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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第八章

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気分転換に空の旅

 

「ぱぁぱ・・・」

「うむ。シャオマオは誇り高き虎の子だ。(フー) 桃花(タオファ)。お前はこの困難を乗り切れる」

 涙を堪えたシャオマオ。

 それを見下ろしながら真面目な声色で伝えるダァーディー。


「あい・・・ぱぁぱ」

「うむ。強い子だ」

 ダァーディーは半獣姿で片膝をついて、小さなシャオマオを抱きしめた。


「シャオマオね、今日は泣かないね」

「うむ。俺もお前に泣かれると身を裂かれる思いだ。笑って見送ってくれ」


「ぱぁぱ・・・」

「シャオマオ!」

 二人っきりの世界に入って今生の別れのように抱き合っている。


「いつもいつも、里に帰るたびにあれやってるの、すごいね」

「感激屋さんよ、ふたりとも」

 リビングの敷物の上でお茶を飲みながら、レンレンとランランは呆れたように話す。

 これも毎度の光景だ。


 とうとうダァーディーは里へ帰ることになった。

 猫族の里が今後どのように星の動きに対応していくのかを、里の長老たちと話し合わなければならないのだという。




「ぱぁぱ。旅の安全を願っています」

 いよいよ門の外へ出て、帰るダァーディーのほっぺたに口づけをする。


「おお。すごいな。体に守りが・・・」

 自分の手をじっと見つめるダァーディー。

 シャオマオの祝福のお陰で爪はシャオマオの色にほんのり染まっているし、妖精の願いによって、ダァーディーの周りにいた土の精霊たちが活性化した。


「ありがとう、シャオマオ。俺の大事な娘。また手紙を書いてくれるか?」

「もちろん!お手紙書く!ぱぁぱもお返事ちょうだいね」

「もちろんだ」


 二人はしばらくいちゃいちゃしてから存分に別れを惜しみ、最後はきちんと手を振って里に帰るダァーディーを見送った。


「シャオマオ。泣かなかったね、えらいね。大人になったんだ」

「ユエ・・・シャオマオちゃんと笑顔だったかしら?」

 ユエに抱き上げられて、匂いを付けなおされる。


「うん。かわいい笑顔で手を振っていたよ」

「よかった」

 ユエの首にぎゅうと抱き着き、落ち着くためにユエの匂いを積極的に嗅ぐシャオマオ。

 どんなときもこの南国の熟れた果実の香りがシャオマオを落ち着けるように漂っている。


 そんなシャオマオを縦抱っこして、背中を優しくぽんぽんと叩くユエ。

 子守が板につきすぎている。


「妖精様。しんみりした気分は空を飛べばすっきりする!」

 ニーカがにこにこやってきた。


「さみしいなら鳥族をいっぱい呼んで大勢で飛べばいいんだ!」

「にーかぁ」

 ユエの背中越しにウルウルした目を向けるシャオマオ。


「ユエ、ユエ。お空飛んでもいい?」

「いいよ。シャオマオ。必ずみんなと居てね。困ったことがあれば呼んで」


 シャオマオはこれからレンレン、ランランの兄妹、ミーシャ達家族との別れもある。

 今のこの屋敷の雰囲気とはがらりと変わってしまうのが分かっているので余計にさみしいのだろう。


 なにかさみしさをユエ以外でも解消できる手段があることが大切だ、とサリフェルシェリとライに説明されたユエは、シャオマオの成長のために空を飛ぶことを許可した。


「ユエ。ありがとう」

 シャオマオは正しくユエが自分のためを思ってくれていることをきちんと理解した。

 自分の身から離れることを嫌うユエが、他の人と空に遊びに行っていいなんて許可をしてくれるなんて、と感動した。


「ありがと、ユエ」

 ユエのほっぺたにも、むちゅっと口づけしてするりと飛んで逃げるシャオマオ。


「さあ、妖精様。誰を呼ぼうか!」

「えーっとね、いまヒマなひとー」

「そんなのたくさん来る!鳥族全員が来る!」

 ニーカは喜んでくるくると回転しながら天井近くまで飛んだ。


「ニーカ!何人か呼んでもいいけど全員は面倒見ないからな!」

 ライがあまりにもたくさんの鳥族がやってきそうな雰囲気に慌てた。


「ユエ?・・・おいどうした?」

 ライが見ると、キスされた所を抑えてユエが呆然としていた。

「え?気絶してないか?」

「これ、立ったまま気絶してるよ?」

 レンレンとランランもユエの顔の前で手をひらひら動かして怯える。


「頼んだんじゃなくて、シャオマオちゃんの意志でしてくれたのが、魂が抜けるほどうれしかったんだろうな」

「ほっとくよ」

「しばらくこのままよ」

 ライ兄妹にも放置されたまま、しばらくユエは石のように固まっていた。




「シャオマオちゃーん。あまり暗くならないうちに帰ってくるんだよ!」

「ライ先生!私が必ず守りますので安心してください」

