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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第七章

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星をひっくり返しても

 

「精霊!風の精霊集まって!」

 シャオマオは指先に魔素を集中させた。


「シャオマオの浄化した魔素が一直線にダンジョンに向かうようにコントロールして!」

 風の精霊は光りながらシャオマオが見えなくなるくらいに集まって、シャオマオの流す魔素をぺろぺろ舐めてはきゃあきゃあはしゃいでダンジョンに向かっていった。


 シャオマオの周りに集まった精霊が散っていった後には、魔素の流れが広くまんべんなく、から角度を絞ってダンジョンに流れ始めた。

 周りにいる犬族も、空気が変わったのに気づいて驚いている。



「シャオマオ、大丈夫ですか?」

 ラーラが心配そうに話しかける。


「シャオマオったら、浄化の力に限度がないの。どれだけ浄化しても大丈夫。浄化の素になる高濃度魔素はいくらでもダンジョンから湧いてくるの」

 ラーラは流石に驚いたように目を見開いた。


「シャオマオは素晴らしい。本当にこのタイミングで出会えたことを嬉しく思います。私の女神」

「グルルルルルルルル・・・・・」

 ユエは嫌そうに鼻にしわをたくさん寄せた。



「シャオマオ様、精霊たちがもうすぐダンジョンから魔物が湧き出してくると報告に来ました。シャオマオ様は最後尾で魔素の浄化を。我々を守るようにドーム状にできますか?」

「うん。やってみる」


 シャオマオが浄化した魔素はシャオマオの意のままに形づくってその場に結界のような清浄な場所を作り出す。


 その結果以内にいれば、犬族も、ダーディー達も、みんな体がよく動くし魔物の出す高濃度魔素を恐れることがない。


「狼の血を引く我が一族よ。先頭に立ち、妖精を守り、この星の生き物たちを守るのだ!哀れな魔物たちを星に帰すぞ!!」


「「「応!」」」


「さあ、シャオマオも声をかけてあげてください」

 ラーラがこそっとシャオマオにリクエストする。


「え?え?何言えばいいの?」

「心のままに。我らに言葉をください」


「えーっとえーっと、みんなケガしないで!!怪我したらサリーに診てもらってね!無理しないで頑張って!!」


「「「応!」」」


 口元に手を添えて一生懸命に大きな声を出すシャオマオが可愛くてかわいくて、妖精をみた犬族のみんなは余計な力が抜けた。


「武器を構えて先頭へ!」


 犬族はラーラの号令でダンジョンに少し近づく。


「ダーディー。貴方は犬族の後ろについてください。私はその後ろに。シャオマオ様は一番遠くから魔素を浄化してください。ユエはシャオマオ様を必ず守ってくださいね」

「ぎゃう」

 サリフェルシェリに言われなくてもユエはシャオマオから離れない。

 ユエが居ればシャオマオが怪我することなどないのだ。



 みんなはシャオマオを頂点に、ダンジョンから三角形になるように陣営を組んだ。

 浄化した魔素はその真ん中をうまく流れていく。


 おびき寄せられた魔物がみんなまっすぐやって来てシャオマオの浄化によって星に帰られればいいのだが、勢いよくやってきた強い魔物がただ浄化の魔素に触れただけで星に帰れるとは思えない。


 やはり多少なりとも戦わなくてはならないだろう。


「武器を構えろ。怪我したものはすぐに後ろの者と変われ!疲れたものも後ろと変わって休憩するんだ!怪我したものはエルフ殿のところへ!一人も欠けるな!必ず勝て!長期戦になることを覚悟しろ!」


