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生忌物倶楽部  作者: 鬼居かます
6/55

06「第一話 出会い」 私は、そしてワンコの名前を知る。

【毎日昼の12時と夕方の18時の2回更新します】



 


生忌物(いきもの)倶楽部(くらぶ)と言うのはね、昔あった部活よ。

 私が顧問をしていたのよ」




 そう大月(おおつき)香奈恵(かなえ)は切り出した。




「部活っ? やっぱり部活だったんですねっ?」




「どんなことをする部活動だったんですか?」




 千木良きいと三ヶ木ゆうは続けて質問する。

 すると大月香奈恵と寸又嵐ひばりは互いに複雑そうに顔を見合わせる。

 やはりなにか事情があるようだった。




「盗み聞きしたんだから、

 死者が出たってのは聞いているよな?」




 寸又嵐先生が念を押して二人を見回す。




「……はいっ」




「……はい。聞いています」




 きいとゆうは畏まる。

 内容が内容だけに真剣にならざるを得ないのだ。




「……そうね。まずは部活動は最低でも部員が三人必要なの。

 それで部員が死亡したから欠員が出て廃部になったのよ。

 ……今の規則はどうなっているかわからないけど、当時はそうだったの」




「今も規則に変更はありません。三人必要です」




 香奈恵の言葉を寸又嵐先生が引き継いだ。




「そう。

 ……でもこれじゃ説明になってないわね。

 部活の目的を話していないから」




「話すンですか? でも……」




「話しましょう。

 もしかしたら、……この子たちが受け継いでくれるかもしれないから」




「いや、……しかし」




 千木良きいと三ヶ木ゆうは黙ったまま固唾を飲んでいる。

 話の先は見えないが、ただならぬ内容だと検討をつけているのだ。

 そして大月香奈恵は目を閉じて大きく息を吸い言葉を発する。




「生忌物倶楽部は()()使()()の部活よ」




「ど、動物使いっ?」




「本当ですか?」




 きいとゆうは目をまん丸にした。

 驚愕したのである。




「ええ。

 元々は個人で活動していた子たちが、

 自然発生的に集まって部活動になったのよ。


 私も動物使いだから生忌物倶楽部に昔は属していたし、

 この学校の教師になったときは顧問をしていたわ。……私が最後の顧問になってしまったけどね」




「で、でもっ? なんで動物使いが部活になるんですかっ?」




 きいが身を乗り出した。




「そ、そうです。

 それに死者が出たってどういうことですか?」




 ゆうも同じように椅子から立ち上がっている。




「戦う相手がいたからだ。

 元々は個人で活動していたって言っただろ? 

 どうせならいっしょに戦った方が都合がいい。だから部活動になった訳だ」




 もう隠しても仕方ない、

 と言う表情で寸又嵐先生が口を開いた。




「戦う相手がいたってことは、

 つまり()がいたと言うことですか?」




 三ヶ木ゆうが尋ねる。




「敵っ? 敵がいるのっ?」




「必然的にそうなるわ」




 きいが口を挟んだので、ゆうが答える。




「……そうね。敵がいたのよ。

 敵は……、()()()




 沈黙が会議室を支配した。

 千木良きいと三ヶ木ゆうは互いに顔を見合わせる。

 話の内容が大きすぎてつかめないのだ。




「い、生忌物って、いったいなんですかっ……?」




 珍しく千木良きいがかすれた声を出した。

 普段、おちゃらけのきいだが話が緊迫しているのはわかったし、

 自分たちがとてつもなくすごい質問をしてしまっているのがわかっているのだ。




 そしてそれは三ヶ木ゆうも同様で、

 真剣なまなざしで二人の先輩を見つめている。




「動物たちを狂わせて人を襲わせるものが生忌物よ。

 忌まわしき生物と言う意味」




「……」

「……」




 千木良きいと三ヶ木ゆうは言葉を失った。

 なんだかとんでもない話になってきたからだ。




「な、なんなんですかっ? それっ?」




 きいが香奈恵を見つめる。




「生忌物の正体は不明よ。

 でも、確実にいる。なにか大きな目的を持って、……ううん。大きな使命を持って襲ってくるの」




「い、意味がわかりません」




 ゆうが尋ねる。




 そのときだった。

 寸又嵐先生が立ち上がったのだ。




「大月先輩。

 ……今更言うのもおかしいとは自分でも思います。でも……、この話題はよしましょう」




「なぜ?」




「この子たちに背負わせるつもりですか? 私は反対です」




「あら、いいじゃない? 

