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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第一章

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あいきゃんふらい

 

 午後はお弁当を持って、いつものメンバーでピクニック。と言っても、ギルドの裏山だ。

 ギルドの街を見下ろせる。

 上から見るとギルド本部を中心に、街が円形に広がっているのが良くわかる。


 今日は猫族の伝統衣装を着せてもらってズボンだから嬉しくて「歩く!」と主張したため少しだけ自分の足で歩いたが、体力がないのが残念だ。ペタンコの靴も歩きやすい。

 髪はユエに二つのお団子を作ってケモ耳みたいにしてもらっていて、猫族の子供みたいに見える。


 抱っこされたり、歩いたりを繰り返して、中腹についた頃には程よく運動した気分になっていた。

 前の世界では車椅子やらそもそも起き上がるのに苦労したりで自分の足で歩いて運動なんて考えたこともなかったけど、この世界では気兼ねなく出来るのだ。


 歩いて疲れると言っても、今までとは違って心が軽いのが良い。軽く走ったり、歩いたり、道端の花を見て立ち止まってみたり。

 そんなちょっとしたことが楽しくてしょうがない。


 お昼には敷物を敷いてお弁当を食べた。

 ハムチーズのサンドイッチと冷たい紅茶。

 卵もりもりサンドイッチとソースがしみ込んだお肉を挟んだサンドイッチ。

 肉巻きおにぎりと大量の唐揚げに緑茶。

 たくさんのフルーツとサラダ。

 こちらのパンは固いハード系のパンが多いのですごく食べ応えがあって、シャオマオは一つを一人で食べられない。

 ちょっとずつをユエとシェアして食べている。


 敷物に広げられたお弁当はビックリするくらいの量だ。そりゃみんなよく食べるけど、お弁当ってこんな量だっけ?見たこともない量が山盛りに。

 そんなたくさんの食材を運んでくれたのは、ニーカとチェキータだ。

 食堂から出来立てを運んでくれたお陰で唐揚げは熱々だし、サラダはシャキシャキだ。


 あの喧嘩騒動が伝わった二人はすぐに謝罪に来たのだ。

「妖精様に不快な思いをさせてしまい…」

「本当に申し訳ない」


 頭を下げる二人の白い髪をここぞとばかりに撫でるシャオマオ。

 サラサラの髪を撫でてみたいと思っていたのだ。

 白く輝く二人の髪は軽くてまっすぐで意外としっかりとした手触り。


「ニーカ、ちぇきいた、シャオマオともらち」

 にこにこと撫でていたら、えらく二人に感動された。


「で、では遊びに行きましょう!」

「お昼はピクニックに行くんだ。ギルドの裏山で遊ぶからそこに来たらいい。ああ、お弁当もそこで食べる予定なんだが今から出来上がるのを待ってたら遅くなるなぁ…」

 ライがそういうと、「先に行っていてくれ!ニーカが運ぶ」と引き受けてくれたのだ。


「すこーしお昼寝して体を休めよう。それからニーカたちと遊んであげてよ」

「あい」

 冷たいリンゴジュースを飲みながら、ライに返事する。


「さあ、妖精様。こちらで」

 お昼寝用の敷物を用意してくれてたサリフェルシェリにお礼を言って、寝転んだら大きめのタオルをかけてもらう。

 天気が良くて日差しがまぶしいのがちょうど日陰になっているから和らいでる。


「シャオマオ、隣いい?」

 ユエが隣にやってきて、芝生の上に寝転んだ。

 今までは一緒に寝ることが当たり前だったので、初めて「いいか?」と聞かれた気がする。

 まあ、答える前に寝ているが。


「ユエ」

「シャオマオ。俺のこと怖い?」

「怖くナイナイ。おっきい声、けんか、や」

「そうか。びっくりしたんだね。ごめんね」

「いいよ」

「シャオマオがライに連れていかれるのを見た時、心臓が止まりそうだった」

「ユエ。ごめんね」

 自分がユエから離れてしまったのを後悔している。

 ただ、ユエが嫌なのではなくて、あの場がどうしていいのかわからなくて逃げたかっただけだ。

 説明が難しくてできなくて、一言謝るだけになってしまった。


「俺が悪いんだ。謝らないで」

「手つないで」

 タオルから手を出して、ユエにつないでもらう。

「ユエ。すき」

「お、れも、好きだ。シャオマオが」

 つないだ手にキスされる。


「何よりも、誰よりも大事にする」

「つがい?」

「そうだね。片割れでもある。大事だ。ずっと探してた。会えるまで生きていたいと思って生き延びたんだ」

 すりすりとつないだ手に頬ずりされる。

「シャオマオ。やっと会えた。君の一番になれるように努力するよ」

 ちょっとわからない単語もあったが、全力の色気で口説かれてる雰囲気は分かった。

 つないだ手が熱い。


「ほらー。またいちゃいちゃして。早く寝な」

 ライに怒られたので、二人でくすくす笑いながらお昼寝をした。

 たくさん歩いたから体は疲れているのだ。

 とろとろした眠りの世界にはすぐ行けそうだ。



「妖精様は本当にきれいな魔素を吐き出しているんだな」

「この山の魔素が薄まってる」

「へえ。そんなにすぐ効果あるものかね」

 チェキータとニーカが周りの景色を見ながら言うのを、お茶を飲みながらのんびりライが返事した。


「鳥族だからな。敏感なんだ」

「ほかの種族では感じられないくらいだが、確実に変化している」

「いるだけでいいのか。それともユエと一緒にいるからなのかはわからないけど。これくらいの魔素の浄化だったら体にも負担がなさそうだ」

 すやすや眠っているシャオマオの寝顔は安らかで、顔色もいい。とくに体に負担がかかっている様子は見られない。痩せてるからか、あんまり体力はないようだが元気そうだ。


「飛んだら空も浄化されるかもしれない!」

「やはり妖精様は素晴らしい!」

 羽をバサバサしながら喜ぶ二人。


「空もそこまで魔素濃度が上がっていますか?」

「いや、空は風の影響が大きいからな。魔素溜まりはないんだ。ただ、魔素が前よりも地表から巻き上げられることが多くなった。飛んでいて濃度の違いにバランスを崩すことが多い」

