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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第七章

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ジョージがんばったね!!

 

「うぐっ」

「シャオマオ・・・頑張って」

 サリフェルシェリに薬を注ぎ込まれた後は、ユエにゆずはちみつをたっぷり口に入れられる。


「んぐん」

「やった!頑張ったね」


 もらったコップのぬるいお湯でゆずハチミツを口の中で溶かして薬を流し込む。


「すごいな。シャオマオは流石だ。あの薬を飲む事が前より上手くなっている」

 すりすりと頭のてっぺんに頬擦りして、ユエはシャオマオを褒め称えた。


 今はランチを終えて、あの地獄の底から汲んできたのかというような泥の色をした泥のような味の薬を飲んだところだ。


「ふう。あのもらったゆずハチミツのお陰なの」

 ゆずハチミツはうまい具合に苦味を誤魔化してくれるし、ぬるいお湯で流し込めば後味がさっぱりとする。

 薬を飲むのが随分と楽になるのだった。


 空になったコップを渡してニコッと微笑む。

 苦い苦い、大人でも苦労する薬を飲めるなんて大人になったと自分でも自分を褒めたい気分だ。



「あのハチミツ前からお家にあったのかしら?」

「いや、あれはなかなか希少な果実が使われてるんだ。高級品の部類だよ。ダニエル王からの貢物だね」

 ライが瓶を見せてくれる。


 ゆずのような味だが、実はグレープフルーツのような果肉だ。

 果実はなかなか取れない希少な果実らしく、人の手が入っていない山の中でしか取れない。

 人工的に育てるのが難しく、全て今のところは野生に生えているものを採取するしかないのらしい。

「人が見ると恥ずかしがってでてこない」なんて言われるズッカと呼ばれる果実なので、本当は「ズッカハチミツ」なのだが、みんなシャオマオにあわせてくれる。


「王様がくれたの!?」

「そうそう。シャオマオが眠ってる間に運び込まれた品だよ」


 シャオマオが眠っていた間に、従者ウィンストンが大量に運び込んだものの中に入っていたのだ。


「王様、どうして急にゆずハチミツくれたのかな?」

「いや、ゆずハチミツだけじゃないよ。貴重なローズの谷のバラのハチミツとか、食べられる花とか、日持ちのする焼き菓子とか。最近食べてる食材とか。あー、食べ物だけじゃなくてシャオマオちゃんの服と、靴と、アクセサリーと、あとは敷物と・・・」