 この子たちはもう高校生よ。話の分別はつくわ」




「それでも反対です。

 過酷すぎます。……死ぬかもしれないんですよ?」




「あら、ひばり? 

 当時のあなたは大丈夫だったわよ?」




「……それはそうですが」




 再び沈黙が広がる。

 だがすぐにこの話は終わりになった。

 予鈴のチャイムが鳴ったのだ。




「……あら、残念。じゃあこの話はまたね」




 仕方ないといった表情で大月香奈恵も立ち上がる。




「さ、最後にひとつだけいいですかっ?」




 そう言った千木良きいはポケットから写真を取り出した。

 それは生忌物倶楽部の部室跡で拾った、あの巨大イヌが写っている写真だった。




「……あら、ムサシね」




 香奈恵が写真を見てそう答えた。




「ムサシっ? 

 あのワンコはムサシって言うのっ?」




 千木良きいが目をきらきらさせる。

 そして小さく、ムサシ、ムサシとつぶやいている。




「いい名前ですねっ」




「ええ、そうね。

 飼い主の子もそう言ってたわ」




 香奈恵はそう答えた。




「飼い主? 

 と、言うことは飼い犬と言うことでしょうか?」




 三ヶ木ゆうが尋ねた。

 すると香奈恵は目をつむりゆっくりと首を振った。




「今はいないわ。

 ……その飼い主の子が事故死した子だから」




「……っ」

「……っ」





 きいとゆうは同時に息を飲んだ。

 そのときだった。チャイムが鳴り響いたのである。




「さあ、授業が始まる。話は終わりだ」




 そう言って寸又嵐先生が手をぱんぱん叩く。

 それで我に返ったきいとゆうは会議室を後にするのであった。

 だがまだまだ訊きたいことはあった。




 だが大月香奈恵は今日は用事があるといって去って行ったので、

 昼休みに話を訊けそうにはなかった。




「飼い主の人、どうして死んじゃったんだろうねっ?」




「そうね。それは私も気になるわ」




「ムサシはワンコなのかなっ? 

