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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第七章

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ただいま地上!

 

「サリー!」

「シャオマオ様!!」


 ユエを落とさないように気を付けて、シャオマオはサリフェルシェリたちのそばに降り立った。

「サリー!」

「シャオマオ様!!」

 駆けだしたシャオマオがサリフェルシェリに抱き着く。


「シャオマオ様!!ご無事で!ご無事でよかった!!」

「サリー!いっつも心配ばっかりかけてごめんねぇ」


「いいんです!いいんですよ。サリーはシャオマオ様の無事を信じておりましたよ」

「ねーねは?!ねーね大丈夫だった?シャオマオ、あんまりお出かけする前のこと覚えてなくて・・・」


「腕と足の骨折。それもお前の機嫌がよかったときは魔素の浄化が進んでたみたいでな。怪我の治りが早かった」

「ぱぁぱ!」

 ダーディーの声に振り向いたら、もっと年を重ねた上半身裸のユエと、今のユエが並んでいた。


「ぱ?ぱ・・・・ぱ?」

「なに不思議そうな顔してるんだよ。ああ、さては俺の男っぷりに驚いたか?言ったろ?こいつより男前だって。どうだ?色男だろ?」

 横に立っているユエを指さしながら、ダーディーが言ってのける。


「う、うん・・・・・あの、か、かっちょいい・・・・」

 真っ赤になったシャオマオを見て、ふふんと鼻で笑うダーディーと、それをジトッとした目で睨むユエ。


「お?ユエ。お前魔素が・・・?」

「ああ、高濃度魔素を生んでいた素は排除された。今はただ体内魔素の浄化をシャオマオに依存しているだけだな」

 ユエはシャオマオをぎゅうっと抱きしめた。


「ユエの高濃度魔素を生む能力が無くなったのなら、もうどこにでもユエは行くことが出来ますね。さっそくですがエルフの大森林にいったん避難しましょう」


「ねーねたちもいるの?」

「ライやランランたちは人族エリアに残ってる。あのあたりの魔物を排除するために常駐してるんだ」


「ねーねの顔見たかった」

「また会えるよ」

 しょんぼりするシャオマオの頭をぐりぐり撫でるユエ。


「では、鳥族を呼びましょう。伝言を頼んでランランたちにもシャオマオ様が無事だということをお知らせしましょうね」

「やった!誰が来てくれるかな?」

「帰ることを考えて、ミーシャにお願いしましょう」

「ミーシャ!にーに!」


 シャオマオがくるくる回って喜んでいるうちに、サリフェルシェリは懐から取り出した真っ白の羽根を両手でパン!と挟んだ。

 上になった左手を上げると、手の間で羽が浮かぶ。


「風の精霊。羽根の持ち主をエルフの大森林に」

 パン!と手を再度叩くように合わせると、間にあったはずの羽根が無くなった。


「これでしばらくすればミーシャが来てくれますよ」

「わーい。ミーシャに早く会いたーい」



 みんなでほっこりしていたと思っていたが、気が付いたらダーディーは大きな剣を抜いて身構えていた。

「ぱあぱ?」


「サリフェルシェリ。ヨコヅナに乗れ。シャオマオは早く飛べるなら乗らずに上空へ」


 質問することなくサリフェルシェリはさっとヨコヅナに乗って、シャオマオははるか上空へ飛び上がった。


 大体ユエは、人の体でもその場でジャンプして2メートルは軽く飛べる。

 その倍以上距離をとればとりあえずは安心だろう。


「なんだ。お前ら。大ダンジョンに向かってたんじゃないのか?」

 やってきたものに、力の抜けた調子で声をかけるダーディー。


「銀狼様が見えたからな」

 半獣人姿の犬獣人がすたすたと近づいてくる。

 こちらも力んだ様子は見られない。

 半獣姿なのでわからなかったが、毛皮と眼光の鋭さはあの隊列のしんがりでこちらに気づいていたあの犬族だ。


「銀狼様じゃない。妖精様だよ」

「妖精様・・・?噂では妖精様は小さな子供の姿をしていたと聞いていた」


「いろいろあるんだな、コレが。俺も頭がついていかん」

「しかし、あの見事な銀の尾。銀狼様の欠片も感じられる」

 上空のシャオマオを見上げる犬族の男は深呼吸をするように浄化された魔素を吸い込んだ。


「銀狼様の加護を得てる妖精様なんだよ。欠片?はそのせいじゃねーか?」

「銀狼様の加護か。素晴らしいな」

 犬獣人は牙をのぞかせて、少々恐ろしい笑顔を見せた。

 獣人の笑顔は基本的に人の感覚で見るとちょっと怖いのだ。


「そんなことより、犬族は人を攫って何してんだ?」