 ライが、ウィンストンが読み上げてくれた目録を思い出しながら言うが、シャオマオはもらったものの多さに途中から訳が分からなくなっていた。


「シャオマオったらお礼言ってないのにいっぱい食べちゃった!!」

「ん?もらったから食べていいんだよ?ウィンストンだってシャオマオにって持ってきたんだから」


「あん。ユエったらダメよ。ちゃんともらったものにはお礼を言って、お返しをしないと」

 人差し指を立てて、先生のようにユエに教えるシャオマオ。


「シャオマオに持ってきたのはお礼だよ。お礼のお返しはいらないんじゃない?」

 くすくす笑うユエ。


「シャオマオったら、何か王様にしてあげたかしら?」

 ううーーんと首を捻って考える。


「さあね。シャオマオは自分のしたいことを素直にやって、それで他人が勝手に喜ぶこともあるんだよ」

「んー?よくわかんない」


「シャオマオ。ドレスも着てみるといい」

「うん!じゃあそれを着て王様にお礼に行くのよ!ユエも一緒に来てくれるでしょ?」

「もちろん」


 シャオマオは衣装部屋に仕舞われてあった、貰ったばかりのドレスを取っ替え引っ替えしてユエの意見を参考に、薄いグリーンのドレスを着た。

「シャオマオ!!髪の色と合わさるとタオの精霊のようだ!!!靴は痛くない?裸足でも連れて行ってあげるから問題ないよ?」

「大丈夫!せっかく貰ったから履いてみたい!」

 ちょっといつもより踵が高くてお姉さんっぽいのが嬉しい。

 ツヤツヤピカピカの輝くローファー。


 ユエにドレスに使っている布でヘアバンドのようにして髪と一緒に編み込んでもらってとっても可愛く仕上がった。


「ユエ。()()()?」

「もちろん!似合うよ!この星で一番美しい!俺の光!俺の番はなんでも着こなしてしまうな」


「じゃあ、王様に会いにいきましょうねー」

「ぐあう」

 シャオマオはお礼の品を巾着に入れて手に持つと、さっと虎姿になったユエに跨って、窓から王宮に向かって飛び出した。


「あ!シャオマオちゃん!!疲れないうちに帰ってこないとだめだよ!まだ本調子じゃないんだから!!」

「はーい」

 シャオマオは窓の向こうから声を慌ててかけてきたライに返事をして手を振った。



「こんちわ~。遊びに来ました~」

「妖精様!ようこそいらっしゃいました!」

 今回はお忍びではなく遊びに来たので、正面から堂々と王宮にやってきた。


 正面からやってきた妖精シャオマオが、とことこと誰に止められるわけでもなくユエに乗って歩いて入っていくと、門番から知らせを受けたウィンストンが走って迎えに来た。


「こんにちわ、ウィンストン。元気ですか?」

「元気です。妖精様はお元気になられましたか?ああ。ドレスもお似合いですね」


「素敵な贈り物沢山ありがとう」

「お礼はよかったらダニエル王とジョージ王子に。お二人が一生懸命に選んでおいででした」


「会いに行っていい?」

「もちろんです!」


 シャオマオはウィンストンの案内で、ダニエル王の執務室にやってきた。


「妖精様!よくいらっしゃいました」

「王様!こんにちわ。今日は贈り物のお礼に来たの。ドレスもおやつもたくさんありがとう。とっても嬉しかったです」

 ユエの上から降りて、頭を下げる。


「ああ。喜んでいただけて良かった。ドレスがお似合いです」

「んふふ。ありがとう」

 くるりと回ってドレスを見せる。


「実はそのドレスもデザートも、ほとんどジョージが選んだものです。よかったらジョージにも会ってください」

「そうなの?ジョージったらプレセント選ぶのがじょーずね!」


「妖精様。ジョージ王子の部屋にいつものようにお茶の準備ができています。よかったら遊びに行きませんか?」

「もちろん!ジョージにも会いに行くの!」

 王様に手を振って、ウィンストンに案内されてジョージの部屋に向かう。


「ジョージは前より元気かしら?」

「実は・・・・」




「ジョーージぃ」

「・・・・・・女神様?」

 夢うつつのジョージは自分のおでこをさわさわと撫でる人物を見てつぶやいた。


「シャオマオよ?」

「あ!シャオマオ。ごめんなさい」

 真っ赤な顔をしながらジョージが慌てて謝る。


「ううん。ジョージ、お熱大丈夫?」

「お恥ずかしい。気が抜けたとたんに発熱してしまいました」


「ジョージとっても頑張ったってウィンストンが言ってたのよ」

「やっと、王子としての仕事が、出来ました」

 熱で辛いだろうに、ジョージの顔は誇らしげだ。


「じゃあ、頑張ったからシャオマオのご褒美よ。お口開けてくださーい」

 素直にジョージは口を開ける。


 傾けた瓶からとろりとしたしずくをジョージの舌の上に乗せる。


「口の中でむぐむぐしてから飲んでね。とってもおいしいのよ」

「むあい」

 しずくは常温でもひんやりとして、口の中がさっぱりとする。

 とろりとした甘みは痛みのあるのどを癒しながら、どんどん体に吸収される。


「どう?どう?効いた?」

 シャオマオは嬉しそうにベッドの横でとてとてと嬉しくてステップを踏んでジョージの顔を覗き込む。


「あれ?本当に効いてきました」

 かすれた声は力がこもり始めて、真っ赤になっていた顔もすっと落ち着いてきた。


「シャオマオ、ひょっとしてこれ・・・」

「これね、サリーが作った薬でね、ユニコちゃんのぽろんちょしたツノと、ユニコちゃんが集めてくれたお花とかでできてるのよ」


 やっぱり。とジョージはちょっと落ち込んだ。

 こんな疲労の発熱で飲んでいいような薬ではない。

 棺桶に片足を突っ込んだ人も踊りだすような希少な薬だ。


「ドレスとね、おやつのお礼よ。疲れた時に飲むといいの」

「ありがとうございます。こんな貴重な・・・」


「ジョージ、とても頑張りましたね。偉い偉い」

 小さな手がジョージの頭を撫でる。


「王子様として、みんなと一緒に避難して、人族を守ったのよね。偉い偉い」

「・・・シャオマオ」


「みんな混乱しないで怪我もしなかったって。王子がみんなに優しく寄り添ってくれたって、すごくみんながジョージのこと大好きになったんだって。偉い偉い」


 ジョージは王子として、たくさんのやらなければならないことを呪いのためにできないままで大きくなっていた。

 民と会うこともなく、「王子は病に倒れ、長くない」と多くの人に言われてきた。


 それでも、ジョージは王子としての自分の役目を誰よりも理解していた。


「シャオマオのお陰なんです。ありがとうございます」

 起き上がったジョージはシャオマオに好きに撫でられるまま、涙を堪えて礼をいった。



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