 オオカミなのかなっ?」




「オオカミだと思うわ。

 でも確証はないから、訊いてみるしかないわ」




「生忌物ってなんなんだろうねっ?」




「それももっと訊きたかったわね」




 授業が始まった。

 だが千木良きいは黒板に板書された因数分解の公式なんかはちっとも頭に入らなくて、

 ずっとムサシのことを思っているのであった。




 空は晴れて薄い色の雲がぼんやりと浮かんでいる。

 今日も穏やかな春の日だった。




 千木良きいや三ヶ木ゆうが授業を受けていた頃、

 邪悪な動きがあった。




 どこからともなく現れたそれは街を素早くすり抜ける。

 その動きは速く道行く人々はその姿を視認できなかった。




 だが、動物たちは反応した。




 ある小犬は飼い主の腕の中でがたがた震え始め、ネコも群がって民家から逃げ出し、

 ゴミを漁っていたカラスの群は一斉に鳴きながらあわただしく飛び去った。




 そして街でいちばん大きいペットショップでは大変なことになっていた。


 昨日みたいにサルが逃げ出すことはなかったが、

 すべての動物がケースやケージの中で激しく暴れ始めたため、

 居合わせた客は店員の誘導で店外へと避難していた。




「昨日の騒ぎよりもすごいな」




 店長がそう女性店員につぶやく。




「農女の女の子が来てくれたら、きっと大丈夫なのに」




 もちろん三ヶ木ゆうのことだ。




「でも、サルだけじゃないぞ。イヌもネコもインコも暴れてる」




 そう言いながら店長は、

 ケースやケージが棚から落ちないように両手で押さえているのだった。




「いったいなにが原因なんだっ?」




「知りませんっ。

 でも、ものすごく怯えている気がします」




 店員はそう答える。

 そして互いに声をかけあうと、他の店員と協力してケージを押さえるのであった。




 そんなとき、ビルの屋上にひとりの少女が立っていた。

 髙見澤ヨウコだった。




 ヨウコは見上げていた。

 大空にはゆるやかに弧を描きヤマトが舞っていた。

 そしてヨウコが指笛を吹くと、くるりと方向転換し高度を下げ始めた。




「お帰り、ヤマト」




 オウギワシはヨウコの腕にとまる。

 そのときだった。




「探したわよ。

 ヤマトが飛んでいるのが見えたから見つけられたけどね」




 肩で息をしながらそう言ったのは大月香奈恵であった。

 ヨウコを見つけ屋上まで階段で登ってきたようだ。




「……久しぶりね」




 香奈恵は懐かしそうな顔になりヨウコに言う。




「そう、二年ぶりですね」




「でもまさかあなたが湘南農業高校に入学しているとはね。

 感傷? それとも復讐なのかな?」




「……」




 意外であった。

 他人には見せぬ笑顔を髙見澤ヨウコは大月香奈恵には見せたのだ。

 香奈恵はヨウコの傍らに立つ。




「先生、やつが迫っています。

 ヤマトを飛ばして調べました。街中の動物たちが騒ぎ始めています」




「今は先生じゃないのよ。

 ……まあ、いいわ。それも二年ぶり?」




「そうですね。

 このままじゃ大変なことになります」




「……ムサシが学校に戻ってる」




「ええ、確認しましたが……。

 まさかそれが狙いと?」




「どうでしょうね」




 並んで街を見下ろすヨウコと香奈恵。

 眼下ではまだ見た目の異変は感じられない。

 人間は感づくのが遅すぎるからだ。だが動物たちは動揺をし始めている。




「場所を変えてもう少し調べます。

 もしかしたら生忌物が具現化してしまうかもしれません」




「でもどうするの? 

 あなたひとりじゃ無理よ」




「そのときは、そのときです」




 そう答えた髙見澤ヨウコは、オウギワシのヤマトを羽ばたかせると、

 ふわりとビルの屋上から飛び降りた。

 ヨウコはただの人間じゃない。鷹匠であると同時に忍者の家柄でもあるからだった。




「……そのときは、そのときか」




 一人残された大月香奈恵はなぜか笑みを見せるのであった。




「いいかっ! 

 全員で手分けして柵や檻の鍵をチェックしろっ! 異変があったら無理をせずに報告だっ!」




 寸又嵐(すわらし)先生が教室を飛び出しながら、そう全員に告げた。




 湘南農業高校では大変な事態が起こっていた。

 授業中にも関わらず職員室から緊急の連絡が来たのである。




 それは動物たちが暴れていると言う放送だった。

 飼育しているウマやウシ、ブタやヤギたちが突然騒ぎ始めたかと思うと、

 次々と暴れ出したのである。




 原因は不明。

 だがその暴れ方は尋常じゃなくて、柵や檻に次々と体当たりをしているらしい。

 どうやら逃げだそうとしていると思われた。




「きいはムサシを見に行って、私はウシを見てくるわ」




 廊下に出たとき三ヶ木ゆうが千木良きいにそう告げた。




「わかったよっ! ゆうも気をつけてねっ!」




 きいはそう答えると診察室の方角へと走った。

 今回の騒ぎはムサシが原因ではないことは明らかだった。

 ムサシが遠吠えをした訳ではないからだ。




 だがムサシがケージを出たらやっかいであることから、

 きいは様子を見に行くことにしたのであった。




「ああっ! 

