでしょう。妖精様ですよ?」

「う?」

 言葉も内容もよく理解できなかった。

 妖精がなんなのか、またサリフェルシェリに教えてもらわなければならない。

 みんな当然の常識のように妖精について知っているようだ。

 妖精について一番知らないのが、妖精である自分だなんて変な感じだ。


「こんなに風の精霊がまとわりついて飛べ飛べとねだっているのに・・・」

「妖精様はまだこの世界に来たばかりだ。自分のことでもわからないことは多いだろう。しかし、そのおかげでこうして抱きしめて飛ぶことができる。・・・かわいい」

 チェキータにすりすりと頬ずりされると照れてしまう。


「共に飛んで遊ぶことはもう少し待とう」

「そうですね!」

「でも、ニーカはチェキータみたいに抱いていいと言われない。悔しい」

 元気よく返事したサラサに対してニーカは悔しそうだ。


 ニーカは妖精様を抱きしめたり、抱いて空を飛んでみたい。まだ成人前の子供だから本来は許されるはずだったが、触ろうとすればユエがぎりぎりと射殺しそうな目で睨んで魔力圧力をぶつけて来る。


 ニーカもチェキータという番に男性が近づけば黙ってはいない。

 しかし、それも成人した大人だからだ。

 あそこまで執着が激しいのは狼を超えるかもしれない。


 うーん。とニーカは一瞬考えたが、こんなことは考えてもしょうがないのだ。

 今はユエの邪魔が入らない空だ。こんな天気と風のいい日に空で悩むなんて馬鹿げている。


「もう少し沖のほうまで行けば海人族の休憩する島がある。そこまでいって海人族にも妖精様を見せてあげようか」

「だめだ。あいつらは妖精様を海に連れて行ってしまうだろう」

「でも、そろそろ妖精様を休憩させてあげないと。きっと疲れている」

 チェキータとニーカは妖精様がまだ小さな子供であることもわかっている。痩せて体力がないことも。

 ほんとうに生まれたてのひな鳥くらい軽いし見ていて弱弱しいのだ。

 獣人族はもちろん、人族でもこんなに弱弱しく見える子供はめったにいない。


「妖精様。のどは乾きませんか?休憩しましょうか?」

「んー。ちょっとお休みちたい」

「わかりました。では一旦ユエたちがいる山に戻りましょう」


 そうチェキータが返事したとたん、一番離れて遊んでいた若い鳥族の数人が上昇気流に巻き上げられてはるか上空に飛ばされていった。

「え?」


 キュオオオオオオオオオオオオン!


 空を何者かの声が震わせた。


「・・・そんな」

 チェキータの目には、海面から飛び上がった巨大な影が映っていた。

「あんな、大きな魔物・・・」

 サラサが震える。

「海にあんな大きな魔物がでるなんて聞いたことがない!!」

 ジェッズが叫ぶ先には、冗談のように大きな真っ黒い影がジャンプして、海水にざんぶともどる姿があった。


『クジラだ』

 シャオマオも、実物は見たことがない。記憶のそこにある映像で見ただけだ。でもクジラの形をした影の塊だ。


「逃げろ!!!」

 ニーカが大声を出した瞬間、ばっと何人かの鳥族がクジラに向かっていき、チェキータとニーカはギルドの山に向かうために反対方向に飛び去った。


「ちぇきいた!!」

「大丈夫です。何人かでひきつけます」

「らめ!」

 チェキータの肩越しに必死に後ろを見ると、若い鳥族たちが魔物をその場に足止めしているのが見えた。


 魔物は人を食べない。

 自分で抱えきれなくなった汚れた魔素のせいで、生き物を襲うのだ。

 襲われたら、汚れた魔素のせいで生き物は魔素中毒を起こして弱る。人族などは魔素器官を持たないので最悪死んでしまう。


 助けて!助けて!苦しい!


 シャオマオには聞こえた。

 あの初めてここに来た時の猪の影のように、このクジラの影も助けを求めて泣いているのだ。


 何人かが飛び上がったクジラに飲み込まれたのが見えた。

 魔物が身にまとった魔素のせいで気流も乱れるのか、うまくかわせないものが何人かいた。


「ちぇきいた!」

「ニーカ!妖精様をユエのところに!」

 もうシャオマオに返事をしている余裕がなかった。クジラは背後に迫り、ジャンプされたら飲み込まれるだろう距離まで詰められてしまった。

 飛ぶのはニーカのほうが早い。

「わかった!」

 ニーカはシャオマオを受け取って、一層陸に向かって速度を上げた。


「ニーカ!らめ!!ちぇきいた!」

「大丈夫!チェキータ一人なら早い!」


 キュオオオオオオオオオオオオン!