 空からミーシャがライに返事する。


「ミーシャ、チェキータ。頼んだぞー!」

「はい!」

 この場で一番頼りになるのは、病み上がりのミーシャかチェキータだ。


「ライにーに!ユエ!行ってくるねー」

 着替えて乗馬服のような運動しやすい格好をしたシャオマオは、意識を取り戻したユエに髪をまとめてもらってきりりとした様子だ。

 可愛い小さな手をぱやぱや動かして、シャオマオはひゅるりんと空を飛んで遊びに行く。


 因みに鳥族はいつでも集まる30人程度がやってきた。

(なんでそんなにいつもいつもすぐ来れるんだ・・・)とライは考えたが、考えてもしょうがない。鳥族なのだから。


 ミーシャの慣らしも兼ねた空のピクニックで、若手が何人かライが作ってくれたランチボックスを持ってくれている。


「妖精様!妖精様!本当に飛ぶのがお上手になりましたね!」

「サラサ!」

「風の精霊が活性化して、我々も飛ぶのがとても楽しいです!」

「ジェッズ!」

 シャオマオは隣を飛ぶ二人と手をつなぐ。


「ああ。妖精様と手をつないで空が飛べるなんて・・・」

 サラサは感動屋さんだ。

 ぽろぽろ涙をこぼす。


「サラサ、また遊べるんだからそんなに泣かないで」

「ううう、はい!」


 鳥族を連れたシャオマオは、人族のエリアを囲む森に向かって飛んでいる。

 人目に付かない自然の多いところということで選ばれた。


「ピイイイイイイイイイイイイイイイ」

 ジェッズが鳴くと、森からたくさんの鳥が集まってきた。


「きゃあ!鳥さん!」

「この鳥たちも妖精様と会いたいと言っていましたので」


 しばらく飛んでいたら、鳥たちの中から小さな小鳥が一匹シャオマオの肩に乗って、翼を広げて風を浴びて遊ぶ。


「きゃあ!この子妖精様で遊んでる!こら!」

「うふふ。かわいい」

 ふくふくの小鳥がシャオマオの顔の近くまでやって来て居座る。


「妖精様から降りなさい!」

「いいのいいの。サラサ。この子乗せていくの」

 シャオマオは肩に乗った小鳥をさわさわと撫でた。


「ぷ」

「ぷ?」

「ぷぷ」

「わかった。お名前はぷーちゃん」

 小鳥は名前を付けられた途端にふわりと輝く。


「うらやましいいいー」

「うふふ」

 また名前を付けられて妖精と仲良くなった動物が出来てしまった。


「ぷーちゃんはまだ子どもかなぁ?」

「そうですねぇ。まだ子供でしょう。しかし、何の鳥だ?」

 ジェッズが首をひねる。


 まるまるとした体に真っ白の羽毛。

 しかし、小さなくちばしとぴんとした長いしっぽは黒。


「北の鳥に似てますが、こんな南にはいないし、見た目もちょっと違う・・・」

 空の専門家と言ってもいいくらいの鳥族たちにもわからないぷーちゃん。

 謎鳥だがふてぶてしいところも可愛いのでシャオマオは特に気にしない。


 イメージとしてはシマエナガだ。



「ミーシャ、どう?疲れてない?休憩する?」

 しばらく遊んでから心配になったシャオマオは、ミーシャを探して声をかけた。


「私はまだ飛べますよ。シャオマオは喉は乾いてませんか?」

 きゃあきゃあと大きな声で騒いでいたので心配される。


「んーと。ちょっと休憩しようかな」

「では、森の中にきれいな川が流れているところがあるんです。そこで休憩しましょう」

「わーい」


 海ではなくて川。

 今度は大きな鯨も出ないはずだ。


「シャオマオ。ほら、あそこです」

 ミーシャが指さすところを見ると、きれいな川が上空からでも確認できる。


「わー!キラキラね!」

 すいっとミーシャが先に降り、ほかの鳥族たちも続いて川の近くに降り立って、バスケットから敷物とおやつと飲み物をどんどん準備してくれる。


「妖精様!今日は膝枕しますか?」

「きょうはだいじょうぶ!!」

 シャオマオは真っ赤な顔をして照れる。


 ママに憧れてサラサに抱っこや膝枕をねだったことを思い出してしまった。


 それでも鳥族はケンカのような勢いでじゃんけん勝負をして、勝ったものがシャオマオを膝にのせて愛でていた。


「ぷーちゃん食べる?」

 サンドイッチの端を差し出すと、ぷーちゃんはぷいぷい喜んで野菜とパンをつつく。


「ライにーにが作ってくれたの。美味しいでしょ?」

「ぷ!」


 ランチとデザートを終えてから、川遊びをして、日向ぼっこをしていたらシャオマオはうとうとし始めた。


「シャオマオ。毛布があります。少し眠って」

「・・・・ミーシャも」

「はい。一緒に寝ましょう」

 毛布で包んだシャオマオを抱き寄せて、膝にのせてると、ミーシャは座って眠る。

 ぷーちゃんはうまくシャオマオと毛布の隙間に収まってもう眠っている。


 集まってきた鳥たちも、鳥族たちも、眠る二人をうっとりとした目で見つめて幸せに浸っていた。

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