 ムサシ、おとなしくしてっ!」




 診察室横の大型ケージに到着したきいはそう叫んだ。

 巨大なムサシが檻の外柵に体当たりしているのが見えたからだ。




「駄目だようっ。おとなしくしてっ!」




 きいがそう叫んでケージの中に手を伸ばす。 

 するとムサシはきいに気がつくとおとなしくなった。

 そして伸ばされた手のひらにその大きな鼻先を押しつけている。甘えているのだ。




「ああ大変だっ。鍵を壊しちゃったんだっ」




 見るとケージのドアの鍵が曲がっていた。

 丈夫な太い金属で作られているのだが、

 巨大なムサシがなんども体当たりしたようで、ドアに隙間が出来ていた。

 きいは体重をかけて掛け金を外すとケージの中に入り込み、ムサシに抱きついた。




「ねえっ、どうしちゃったのっ?」




 きいはムサシに語りかける。

 ムサシは腰を下ろし鼻先でふんふんときいの身体をまさぐっている。




「みんな、どうしちゃったのっ? 

 どうして暴れるのかなっ?」




 ムサシはすっかり落ち着いた様子だった。

 やがて前足も床にだらりと伸ばし全身を横たえたからだ。




 きいは目をつむっていた。

 すると外の様子が聞こえてきた。




 動物たちの鳴き声とクラスメートたちの声がする。

 みんな協力して騒ぎを押さえようとしているようだった。




 そのときだった。




「どうやらムサシは大丈夫なようね」




 髙見澤ヨウコだった。

 肩にオウギワシにヤマトを乗せてドアを開けて入ってきたのだ。




「あ、ヨウコちゃんっ。休みじゃなかったのっ」




「街に出ていただけ。

 ムサシが気になって帰って来た」




「そうなんだっ。ムサシは大丈夫だよっ。

 ……ねえ、どうしてムサシの名前を知ってるのっ?」




 きいがムサシの頭をなでながら問う。

 するとヨウコは一瞬きいの目を見るが、すぐにそらしてしまう。




「……昔、ムサシの飼い主と知り合いだったからだ。

 それよりもどうして千木良が知っている?」




「大月さんが教えてくれたよっ。

 ……あれっ? ってことはヨウコちゃんは事故死してしまった人の知り合いっ?」




 するとヨウコは背を向けた。




「余計なことを訊くな」




「あっ……。ごめん。事情があるんだねっ?」




 そのときだった。




 ――キャーーーーっ!! と、言う悲鳴が聞こえてきた。




 そして同時に地響きも聞こえてくる。

 なにかが外で起こったようだった。




「まずいっ! 

 ……千木良、お前はムサシを連れ出せ」




「えっ? 

