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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第七章

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キノの意志

 

 朝早い時間であったが、みんながリビングに集まってきた。

 朝ご飯の時間には早いが、それぞれシャオマオを静かに抱きしめて撫でてくれる。

 心配してきてくれたんだとシャオマオは気づいていた。


 レンレンとランランは完全獣体の時間らしく、シャオマオを二人の間に挟んでソファ代わりになってくれた。

 二人の温かいつやつやの毛皮にうっとりとしていたら、ちょっとだけユエに嫉妬される。

 黒ヒョウというだけあって、黒の中にも豹の柄がちゃんとあるのが素晴らしい。


 完全獣体になってもレンレンとランランをちゃんと見分けていたので二人にとても喜ばれた。

 頬を舐められたがちょっとだけザリザリしていて楽しい。


「おはよー、妖精様。やっと起きたんだね!」

「ニーカ!!」


 そんなリビングにニーカがひょいと現れた。

 シャオマオはレンレンとランランの間から飛び出してニーカに飛びついた。


「ニーカ!」

「うわー!大歓迎だ。ありがとう。やっと妖精様を抱っこできた。嬉しいな」

 ニーカはにこにこしながらシャオマオを抱きしめてその場でくるくる回った。


 何気にユエに邪魔されるので、シャオマオを抱きしめたのはこれが初めてだ。


「ニーカ・・・・」

「うん。わかってる。ミーシャのことだろう?お見舞いに来てくれる?今はチェキータが見ててくれるんだ」


「行きたい!」

「うん。じゃあこのまま行こう!」

 シャオマオを抱きしめたまま廊下を飛んでいくニーカに、ユエとサリフェルシェリだけがついていった。



「チェキータ。妖精様がお見舞いに来てくれたよ」

 ノックをして声をかけると中からチェキータの声が小さく聞こえた。


「どうぞ。入って」

 ニーカがドアを開けてくれる。


「・・・おじゃまします」

 シャオマオがニーカに降ろしてもらってちょこちょこ歩いて部屋に入ると、部屋の中はカーテンが閉め切ってあって、だいぶ暗かった。


「妖精様。お久しぶりです」

 ベッドがあるところからチェキータの声がする。


「チェキータ」

「すみません。鳥族はケガや病気をした時に巣にこもって暗がりでじっと座って眠っている習性が強くて。暗いでしょう?見えますか?」


 チェキータ達は夜目が利かないので、ほとんど見えないのだというが、暗がりに慣れてきたシャオマオはちょっと見えるようになってきた。


 傷ついたミーシャを座らせて、自分の体にもたせ掛けているチェキータ。

 鳥族は羽が生えているのであまり人のようにゴロゴロベッドで眠らずに、座って眠るのを好むらしい。

 羽が痛んだり窮屈だったりするのが苦痛なのだという。


 しばらく本当に命が危ないのではと言われたときには横たわらせていたが、造血が上手くいってからは、ニーカとチェキータがミーシャの体を交代で支えているのらしい。


 鳥族の親子や番にはよくある光景だという。


 薄暗い中で、ミーシャは苦しそうな様子もなく、本当にゆったりと目を閉じているだけに見える。

 支えてるチェキータは少しやせているようにも見えた。


「チェキータ・・・ご飯食べてる?」

「ええ。頂いてますよ。ライが毎食用意してくれますから」

 薄暗い中でも美しいチェキータはにこにこして話してくれるが、あの時何があったのかを話さないといけない。


「あの、チェキータ。ニーカ。あの、ね。どうしてミーシャが怪我をしたのか、どうやって助かったのか、のお話してもいい?」

「妖精様はお辛くないですか?私たちにお話しするのが辛いのならば、無理に話さなくてもいいのですよ?」

 チェキータはそばに来たシャオマオの顔を、手探りで探り当てて、柔らかく撫でてくれる。


「ううん、助けてくれた人がいるからね。その人のお話しないといけないの」

 どこまでも優しいチェキータとニーカ。

 まずシャオマオのことを心配してくれる。


 シャオマオは、順を追って、間違えないように、ゆっくり、自分の感情はなしにして、あったこと、知ったこと、見たことをきちんと説明した。



「・・・・そうでしたか。ミーシャに金狼様の欠片が・・・」

「ミーシャの傷を塞いでくれたのがあの時の海人族か。道理で」

 ニーカは顎に手をやりながら、何かを思い出しているようだ。


「ニーカ?」

