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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第七章

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戦い方を変えよう

 

「上空からの魔物は私が対処します」


「ミーシャ、危ないよ?」

 きゅっとミーシャの腕を掴んで止める。


 犬族の戦士たちは戦うことに慣れている様子だった。

 立派な大人たちばかりのようだ。


 ダーディーも、ユエも、みんな魔物と戦うのに慣れている。

 しかし、ミーシャはいくら優秀といってもまだ少年だ。

 大人びていても、強いと言ってもまだ子供の域を出ていない。


 身を守る以外に戦ってほしくはない。


 一緒に守られていてほしい。



「大丈夫。この浄化のドームの内側から攻撃します。あまりにも上空に魔物がたまりすぎるのも良くないでしょう。犬族は空中戦に向いていません」

 ミーシャは今の状況と、みんなの戦法と、簡単に説明を受けて状況判断したようだ。


「ミーシャ。なんだかとっても不安だから、無理しないでね」


「大丈夫ですよ、無理はしません」

 ミーシャはくりっとシャオマオの頭を撫でてから、純白の翼を広げて上空へと飛び立って、剣で集まった大型の翼のある魔物を退治する。


「ぐる」

「ユエ。ミーシャ一人で大丈夫かな?」


「ぐあう」

「うん。ユエが言うならあんまり心配しないようにするね」


 上空を見上げると、大きな翼を広げて真っ黒な影と戦うミーシャは完全に絵画のような美しさだ。

 ぽろぽろと落ちて来る小さな魔石がきらきらと光を反射して、幻想的な雰囲気にも一役買っている。


「ほんとうにミーシャったらきれい・・・」

「ぐう」


 相変わらずユエはミーシャを褒めても変な反応をしない。

 幼馴染のライでさえも嫉妬の対象なのに、ミーシャはいいのらしい。

 そのあたりの加減がシャオマオにはよくわからないのだが。



「妖精様の浄化を過信するなよ!!自分で身を守れ!仲間をカバーしろ!」

 戦いつつもラーラは犬族全体を見て指示を出す。


 そろそろみんなが疲れてしまう時間かもしれない。


「サリー。みんなのケガはどう?」

「軽いものが多いのでそんなに心配しなくていいですよ。しかし、ダンジョンから現れる魔物の数が減りませんね」


 日が陰ってきている。

 ミーシャも日の光が落ちれば視力に不安が出てきてしまう。


「シャオマオ様は大丈夫ですか?」

「シャオマオはまだまだ疲れてないの。囮役、ちゃんとできるから任せて!」


 これはシャオマオが一番何もしていないように見えて、シャオマオが一番かなめとなっている作戦だ。


 シャオマオが浄化した魔素で金狼の暴走を地下に留めて押さえ、地上では魔物をおびき寄せる囮となり、戦うみんなを守る盾役にもなっている。


 どこまでこの魔物の進行が続くのかはわからない。


 いまのところ、別の場所へ逸れていく魔物はおらず、浄化の魔素に惹きつけられて溜まったものから退治されてこの場で騒ぎは収まっているが、もっと強力な魔物が現れたらどうなるかわからない。


