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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第七章

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欠片の影響力

 

 犬族には重症者はおらず、避難が必要なものはいなかった。

 本当は腕の骨折をしているものなどは避難させた方が良かったのだろうが、がんとして逃げることを受け入れなかったので、後方支援としている。


「にーに!」

「シャオマオ!無事か!?ミーシャは?」

 駆け寄ってきたレンレンに抱きすくめられる。


「サリーがね、体内魔素のバランスが取れたら気がつくって。怪我は大丈夫なの」

「そ、そうか。あんな大怪我がなんとかなったか・・・」

 レンレンも驚いているがほっとしたほうが大きいのだろう。ぷしゅっと息を吐いてため息をついた。


 確かに、胸や腹を貫かれて無事だとは俄かには信じられないだろう。


「ライにーには?」

「あれだけ楽しそうに暴れてるんだから、日頃のストレスも合わせて発散してるね。ほっとくね」


 ライの体にまとわりついた静電気のような精霊達がパリパリと楽しそうに踊っている。

 シャオマオにはあのパリパリ一つ一つがライのイライラやストレスなのかと思ってちょっとかわいそうに思えてきた。

 普段よほど我慢しているに違いない。

 自分がそのイライラの素になっていないことを願いたい。



「サリーはしばらく戻れない。戻らないかもしれない。みんな怪我には改めて気をつけて」

「畏まりました。元よりエルフ殿の助力がないものと準備していましたので、安心してください」

 胸に手を置いたラーラがきりっと答える。


「精霊の力を借りるの?」

 サリーはよく軽微なけがは精霊の癒しの力で消毒したり、治りを早くするような魔法を使う。


「ああ。怪我を治すというよりは、命が尽きそうな時は魔物や金狼様に特攻するつもりでおりました。我らは特に命を惜しんでおりません」

 キリッとした顔のラーラに、シャオマオは怖くなってしまった。


「ラーラ。命を惜しんで。命を捨てて、何かを成し遂げようとしないで!」

「・・・しかし」


「ラーラ。妖精のお願いよ。命を大切にして。逃げれる時は逃げて。また機会は待てばいい」

「・・・・・・・」

 不服そうなラーラに告げる。


「生きてシャオマオのそばにいて!」

「畏まりました!!!」

 踊り出しそうなくらい喜ぶラーラに、ユエの眉間の皺が深くなった。


「シャオマオ様。先ほどの鳥族の子を襲った触手ですが・・・」

「何かわかる?」


「地下からあの鳥族の子供だけを狙って、他には目もくれずにこぼれた血を集めて地下に戻りました」

「・・・血を」


「もし魔人がいれば、あの鳥族の子供も狙われる対象だったのかもしれません」

「どういうこと?」


「金狼様はバラバラになった体を魔人として、自分の地上に散らばった欠片、つまり自分の力を集めていました。肉体の復活に必要だったのだと思います。基本的には大きな欠片ではなく、1人から少しずつ集めていました。復活に必要だったのはあと10人分」

「10人」


「そうです。それを、まとめて1人から奪ったのではないかと考えます」

「ミーシャにーににも、金狼様の欠片がいっぱいあったってこと?」


「多分。とても優秀で、魔力の高い子供だったのではないですか?」

「・・・賢くて、優しくて、なんでもできるにーに、よ」


「虎殿のように瞳にまで欠片が溢れるほどではなかったかもしれませんが、それなりに欠片をたくさん持っていて、影響を受けていたかもしれませんね」

「・・・・影響?」


「金狼様の能力を一部使えていたことや、気持ちの部分です」

「き、もち?」


「・・・金狼様が銀狼様を求めるように、鳥族の子も、シャオマオ様の中の銀狼様の欠片に惹かれていたのかもしれません」

「そう・・・なの」


 ミーシャがシャオマオを可愛がってくれていたのは、欠片の影響。


(じゃあ、欠片がなくなったら、シャオマオのことは大事じゃなくなっちゃうのかな?)


 少しだけ、頭の中をそんな考えがよぎった。


 じゃあ、ユエも?

 ユエも、本当は欠片を全部取られていたら気持ちが消えていたの?


 どくどくいう心臓の音がうるさい。


 この星には、妖精でもなく、銀狼様の欠片もない、シャオマオそのものを愛してくれている人なんていないんじゃないのかな・・・?


 あの、病院の、寝たきりだった、***だったら?




