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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第七章

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番の形

 

 朝ご飯の時間をいつもより大幅に過ぎたけれど、みんなゆったりとした気分だった。

 タオの実色に染まった爪を見つめてうっとりするチェキータやダーディー。


 チェキータはもうご飯を食べ終えたニーカと交代してリビングにいる。



「さあ、いまから朝ご飯を作るけど、簡単なものにするからね。昨日の残りのスープと、パンケーキと目玉焼きとベーコンと・・・」

 立ち上がってキッチンに向かいながら歩くライがママのようにメニューを組み立てているけど、あの後には「サラダとウインナーと・・・」とどんどんメニューが続いて「どこが簡単なんだ!?」というものが出て来るに違いない。


「兄さんを手伝ってくるよ」

「兄さんを手伝わないと朝ご飯がないよ」

 レンレンとランランは着替えて人型になって、キッチンに手伝いに走っていく。


「シャオマオ。疲れてない?」

 すっと脇に手を入れて抱っこしてくれるユエ。


「ぜーんぜん。みんなに祝福するとね、わーっと気持ちが暴れてね。嬉しい嬉しいっていうのよ」

「かわいい。シャオマオ。ほっぺがピンクだ」

 すりっと頬ずりされる。


 そのままクッションに座るユエの膝に座らせてもらって、髪を編んでもらう。

「シャオマオの髪がタオの実色に戻ってよかったよ。これこそシャオマオの色だものね」


「銀の髪、きれいだったけど、シャオマオもずっと人の髪色みたいで慣れなかったの」

 えへへっと笑う。


 シャオマオは黒目黒髪の世界からやってきたが、もう自分の過去の姿も夢で見たような感覚なのだ。

 タオの実色の髪と瞳で生きている今の方がしっかりと「自分」だという気持ちになる。



「大人になったシャオマオは美しかったよ。今の美しさのままさらに最高に美しい女性になっていた。不安なくらいだ。あんなに美しいだけでなく、妖精であるシャオマオを国中の男が求めてもおかしくない。・・・俺はシャオマオの隣にずっといられるだろうか・・・」

「ユエ・・・」


「シャオマオ。俺を選んでくれ。俺は選ばれるように最善を尽くす。シャオマオに見合う男になって、隣に立つ。そして君に俺のすべてを与えたい」

「ユエ・・・嬉しい・・・・」



「すごく久々に見たら安心するよな、二人のやり取り」

「そうですね。平和な時しか見れませんでしたからね」

 ダーディーとサリフェルシェリがお茶を飲みながら見つめあう二人を眺めている。


「番の仲がいいのはいいことだ」

「番!」

 ゆったりとしたチェキータの言葉にびっくりするシャオマオ。


「・・・?妖精様はもうユエを番と決められたんでしょう?」

 きょとんとした顔でチェキータが質問する。


「き、き、きめて・・・」

 ぼぼぼぼぼん!っと真っ赤になったシャオマオ。


「あにょ。チェキータ。チェキータはニーカと番になるの、すぐ決めたの?すぐこの人が番だってすぐわかった?そもそも、番って結婚したらなるの?結婚しなくてもなるの?どうやってなるの?」