 この浄化の魔素の結界に群がりすぎて、あぶれたものが人里へ行かないように引きつけつつ数を減らすしかない。


「シャオマオ、もっと浄化の魔素を濃くしてみんなを解放してあげたいよ」

「ぎゅうう」


「無理してないよ。でも、空の魔物がちょっとさっきよりも増えてる気がするの」

「ぐるぐるぐるうううう」


 空はミーシャが対処してくれてるけど、一人では限界がある。


「天井を低くしてみたらどうかな?」

 急に話しかけられてきゅんと心臓がはねた。


「にーにいいいい」

「もう。この妹は本当に、無事でよかった」

 ライに思いっきり抱き着いた。


「ランランも来たよ」

「レンレンも来たよ」

 双子がお互いに言い合う。


「うわーん。にーにいいい。ねーねええええ」

「わあ!泣き虫がひどくなったのか?」

「レンレンも泣いてるよ?」

「ランランも泣いてるよ!!」


 4人で抱き合ってわんわん泣いた。


「ねーね怪我よくなったの?」

「まだ折れてるけど、猫族はこんなもの動きながら治すよ」


「だめだよ。ランランは待機」

 めっ!とライに怒られてぶーっと膨れる。


「サリフェルシェリのサポートをするっていうから連れてきたんだ。約束したろ?」

「だって、この空気すごいよ。ここにいるだけで怪我が治りそう」

 レンレンとランランは言い合いするが、二人ともこの清浄な場所が特別なことがわかった。

 ほっぺも興奮のあまりに赤くなっていて血色がいい。


「確かに。この中にいると調子がいいし、気分がいい。体が軽くなった感じがする」


 ライはとん、と軽くジャンプしたように見えたが、きっと武器を持っていたら空の魔物も叩きのめすことが出来たかもしれないくらいに飛び上がった。


「兄さん。すごい。いつもより飛んでたよ?」

「そうだな。明らかに体が軽い」


 みんなニコニコしてる。


「シャオマオちゃん。軽く状況説明してくれる?」

「なんで犬族がこんなにいるんだ?」

「共闘してるね?」


「うん。頑張って説明するね!」

 シャオマオは頑張って、ときどきユエに注釈を入れられながら今までの経緯を話した。


「はー。なるほどね。ラーラって言ったか?あいつシャオマオちゃんに侍りたいって言ったか」

「ぐるうううう」

 思い出したユエが鼻にしわを寄せる。


「兄さん!今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ?」

「そうよそうよ」


 話が脱線しそうになったところでレンレンとランランが止めたから、シャオマオもほっとしたが、すかさず二人は声をそろえて

「終わってから決闘すればいいよ」

 と笑顔で言った。


「その話、私も聞いてませんでしたね」

「ミーシャ!」


 ミーシャも一旦剣を収めてにこにこしながら降りてきて、水筒の水を一口飲んで、汗をタオルで拭く。

「侍りたい、ですか。本当?シャオマオ」

「えっと、けっきょんできないっていったら、おともらちって、あにょ・・・お友達になりたいって」


 みんなの迫力にしどろもどろになってしまった。


「シャオマオのことだから、『いいよー』なんて平気で答えたんでしょうね」

「い、いいよって、言った」


「ですよね。貴方は誰も排除しない。そこがいいところです」

「お、怒ってる?」


「怒っていません。シャオマオには」

「ラーラに怒ってるのね・・・・」


「まあ、みんな仲良く。いいことです。シャオマオに侍ることが出来るかはユエ先生たちに任せますよ」

「え!お友達よ?試験があるの?」


「もちろんでですよ。学校のお友達とはちょっと違うお友達をねがっているようですから」

 いつになくミーシャの笑顔に迫力があって怖い・・・


「ミーシャ、空の魔物の対処はあとどれくらい出来そうだ?」

「今のペースだと、体力が持つのが1時間。日が暮れてからだとほとんど役に立てないかもしれません」


「やはりドームの高さを多少低くして、ダーディーとレンレンで対応してもらおうか。今のうちにダーディーに休憩を。レンレンは魔道具を使っていい。ランランはサリフェルシェリを休憩させてやってくれ」

「はい。兄さん」


 二人が走り出した後に、ライは持っていたカバンから「行動食だ。みんなに食べさせてやってくれ」と水筒と食料を出してシャオマオに渡した。


「シャオマオちゃんには美味しいクッキーが入ってるからね。これね。水筒の中身はこっちは紅茶」

 と、解説をつけてくれる。


 いつ戻ってきてもいいように、毎日おやつを用意して待っていてくれていたのらしい。


「ライにーに。大好き」

「俺もシャオマオちゃんが大好きだよ」


 ライにきゅうと抱き着いて、クンクン匂いを嗅いだら甘いお菓子の香りがする。

 シャオマオはしっぽがパタパタするのが止められなかった。


「じゃあ行ってくる。シャオマオちゃん怪我しないようにね」

 自分が怪我をするかもしれない戦闘に行くのに、みんなシャオマオのことばかり心配してくれる。


 心優しい人たちばかりだ。


 そんな人たちにケガさせたり危ないことをさせたくない。


 シャオマオは気を引き締めて結界ドームと地下の金狼の様子をうかがった。


「あれ?」

「ぐるうううう」


「うん、なんだか金狼の様子が・・・。おとなしい?落ち着いてる?元気がないのとは違ってる感じだけど、ゆったりしてるみたい」

「ぐるううう」


「そうかも。魔物たちも数が減るかもしれないね!」

 地下に押し戻したのがよかったのかもしれない。


 休憩に戻ってきたダーディーとラーラにも情報共有をする。


「そうか!魔物が減るかもしれねえなら少し休憩しても大丈夫そうだな」

 嬉しそうにダーディーはナッツバーをぼりぼり食べて、水で流し込んだ。

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