「しゃああああああ!」

 ユエは威嚇の音を出した。


 本気で怒っていた。

 シャオマオが考えていることが手に取るようにわかったからだ。


「ゆ、え」

「ぐるあ」


「ごめんなさい・・・」

「ぐるあ」


 怒ったことを謝るように、ユエがすまなそうな目をしてべろべろシャオマオを舐める。


(大丈夫、大丈夫、大丈夫)


 何度も自分に言い聞かせると、心臓がちょっとずつ落ち着いてきた。



「ラーラ。この後、金狼様はどういう動きをすると思う?」

「このまま地下にこもって自分の肉体の復活に力を使うと思われます」


「どのくらいの時間がかかる?」

「読めません。肉体が復活する頃には魔素濃度が普通の人では耐えられない程度になっていると思われます」


「魔素濃度を測ればタイミングが分かりそう?」

「はい」


「じゃあ、精霊!このドームの外の魔素が高くなったら教えてね」

 自分の魔素をあげて、精霊たちにお願いする。


 ドームの外より中がいいのか、外に出てくれる精霊は少しだけだったが、ちゃんと合図してくれるみたいだ。


「シャオマオ!飯にしよう!腹が減ったぞ!」

「ぱあぱ!」

 後ろからやってきたダーディー(人姿)に抱きすくめられる。


「お前はまた考えるよりも先に動いて!」

「ぱあぱ!ごめんなさい!」


「今日は謝ってもダメだぞ!お前は謝ったら許してもらえると思ってる節がある!」

「あう・・・」

 ふぎっとシャオマオの鼻先を指で押される。


「今回はミーシャが助かったって聞いたし、結果的にはお前が行ってよかったんだと思う。だから、俺に抱き着いて『ぱあぱ大好き』ってかわいく言ってほっぺにキスしてくれたら心配かけた分は許してやる」

「ひぃ!」

 シャオマオにとっては半獣か完全獣体のダーディーにするならなんてことない罰だと思う。

 しかし、今はダーディーは上半身裸で美しい肉体を晒す美中年(好みど真ん中)なのだ。


「はわ!はわあ!あわあ!」

「何しゃべってるのかわからん。ほれ。できるだろ?ぱあぱだぞ?」

 ニコニコ笑うダーディーは正しく自分の顔がシャオマオに作用しているのを知っている。

 大好きなユエの未来の顔だ。

 ユエにはない渋みや深みが足されて、色気がすごい。

 10年後、20年後になったらこの顔に・・・と思って緊張してしまう。


 ダーディーは手を広げて受け止める準備もできているが、真っ赤になったシャオマオは「はわはわ」言いながらそわそわとして狼狽えている。


「ほれほれ。シャオマオ。ぱあぱのこと好きだろ?」

「ぱあぱのいじわるううううううう!!!!」


 みんなが何やってんだと思って見守っていたら、ライがドームの中に戻ってきた。


「はああ~。すっきりした」

 ライも上半身裸でタオルで汗を拭きながら帰ってきた。


「なにやってんの?」

 ライがみると、真っ赤な顔をしたシャオマオの脇を支えにダーディーが高い高いをしているところだった。


「娘の愛情表現を受け止める準備だ」

「めちゃくちゃ嫌がる猫みたいになってるけど?」

 シャオマオはキスしようとするダーディーの顔を両手を突っ張って押し返している。

 その抵抗すら可愛くてしょうがないのだろう。

 ダーディーはデレデレとしている。


「兄さん!どれくらい状況把握してるね?」

「えーっと。久々に暴れるのが楽しくて、ほとんどこっちのこと見てなかったな。何かあった?」


 ため息をついたレンレンとランランに、多少ガミガミ言われながら情報共有してもらい、シャオマオが心配している通りに怒りだしたライ。


「シャオマオちゃん?」

「ら、ライにーに・・・」


「なんて言われるかわかってる?」

「ご、ごめんなさい・・・」


「わかってるから、謝るんだよね?」

「あ、あい」


「じゃあもう言わない」

「・・・ライにーに」


「ミーシャを守れなかった俺たちの失態でもあるからな」

「にーに」


「ミーシャを助けてくれてありがとうね。どうやって助けたのかはまた全部終わったあとで聞くことにするよ。シャオマオちゃんの服がそんなに血で汚れているんだ。ただ運がよかっただけとは思えないからね」


 ぐしっと涙をこらえるシャオマオの頭を、ぽんぽんと撫でるライ。


「さあ、食事にしよう。といっても行動食しかないんだけどね」

 ニコッと笑ってカバンに手を突っ込んでみんなに配る。


「シャオマオちゃんにはマフィンがあるよ。これ食べて」

 シャオマオには獣人用の行動食はカロリーが高すぎるので、普通のお菓子が用意してあるのだ。


「ありがとう、ライにーに」

「どういたしまして」

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