「うん。塞がってるミーシャの胸と背中の傷痕に、鱗が何枚か生えてる。あれ、そういうことだったんだ」


「キノがね。体を水にしてミーシャの傷を塞いだの。その時に何枚かの鱗を落としていったの。これ。ミーシャが目が覚めたらあげようと思ってたんだけど」

 ライが入れておいてくれた巾着をチェキータに渡す。


「そうですね。頂いてもいいのか。海人族のエリアに行って海人族に返すか、それとも妖精様が持っていた方がいいのか、また遊びに行って確認してみましょう」

 カシャリと音がなる小さな巾着を受け取って、チェキータはニコッと笑ってくれる。


「チェキータ、ニーカ。シャオマオのこと怒らないの?」

「怒る?何故?」


「シャオマオ、ミーシャのこと怪我させちゃった・・・・」

「妖精様が?」


「ミーシャ、子供なのに・・・」

「妖精様。まずは妖精様が怪我をさせてしまったわけではないことだけわかってください。ミーシャはミーシャの意志で行動しています。その結果、良くないことが起こってしまっただけです」

 ふっと微笑んで、チェキータがゆっくりと話してくれる。


「我々はミーシャの意志を尊重しています。結果としては金狼様の欠片を持って生まれていましたが、ミーシャはとても優秀な子です。自分の意志で考えることができます。おそらく、危険が本当に迫っていれば、足手まといにならないように逃げることもしたはずです。しかし、相手が金狼様であれば逃げ切ることは難しかったでしょう」


「そうだ。金狼様と銀狼様に対抗できるものなんてない。あれこそ天災と変わらないんだ。それが、自由気ままな妖精様の過去の行動がめぐりめぐってミーシャの命を助けた。我々としたら嬉しいことだ」


「いいんですよ。妖精様。なにも貴方に思うところはありません。わが子の命が助かったことはありがたいことです」


「ニーカ。チェキータ・・・」

「ほら。それでも元気にしてられないんだったらさ、ミーシャに祝福をくれ。ついでにニーカとチェキータにも」

 にっと笑うニーカに、「わかった!」と返事したシャオマオは早速祝福のタブレットを持ってきて、ミーシャに祝福を贈る準備をする。



 チリリリリン


 洗面器に、お湯を持ってきたユエに礼を言って、タブレットを入れようとしたところで、来客のベルが鳴った。


 シャオマオが寝ている間につけられたベルで、門扉のところにスイッチがあって、押せばサリフェルシェリの精霊が来客が誰か教えてくれる。


「・・・・・・???」

 精霊が教えてくれたのに、サリフェルシェリの顔ははてなマークが浮かんでいる。


「お客様?」


「ええ。誰か来たんだそうですが、よくわかりませんね」



 トントンと、部屋のドアがノックされる。


「サリフェルシェリ。あのー、なんか変わった客が来てるんだが・・・」

 ダーディーの声がひどく戸惑っている。


 サリフェルシェリは部屋から出て行って、廊下でダーディーと話をするが、時々声が聞こえてくる。


「門扉を開けたんですか?」

「いや、勝手に―――」


「防犯の魔道具は――――――」

「無反応だな」


「精霊が―――」

「とにかく―――」



「こんにちは」

「うわああ!!」


 知らない声に、ダーディーの驚く声。

 気配の読めるダーディーが驚かされるなんて珍しい。


「待っているのに疲れたので上がらせていただきました。鳥族の子供はここですか?」

「おい!待て!!」


 ダーディーが止めるより先に、さっとドアが開いた。


「んん?部屋が暗いですね。ちょっと明るくしましょう」

 何者かが指をパチンと鳴らしたら、部屋の中に光の精霊が現れて、きらきら光を振りまいた。



 明るくなった部屋の真ん中には、半魚人の着ぐるみを着た幼児が金魚鉢を持って立っていた。


「アタシ、海の精霊の長のコピと言います。コピちゃんって呼んでいいですよ」


 小さいシャオマオよりも、頭一つ分小さくてほぼ二頭身くらいのサイズだ。

 全員があっけにとられて小さなコピを見つめることしかできなかった。


 いつもあんなに警戒心むき出しのユエも一緒になってコピを見ているだけで、構えることもしていない。


 しかし、いち早く思い出してシャオマオの前に立ちはだかった。


「コピちゃん、星に帰った海人族の族長キノの意志によってここにきたんですよ。仲良くしてくださいね」

「キノの意志!?」


「そうです。あ、貴女が妖精様ですね。コピちゃんと仲良くしてください」

「うん。仲良くしようね」

 シャオマオとコピは握手をした。




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