52「第三話 獣使い」私たちの眼前で生忌物が現れる。
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そのため書き上げてからの投稿となるので一日一回の更新となります。
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彷徨うように歩く大月香奈恵を止める手立てもないまま、きいとゆう、ヨウコと寸沢嵐先生たちは祠に到着してしまった。
そして祠の眼前に着いてようやく歩を止めた香奈恵は祠に手を伸ばすのであった。
その祠は苔むしたかなり古い石造りのもので、基礎の下に大木の根が張ってしまったようで斜めに傾いでいた。
「あ、なんか光り始めたよっ!」
きいが祠を見てそう叫んだ。
確かに香奈恵の指先が祠に触れる瞬間に突然に電灯が灯ったかのように明るくなったのだ。
しかもその光量はどんどん増していき、やがて直視できないくらい眩しくなったのであった。
「……いかん、離れろっ!」
寸沢嵐ひばりがそう叫んだ。
その声に応じて、きい、ゆう、ヨウコは後方へと走る。
光の爆発だった。
音はしない。そして爆風もない。
だが光は爆発的に膨張して避難した四人とその相棒たちをも巻き込んだのであった。
そしてその数秒後である。
光が収まり、ようやく目が慣れて視力が回復したときだった。
「……なんてことだ……」
寸沢嵐ひばりがそう呟いた。
見るとそこにはまるで頭から黒衣を纏ったかのような人物が立っていた。
髪も顔も身体も手足の先までも黒色になっていて暗闇に溶け込んでしまいそうな容姿。
ヴヴォォォォォーン……ッ!!
雄叫びが聞こえた。
それは黒衣の人物が両手を広げて天に向かって叫ぶ咆哮だった。
「ま、まさかっ! 生忌物なのっ!」
三ケ木ゆうが叫ぶ。
「そうみたいね。……どういうことなの?」
きいやゆうよりも生忌物に詳しい高見澤ヨウコでも知らない出来事のようだった。
「ま、まさか、大月先輩が生忌物にっ!?」
寸沢嵐ひばりが首を振る。
認識はしているのだが否定したい気持ちが強いのだ。
「ああっ! なんか集まって来たよっ!」
暗い空を見てきいが叫ぶ。
見ると闇夜を舞う小動物が群れをなして集まってくるのが見えたのだ。
「コウモリだな。……アブラコウモリ? いや、違う。大きさからしてキクガシラコウモリかもしれん……」
寸沢嵐ひばりがそう説明する。
キクガシラコウモリの群れは群れが群れを呼ぶ状態でどんどん数を増していくのであった。
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私の別作品
「いらぬ神に祟りなし」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。