 ムサシをケージから出しちゃうのっ? どうしてっ?」




「理由は後でわかる」




 そこまで言うとヨウコは診察室を飛び出して行く。




「待ってっ! ヨウコちゃんっ!」




 きいもムサシを連れて部屋を後にしたのであった。




 外の動物舎では大騒動が起きていた。

 暴れる家畜たちを三学年全員の獣医科生徒たちが押さえているのだが、

 すべての動物には手が回らずにいた。



 そしていくつかの動物たちは木製の柵を壊し外に出てしまったのだ。

 そしてそれに対応していると、別の家畜が逃げ出すと言う悪循環が起こっていたのだった。



「一匹も逃がすなっ!」




 寸又嵐先生の叫びが聞こえた。

 もちろん教職員も総出で事態の鎮圧にかかっていた。

 だが家畜に対して絶対的に数が少なかった。




 当然である。

 家畜は本来温和しい動物である。このような緊急事態は想定していないからだ。




「寸又嵐先生っ! こちらで指揮をっ!」




 中年男性教諭が大声で寸又嵐先生を呼ぶ。

 新任の寸又嵐先生は本来ならば指示される立場だが、

 ヨーロッパオオヤマネコと言う相棒を使えるのだ。

 肉食動物は草食獣である家畜に対して有効だ。




「行けっ!」




 寸又嵐先生が指示するとヤマネコは大回りで疾駆し、ヤギの群を牽制する。

 するとヤギたちはおとなしく固まり始める。それを空いた人数で捕獲する。




「寸又嵐先生っ!」




「ああっ、わかったっ!」




 今度は別の方から声がかかる。

 見るとヒツジの群が囲いを破壊して大量脱走しているのがわかる。




「手が足りん。ちっ!」




 先生はヨーロッパオオヤマネコを呼び戻し今度はヒツジに対応する。

 するとあちこちから寸又嵐先生を呼ぶ声がする。まるでこだまだ。




 そのときだった。




 ピーーーーーーーッと、甲高い声がして真っ黒い陰が大空から急降下した。

 オウギワシのヤマトだった。

 ヤマトはウサギの群に陰を落とす。




 すると全力疾走していたウサギたちが一斉に立ち止まる。

 猛禽を見て硬直してしまったのだ。

 いくらパニックになっているとは言え、本能に刻み込まれた恐怖には立ち向かえないのだろう。




「髙見澤っ! ナイスだっ!」




 寸又嵐先生は突如現れた髙見澤ヨウコを激励する。

 するとヨウコは今度はニワトリの群をヤマトに包囲させた。

 それを手空きの獣医科生徒たちが一斉に捕獲する。




「どうにかなりそうだな……」




 額に汗をびっしょり浮かべた寸又嵐先生がそうつぶやいた。

 そのときだった。




「ああっ! ウシがっ!」




 誰かが叫んだ。

 見ると大型の和牛の群が、そのするどい角で板張りの囲いを突き破ってしまったのだ。

 大群となったウシの群は怒濤のように走り出す。




「逃げろっ! 逃げろっ!」




 寸又嵐先生が叫ぶ。

 そしてヤマネコを呼び戻すと和牛たちに立ち向かわせる。

 だが効果がない。




 いくらイヌよりも大きいヨーロッパオオヤマネコでも相手はウシだ。

 牽制のために先回りさせてもウシの勢いは止まらずに通過してしまう。

 要するに無視されているのだ。




「ちいっ! 

 ……このままじゃ学校から出ちまうぞっ!」




 ようやくヤマネコに最後尾の子牛を引き倒させた寸又嵐先生が、大声で怒鳴る。




 そのときだった。




「キャーーーーッ!」




 三ヶ木ゆうだった。

 ウサギを回収していたゆうの目前に、和牛の群が迫ったのである。

 その数は五頭。

 どれも獰猛な雄のウシだった。




 ウシはゆうをはじき飛ばす算段のようだった。

 全力疾駆しながら頭を低くして角を立てている。




「三ヶ木っーーー! 避けろっ!」




 寸又嵐先生が絶叫する。

 だが恐怖で固まってしまったゆうは動けない。そのときだった。




「千木良ぁーっ! ムサシを出せっーーーー!」




 ヤマトに指示を出していた髙見澤ヨウコが、突然に絶叫した。

 すると校舎の脇から姿を見せて事態を呆然と見つめていた千木良きいが、はっとする。




「ムサシをどうするのっ!」




「ウシを止めろっ!」




 するときいはあわあわと慌て出す。

 だがしなければならないことはわかったようで、腰を下ろしていたムサシの背を叩く。




「ムサシっ、ゆうを助けてーっ!」




 ガウッ!



 一声あげたムサシ。

 するとそのムサシの目が一瞬すぼまったかと思うといきなり疾駆した。

 すばらしいスタートで猛然と駆けだしたのだった。




 

 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。


私の別作品

「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み

「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み

「墓場でdabada」完結済み 

「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み

「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み

「空から来たりて杖を振る」完結済み

「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み

「こころのこりエンドレス」完結済み

「沈黙のシスターとその戒律」完結済み


 も、よろしくお願いいたします。

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