「あらあら。妖精様。たくさん質問したいことがあったんですね」

 ユエの膝から飛び降りて、走り寄ってきたシャオマオを抱きしめて甘えさせるチェキータ。


 そう。このシャオマオたちの集団は、未婚者ばかり。

 ぱあぱと呼んでいるダーディーだって未婚者だ。

 結婚したり、番を持っている人が周りにチェキータとニーカの夫婦しかないのだ。



 ユエは「結婚する。番だから。運命だから」というが、シャオマオにはそんなにはっきりとはわからないし、恋している気もするけど憧れのような気もするし、よくわからない。


「チェキータのお話聞かせてぇ」

「ううう。私、ですか?」


「チェキータ、ニーカといつであったの?すぐ運命感じた?番になるってわかった?」

「質問がたくさんですね。私の話をしてもいいのですが、もしかしたら人族の話をきいた方がいいのかもしれませんよ?妖精様」


「人族?」

「ええ。人族と獣人の番です」

 ひらめいた!という顔でチェキータが提案する。


「・・・人族と、獣人・・・」

「そうです。片方は運命や番を感じる獣人で、片方は分からない人族。その二人がどうやって出会って結婚したのか、番になったのかをきいてみるんですよ」


「なるほど・・・」

「ね?私の話は参考にならないかもしれませんから!」


「・・・でも、チェキータの話は聞いてみたいの」

「え!?」


「チェキータはどんな感じなの?ニーカと出会った時すぐにわかった?」

「えーっと、あの・・・」


「話してやれよ、チェキータ。お前たち仲いいじゃないか」

 たははっと笑うダーディー。


「ううう。あの、参考にならないかもしれませんが。私とニーカは幼馴染です。それこそ生まれた時からの・・・・」

 チェキータは渋々といった感じで話し始めた。


 遠い親戚だという二人は、生まれて空を飛ぶのも早かったので、独立も早かったのらしい。

 ミーシャと同じ年くらいには、二人は親元を離れてペアを組んで仕事をしていたのだという。


「物心ついた時には、ニーカが運命だと気づきました。・・・・嬉しかったのですが・・・」

「が?」


「幼い時からあの調子のニーカは全く気づいておらず、それどころか、私を、男性だと、思っていたようで・・・」

「う・・・・・」

 聞くんじゃなかった、とシャオマオは後悔した。


「成長期を迎えてどんどんと背が伸びた私は、何故か女性にとても人気がでてしまい・・・。それをみて悔しがったニーカは何を考えたのか私の真似をするようになりました」

「ニーカ・・・」

 涙が出そうになったシャオマオ。


 髪形、服装、ふるまいも。

 何かにつけて真似したりするらしいのだがチェキータに敵わないニーカ。

 いつも女の子に囲まれているチェキータを見て悔しがっていたのらしい。


 因みに、チェキータを取り囲んでいた女の子たちは、8割は女だと気づいていたのらしい。

 残り2割は本気で男だと思って恋してくれていた人もいたらしい。

 あとはあこがれだったりと、本気の恋というわけでもない様だ。


 なるほど、獣人も性別関係なく人を好きになったり、見た目で恋をしたりするのだろう。

 すべてがすべて、運命の恋やら運命の番というものばかりでもない様だ。


「最終的には『何故かお前からいい匂いがする。なんでだろう?男同士なのに』などと言われてしまって・・・」

 そのときのチェキータの気持を考えたら・・・


「まあ、それからいろいろありましたが、私が番だとわかってくれました」

「いろいろ・・・」

 こんなにたくさんの意味や気持ちがこもった「いろいろ」をきいたのはこの星で初めてかもしれない。



「どうして、私の番がニーカなんだと悩むときもありましたが、結果的には素晴らしい番を得たと思います。運命の番とは言いませんが、ニーカは私の大切な番です。あんな可愛いミーシャという子供も得られました」

 キラキラと王子様のオーラで微笑むチェキータ。


 運命やら、番やらという特殊な言葉をたくさん聞いていたが、こうやって普通の出会いをして結婚した人もいるのだといういい事例をきけたような気がする。


「どうでしょう。何か参考になりましたか?」

「うん!チェキータありがとう!!チェキータとニーカがとってもいい夫婦だってわかった!」


 次はとことこと歩いて、ダーディーのところに行くシャオマオ。

「ぱあぱ」

「うっ!」


「ぱあぱ、どうして結婚していないの?まだ番になる人に出会ってないの?それとも出会ってるのに振られちゃったの?」

「ううっ!」

 ダーディーは胸を抑えた。

 何かシャオマオの言葉がダーディーの傷をえぐったらしい。


「・・・・スイちゃんがまあまになる?」

「うううっ!」


「振られちゃったの?ぱあぱ?」

「うがあ!」


 がばっと立ち上がったダーディーが、シャオマオを掴んで全身をまんべんなくくすぐっていく。

「きゃあ~~~~!ぱあぱ!やめてぇ~~!あはははは」


「大人をからかうからだ!」

「きゃああ~~!ごめんなさい!ぱあぱ!!あははははは」


「だめだ!なんでも素直に質問していいんじゃないんだからな!!」

「あははははは!!!」


「おーい!楽しそうにしてるお前ら!朝飯さっさと食ってくれよ」

「あ、シャオマオ。朝ご飯の時間だ」

 ユエがライの声を聞いて、ダーディーの手からさっとシャオマオを取り返した。


 笑いすぎた余韻でボーっとしているシャオマオの涙を拭いて、ささっと乱れた服を直して抱き上げると、自分の匂いを付け直すようにぐりぐりすり寄る。


「シャオマオ。シャオマオ。俺の匂いは好き?」

「うん。ユエは『熟れた南国の果実』の香り。いいにおい」

 ユエの香りをスンスン匂ってにこにことするシャオマオ。


 それを見て、呆れた顔をするダーディー。

「もう決まったも同然じゃねーか」



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