 サリフェルシェリは少し考えこんだ。


「まあ、空飛ぶのをシャオマオちゃんが嫌がらないならこの辺一周するくらい問題ないだろ」

 唐揚げをぽいと口に放り込んで咀嚼する。

 少し冷めてきたがジューシーでうまい。さすが、冒険者をやっていたのに料理の腕がよすぎて皆に乞われて引退してコックになったやつは違うな。


「海を見せて差し上げたい!」

「今日は海風が素晴らしく強く吹いているからな!」

「それは荒れているというのでは?」

「激しいくらいがちょうど楽しいんだ」

「シャオマオちゃんに選ばせよう・・・」



 お昼から2時間程度で目が覚めた。

 正確には、頭になにか当たってる気がして目が覚めた。

「くわぅ」

 あくびを一つして頭を触ってみたら、頭のお団子に何かが飾られている。

「んむ?」

 一つ手に取ってみたら、クローバーだった。


「あ、妖精様おはよう!遊ぼう!」

「これ・・・」

「待ってる間暇だったから飾ってみたんだ」

 鳥が羽にはっぱを刺して飾り付けるのを何かで見たことがある。

「ありやと・・・」

 まだ頭がはっきりしていないけど、とりあえずお礼を言っておいた。


「妖精様。さあ空を飛ぼう!」

「ちょっと待ってね」

 ユエに暖かいタオルで顔を拭いてもらいながら答える。

 だんだん頭がはっきりしてきた。


「あしょぶ、なにする?」

「飛ぶのさ!」


 真っ白な羽を、ニーカとチェキータが大きく開く。

「わあ!」

(本当に天使様みたいだ!きれい)

 手を叩いて喜ぶシャオマオ。


「さあ!空に行こう!」

「ニーカはだめだ!チェキータなら許す」

 ニーカが抱き上げようと近寄ったところでユエが待ったをかける。


「なんだ。本当に心が狭い片割れだ」

「まあいいじゃないか。遊んでもいいと言っただけ妥協したんだろう」

 二人で話し合って、チェキータがシャオマオを抱き上げる。

「さあ、力を抜いていいよ。落とさないから空を楽しんで」

 チェキータの美貌が近くにあると照れてしまうが、言われた通り楽に抱き着いてみる。


 すうっと体が浮いた気がした瞬間には、もうユエの頭よりも高く飛んでいた。

「え?」

 重力とか風の抵抗とかないんだろうか?というくらいに軽く飛んでいる。

 翼を一生懸命動かして空を飛んでいるという気もしない。

 確かに翼は動かしているが、そんな動きで180センチもあるような体が浮くわけない、というくらいにゆっくりだ。

 それなのに、風を掴んで自由に移動する。

 地上のユエが小さく見える。

 風もほどよく吹いていて、日差しもあまり強くない。

 足元には緑の木が生い茂っているのが見えて、真っ青な空には雲一つない。

『ああ・・・きれい』

 これが鳥族が日常的に見ている景色なのかと思うと体が震えた。


 以前の自分が高いところを怖がっていたのか、平気だったのかはわからないが、今の自分は空を楽しんでいた。なんだか足のつかない空にいても、心配事が一つもないのだ。



「ピイイイイイイイイイイイイイ!」

 隣にいたニーカが上空で鳴き声を上げると、遠くからいくつか点が近づいてきた。

 鳥族が何人かやってきたのだが、すっと前に出たのは二人だ。

「妖精様。今日会ったジェッズとサラサだ」

「謝りたいと言っていた」


 近くまで来たジェッズとサラサは本当に反省した顔をして、ちょっと離れたところから「ごめんなさい」と謝った。

「いいよ。ジェーズ、サラサ、ともらち」

「嬉しい!」

「妖精様、今日の海はすごくいい風が吹いてます。行きましょう!」

 ジェッズが指さすほうを見ると、とてもとてもきらきら光る水面が見えた。

『海だ!』

 喜んだのが伝わったのか、シャオマオを連れて海まで行くことにした鳥族たちはすいすいと空を進んでいった。


「あ、あいつら海まで行くつもりだ」

「シャオマオは泳げるんだろうか・・・もし落ちたら・・・」

 そわそわしたユエが心配してぶつぶつ言うのをライが笑う。


「そんなに心配しなくても、あいつらは空の上では最強さ。落とすことはないだろうし、海は海人族の縄張りで地上よりも魔物がでないからな。もしかすると地上より安全かもしれないぞ?」

 のんびり説明するライを置いて、ユエは地上からシャオマオたちを追いかけることにしたようだ。

 何も言わずにいきなり走り出した。

「あ、おい!ユエ!」

「いやな予感がする!」

「俺も行くからちょっと待て!」

 ここで荷物をまとめて待っているというサリフェルシェリにすべて押し付けて、ライも走り出した。


「心配しすぎだと思うけど・・・。ユエの予感って割と当たるんだよな」

 走りながらライもなんだか嫌な予感にそわそわし始めた。

鳥族はとりあえず気に入った人に空を見せたがります。

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