 ラーラは歩きながらどんどん言葉をかけて皆を鼓舞する。


 犬族はみな完全獣体か半獣体の者ばかりで人姿の者はいない。

 戦士といったラーラを筆頭に、戦闘能力が高いのだろう。


 ラーラは半獣姿で大きな鉄塊のような両手剣を振り回している。


「す、すごい。力持ちなのかな?」

「ぐるる」


 体の使い方が上手いのだろう。腕力では扱っていない。

 剣が落ちるところに力の変化を加えて軌道をいとも簡単に変えている。

 ユエの解説を聞いてから見ていると、ラーラがリーダーをやっているのも納得だ。

 相当の手練れなのだろう。


 犬族は基本的に大勢でまとまって、少数の獲物を集団で狩るのが得意だ。


 今回のようにダンジョンからあふれ出るような大量の魔物を壁になって何人かで対処するような戦い方は今まで訓練でしたことがない。

 ぶっつけ本番というやつだ。


「魔物が溢れました!先頭の魔物がこちらへ向かっています!」

 サリフェルシェリが精霊から報告を受けて皆へ叫んだ。


「気合を入れろ!」

「「「応!」」」



 先頭の魔物は馬の形をした影だった。


 何匹も塊になって走ってくる姿は遠目に見れば一塊の巨大な影に見える。


 津波のように、みんなを飲み込もうと押し寄せて来る。



 先頭の何匹かを犬族たちで退治する。

 ダーディーも薙刀のような長さのある武器で魔物の急所を切り付けたり、弱ったところで真っ二つに切り裂いたりとして活躍している。



 強い魔物たちは待ち受ける犬族たちにやられて消えていき、ちょこちょこと走る小さなものはシャオマオの結界に触れてしゅわしゅわと溶けるように消えていく。


 しばらくの間は順調であった。


 犬族が先頭を交代しながら戦う戦法は有効だった。


 しかし、サリフェルシェリがまた精霊に教えられて、ダンジョンの入り口を見た時には驚いた声を上げた。


「翼のある魔物が飛んできます!上空に注意してください!!」


 シャオマオは自分たちを包んでいる大きな清浄な魔素のドームを意識して、強度を上げた。


 戦っているみんなが上空の魔物にまで気をとられてけがをしないように、上空からの魔物は全部寄せ付けない気持ちで強度を上げたものだから、上空からやってきた鳥型の魔物は結界に体当たりをしてくる。


 ドンドン大きな音がして、ドームの前方は黒い塊に覆いつくされそうな勢いだ。


 小さな魔物はシャオマオに吸い寄せられるようにやって来て、結界にぶつかって魔石を残して溶けるように消えていった。


「ぐるううう」

 落ちてきた魔石をユエが手を振ってシャオマオに当たらないように弾き飛ばした。


「ありがとうユエ。頭にぶつかったら『たんこぶ』ができちゃうもんね」

「ぐるあ」


「え?『たんこぶ』?あー、そういえばあんまりこっちでは聞いたことのない言葉だったかも?ほら、頭に何かごちんってぶつかって、頭とかがぷくってなるのよ」


 ユエはたんこぶが理解できた。

 シャオマオの丸いきれいな頭がぷくっと腫れるなんて考えたくもない!


 上空から落ちてくるかもしれないものを一層警戒するユエであった。



「シャオマオ!」


 しばらくみんなの戦いに集中していたら、上空から懐かしいと感じる声がした。


「にーに!ミーシャにーに!」


「シャオマオ!!大丈夫ですか!?」


 上空から剣を振って魔物を退治しながら結界にやってきたミーシャがシャオマオに近づいてきた。


「ミーシャ!ミーシャにーに!会いたかった!!」


「もう!このお転婆シャオマオ!どれだけ心配したと・・・・」

 剣を鞘に納めながら近づいてくる。


「ごめんなさい!ごめんなさいミーシャ!」


「いいんですよ。妖精シャオマオのやること自体には文句はありませんし、無事だったのだからいいとしましょう」


「あう。なるべく心配させないようにする・・・・ね?」


「はい。いいですよ。それにしても聞いていた通り美しくなりましたね」


「ありがとう。本当に育ったわけじゃないからいつか戻るかもしれないけど・・・」


「そうですか。小さなシャオマオも大好きなのでいいですよ」

 少しシャオマオの小さな姿を思い出すように目を細めるミーシャは前方にいるサリフェルシェリに声をかける。


「サリシェルシェリ先生!伝言役に呼ばれたのだと思いましたが、こちらに高濃度魔素が集まっていたので武装して先生を探しました。途中で出会ったライ先生にも声を掛けましたので、しばらくすればライ先生と双子も集まってくれます!」


「さすがだミーシャ!冒険の授業の星を一つ増やします!」

 怪我した犬族を治療しながらサリフェルシェリが笑う。



 強いミーシャも来てくれた。

 ライにーにもレンレンにーにもランランねーねも来てくれる。


 浄化の結界は負けそうにない。

 地下の大穴の蓋も間違いなく厚くできてる。


 シャオマオは好きにやっていいって言われた。


 妖精は好きに生きろと言われた。

 我儘でいいって言われた。

 なんでも自由にやれって言われた。

 望んでいいんだと言われた。


 哀れな魔物も、この星で生きる生き物も、変わってしまった金狼も、この星に戻ってこれない銀狼も、みんなみんな全部幸せにする道を探すんだ。


 それこそこの星の根底から全部ひっくり返すことになったって、全員幸せにしてみせる!!


 シャオマオは気合を入れてパラパラ小雨のように降ってくる魔石を見ながら決意した。

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