「ああ。猫族の里に踏み込んで子供を攫ったと聞いた。すまなかったな」


「すまなかった?言葉がえらく軽いじゃねーか」

「いまはこの星全体にかかわる一大事でな。些細なことだ」


「へえ。じゃあ、むかついた俺がお前らを殴ることも些細なことだな」

「いまは時間がない。こちらが終われば付き合ってやってもいい」


「へー。そんな大事なことしてるのか。大変だな」

「そうだ。お前たちも逃げたほうがいい。ここは高濃度魔素で汚染される」


 ズズズズズズ・・・・・・


 犬族の男が大ダンジョンの方を振り返る。


「金狼様が地上に出ようとしている。なんとか出る前に欠片を渡して理性を取り戻してもらわなければ」

 それだけ言い残して犬族の男は走り出した。


「まって!!高濃度の魔素はどうするの?!どうやって防ぐの?!」

 上空から話をきいていたシャオマオが声をかける。


「妖精様・・・。防ぐ手立てはありません!!集めた欠片を渡すことしか解決策はないのです」


「待って!!シャオマオも行って魔素の浄化するから!」

「シャオマオ!」


「私は行く。ユエは?一緒に来てくれる?」

「もちろんだ」


 シャオマオが地上に降りると共に、ユエは完全獣体になってシャオマオを自分の背中に乗せた。


「ぱあぱとサリーはエルフの大森林に」

「バカ野郎!娘を危険にさらしておいて逃げる父親がいるかよ!何度言わせるんだこの娘は!!」


「ぱあぱ!・・・ごめんなさい」

「こら。そこはありがとうだろ?」

「うん!ぱあぱ!ありがとう!」

「サリーももちろんついていきますよ。シャオマオ様の足手まといにはなりませんので」

「サリーもありがとう!」


 それぞれダーディー、サリーと少し抱き合って感謝する。


「ほんとうに美しいな、妖精様。私はラーラといいます。狼族の戦士です」

「妖精様じゃなくて、シャオマオなの。シャオマオはユエの片割れなの」

「そうですか。どうりで二人の魔力が似ていると・・・」


 魂の片割れが出会うことは奇跡だ。

 その奇跡が目の前で美しく微笑んでいることに、ラーラは心を奪われた。


「シャオマオたちは大ダンジョンの大穴から逃げてきたんでしょう?また戻ることになりますが、大丈夫ですか?」

「うん。大神様を追いかけてきたんだけど、止まってくれなかったから先回りしたの。シャオマオね、浄化する力だけはいっぱいあるからみんなを守るね」


「美しい妖精シャオマオ。勇気あるあなたに妻乞いを」

「つ・ま・ご・い?」

「グルルルルルルルルル」

「ユエどうしてそんなに怒ってるの?ラーラ、とにかく大神様が出てくる前にみんなのところに行こう!」

 首をかしげていたが、シャオマオはユエの唸り声に我に返り、大穴を指さした。

 シャオマオを乗せたユエが走り出した後に、残されたラーラにサリフェルシェリが二人はもうほとんど番なのだと説明しが、ぼーっとした様子のラーラは少し考えるそぶりをして、「・・・・・なんとかシャオマオに侍りたい・・・」と呟いた。


「本当に戦士なのかね、このいぬっころ」

 ラーラを置いてダーディーとサリフェルシェリの二人はヨコヅナに乗ってシャオマオを追いかけた。



 大穴から少し離れた場所で、ユエが止まった。

「ぐあう」

「うん。ここからでも浄化できると思う。やってみるね」


 じわじわとせまる高濃度魔素の気配だけで、顔を青くする犬獣人もいる中で、シャオマオは(きれいにきれいに、ここをきれいに。みんなが苦しくないように・・・)と心の中で唱えた。


 途端に犬族たちは呼吸がしやすくなったことに驚いて、周りをきょろきょろと見回す。


 みんな、今日、いま、この時に死ぬ覚悟を持ってやってきていた。

 大神の高濃度魔素に侵されようとも、欠片を渡して大神に正気を取り戻してもらうしか方法はない。


 攫った者たちは解放した。

 犬族は誰に恨まれようとも星を救うため。

 二人の大神が再び出会うのを助けるため、そのために存続してきたのだ。


 死を恐れない戦士たちばかりだが、失敗できない緊張感はあった。

 死んでもこの手の中の欠片を金狼様に渡さなければならない。

 その緊張感が高まったときに、美しい銀の尾をもった女性が祈ってくれている姿を見た瞬間、すべてうまくいく気がしたのだ。


「みんな!銀狼様の加護をもった妖精様がここで祈ってくださっている!!成功する!必ず成功する!!焦ることはない!落ち着け!!大神の姿が地上に出る前に欠片をお渡しするんだ!!」


「「「応!!」」」


 ラーラの鼓舞に、犬族全体が応じた。


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