 すぐそばまでクジラの魔物は迫ってきていた。

 それをチェキータが翻弄して足止めしている。

 鳥族は飛ぶのに特化した種族だ。

 武器は飛ぶのに邪魔になるので持たないのが基本で、大体は飛んで逃げる。

 なので、今も自分の体を使って足止めするしかないのだ。


 あと少しで陸が見えるかというときに、水面にひときわ大きく体を持ち上げたクジラのせいで乱気流が発生した。

 高濃度の魔素がたっぷりと含まれた渦に、ニーカは大きくバランスを崩してしまった。

 一瞬で巻き上げられて体のコントロールが効かなくなる。


「ユエ!!!」

 ニーカは必死に陸の人影に向かってシャオマオを投げた。


「シャオマオ!!!」

 ユエはシャオマオを抱きとめることを優先したので人型のままだった。

 大きく飛び上がってシャオマオをキャッチしたが、そのまま陸まで迫ってきたクジラにニーカも、シャオマオも、ユエも、一飲みにされてしまった。


「ユエ!シャオマオちゃん!!ああ!畜生!」

 少し遅れたばっかりに、ライは間に合わなかった。

 服を脱いで急いて海に飛び込んだ。




「うにゅ・・・」

 シャオマオが目覚めたら、ほんのり明るい場所にいた。

 もちろんユエに抱きしめられている。


「ユエ~」

「シャオマオ!気が付いたか。怖かったろうに。かわいそうに」

 ぎゅうぎゅうと抱きしめられて、おでこや頬にキスされる。


「ユエ。チェキータ、ニーカどこ?」

「あいつらなんか放っておいていいんだが、もう少し奥まで流されているようだ」

 シャオマオを抱きながら、てくてくと歩くユエ。


(もしかして、これ、クジラに食べられちゃったのかな?)

 何かの物語にそんな話があったなぁとかのんきなことを考えながら、鳥族たちを探しに行く。


「ニーカ!」

 最後まで一緒にいたニーカが最初に見つかった。

「う・・・」

 ほんのりとしか明りがないせいか、はっきりと見えるわけではないがニーカの顔色が悪い。

「ニーカ!」

「魔素濃度が高くて耐えられないんだろう。外に出るためには魔物を殺すしかないが、ここは海の中だ。いきなり海中に放り出されては溺れるだ、ろう・・・な・・・」


 冷静に話していたユエも、慌ててシャオマオを立たせて膝をつくと服を破って虎の姿に変わってしまった。

「え!?」

 魔素濃度が高くて人型を保てなくなってしまったのだが、そんなことはシャオマオにはわからない。

「う、ユエ~」

 心細くなってユエの首にしがみつく。

「ぐるう」

 安心させるようにユエがシャオマオを舐め、首のあたりを咥えて放り投げて、器用に自分の背中に乗せて歩き出した。


 助けて。苦しい。星に帰して。


 悲痛な声が聞こえてくる。

 この奥だ。ここより明るい。


「ユエ。あっち!」

 指さしたほうに連れて行ってくれる。


 しばらく歩くと、ひときわ明るい場所に大きな虹色の宝石があった。

 中から発光しているようにきらきらと光をまき散らしている。

 シャオマオより大きい宝石。

(なんて美しい・・・)

 近づいて触ると、ひんやりとしていて気分がよくなる。


「もうこの魔物は浄化を終えて、星に帰るところだったのだ」

 知らない人の声に、シャオマオがびっくりしてそちらを見ると、全体的にほんのり青く光った男の人がいる。


「初めまして妖精様。私はキノ。海人族です」

 キノと名乗った男は長い青緑の髪に、下半身が魚の形をしている人魚で、長い布を体にまとわせてゆったりと宝石を眺めて寝そべっていた。


 宝石の光が体の鱗に反射しているのでチカチカと光って見えるようだ。


『人魚!!』

「おお。知らない言葉。それになんと小さく愛らしい。仲間にも会わせてあげたい。海にはいつ遊びに来ますか?みなで歓迎します。陸よりも美しくて楽しいですよ」

 言葉が通じないとわかっているのに一方的に話し出すキノは、上半身を起こすと人のような足に下半身を変化させてペタペタ歩いて近づいてきた。


 美しい男性だ。目がきりりとしていて鼻筋が通っていて少し大きめの形の良い唇は薄い。

 人間じゃないからそのまんまだけれど、人間離れした美形だ。

 耳がひれみたいになってて前後に動いている。本当に物語に出て来る人魚そのままの姿に見える。


(この世界には人魚までいるのか・・・。すごい!!)


 背中に翼の生えた鳥人間がいて、一緒に飛んで遊んでいたらおっきなクジラに飲み込まれておなかの中で、虎に変身する獣人と一緒にいてもさらに驚くことがあるなんて、なんてこの世は広いんだ・・・


 シャオマオは目を輝かせて人魚のキノを見つめ、のんびりとそんなことを考えていた。

 あんまりにもびっくりして、緊張感がどこかへ行ってしまったようだ。


この世界には美形しかいないのか?

だいたい平均的に整った顔をしている人が多いです。

個性的な顔をしている人は人族が多いです。なので人族はほかの種族にモテたりします。

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