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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第八章

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夢の中のあの子

 

「ねえねえ、この森の魔素がすごーく軽くなってきてるね」

「そうだなぁ。なんて心地いいんだろう」

 鳥族の若者たちはシャオマオを囲んでうっとりと見つめては時々歌ったりしながら清浄な空気を楽しんでいる。


「このまま鳥族のエリアまで連れて行ったらダメかしら」

 誰かがぽつりと言ったことに、チェキータが反応する。


「ダメだ。鳥族がいくら自由でも、妖精様を自分のいいように動かしてはいけない」

「う、ちょっと思っただけです。ごめんなさい」

 頭を下げる女の子の肩に手を置く。


「妖精様が行きたいと言ってくれるように、鳥族エリアの良いところをアピールしよう」

「そうですね!きっと鳥族のおうちを見たら喜んでくれると思うんです!」

 鳥族のみんなが口々にシャオマオにアピールすべき鳥族エリアの面白いところを話し合う。



「くあう」

「シャオマオ。起きましたか?」

「あい。ミーシャにーに。だっこ、ありが、とう」

 シャオマオの起きた気配にパチッと目を覚ましたミーシャ。

 シャオマオはまだうとうとして目をこすっている。


「目をこすらないで。川でタオルを濡らしてきますよ」

「あり・・・がと・・・」

 チェキータの提案に、ふーらふーらとした頭で返事するシャオマオ。


「ぷ」

「あ、ぷーちゃん。まだ、いて、くれたの?」

「ぷぷ」

「あ、そうなの?しばらく一緒にいられるのね」

「ぷ!」

「うれしい」

 段々目の覚めたシャオマオがぷーちゃんにすりすり頬ずりすると、サラサが駆け寄ってきた。


「妖精様!私にもすりすりしてください~!」

「サラサ。いいよ」

「お前はいつもそうやって妖精様に抱きついてばかりだ」

 ジェッズが文句をいう。


「ジェッズ。男の人はユエが嫌な気持ちになるから、だっこだめなの。あの挨拶しよう」

「やった!」

 ジェッズは妖精に挨拶の指先の口づけをして、自分の頭にシャオマオの手を乗せる。


「ジェッズ。いい子。ジェッズの旅が楽しくありますように」

「ありがとうございます」


「妖精様!私も私も!」

「俺も挨拶を!」

 ドンドン人が集まってくるのをチェキータが統制する。


「並べ!妖精様が疲れるまでだぞ!」

 ミーシャに顔を拭いてもらいながら、ずらりと並ぶ鳥族を見る。

 全員が当然並んでいるので、どっちの挨拶がいいのかを選んでもらう。


 女の人はだっこと挨拶が選べる。

 男の人はみんな挨拶だ。


「ああ。かわいい。ふくふくしてて暖かくて、こんな気持ちいいなんて・・・」

 シャオマオを抱っこした鳥族の女性が涙ぐんで喜ぶ。


「シャオマオ。お疲れではありませんか?」

「んーん。みんな優しく抱っこしてくれるから」

 全員とのだっこと挨拶を終えて、ミーシャに支えてもらって水筒からちゅーちゅージュースを飲んで一息つく。


「ぷは」

「ぷ」

「あ、ぷーちゃん。どこ行ってたの?」

「ぷ」

「まだ一緒に遊べる?」

「ぷぷ」

「じゃあ、うちにおいでよ。一緒に住もう!」

「ぷ!」


 ぷーちゃんはシャオマオの肩に乗って、ほっぺにすりすりと体を寄せる。

「ぷーちゃんひとりぼっちなんだって。しばらくシャオマオと一緒に住むって」


「ユエ先生に断ってからでなくてよいのですか?」

「ユエ?」

「なんならニーカが飛んで聞いてきてあげようか?」

「う?ユエなら呼んだら来るの。ユーーーーエーーーーーーーーー!」


 シャオマオが口元に手を当てて森に向かって叫ぶと、ぬっと完全獣体のユエが現れた。


「ユエー。ぷーちゃんをおうちに連れて行ってもいい?」

 シャオマオはなんてことないようにユエに向かって走って行ったが、鳥族は全員驚いていた。


 いくら妖精様と一緒に飛んでいて浮かれていたとはいえ、何人かが必ず警戒していた。

 魔素に敏感な鳥族であるし、そもそも肉食系の獣人の気配には敏感である。

 それでも気づかないなんてことあるのか、と全員が少し震えていた。


 シャオマオは片割れだから気づいていたのか、それとも「いるだろう」と思っていたのかは不明だ。


 ぷーちゃんは鳥族でもなく普通の鳥のはずなのに、物おじせずにユエの頭の上にぷいんと乗っかる。


「わー。ユエったらもうぷーちゃんと仲良しなの。一緒に住んでも大丈夫ね!」

「ぐるう」

 ユエは虎の顔でもわかるくらいに「しょうがないなぁ・・・」という顔をしていたが、本当にしょうがないのはシャオマオと離れられないユエの方だった。


「ミーシャ。ミーシャが疲れちゃわないように、今日はもう帰ろうか」

「そうですね。お散歩はできましたし、ユエ先生もお迎えに来てくれたのでそろそろ帰りましょう」

「ぐあう」


 シャオマオはユエに乗せてもらったり空を飛んだりしながらゆったりと帰路につき、夜は鳥族30人と庭でバーベキューをして楽しんだ。


 ライは出かけるときには「30人も面倒見ないからな!」と言っていたが、帰ったらちゃんとみんなの分の野菜が用意されていた。


 因みに、鳥族は菜食主義というわけではない。

 野菜が主食で、肉や穀物を少し、という程度ではあるが、いろいろ食べる。

 調理も簡単にする。

 大体、大体野菜はそのまま食べる、もしくは焼くか煮る。


 肉食の獣人はやはり肉をモリモリ食べる。

 これも焼くか炒めるかの簡単な料理だ。


 ライのようにバランスを考えた食事をいろんな調理法でたくさんの品数出してくれるような獣人は珍しい。

 一般的に、獣人の食事は朝にどんとまとめて一日分を作って、それを各自がお腹が減ったときに食べるのが一般的だ。これがおふくろの味というようなものになる。


 しかし、シャオマオが一緒に住むようになってからライの料理は腕に磨きがかかった。

 ライの料理は今やプロ並みだ。


「ライにーに。今日もおいひぃ。はふっはふっ」

「シャオマオちゃん。やけどしないようにね」

 今日もライが作った絶品スープを食べながら感激するシャオマオ。


「シャオマオ。さあ、こっちのお芋も食べようね」

「あーむ」

 とろけたチーズがかかった芋を、ふうふうしてもらって口に入れてもらう。


「んんんん!!おいひぃ」

「よかったよ」


「シャオマオ。それで、この鳥なに?」

「こんな鳥見たことないよ」

 レンレンとランランがシャオマオの隣でご飯を食べる鳥をじっと見る。


 どう考えても、自分の体積よりも大きな野菜をモリモリ食べている。


「ぷーちゃんいっぱい食べるのね。おなか減ってたのね」

「いや、おなか減ってたで済ますの、おかしいよ」

 ランランがおびえた目でぷーちゃんを見る。


「ぷーちゃんすっごく大きくなるかもしれないね!」

「どうする?これ。ほんとうに鳥かな?」

「獣人ではありえないからね、鳥だと思いたいけど・・・」

 鳥族は完全獣体として鳥の姿にはなれない。


「私たちが見る限り、普通の鳥だと思います。普通の鳥には見えないのに、普通の鳥なんですよねぇ・・・」

 そこが怪しいと、ミーシャもジロジロとぷーちゃんを観察する。


「いいの。ぷーちゃんかーわいいんだもん!」

 シャオマオが満面の笑みでぷーちゃんをかばう。


「大丈夫だよ。シャオマオを悲しませるようなことをしたら、一口だから」

「ひ、ひとくち?」

「うん。ひとくち」

 ユエがきれいな笑顔でぺろりと自分の口を舐める。


「ぷ!ぷーちゃん!絶対変なことしちゃだめだからね!!」

 慌てるシャオマオをみて、ユエがいい笑顔で笑う。



 鳥族がミーシャ達親子を残して全員帰った後、シャオマオはきちんとお風呂に入ってユエの部屋をノックする。


「シャオマオ。入っていいよ」

 部屋の鍵はシャオマオの部屋しかかからないようになっているが、シャオマオは毎回ちゃんとノックをしてユエの返事を待ってからドアを開ける。


 髪をきれいに乾かしてもらって、緩くまとめてもらう。


「ぷーちゃん、ライにーにが用意してくれたこのかごで寝てね」

「ぷ」

「うん。お休み」


 シャオマオはユエに抱きしめられて、すぐに夢の世界に入っていった。


 そして、夢の世界でひどく悲しい声を聞いた。




「・・・・・・だあれ?どうして泣いてるの?」


「くおおおおおおん」


「苦しいの?」


「くおおおおおん」


「体が動かないのね・・・」


「どこにいるの?サリーはお医者さんだし、シャオマオも元気になるようにお手伝いするよ?」


「・・・くおおおおおん」


「わかった。あなたを必ず探して助けてあげる」


「どこにいるか教えて」


「・・・・・・・」


「わからないんだね」


「・・・・・・・・くおおおん」


「大丈夫よ。必ず探してあげる。まずは分かることを教えて」


 シャオマオは必死に小さくなる声を聞いて、どんなところにいる子なのかを想像した。


 一人っきりで暗いところに閉じ込められている。


 体はどんどん動かなくなっている。


 痛いのはなくて、動かないだけ。今は起き上がることもできない。


(ジョージと似てる・・・)


 シャオマオが治したジョージの病と似ている。


「くおおおおおおん」


「うん、うん、待ってて。必ず探して助けてあげる」


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